遠山キンジの独白   作:緋色

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最新刊の前半と後半の落差よ
そして武装検事の仕事が余計わからなくなった


準備中

「ここから見える部屋にいる男の取引現場を押さえます」

 

 …。

 とある生活感0である程度怪しまれないために置きましたぐらいの家具とよくわからん機械ぐらいしかないマンションの一室まで案内されてからの説明がこれである。

 ここから補足が入るのかと思い少し待ったが、話す事はすべて終わったみたいな雰囲気である。

 要件人間かよこいつは。

 先に部屋にいたおっさんもダメだこりゃみたいな顔してるだろうに。

 

「目的はわかったけど、必要な情報も合わせて出せよ…。言えないなら言えないでいいから答えられる事には答えろ。面倒だからは無しな。まず何の取引?男の素性は?取引現場っていつどこで行われるの?取引相手は?逮捕が目的?それとも取引ブツの奪取が目的?」

 

 話進まないので聞きたい事を一気に聞く。他にもあるが確認しとくべきはここら辺だろう。

 しかし、答えたのはひとみさんではなくおっさんだった。

 

「私が答えよう。日米軍事同盟の機密情報が漏洩し、その情報を受け取ろうとしている人物が向かいのアパートの606号室にいる。男は某国のエージェントだ。君たちは知らない方がいい」

 

 じゃあなんで連れてきたんだろうか…。

 試験にちょうどいいとかなのだろうけど。

 あと、このおっさんはこっちを観察してるようなので上役というか監査役なのだと思う。見た感じ戦闘力は低いし。

 

「そこまでわかっているのならあとは逮捕するだけでは?」

「問題は情報を渡しに来る人物と場所が不明な事だ。明日中のどこかで受け取る事だけはわかっているのだがな」

 

 受け取り側の内部をスパイでもして情報を受け取る事だけ知ったのだろか?

 おかげで先んじて捕まえられないと。

 というか明日って事は今日は泊りか。必要経費で請求行けるかな…?

 

「対象を捕らえる事、情報の漏洩を防ぐ事が目的だが、情報漏洩が防げれば対象が最悪死んでも構わない。事故として処理する」

「待って下さい。警察官は正当防衛や危機的状況以外での殺人は禁止されています。それに私達は武偵学校所属ですから少年武偵法で正当防衛でも死刑は免れません」

 

 真っ先に反応し反論する桜ちゃん。

 武偵は犯罪者と紙一重な所があるから、犯罪を犯した場合通常より罪が重く加算され、約三倍の刑罰になる。これは安易に銃規制の解除で治安が悪化した際に武偵をなし崩しに解禁した時にさらなる治安悪化を避けるために出来た法律らしい。ちなみにここまで極端なのは日本ぐらいだそうだ。海外だと警官くらいの刑で計算されるらしい。

 それは兎も角、上が揉み消してくれると言ってるのに噛み付く辺り中々である。

 簡単に乗るようなら大減点されるだろうが、こういう生真面目なタイプは上からの評価はかなり高そうだ。おっさんも気に入ったのか若干頬が緩んでるし。

 

「真面目だな。なら頑張って生かして捕らえるといい。情報漏洩が防げればいいからね」

「生かして捕らえたらポイント高いって事で合ってます?」

「そう考えてくれて構わない」

 

 殺す気はないし、ややこしくなる前に口を挟んで確認すると、そこは問題なさそうだ。最後の言葉はどちらかと言うとひとみさんに言い聞かせてる雰囲気だし。

 なんかひとみさんから余計なことを言うなオーラが出てるが気にしない方がよさそうだ。

 

「確認するけど。今回の任務が終わったら単独任務を許可するのよね?」

「結果次第だ。結果次第で班長としての行動は比較的許可されるかもしれんな。案件の割り振りもあるだろう」

「…班長なら今よりはマシね」

 

 なんとなく話が見えてきた。

 強さ的に公安でも大駒に位置するひとみさんは独断専行が多く、他のサポートに回されがちな使いにくい駒なのだろう。

 しかし、俺に興味を持ったのか知らんが俺を引き入れようとする行為が今まで無かった変化であり、そこから協調性を持つか仕事範囲を守れるかなど基準をコントロールできないかとチームを組ませる事で測りたいという事か。

 このおっさんはその辺の審査役といった所かな?

 ――シンプルに迷惑だな。

 

「経費はそっちに請求できるって事でいいですかね」

「贅沢しなければな。弾薬等は支給しよう」

「それはどうも。泊りで監視なら服装が制服(これ)しかないんで一般的に見える服装支給されます?無いなら買って経費請求しますけど」

「サイズを言えば本日中に一式を支給しよう」

「りょーかい。歯ブラシ等は?」

「それは自分で買いに行きたまえ」

「へーい」

 

 では忙しいので。と必要事項(服のサイズ等)を聞いてからおっさんは去っていった。

 

「明日の取引まで交代で監視って事でいいのか?」

「そうなるわね」

「じゃあ泊まり込みかあ。桜ちゃんは一旦帰る?」

「残りますよ。女誑しと二人きりにしたくないですし」

「あれ?警戒されてるの俺の方?」

 

 軽くマンション内を見て回ったが物があまりないが数日過ごすには問題なさそうではある。

 家電付きマンションという形で契約してるのか電子レンジと冷蔵庫と洗濯機、あと調理器具はある。

 近くのコインランドリーと銭湯を調べたら結構距離があったのでこれは助かる。

 石鹸とかはない。あと食材もない。

 別に一部屋あるなと覗いてみたらベッドが置いてある。一人用だが。まあ十分か。

 

 そうこうしてると荷物が届いたので確認すると、着替え一式と偽名が入った警察手帳が入ってる。朝日潤と黒川圭って誰だろうか?なぜか写真入ってるしこれ使えって事かな?

