遠山キンジの独白 作:緋色
「そんな!?死んだことに気がつかずに彷徨っているんですよ!?目を合しちゃ駄目です!」
治ったので退院手続きをしていた所で間宮とワトソンに見つかったのが今である。
「生きてるわボケ」
「あだだだ…!?懐かしい痛み!?」
「なんで定期的に殴られるような事言うんだ?学習能力死んでるのか?」
流れるように拳骨を入れたが病み上がりで動き悪いな。
戦えなくはないけど所々固い感じがする。
「……なんで治ってるんだい?」
「オカルトの伝手があってな…。死ぬかと思ったわ」
面倒事が多すぎるので白雪が治療した事は主治医だけに話している。偶にオカルト的な治療するのはいるらしく病室でやった事だけは滅茶苦茶怒られた。
なぜ怪我人で抵抗できなかった俺が一番怒られてるのかは謎だが。疲労困憊で白雪が倒れてるからか?
「君はホントに人間かい?」
「純度100%人間だわ。一応乗能力者ではあるが」
「……いいのかい?それバラしても」
「それなりに当たりはつけてんだろ?」
「知っていたなら策を練っていたよ……」
……知らなかったらしい。
「まあ動けるようになったから、いくつかやらんことがあるし――後でちょっと話すっか」
「? わかった」
「あと、このチビ「チビじゃない!」の説得はお前がやれ。バレた所で俺は知らんし。そもそも口止めする範囲すら知らん。一時間後ぐらいに連絡くれ」
「了解した」
やらなければいけない事とは何か。
そうだね。粛清だね。
一応とはいえバスカ―ビルリーダーとなってる以上、なあなあに終わらせるわけにはいかないし、放置するのも論外だ。とはいえこういうの得意ではないんよな……。
とはいえアリアと理子は参加させるのは論外、白雪は回復まで時間がかかるとのことで泣く泣く欠席。レキは会話しないし。ワトソンは別組織なんでこっちも別途会談は必須。
――消去法で俺しかいないわけだ。
凶悪犯にも相手することもある看護師が手に負えないとばかりに病室から飛び出してきたのを横目に病室に入る。
持ってきた人が一人入りそうなかばんはそこら辺に蹴り転がしておく。あくまでこれは
「おそよう。もう21時くらいだが元気そうでなによりだな。
「まだ夜は始まったばかりよトオヤマ」
包帯を巻き直そうとしたのか乱れた様子だが、俺を見て服装をササっと直すあたり見た所健康そのものといった所である。
チラッと見ると部屋にはおどろおどろしい呪文かなんかが書き連ねてある。ホラー病棟かな?
「
「次は招かれるように努力するよ。もっともこういう趣味の悪い部屋苦手でね」
「これは私の趣味じゃなくて魔術封じよ。忌々しい」
へー
「それで何の用かしら?男の血はあまり好きではないけれど今は贅沢するほど余裕ないわよ?」
そう言って蠱惑的に牙を見せるヒルダだが――なるほどそういう手段もあるか。
「吸ってみるか?興味あるんだよね同じ体質した女の事」
「あら?」
「吸血鬼は『吸血』で他者の遺伝子を写し取って進化してきたんだったか。
「それは――」
ヒルダがいい事聞いたとばかりに薄暗い笑みを浮かべる。
……?なんかちょっと頭がぼんやりしてる気がするが、つらつらと言葉を続ける。
「ヒステリア・サヴァン・シンドローム。ただの特異体質だな。興奮することにより神経系に作用して常人の30倍ほどの実力が出せるわけだ。
「なん――っ」
すっとヒルダの口に指を突っ込みいつでも噛めるようにしてやる。
「ヒステリア・サヴァン・シンドロームは子孫繫栄機能による特異体質――だ。男は俺みたいに力強くなるだけじゃなく神経系から内臓なんかも活発になる子孫繫栄機能なんだから当然だが――なら
話を理解したのかヒルダの顔が強張る。
「少なくとも俺の親族にこの体質の女はいなくてな。推定だが子供を欲しがるんじゃないか?」
白雪は妄想で子供大量に作るつもりで計画しててドン引きしたが――遠縁だからああなるのかな。いや遠縁なのは推測でしかないから無関係かな。
もう片方の手ですっと胸の下からへその下まで撫でて、へその下で軽く押す。
あれ?なんか若干ヒステリアモードになってねえか?頭ぼんやりしてるから気がつかなかったが――頭がぼんやりしている?
