遠山キンジの独白   作:緋色

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白雪的にはここ一年で女増やしてるので焦るでしょう(棒


武偵鍋

 アリアにせっつかれて一緒に文化祭周りつつ、戦妹(いもうと)達の出店を冷やかしたり、遅番で働く羽目になった文化祭も無事終了した夜7時。

 ここからが恐怖の『打ち上げ』タイムだ。文化祭終了日、武偵高では体育館にチームごとに集まって『武偵鍋』なる鍋を囲む慣習がある。

 

『武偵鍋』――簡単に言うと闇鍋である。シルクハットみたいな蓋に小窓が付いており、中を見ることなく具を取り出せる構造の明るい所でもできる闇鍋に、食材は『アタリ』と『ハズレ』の担当をチーム内で分け、『アタリ』は普通に鍋の食材を『ハズレ』は『通常の鍋には入れない具材』を幹事に渡すのが武偵鍋のルールである。

 そして『ハズレ』の担当はアリアとレキである。

 レキは白雪が料理教えている影響で料理はできるが――調合とか調薬みたいなそんなノリなのでレシピを1mmも変えないタイプなので不安ではあるが――最低限食えるものを入れると思う。

 アリアは何持ってくるかわからん。あいつ料理できないし。

 あと奇数人数のチームでは1人が『調味料』担当になるのだが、これは理子だ。

 面白半分に唐辛子でも突っ込むだろうが、まあそれは許容範囲だろう。辛いの強いわけではないが火鍋はギリ食えるし。

 

 体育館に着くと、各チームが武偵鍋をスタートさせておりゴザに座る生徒達の周囲で何人か泡を吹いて倒れてるのもいるな。どっかの馬鹿がシュールストレミングでも使ったらしく、それを救急箱を持った衛生科(メディカ)の生徒が診て回ってる。

 せめて普通に鍋囲わせろよ。もう帰りたくなる光景じゃねえか。サボって帰ろうかな?

 

「キーくん、こっちこっちー!」

 

 そんな俺を見つけたらしくピクニックシートに人魚姫座りした理子が、満面の笑みで俺を呼んでる。

 しゃあねえ――逝くか。

 そこには理子だけでなくピクニックシートにはアリアがあぐらをかき、レキも体育座りしており、ハイマキもお座り中。

 お前ら二人もう少し女子らしくしない?なぜか知らんけど武偵校の制服はスカート短めなんだから気を付けてくれよ……。

 

「ちょうどいま具を煮てるところなの。キンちゃんもお肉をありがとうございました」

 

 1人だけキレイに正座した幹事の白雪が、 カセットコンロの火を調節していた。

 

「闇鍋用は安い豚肉だけどな。牛肉の方は鍋入れ替えてから入れてくれ」

「キンちゃんのお肉は無駄にしないよ」

 

 よく見たら豚肉半分も入れてないな……?次の鍋(『武偵鍋』ルールでは闇鍋の食材をひとつづつ完食した後、灰汁を取る名目ですべて捨ててから普通の鍋に交換してもいい事になっている)で両方入れるのか?

 それありなのか?

 首をひねりつつも制服エプロン姿の鍋奉行白雪が自分の横にスペースを作ったので、俺がそこに座った時

 

「たーかーの一つーめー!」

 

 唐突にどこぞの未来ロボット(わさびどらえもん)みたいな声を上げた理子が小窓から、赤唐辛子の実を何本もブチ込みやがった!

 

「一応言うけど一巡後の残った具材は理子が全部食えよ?」

「キーくん。理子と一緒に地獄に落ちてくれる?」

「地獄に付き合う気はねえ」

 

 ぶーぶーうるさい理子は後で具材だけでも完食させるか。

 

「ぶー、じゃあちょっと甘くしたげる」

 

 そう言って理子が取り出したのはパルスイート(砂糖のカロリー1/3以下でありながら4倍の甘さを誇る強力な人工甘味料)を500gぐらい入れやがった。

 ちなみに一日の摂取目安は2~3gである。死ぬ気か?

