遠山キンジの独白 作:緋色
お兄ちゃん
文化祭の後片付けは1年の仕事なので今年はこれ以上やることもない。
だが意味わからん謎の戦争に巻き込まれてる以上、ゆっくりできるとは思えない。後手に回るわけにもいかない。というかヒルダとかワトソンが横槍入れてきたが、目下の優先課題は
よく知らんが米軍とジーサードが争ってるようだし、欧州ではバチカンとリバティー・メイソンが組んで魔女共と戦ってるらしい。あと鬼とやらは玉藻がどうにかすると言っているので必然的に俺らの相手はそうなる。
諸葛とやらは
本部は日本への工作だのなんだので公安0課とはバチバチに対立してたはず。俺も
向こうの政治ゲームには興味無いが、香港と本部の意見が違うならココをカードにすれば殻金とトレードできるのではないか?
殻金も運良く手に入ったくらいのノリで別に必須という雰囲気でもなかったし。
「つーわけで姐御。ココ姉妹使えません?」
『……ロリコン?手を出すなら年上にしときなさい』
「姐御は俺の事を勘違いしてません?」
なぜか知らないがおっさんとは通話不可能だったため、とっかかりとして姐御に掛けてみたが失敗だったかな?
『あぁ。シスコンだったわね。兄とか甘えられたから陥落したのかしら。お兄ちゃんって呼んであげましょうか?』
「それも違うし、姐御のそれの方が破壊力ありますよ性癖狂わせたいんですか?」
『……』
「ガチで悩んでません?」
相変わらずよくわからない人である。
「話を戻しまして
『無理ね。理由は3つ。1つは留置して時間が経った以上解放は難しい。表向きはハイジャッカーとして逮捕されているから。2つ、今の政府は日和見で期待できない。最後に奪う事が目的だから見捨ててもおつりがくる』
?
なんか別の事話してないか姐御?
『おかげで動きにくくてしょうがないのよ。面倒なのが日本に入ってきたのに手出しできないし』
「姐御が面倒というなんてヤバいみたいですね。……忙しいんで手伝うの難しそうなんですが」
『そうね。
――切られた。
相当ストレス溜まってたみたいだが、公安0課の活動に制限がかかってるのかね?今の内閣は野党時代から0課の事敵視してたはずだし。
となるとこっちはこっちで動くしかないな。
ワトソンあたりと話付けてバスカ―ビルは
幸いなことに文化祭中に玉藻がアリアに殻金のこととかをぶっちゃけたらしく、アリアが動かせる金で買うのが現実的な流れだろう。
交渉など人任せすぎるが現実的な道筋はそれぐらいしかない気がする。
他にチャンネルあるわけでもないし動きようがないというのもあるが。
「こっち来て犯罪してくれるならいくらでも殴れるが、そうでもないとこっちから手を出すのもなあ」
裏取引は丸投げする気だったからセーフだと思うが、一応正義側として大義名分がたちにくい事はしたくない。
どうしたもんかねと。頭を掻いてもいいアイデアが出るわけもなく、ざわざわと五月蠅いピラミディオンから帰る事にする。
適度に雑音ある方が聞かれずに済むし、中華系のその手の筋の人間でもいればとっかかりになるかと思ったが……完全に外れだったな。
気晴らしに遊んでみたけど1万分はすぐ消えちゃったしな。
PiPiPiPiPiPi
マンションの警備から連絡を受けて慌てて帰ると、廊下に点々と血の汚れが続いており、ドアの前に
「何があった?」
「わかりませんが襲撃を受けたものかと。咥えている携帯に何か答えがありそうなのですが威嚇していて近づけません」
「わかった。獣医手配しといてくれ」
俺がそばに片膝をつくと、ハイマキはくわえていたレキの携帯を震えながら渡してきた。
「何があったのかわからんがあとは任せろ。お前は一刻も早く傷を治すことに専念しろ」
その言葉に安心したのか伏せるハイマキを横目にレキの携帯を開く。
初めは何だか分からなかったが、携帯は写真を撮った直後の状態になっていた。
画面下に『保存しますか?』 のポップアップがあり――そこに映っていた写真は
白銀と漆黒の、ガバメント。
抜き身の日本刀イロカネアヤメ。
マットシルバーの、レミントン・ダブル・デリンジャー。
ドラグノフ狙撃銃
アリア、白雪、理子、レキの武器が、墓標の様に無造作に積み上げられている。
「――っ!」
一瞬頭が沸騰しそうになったがハイマキが使いとしてやってきてる事を考えると4人は恐らく生きている。
そうでなきゃハイマキはレキのために命を散らすまで戦うはずだ。
相手の目的はなんだ?アリアの身柄か?
