遠山キンジの独白 作:緋色
L・ワトソンがジーサードの情報を調べてきたそうだ。
二人っきりになるのは兎も角なんで人気のない美術準備室に女子制服用意しているのだろうか?『リハビリ』とか言って女子であることをカミングアウトする訓練でもする気なのだろうか?
前回面倒臭かったからCVRのエルのファン嗾けたのに懲りてないんか。
「キミが預かっているジーフォースの方はともかく、ジーサードの方は正体がほぼ判明したんだ」
「ジーフォースじゃなくて かなめ な?で、正体?」
「……キミは彼女に入れ込み過ぎじゃないか?……睨まないでくれ。ジーサードはボクに聞き覚えがあったんだ。それでリバティー・メイソンのロンドン本部、グランド・ロッジに問い合わせてみた。そうしたらアメリカ支部の『
英国貴族には名誉のため表社会における成功だけではなく…世間に知られる事なく無償で秘密裏に世の中を救う活動が求められるからそれを実践するための組織がリバティー・メイソンとか言ってませんでした?
なんで勧誘してんだよとツッコミは口に出さずにエルが見せてきた写真を見ると――
「バラク・オバマ?……と警護しているのがジーサードか」
アメリカ合衆国、第44代大統領バラク・オバマ。
ハワイ出身のアフリカ系有色人種としてアメリカ合衆国大統領になった男だ。
大統領に雇われるとは――コネと実力があるということか。
「アイツは元々、アメリカの武偵だったんだ。それもSランクより上のRランクに格付けされていた」
「R?」
「知らないのかい? 日本人も1人いるから知ってるものと思ってたのに。いるんだよ。世界に7人だけ『R』にランク付けされた武偵が。たいてい各国の首脳や王族が自分の専属武偵にしてしまうからRoyalの頭文字を取ってRランクと呼ばれている」
専属武偵ねぇ。武偵庁所属の公務員武偵(一応兄さんがこれに当たる)もいるしおかしくないんだろうが。公安0課や武装検事みたいな公僕と揉めそうなもんだが――どうでもいいか。
「Sランクとは特殊部隊1個中隊を相手にできるという評価だが、Rランクは1個大隊と戦えるという評価になるんだ。極小さな国なら1人で制圧でき――」
「そこら辺の説明はいらん。興味もないしな。気になるのは生まれとか経歴の方だ」
そもそも戦闘系以外もSランクいるのにその評価は何の意味があるんだ。
エルは英文の資料をめくる。
「詳細は不明だが、ジーサードは
……人工的な天才ねえ。なーんか読めてきたようなそうでもないような。
「なんだ?
「宇宙アニメだったかい?多分近い――かな?イ・ウー――二次大戦後、潜水艦としてのイ・ウーは逃亡したが、その思想は計画書と共にドイツから連合国に渡ったんだよ。それが今なお、アメリカで研究されているんだ。彼らは『ロスアラモス・エリート』と銘打って科学的な手法で天才を作ろうとしてる。遺伝子操作は早々に失敗して掛け合わせることにしたらしい」
ロスアラモス――かなめが使ってたのがそれ関係だったな。
「だけど、ロスアラモス・エリートの成功例は少ない。というかゼロらしい」
「ゼロ?サードは成功例じゃないのか?」
「初めは成功とされたんだ。IQは290。ロスアラモスの研究機関では教員を生徒にしてしまうほどの学習能力を見せたそうだよ。運動神経も超人的で、非公式記録とはいえオリンピック記録を幾つも塗り替えたらしい。それも十代前半で」
「運動能力に関してはそれぐらい俺もしてるわ。特異体質排除したスポーツ大会の記録更新してるとか何の自慢にもならんな」
まあ基準にはなるわけだが。
前にスポーツとかで稼げないかと調べたことはあるので知った事なのだが。乗能力者や超能力者――所謂特異体質を持った人間はいろいろ理由を付けて参加できない決まりになっている。
特に強化系は事故るとか何とかで。事前の検査で弾かれるらしい。――一定以上のスポーツ大会で病院の診断書がいるとかこの世界変なところで律儀なんだよな。いや理由はわからんでもないけど
その結果ろくでもない道に進む超人が結構いたりする。適度に抑止力――同レベルがいる環境じゃないと孤立するからな。
話を聞く限りサードもその口だろう。周りが自分以下で実験動物としか見てないとかそらそうなる。
「ある時――サードは急に
「それおかしくなったんじゃなくてキレただけじゃねえか?人間味とか考慮しないから。……かなめも一緒に脱走したって所か」
かなめが俺に異常執着してる理由もその辺か。
