遠山キンジの独白 作:緋色
結局の所、アリア達の怪我は大したことは無かったそうだ。
それでも念のため1週間ほど入院することになったわけだが――これはワトソンの警戒が大きそうである。あんなんでも武偵校附属病院は報復対策や脱走対策で防衛力の高い作りになってるらしいし。割とバラバラに行動するバスカービルメンバーが再度襲撃されにくくしてるのだろう。
なんかノリと流れで組んだから個人プレイが何となく集まっている感じだし、連携はあまりなってないんだよな。一番個人プレイしてる俺が言えることではないけど。
――遅いかもしれんが今度連携増やす訓練でもするか?
アンガスは病院まで運んだ後はすぐに立ち去り、肝心のジーフォースは俺の部屋に泊まる準備があるとかでどこかに消えた。
居場所がつかめないよりかはマシだろうと鍵渡しておいたからホントに来るのだろうけど。夜には来なかったな。
「好都合っちゃ好都合だな」
ジャンヌから届いたメールには『ジーサード・ジーフォースの一件について
『ハロウィンだしハロウィンらしい恰好しろ』という
「コスプレしないで歩いてたら蘭豹に見つかってな。そのまま
「
「安かったもんで」
ハーミットとかいうフード被っただけの俺にケチ付けてきたのは黒とんがり帽子に星の付いたステッキという魔女のコスプレしたジャンヌ。雪の結晶のキラキラシールとか隠す気あんのかお前?
「おう遠山の災難じゃったな」
「いつもの事だな。――隠さず歩いてよかったのか?」
「セーコーナデキじゃと民草は誉めておったぞ」
「そりゃ本物だからだろ」
そういう玉藻は短めの和服に付け髭というコスプレ要素的には付け髭だけである。
本物の狐耳と尻尾丸出しな分そこの違和感がパナイ。ハロウィンとしては正しいかもしれんがな。魔物側が仮装しないのは。
「トオヤマ。ボクも分からないかもしれないけどボクだよ」
「それ本物か……」
「くりぬくのに苦労したよ」
間違った方面に頑張ったらしいワトソンは大きなカボチャの中身を刳りぬいてマスクにしたもの――多分アメリカ式ジャック・オー・ランタン――頭にすっぽりかぶっている。首から下は白い雨ガッパみたいなのを着てるから、確かに誰だか全く分からんな。
『まあ皆さん、禍々しいでもかわいらしいですよ。ふふっ』
ふわふわした声が聞こえてきたので、テーブルに置かれたノートPCを見るとSkypeか何かで映像通信をしているらしいメーヤが映っていた。
シスター服もこういう場で見るとコスプレにしか見えないな。口にはしないけど。
「では少々性急ではあるが
レキってそういう扱いなんだ?
白雪は星伽からのじゃないって事は玉藻個人が参加してる扱いだからか?
理子はどういう扱いなんだろうか一番立ち位置が読めん。
「昨日、中で帰りながらジーフォースから聞き出したんだが――ヤツらがジオ品川を拠点にしていたのは、単にレキをそこで発見したからだそうだ。レキを含め、アリアたちは皆襲われるまで一切ジーサードたちにコンタクトされていない。つまり全て奇襲だ」
「いくら寡兵とはいえ、許し難いな。不意打ちとは」
人に化けて騙し討ちしてきたやつだけはそれ言っちゃダメじゃねえか?自己批判か?
「奇襲って事より発見したから襲ったって事は目的はあってもノープラン――実力に自信があるんだろうな」
ざっくり考えでは単純戦闘で勝てそうなのは俺と――玉藻ぐらいか。
というか玉藻が飛びぬけて強い。殺し合いになったら確実に俺が死ぬくらい。50回に1回ぐらいはギリ相打ちに持ち込めるか否かといった所である。あくまで直感的強さがそれぐらいなので実際の差はどれぐらいかは不明だが。
「んで、どうする気だ?俺以外太刀打ち出来そうになさそうだが。ノープランならこっちでサードの場所特定して殴りに行くけど」
「仲間をやられて熱くなる気持ちは分かるがの。あまり儂を失望させるでない、小童。では遠山の。お主、勝てるのか?」
「タイマンなら。ジーサードの兵一人一人潰していけば勝機はあるだろ。囲まれて逃げ切れるかは賭けだがな。問題はジーサードの動向が全くわからん事ぐらいだが……まあ何とかなるだろ」
「お主こそのーぷらんでないか」
「うちのチームは機能停止してるし、璃々粒子が濃いとかで主戦力の玉藻とジャンヌは戦えんし。メーヤさんは欧州で手一杯だろ?エr――ワトソンは普通にフォースに勝てねえだろ?」
「勝てないだろうね。正面からは」
含みを見せるエルだが奇襲しても無理だと思うがね。軍人崩れ――しかも実戦経験豊富のようだし。
となると戦えるのは俺だけか。魔術ならワンチャンありそうなメンツが動けないのは偶然じゃないんだろうな。明らかに狙い撃たれてる。――そこまでして何が目的なのかがさっぱりわからないな。緋弾目的ならさっさと攫えばいいものを。ジーフォースのアリアへの雑な扱い見るに違いそうである。
「じゃあなんか策あんのかよ?」
「まずはジーフォース、いずれはジーサードを――『
「言いたいことはわからんでもないが――正直どうでもいいから殻金の方に注力してえんだが?適当に手打ちして終わりで良くない?」
