遠山キンジの独白 作:緋色
レキの携帯でテレビ電話を録画できたが相手の細かい場所はわからない。
超不愉快だが一人で突っ込む前に場所がわからんので協力者が必要だ。
今日は璃々粒子が濃いため魔術が不調気味のはず。同行するパートナーとして
素で戦闘力が高い奴を連れていきたいが――こういう時に二つ返事で協力してくれそうな一石は今海外で連絡は取れない。
他に戦闘力あるやつ――というか救護能力もいるなぁ……。
……力借りたくねえけど仕方ないか。邪魔にはならんだろ多分。
『テレビ電話の通話音声から、場所が特定できました。 品川区港東1-7-3、 ジオ品川7区、コリエンテ・ビル7階の屋外劇場・テアトロ・アクアと思われます』
ラジオのニュース放送と聞き間違えるような、キレイな声が車内に響く。縁あってよく力を貸してくれている通信科2年の中空知美咲だ。
ジャンヌに解析を頼んだのだがこういう分野は中空知の方が得意なのか中空知が分析し結果を伝えてくる。
「―――ここだけはラッキーだったな、ビルまで車で直行できるよ」
伝えられた情報を、エルがカーナビに入力する。
戦闘能力上不安はあるが、一応バスカービルの外注
場所はジオフロント品川。略してジオ品川
ジオフロント
地上の建造物が密集した過密都市において、地価の高騰や環境問題等に対応するため、地下空間の有効利用を図ったバブル景気時代に行われた雑な都市改造計画だ。
ジオ品川は着工されたが、その後バブルが弾けて工費が捻出できなくなり――大地を逆円錐形に大きく掘った状態で長らく放置されていた。昔の学園島や今の空き地島と同じように、第三セクターの破綻によって出来た――巨大な穴だ。
後年、その内側に再開発と称して半ばムリヤリに町が造られたのだが
「ブルックリンみたいな所だな。ニューヨーク武偵高にいた頃を思い出すよ」
車の窓から周囲を見るワトソンが言う通り――ここは空き地、廃ビル、掘削工事を中断された地下道などが多い土地柄、都内屈指の治安の悪い地区となっている。
今通ってる螺旋状の車道を下りる間も、いかがわしい店の看板やネオンサインが視界のあちこちで誘蛾灯のようにギラギラ光っていた。そしてその半分ほどが日本語の看板ではない。
それでもマシな方で大通りから外れると勝手な増改築解体を繰り返された結果、地図が役に立たない地域となっており複雑な上に逃げやすい構造の迷宮はアジアのあちこちから無法者が引っ越してきてる。モグラ叩きと呼ばれるガサ入れが何度も行われているが効果の発揮してない闇鍋である。
……
ここはハッカーや非合法無線の巣窟でもあるので、電波台風とアダ名される違法電波も渦巻いている。つまりジャンヌ・中空知との無線通信も雑音が酷くなり、中空知に聞かせられない会話もできるというわけだ。
「とりあえずの方針としてはジーサードとジーフォースは俺が相手する。その間にエルが4人攫う――そして二人を俺が倒す――で、いいだろう」
「君が送ってきた戦闘を見る限りフォースは
ベルセ気味の雑な作戦にワトソンは焦ってると感じたのか冷静になるように促してくる。
「必要ならな。最優先は救助で俺には無理だ。だが十数秒は二人とも抑えるのは不可能ではない。直感だが先にジーサード倒せば降伏するだろ」
「なぜ襲われたのかわかるか?」
「知らん。最初は色金絡みかと思ったが映像的に俺狙いっぽい」
「君が何か不義理したとかかい?」
「ジーサードは空き地島で会ったのが初でフォースに至っては存在すら知らんわ」
下水やゴミの処理も行き届かないらしく、不衛生な道を進んでいくと――
「――ここだ、この7階だよ」
サーチライトで照らされて無駄に目立つ贅を凝らしたような派手な外装のビルの前に車を止める。
「そんじゃ行くか。見た所違法建築だからビルぶっ壊しても問題なさそうだしな」
「トオヤマ。――そのダイナマイトは何処から持ってきた」
「え?ヒルダを木端微塵にするために用意してたけど結局使わなかったし……。ジーサードなら死んでもいいだろ」