「そうらしい。……育成中だったらしく社会的な記録はなかった。その後二人にはアメリカ政府から一流の暗殺者たちが差し向けられ――ほとんどはサードの居場所すら掴めず、辿り着いた何人かは一人も帰還しなかったらしい」
「ハリウッドが喜んでネタにしそうだな」
「それは無理だろうね。キミもそういう所があるが彼もある種のカリスマで全員サードの手下になったなんて脚本家はクビだよ」
「むしろどっかで見た気がするが。あと俺にカリスマはねえと思う。まあいいや。狙いは俺かねえ」
なんか経歴的にアリアに興味なさそうだな。あるなら俺無視して攫うだろうし。
何が狙いなのかねえ?体質の情報か、技か。かなめの件でインブリードでも考えているのか。最悪――八つ当たりかもしれんな。面倒くせぇ。
可能性が高いのは對卒――ヒステリアモード発生時に脳卒中に似た症状が出やすいから対処法を知りたがっているとかだな。あれ二人に一人くらいの確率で出るとか爺ちゃんも言ってたし。
「他にはなんかあるか?」
「目下、調査中だよ」
そんなもんか。
「情報共有は以上だ。というわけでリハビリに移ってもいいかい?」
「医者の不養生って知ってるか?」
「ボクには当てはまらないね。最適なパフォーマンスの為に健康そのものさ」
エルの自己診断治療が信用できないって話なんだが。まあいいや。
なんかウキウキと
面倒くさすぎるので隙を見て逃げようと隠れて着替えの準備してるエルに気付かれないように――と動こうとした所で微かに聞こえる歯軋りのような音からタイムアップを悟る。
一応桜ちゃん達とやらせてる課題で監視されない時間を無理に作ったんだが逆に察せられたか……。
エルは――なんか知らんけど隠してるんだしバレないようにした方がいいだろう。
「エル」
「ひゃわ!?急に耳元で囁かないでくれ。きゅ急じゃなければボクも――」
「何が言いたいのか知らんが――覗かれてるから諦めな」
な!?とぴょんと飛び上がるエルは無視して鍵穴から覗いてる範囲から見えなくなるように視界から外れて――
「なに覗いてるんだ
「にゃ……にゃー」
「悪足掻きだな」
そのまま扉を開放――ドサササ――したらなぜか妹3人が揃っていた。
「えーと?かなめに桜ちゃんに風魔?何してたんだお前ら?」
流石に想定外だったので素で首をかしげると。
「えーっと。先輩の指令を達成するために集めた情報と今後の作戦を立てる事になりまして――かなめさんが急に用事ができたと飛び出したのを追いかけた先で先輩が逢引きしていると――」
盗聴器等は仕掛けられてなかったはずだが――遠距離傍聴でもされていたのかな?
「あ、逢引きはしてない!?」
「話がややこしくなるからエルはちょっと黙っててくれ」
「え!?ワトソン先輩!?先輩の事だからてっきり女子かと」
「どういう意味だおい」
「
間違ってもいないのが腹立つが、とりあえず桜ちゃんのほっぺを抓った後に俺が見えないところで凄い目つきをしてたかなめの方を向くとびっくりするくらいの早業でいつもの表情に戻っていた。
……この百面相遺伝なのかな?
そのまま「主犯にはお仕置きだー」とゆるくかなめのほっぺをつまんで伸ばしたりしつつ
「ちょっと情報収集してただけだ」
「また妹君についてでござるか?」
「……風魔。Aランクになれないのはそういうとこだぞ?「う、精進するでござる」ちょっとRランク武偵?を調べてただけだ。他意しかないから安心しろ」
「先輩それは安心できません。……Rランク?」
「Royal専属武偵だよ。まあSランクより上とでも思っとけばいい。武検よりなるの難しいだろうな。少なくとも俺じゃ無理だねえ」
目敏く陽菜にはワトソンの女子制服見られてるけど、本人はよくわかってないのか軽く首傾げるだけで気にしてないようだな。助かったなエル。
「目指すんですか?」
「いんや?一応目指してるの武検だしな。将来のこと考えると月給取りがいいやろ」
仕事でもないのに戦うとか損でしかないからな。自分の得にならん事でも仕事扱いにはなりそうだし。
「あ、そうだ。かなめ帰ったら大事な話があるから6時には帰ってこいよ?」
女子がなるのかは知らんけど對卒の事は伝えて――ジーサードにも一応伝わるようにしといた方がいいだろう。
「おまえらにこいつ任せてるんだからしっかり姉しろよ?」
「ふぁい」「「はい」」
あ、手を放すの忘れてた。
さーて……かなめイベントどうしようかな?
全然そういう感じになるフラグがねえ