なんかおかしいと気が付いたことで手が滑ったのか固めの歯の感触からレロッとした肉の塊の感触に移った。
「……ところでお前なんかしたか?俺が年上好きだとしてもここまでやんないはずなんだが?」
「この無礼者ぉ!」
正気に戻ったのか俺の指を吐き出したヒルダは手近にあった枕でボフボフと叩いてくる。
「あ、ありえないわ。こんな猿にちょっといいかもと思わされるなんて!」
「誘ったのお前だろ?」
「違う!」
「催眠術はしたくないことはさせられないと聞くしお前の望みだろ?」
「違っ――え?まさか私が?――いや違う!勝手にあんたが発情しただけでしょう!」
「流石に怪我人には発情しねえ」
「もう治ってるわ」
「じゃあお前が誘ったんじゃん」
「違う!」
そういやヒルダは催眠術使うとか言ってたから今の暴走はそれか?しくったなぁ。
しかしお守りとして
一通りさばいた所でヒルダも一応収まったのか枕攻撃が止む。
「それで何の用よ!」
「別に。単なる戦後処理だよ。ヒルダをどうするかの」
その言葉にやっぱりねとばかりに力を抜いたようだ。逃げるつもりはないらしい。
「トオヤマが万全に動ける以上逃げられそうにないわね。いいわ。クビでも撥ねる?それともお父様みたいに幽閉かしら?」
「幽閉というか収監だな。もっとも司法取引じゃなく私的取引になるが収監を避けることも出来る」
「ふん。どうせペットになれとかじゃないの汚らわしい」
「それはお前の性癖だろ……」
まあどこからか漏れたのか知らんがどこぞの政治家先生が美女吸血鬼が欲しいとか連絡入れてきたのでセカンド?の美しい状態のスケッチと推定戦闘力を書き綴ったのを送っておいた。悲鳴上げたとか
「条件としては
1.お前の知ってる『緋色の研究』?とやらの全てを提供。
2.お前の外した殻金全回収――アリアに戻すまでの協力
3.吸血鬼の素材の提供
4.アリアの母親の裁判での証言
こんな所か。簡単だろ?」
「待ちなさい素材の提供って何よ」
「ん?骨からできたブラドナイフ――ヒルダから作るからヒルダナイフか?を作ろうと思って。それと魔臓と翼の一部――は手術中にワトソンが回収してて――そういや殻金も回収したんだっけ?――こっちは事後承諾だな」
あと暴れるかもしれないとかで魔臓の場所はワトソンが解剖図付きで教えて貰っている。
「そんな屈辱を選ぶくらいなら死を選ぶわ」
イラッ☆
「おいおい。お前が生きてるのはお前の力じゃなくて
「……え?理子が……?」
ワトソンと別れた後に白雪の部屋に寄ってから帰宅し、今後の為に部屋に呼び出したのは理子だ。
「キーくん退院したって聞いてたけどマジだったんだ……。あの怪我でなんで即日退院出来るくらい治ってるの?」
「知らん。白雪の治療術はオカルトなんで理解できねーんだわ。詳細は白雪に聞け」
「ゆきちゃんそんな凄かったの!?」
「アレでも世界上位の魔女らしいし」
G17だっけ?レベルとか分類は知らんが国内で最上位の魔女らしく、オカルト系では相当恐れられてるらしい。
白雪が本気出したら戦力的に俺でも勝てるかどうかは微妙だからな。敵対することになるとは思えないというか敵対することになったら自害しそうなんであり得ない仮定だけど。
「まあ呼び出したのはいくつか理由があるが……。取り敢えず決めないといけないのはヒルダをどうするかって話だ」
「……キーくんが決めていいよ」
「そうもいかん。罪っちゃ罪だがヒルダの日本での犯罪歴は少ないらしくてな。ブラドレベルの封印は難しいみたいなんだ」
東欧の魔女だかなんだかで活動範囲が欧州な上に理子いじめと吸血の件ぐらいでしか捕らえられないらしく、長く見積もっても10年ぐらいしか閉じ込められないらしい。
ブラドは街を焼き払ったとかアングラな金稼ぎとかしてたらしくいくらでも拘束できる理由があるが、ヒルダの罪はそこまで多くないとか。封印するにはレベル5留置所ぐらいしかないがそれだと非人道的なレベルの封印で厳しすぎる。逆に罪に合わせると封印できる場所がないらしい。
厄介すぎだろあの女。
「まあヤバさも段違いだからな。正直欲しがってる相手に対策して貰って渡しちまうのが一番いいだろう」
「欲しがってる相手?キーくんのお仕事相手?」
……なんか探ってるとは思ってたけど公安まで知られてたのかな。まあ理子の情報収集ならあり得るか。流石に将来的な所属まではバレてないだろうが。
「……さぁね。少なくともファーストコンタクトだったが――美女吸血鬼捕まえたとかすぐに知って交渉しに来る奴なんてそうはいないだろう。吸血鬼には人じゃないからどうとでもなるんだと」
スカイツリーの情報操作もあるしな。
そう話したことで法を味方に出来るタイプの人間だと気付いたのだろう。
「人じゃないってまさか……」
「まあ美女かどうかが基準で人かどうかが重要な時点で碌な事にはならんだろうな」
あとで捜査対象として
たぶん無駄だろうけど。
「『
小さく理子がなんか呟いている。
なんかあるのか?
「……キーくんはそれでいいの……?」
「まあ死にかけたし。安全の方を取るかな」
売り飛ばした後、ヒルダが逃げる前に強襲逮捕すれば不幸な事故か理由付けて公安が飼うんじゃないかな。公安0課も後ろ盾の問題で下手に動けないとか何とかでヒルダの回収難しいと渋ってた。というかこの流れ見越してたならターゲットがそいつなのだろうか?
その後までは責任負うつもりはないけど。こっちに罪被せられるかもしれんな?
「――正直。ざまぁ見ろって思ってる。あいつは理子の事ずっとイジメてたからね」
「だろうな。じゃあ「でも!――でもそうなって欲しいとまでは思ってない!そりゃあいつはあたしを辱めて虐待してた!いつか逆の立場になって復讐したいとも思ってた!でも――でも――死にかけてるあいつを見て――復讐とかじゃないんだ――助けなきゃって思ったの」
どんどんトーンダウンする理子は頭の中がぐちゃぐちゃなのか静かにすすり泣いている。
「はぁ……。じゃあ条件付きでチャンスやるか。ほら殻金集めに人手いるし。味方すること条件で」
「キーくん」
「ただし」
「裏切るような行為をするならその場で殺す。これは絶対条件だ」
「キーくんもなんだかんだで甘いよね」
「気のせいだろ」
なんでヒルダが許されてるかわからない……ので捏造
うーん
妥当な契約か?違うか?
というかヒルダって冤罪関係なさそうか?