「それはボクが預かっておく」
「なんで?」
「 預 か る か ら 」
「ああ、自分の手で爆破したいの?」
「それでいいから渡せ」
エルはなに考えてるんだと小声で言いながら手際よく解体して、車のトランクにしまい込んだ。
使わんのかい。渡し損じゃねえか。
休館日らしく閉ざされたビルに侵入し、屋外劇場を目指す。
罠の類は見当たらない。相当な自信家か。そもそも準備する時間がなかったのか。
「ここだ入るぞ」
ワトソンの囁きに、軽く頷き音をたてないように重いドアをそっと開く。
周囲のビルやネオンサインの明かりだけが光源となっている薄暗い屋外劇場――の舞台上にいた。
「白雪、レキ、理子、アリア……!」
「トオヤマ、慌てるな。ボクが診る。キミは周囲を警戒しろ」
舞台へ上がり、ワトソンが診始めたので周囲を確認すると
視線に気が付いた。
ジジジッ
微かな電子音と共に客席の最前列から2列目の中央に姿を現す。
「前にも見たな――
「ロスアラモスの試作品だ。完全じゃねえけどな」
「そりゃ知らねえわけだ」
ジーサードはブーツのようなプロテクターをした足を前の座席の背に乗せて座っていた。
……変な体勢で凄くダサいな。
「気をつけろトオヤマっ……!近くにもう1人いるかもしれないッ」
「上に女がいる。他にはいないっぽいが――まあ警戒は怠るな」
チラッと上を見ると、舞台上に渡された照明用レールの上にマットブラックに塗装されたプロテクターのあちこちに、蛍光ブルーの光が見える。武装の光かな?
「お兄ちゃんの女なんて背徳ぅ」
ふざけてるのか本気なのか湿っぽい声は背筋に嫌な汗が上る。
ジーフォースだ。
「キ、キミたちは何者だ。ジーサード、キミは
「喜べ。俺たちも、
「嬉しくねぇなおい」
質問には答えないジーサードは――何というか俺に似ている。なんか朝歯磨きするときに見たような微妙な感覚だ。
そしてジーフォースは俺に熱い視線を落としてネコの耳みたいなセンサーをきゅい、きゅいと動かし
「……やっぱり、サイコー…背徳ぅ……」
もう俺しか見えてないような集中っぷりで、ジーフォースは俺の顔に両目を向けている。
「あんま言いたくないけど躾を疎かにし過ぎじゃねえか?」
蕩けた笑みのジーフォースは俺以外目に入ってないようである。一応ワトソンが警戒しているのにいつでも反応出来るようではあるが――それ抜きでも見過ぎである。
「自覚はある。フォース、ヴァイザーを外せ。遠山キンジの技は多分、俺に似てる。記録に残すな」
技が似てる……?うちの一族でもない限り体質前提の体術が似るわけがないが――めんどくせえし叩き潰してから聞けばいいか。
フォースが赤いサングラスのような
「なら俺が誰にも似てないことを証明してやるよ」
「待て!トオヤマ!不用意に仕掛けるな!?」
「悪いがエル。俺はキレてんだよ」
取り出したのはスクラマサクス。ロスアラモス――アメリカの最先端研究を仕込んでるなら最新の防具はDEの弾すら防げる可能性もある。なら衝撃波で全身叩いて
「眼・耳・鼻・舌・身・意――人の六根に好・悪・平――また各々に浄と染!一世三十六煩悩」
一足跳びでも届かない刀を構えたことに怪訝な顔をしたジーサードだったが何かに気が付いたのか立ち上がるが――もう遅い!
反射神経は爪先で時速100km、膝で200㎞、腰と背で300km、肩と肘で500km、手首で更に100km、それを同時に動かし刀の先は音速を越えた
「
「
バシイイイイィィィィ
俺とジーサードの中間で爆ぜたように、いや爆ぜたんだ。
「
「おいおい驚くなよ!言っただろ技が似てるってよ!」
ひゃははと笑うジーサードにイラっとしたので言い返す。
「似てるじゃなくて今のは物真似だろうが。フォームも同じとか偶然なわけがあるかどこで知りやがった」
「――フンッ。知らねえのか?日本で新型爆弾をアピールするとかいう
「
準敵対回避武偵ってなに!?というかあの
なぜかアングラで有名になってるキンちゃん