遠山キンジの独白   作:緋色

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病院の怪異

 病院の廊下で動くお盆を見た。金属製だからトレーだっけか?違いがよくわからんが。

 地面スレスレを移動するお盆だ。

 青銅製と思われる材質で茨や蜘蛛の彫刻で飾られている盆のサイズより影のサイズが明らかに大きいため、そういう怪異かとどう討伐するか悩んだがよくよく見るとお盆にはトカゲか何かの串焼き?とイチゴ牛乳とポッキーととんがりコーンが載っている。イチゴ牛乳とポッキーととんがりコーンは理子の好物なので、この謎の怪異に見当がついた。

 

「何してんだヒルダ?怪しい動きにしか見えないが」

 

 ビクッと不自然に止まった。

 盆の方向が180度変わるとこっちを認識したのか慌てたように元の方向に戻る。クルクル動く様子から前方しか認識できないらしい。影?に潜ってるのに周りが認識してるのも謎だが結構不便そうだなそれ。

 階段の方へ逃げるお盆を追いかけると――段差を越えられないのか影から出たばかりのヒルダと鉢合わせた。

 階段を一段だけ下りた所に突っ立っているヒルダはナース服を着て壁に背をつけ、駝鳥の羽根で作った扇を広げて顔を隠してる。お盆はピンヒールの足元に置いたままだ。

 

「……おいヒルダ。クッソ怪しい動きしてるけど何してんだ?面倒事増やすなら先んじて処理するぞ?」

 

 ただでさえジーサード関連で面倒臭いのに後ろから刺されてはたまらない。

 もっともその心配はないか?

 終盤はあまり記憶に無いが瀕死の重傷を負って、この武偵病院に搬送されたヒルダは一時は出血多量で危篤状態だったが、それを理子が輸血して助けてやっている。

 このお盆に理子の好物を載せてコソコソ運んでいたところを見るに今度は理子が入院したから、要は、お礼をしてるって事か?

 でも変なトカゲか何かの串焼きみたいなのもあるし……呪いかもしれん。

 

「理子に持ってきたのか?隠れて?」

 

 と盆を指すと、ヒルダは今それがバレたと思ったらしく―――

 かあああぁぁぁ……っ!と赤くなった。色白だからわかりやすいぐらいピンク色の顔になったな。……マジでただのお見舞いだったのだろうか?でもクソ怪しい変なトカゲか何かの串焼きみたいなのもあるし……。

 

「ち、ちが!?」

「(細工されてない)市販品のこっちは兎も角、なんだこの……なんだ?トカゲ?呪いの品か?」

「イモリの黒焼きよ!竜悴公姫(ドラキュリア)の下賜を何と心得るか!」

 

 棺桶とか渡してきて死ねと言われた記憶しかねえけど。そういやあの棺桶放置してたけどどうなったんだろうか?どうでもいいか。

 

 バンッ!

 

「ひゃう!?」

 

 壁に手をつき、反対側の手でヒルダの顎から首に手をかけ視線を無理矢理合わせさせる。首筋の脈拍を測る体制が整った所で質問する。

 

「お前理子に毒のイヤリングだかなんか渡してただろ。だから聞いている。()()()()()()?」

「ぶ、無礼m「俺の血でも飲ませようか?」――万能薬よ!食せば人の怪我も治りやすくなる!」

 

 脈拍と視線のブレから考えるにたぶん真実か。

 

「……理子に礼がしたいならそういう怪しい動きしないで普通に行けや」

「それはいずれ、ね」

 

 歯切れの悪いヒルダにこれ以上詰めても逆切れしてきそうな気がするな。害はないみたいだし無罪放免でいいか。

 ……それ決めるのは俺じゃないか。

 

「だ、そうだけど?」

「あたしに振るなキンジ」

 

 振り返ると階段から死角になる所に立っていた理子が姿を現す。

 背にウィンチェスターM1887(ショットガン)を革ベルトで肩がけしている。

 

「前みたいな脅迫とかなら首突っ込むが――仲直りしたいんだったら俺がどうにかする話じゃねえしな」

「バカ言うな。いっぺんあたしを殺してるんだ。そう簡単に許せるかよ」

 

 じゃあなんで献血してまで助けたんだよ。という言葉は飲み込む。流石に言うのはどうかと思うし。

 ヒルダはずーんと沈み込み……ホントに影へと沈んでいった。

 ……。

 

「一応、薬なのは事実っぽいぞ」

「だろうな。ふん」

 

 鼻を鳴らした理子はお盆から掻っ攫って、イモリの黒焼きとやらを食べイチゴ牛乳で流し込んだ。

 

「貰えるもんは貰ってく。……キーくんA病棟303号室女子部屋にみんな待ってるから来てね!()()()()()。くふふふふ!」

 

 ちらっと影を見る様にそう言って理子は去って行った。

 いつもの調子に戻ったらようだがあの笑い方から考えると碌でもないことが待ってそうな気がする。

 注意しとくか。

 

「――毒とかの心配してねえようだし信用はされてるみてーだな」

「トオヤマ。下手な慰めは無用よ」

 

 声をかけるといつの間にか影から出ていたヒルダがいた。

 

「声震えてっぞ。まあ喉元過ぎれば熱さを忘れる、雨晴れて笠を忘る――一過性じゃないって示さんと無理だろうな。まあ色々あったんだ。時間かかることは覚悟しとけ」

 

 なんでこいつを慰めなきゃならんのだか。懐柔できれば便利な戦力になりそうではあるがしばらく見定める必要がありそうだな……。

 なんで面倒なタスクばかり増えるのかねえ……。

 

「――ところでバスカービルは随分とやられたようね」

「お前ん時ほどじゃない」

 

 流石の俺も死にかけたし。2人が死にかけたのと、4名が一週間入院だとどちらの方が損害がデカいのだろうか?

 

「相手が誰であろうと私を破ったお前たちが敗れることは私の不名誉にも繋がるわ。トオヤマ。お前、下手人をきっちり処理するのよ?」

「お前の名誉なんぞ知らんが。頭とはケリ付けるさ。やられっぱなしは性に合わんし。俺以外手に負えそうにないしな」

「今日は璃璃色金のせいで不調だけれども、しばらくして調子が戻った暁には――理子が傷つけられそうになったら私を呼びなさい。その敵を串刺しの剥製にしてやるから」

「殺すなっての」

「トオヤマの下にいる間はそうしてあげるわ。トオヤマ(バケモノ)を怒らせる気はないし」

 

 なんか果てしなく失礼な事を考えられてる気がする。

 

日没から日の出まで(From dusk until dawn)――夜は私に任せなさい。お前のことも、まあ気が向いたら助けてあげなくもなくてよ」

「そりゃ困るな。気が向きやすくなるように頑張るよ」

 

 ツンデレ的な二重否定文を言い残して去っていったヒルダ――しばらく使えないならジーサードあたりでは期待できないかな。

 そう考えつつ、隠し撮りしてたヒルダのツンデレ音声を理子にメールしてからA病棟303号へと向かう。

 さーて師団会議(ディーン・カンフ)の方針どう伝えようかなあ。協力してくれなさそうな気がするが――まあ何とかなるか




何とかならなそう

(なんでループしたんだ?コピペしてないところがコピペされてて怖い)

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