 

 しかし、これだけなら変装には不十分だし適当に買いに行くか。

 

「適当に食材と歯ブラシでも買ってくるけど。なんか必要なものある?」

「私も買い出しに行きます。ひとみさんは私達が戻ってから買い出しに出て下さいね」

「そう」

 

 なんかの機械の前にずっといるから何かと思ったらあれ遠隔の盗聴器か。窓ガラスとかの震えで室内の会話を聞き取れるやつだ。

 説明足りねえなこの人。帰ったら使い方聞くか。

 

 

 

 

 桜ちゃんとは途中で別れて、変装用のものとか買い出しに行く。

 流石に男連れじゃ買い難い物もあるだろうから配慮は大事だろう。

 それにさっきのおっさんに追跡されてるし。

 

「なんか用?」

「伊藤マキリについて調べているらしいね」

 

 伊藤マキリ

 武装検事であった父を殺害した犯人だ。

 父の葬式の時に父の同僚の武装検事が悔いるように犯人として語っていたから覚えている。

 もっとも名前以外のすべてがわからないし、偽名の可能性もあるため小学生の捜査力では全くわからなかった。今考えると秘密主義の武装検事が名前を漏らしてる時点で何かおかしいのだがその時は気が付いてなかった。

 もしかしたら武装検事が葬っているから何もわからないのかと結論付けて諦めていたのだが、まさかここでその名を聞くとは。

 

「…公安も追っているのか?」

「それが目的で警察の捜査資料を漁っていたのではないのかね?」

 

 理由は違うが捜査資料を漁っていたのは事実だ。カナ姉の存在を追っていただけだが。

 

「資料漁ってたのバレてんのかよ。一応バレないように頑張ってたんだけどな…」

「君の経歴を洗ってる時に偶然ね」

 

 過去を調べられるのは想定内だが、なぜこのタイミングなのだろうか?

 そしてなぜマキリの名前が出てくるんだ?

 公安は何を知っていて俺が探している事になるんだ?

 

「んで、マキリについて教えてくれんの?今回のターゲットと関係あるとか?」

 

 適当にカマかけてみたが、首を傾げられた。

 考えすぎかな?みたいな反応だ。どういう事やねん。なら何でその話題振ったんだ?

 

「今の君に知る権利は無い。だけどヒントくらいならマキリを探している目的次第かな?」

 

 別に探してたわけじゃないが、下手な答えをしたらその事についての線が全部消える気がする。

 もっともらしくそれっぽい口実を言うか。

 

「父の死の真相を知りたいだけだ」

 

 詐欺のコツは事実だけで話をしていくことだ。

 嘘はついていないから疑われることもない。

 なぜなら事実でしかなくそこをいくら突かれても痛くも痒くもない。

 探られたら困るのは別の場所だからだ。

 

「武装検事の歴史の中でも1,2を争うとか言われ――まあアレは父の軽口かもしれんが――強さだけはかなり上位の父がぽっと出の犯罪者に負けるとは思えないからな。そんな奴いたら裏で有名になってると思うがそういうわけでもないし」

 

 特に武装検事なんて日本でも最高峰の武人が倒されたことは、大騒ぎになると思うのだがそういう情報もない。

 そうなると裏社会の人間ではなく他所のエージェントの可能性が一番高いと思う。それなら武装検事が平然と漏らしたことも他所のエージェントを動かしにくくするためだと思えばわからんでもないし。

 

「なるほどね。()()にあったらどうするんだい?」

「必要なら捕まえて話を聞くだけだな」

 

 こっちが知ってると思っているのか()()とあっさり漏らした。

 マキリはマタギ等の持つ短刀の名前の一つだから勘違いしてたがどうも女性らしい。

 カナ姉の特徴がありそうな事件を調べてて女絡みという事でそういう風に認識されたのだろうか。一つ収穫だな。

 

「君では無理だが。ま、ガンバり給え」

 

 そう言って姿を消すおっさん。

 あいつ忍者かなんかか?瞬きする間に消えたんだが……。

 

「何をどこまで知ってるんだか…」

 

 マキリの情報で言いなりにする算段でも立てるつもりなのだろうか?




この作品ではこういう設定という事にします

真面目にここら辺の情報が謎なんですよね
武装検事と言えど所属の違う公安の人間の事を容易くばらすか?
ばらすとして何故遺族に?となってしまいます
武装検事じゃないなら誰が漏らしたんだろうかと謎は深まるばかりです

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