「お主以外戦えないのであれば向こうが手打ちする理由はないの」
「そりゃそうだけど」
なんかすっげーいやな予感がする。
「手打ちにしても取り込みにしても対話だけではない。金銀財宝、権力、異性、ありとあらゆる手が使われてきた。かつてはそれを目当てに中立を謳う者もいたでの。無礼千万な諺ではあるが『狐獲るなら油揚げで』とも言う。ジーフォースの好むものが分かれば、それをエサに師団の兵にできるやもしれん」
「……ふーん。そういうの無理だし任せた玉藻」
「遠山の」
「じゃあワトソンか?そういうの得意だろ」
こっちを孤立させようといろいろやっていたし適任だろう。
「その、えっとだね……ジーフォースという女は……昨日の車でも聞いているこっちが恥ずかしくなるほどに…… キミと会えた事が嬉しくて仕方ないと語っていたんだ。つまり、どうも、キミに気を許している雰囲気がある」
「それは多分気のせいだ」
「だからその――ボクが言いたいのはその、つまり、ロメオだ」
ロメオとは武偵用語の一つで、男版の、ハニー・トラップ。
正攻法では倒せない女のターゲットに対し、その女に好かれそうな男が近づいて色じかけで、寝返らせたり、機密を喋らせたりする手法の隠語だ。
しかしこれはハニートラップより難易度が高く、ロミオ化みたいに気のない相手なら普通に通報されて逮捕されることもある。東京武偵高には専門学科がない。確か、学科があるのは世界でもベルリンとバンコクの武偵高だけだったか。
「人にハニトラさせようとしてんじゃねえよ。同性愛者にしかやった事ねーよ」
クロメーテルでだけど。相手同性愛者というか異性嫌悪者だった気もするが。カナの失踪調べる時は好意につけ込んだ感じなのでカウントはしない。
しかし、その言葉でなぜか女性陣の視線がエルに集まる。
「最近怪しいと思っていたが――まさか」
「ふむ?――うむ?」
『まあ。……トオヤマさんは女性好きと聞いておりましたが』
「ちょっと待て!ボクは同性愛者じゃないぞ!?ハニトラも――されてはない」
「なんだそのちょっと心当たりあるような間は」
少し前に騙し討ちでやらされた女の子らしくのリハビリウンタラの事でもよぎったのか?
「隠してないから言うけど俺の好みは年上の姉だからな。それと付き合うか否かは全く関係ないが」
「!?!?!?」
なぜかジャンヌがマジか!?とばかりに目を白黒させてるな。
何を混乱してるんだこいつ。
「話を戻すとそれ俺には向いてないだろ」
「そうでもないだろう。外見上とてもそうとは思えないが、実績上キミは得意だろう。女子をたらしこむのが。アリアを始め、白雪とか、理子とか、レキとか、中空知とか、その他とか」
「アリアと中空知に関しては全く心当たりがないんだが。あと白雪は逆に押しかけだ」
しれっとこいつ俺の外見ディスりやがったな?
『まあ……そんなに。さすがはカナさんの弟さんですね。とても人気があるようで』
「その納得のされ方だけは滅茶苦茶嫌なんだが」
クロメーテルでモテてる事に納得されるのは兎も角素がカナ姉の弟だからは少々納得したくない。
「では遠山の。任せたぞ」
「嫌だけど。特に人に言われてやるのが」
「ジーフォースと仲睦まじくするのじゃ。可愛がってやり、仲間に取り込めるようにせよ。 師団の興亡この一作戦にあり。奮励努力するのじゃぞ」
もう済んだとばかりのメロンソーダをすする玉藻に反論しようとしたところで
『トオヤマさん。私も夕方――あっ、日本では昨日の深夜になりますがジーフォースによる襲撃の映像を拝見しました。接近するにも大変危険な相手であるものと思います。そこで
「支援物資……?」
『はい。倒すまではできなくても、身を守る程度の御役には立てるかと』
「よかったな遠山の」「頑張れ遠山。後で経過を詳しく報告するのだぞ。何をどこまでしたとか」「トオヤマ、後は任せた。ボクはアリアたちを看護する」
畳みかけるようなメーヤ、玉藻、ジャンヌ、エルの小芝居っぽい様子を見るにこいつら俺が来る前に、だいたいの打ち合わせをしてやがったな。
「やりゃあいいんだろやりゃあ。全部俺任せになるのは想像できてたしな役立たずどもめ」
何か後ろでぎゃあぎゃあ騒いでいるが無視して帰る。このままお見舞い行くか。
「最近怪しいと思っていたが――まさか」(遠山がワトソンに手を出したの噂を知ってる)
「ふむ?――うむ?」(ワトソンがアリアに求婚してたと聞いている)
『まあ。……トオヤマさんは女性好きと聞いておりましたが』(カナ姉の惚気を聞いている)
……そういやだれがどこまで知ってるんだろ?
妹
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姉桜妹Ⅳ
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姉Ⅳ妹桜
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どっちも妹