 そしてなんで紫色の湯気が出てんだ、この鍋。

 

「それじゃ「白雪。もう煮えたか?腹減ったんだが」

「う、うん。もう大丈夫だと思うよ。なにがいいのか私にもわからないけど」

 

 そりゃこんな謎鍋の良し悪しなんか誰にもわからんわな。最悪具材が煮えてるなら食中毒だけはないだろう。

 

「えー。では今回は死者も出ずに文化祭を乗り越えて――」

 

 一応リーダーとして打ち上げの挨拶をするがメンバーの興味は鍋にしかないらしく

 

「よーし!じゃあアリア食べてみよー!」「し、白雪幹事が最初に食べなさいよ」「えーっと……レキちゃん食べてみたら?」「理子さんから食べるべきです」

 

 聞けよてめえら。俺一応リーダーだぞ?

 

「最後は理子で残ったの全部食え」

 

 キーくん鬼畜!という声は無視しておたまの感触を頼りに出来るだけ小さめの闇鍋の具を取れるように祈りながら掬うと……

 

「なんだこれ……?まんじゃう……?」

「ももまんよ」

 

 よくみたら見慣れたももまんだな……。汁吸ってグズグズになってるけども。そしてベージュ色の直方体まで乗っている。なんだこれ?乾パン?

 

「……散る桜、残った桜も、散る桜……」

 

 辞世の句を詠みつつ口にすると

 ももまんの餡にパルスイートの甘さを加えてチーズ味の()()()()()()()の不協和音が口の中を襲ったと思えば後から鷹の爪の辛さが襲い掛かってくる。

 

「ぐぼわぁ」

 

 辛みとは味覚の中でも例外で痛覚に作用するものであり甘みでは打ち消せないのだ……!

 だが運がよかったのかチーズ味――つまり乳製品の成分が辛さを打ち消す作用を持ってるからくそ不味い事を除けばマシに済んだぞ……!……たぶん!

 

「白雪。水」

「は、はい。どうぞ」

 

 無理矢理のみ込んだ産業廃棄物の後味が残らんように水を流し込む、

 一人一掬いは食べないといけないルールの為に俺が苦しんでる間にじゃんけんで順番を決めてた女子陣が順番に食べていく。

 

アリア――どす黒い粒粒(レキ曰くブルーベリー)

白雪――煮卵(少し辛いで済んだらしい)

レキ――鷹の爪(ノーリアクションで完食)

理子――パルスイート塗れの白滝(理子曰くおいしー!)

 

 後半二人は何で悶絶しないんだ?

 残った具を理子に食わせた後に(最後に残ってた鷹の爪とブルーベリーの山以外はおいしく食べてた)灰汁を取る名目で鍋ごと交換して普通の鍋が始まる。

 

「牛肉は一人三枚だからな~。破ったやつは一週間動物性たんぱく質抜き生活な」

「それももまん食べられないじゃない!」

「そーだそ-だ。明日ケーキバイキングに行くのに!」

「ルール守ればなんも問題ないだろうが。文句言うなら明日1日飯抜きで」

 

 今までの生活上、先に上限と罰則決めておけば争いは避けられる。

 罰則は意外と煽り合いなのかおちょくりたいのか知らないがお互いに監視し合うので結構効果的だったりする。

 

「ん、うまい」

 

 平和的に鍋をつつきつつ、

 

「コラ理子!なんであたしの皿に人参ばかり摘むのよ!」「好き嫌いすると大きくなれないよー?」「好き嫌いしてるのはあんたでしょ!」

 

 ギャーギャー騒ぐアリアを観察する。

 戦と恋について本心を隠さずに言うようになるのが初期症状らしいが、今までなら銃をぶっ放す沸点の低さも改善されているようだし前よりかは落ち着いてるようにも思える。

 

――700年ほど昔、緋緋神になった人間もおる。

   そのものは妖怪変化となり、戦を起こし

    ついには、遠山侍と星伽巫女に打ち殺されたのじゃ――

 

 やっぱあれ脅しだったのかな?

 警戒してる様だから事実ではあるんだろうけど、妖怪変化するほどには感じない。

 

「?キンちゃんどうしたの?」

「別に。こうやって飯食うのが幸せってやつなのかなって思っただけだ」

 

 ただの日常。平和の象徴なんて全員でのただの食事だろう。

 これがずっと続けばいいと願うのは――些細な願いであろうと当然のことだろう?




次回からみんな大好き妹編
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