喧嘩しに行くとその場を離れつつも、どこ行けばいいのかもわからないので写真から少しでも場所などのヒントがないかと見ていると――特徴的な着信音が鳴り響き、画面は『番号非通知 テレビ電話着信中』の表示に切り替わった。
「誰だ?」
『――ようやく出やがったか。遅ぇぜ』
低い声が聞こえ、一瞬だけだが男の顔が映った。
戦化粧のようなフェイスペインティングをした顔と声で思い出したが、今のは空き地島での
「ジーサード――だったか?アメリカのヒーロー様が何の用だ」
『少しは調べてる様だな。――フォース、見ろ。コイツが遠山キンジだ』
フォース?――力?いやジー
テレビ電話の画面が揺れ,画面には携帯を渡されたと思われる人物が映った。
「……?」
赤いサングラスかゴーグルの様な
やや細めの体はマットブラックのプロテクターで部分的に装甲し、その各所に現代的なタクティカルナイフを収めている。さらに背や腰にも何本もの刀剣類を差しているようだ。
機械的・攻撃的な装備は最新科学兵器ってやつだろう。
それを纏う鋭めの目付きをした――美少女だ。歳は俺より少し下。
見たことあるような?
いや見たことあるような感覚はジーサードの方が強いのだが、俺はこの子を知っているような気がするのだ。
知識としてではなく、血が知っているそんな感覚だ。
……親戚か?白雪は血筋が近くにいるのを感じれる魔術があるとか言ってた気がするが。そういう繋がりのようなそうでもないような?
『わ。うわ。好み。写真より動画のがずっといい感じ!』
嬉しそうに画面に寄った少女は、艶やかな栗色の髪ボブカットの髪を跳ねさせて、興奮丸出しの声を上げた。
――ぞわぁ
妙に好意的な声にうぶ毛が逆立つ。
経験上、感じ取れる。今までとは違う初めて遭遇するヤバいタイプだと。
「誰だ?」
『
product number?名前がない……?
気になる事はたくさんあるがまずは確認しないといけないことがある。
「さっきの写真は何だ?何が目的だ?」
『どれがお兄ちゃんのカノジョか分かんないからみんなやっちゃった』
「……はぁ?」
『お兄ちゃんに近づく女は全殺しだよ。他にも女がいるんなら、そいつらも全殺しね。お兄ちゃんはこれから、あたしでHSSになればいいの――って、うわー言っちゃった。背徳ぅ……!言っただけでヒスっちゃいそう……!やばい、これやばいって!』
ヒステリア・サヴァン・シンドローム(略してHSS)がどういうものか知られているのには驚かない。
医学的名称がある時点で論文みたいなのが存在するからだ。問題はその後――ヒスっちゃいそう?まるで同じ体質を持ってるかのような――
画面の中がまた動き、ジーサードが再び出てきて俺を見て舌打ちする。
『何度見ても信じられねぇな。これがシャーロックをやりやがったのか』
「殴っただけで逃げられてるからその評価は間違いだ」
『バーカ。それだけでもあり得ねえんだよ。――来い。戦え』
答えたジーサードは、ぐるっとテレビ電話のインカメラの向きを変えた。
劇場らしいその場の無人の客席が映り、さっき喋っていたジーフォースという少女のウィンクが映り、次に映った、ライトに照らされた舞台に――血塗れのアリア、白雪、理子、レキの順にさっきの武器の様に積み上げられていた。
よし。殺そう。
どうすっかなマジで