遠山キンジの独白   作:緋色

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動物の撫でろアピールってかわいいですよね


Arcanum Duo

 お兄ちゃんの部屋。

 お兄ちゃんほどのお兄ちゃんならもっと広くて防衛能力(セキュリティ)の高い部屋でもいいと思うけど、お兄ちゃんは「起きて半畳寝て一畳。天下とっても二合半」って一人で暮らすならもっと狭いほうがいいと考えて引っ越しも検討していたみたいだけど。あの女共が頻繁に来るからここに落ち着いたって経緯があるみたい。

 そこだけは感謝しないとね。寝るだけの部屋に移動していたら容量(キャパ)の問題でお兄ちゃんとの愛の巣にならなかったかもだし。

 お兄ちゃんは食後に大事な話があるって言ってたけど。――ご飯食べた後にお風呂で身体洗ってこいってそういう事だよね!?

 背徳ぅ……♡

 

「何を考えてんのか知らんが……いい子にして待ってな」

「はーい♡」

 

 お兄ちゃんとお揃いのKIMONO(お兄ちゃん曰く甚平。裸Yシャツより好きとの事)に身を包んで自室にしている和室で準備をする。

 風魔陽菜曰くYOBAIという文化で夫は妻の部屋に赴いて行うのが一般的な事らしい。なので念入りにムードが壊れないように科学剣などの武器や部屋の雰囲気にあわない物を隠しきる。

 

「和室のフォーマットに合わせて綺麗に整える?適度に散らして妹との背徳感を演出すべき?」

 

 お兄ちゃんはどっちが好みか?整頓されてる事より少し雑に見えた方がいいかもしれない?

 ――トットッ

 日常的に足音を消すのが癖となっている者特有の微かな足音にそそくさと用意を終わらせる。

 

「かなめ?部屋にいるのか?」

「準備できてるよお兄ちゃん♡どうぞ♡」

 

 招き入れるとお風呂上がりで艶やかに上気したお兄ちゃんが入ってきた。

 

「どうぞって……布団敷いてるのか……」

「え……?嫌だった……?畳の上直接が正解……?」

「お前は何の話をしてるんだ?」

「命に係わる大事な話するって」

「そうだけど。異文化コミュニケーション的ミスかこれ?アメリカじゃこれが普通なのか?」

 

 首を傾げたお兄ちゃんは気にしないことにしたのかあたしと同じように布団の上に座った。

 

「さーて……?まずどうすっかね?確認したいことはいくらでもあるけど」

「処女だよ?」

「………………………………………………………………………………………………………………………………いや14歳なら当たり前だろうが」

 

 固まったお兄ちゃんが再起動してピンっと軽くデコピンされた。上目遣いで見ると

 

「ん?痛かったか?軽くしたつもりだったんだけど」

 

 自分の腕にバンッと大きな音を立てるようなデコピンをして「……痛いかもな」と見てる。

 全然痛くなかったけどチャンス

 

「痛かったよ!罰としてお兄ちゃん。なでなでして」

「はいはい」

 

 デコピンしたところを軽く撫でた後、髪全体をゆっくりと、毛並みに沿って優しく撫でる。

 さわさわと心地よい感覚に微睡みそうになる。

 

「お兄ちゃんハグして」

「はいはい」

 

 お兄ちゃんの顔がだいぶ優しくなってきたので要求してみると――あっさりと通った。いつもは私から要求したらなんだかんだ断るのに。

 ぎゅっとお兄ちゃんに抱きしめられると、火薬の臭いがつかないようにしたいと脱臭を心掛けているお兄ちゃんから隠しきれないワイルドな匂いが鼻孔を満たす。

 

「背徳ぅ……♡」

「…………そうか」

 

 そのまま撫で方が強弱緩急つけてリラックスさせるものに変わって――

 

「お兄ちゃん……キスして」

「それはヤダ」

「……」

 

 ピタッと手が止まった。

 お兄ちゃんの雰囲気も緩さが無くなってニュートラルに戻っている。距離も戻された。

 ……しまった急ぎ過ぎた。

 もっと身をゆだねてお兄ちゃんから手出しするように――でもそれじゃお兄ちゃんは撫でるだけで終わらせそうだし。

 葛藤を知ってか知らずか手をグッパと開け閉めして感触を確かめるように見て

 

「なぁ、かなめ。ヒステリアモード――ヒステリア・サヴァン・シンドロームになった事はあるのか?」

「ないよ」

「やっぱりか。まあ狙ってるのは察してたけどそれじゃ無理だと思う」

 

 根拠はないがと続けるお兄ちゃんだけどそこには強く反論する。

 

「でもお兄ちゃんとなら。一緒に過ごして確信したよ。なれる。なれるよ」

「……まあそんだけ信用されたといいように解釈しよう。段階すっ飛ばし気味だが――血筋かね?」

 

 遠くを見るお兄ちゃんは具体的な誰かの顔を思い浮かべているようだ。

 むぅ。

 

「大丈夫だよ。お兄ちゃんとあたしは『双極兄妹(Arcanum Duo)』理論上存在し得るとされた、この世で最も強い兄妹になれるから」

「アルカナ……?」

「『双極兄妹(Arcanum Duo)』。相互をHSSにできる関係になれれば2人は向かうところ敵無しになる。地上最強のパートナーになれる」

 

 ヒステリア・サヴァン・シンドローム

 性的興奮によってβエンドルフィンが一定以上分泌されると、神経伝達物質を媒介し大脳・小脳・精髄といった中枢神経系の活動を劇的に促進させる。この覚醒した状態では思考力・判断力・反射神経・視力・聴力などが通常の30倍にまで向上し、常人離れした活動を可能にする。

 しかし異性に弱くなると言った弱点もあり一長一短の特異体質。

 type:G――遠山金叉は奥さん一筋で遺伝子情報入手は困難を極めたそうで、他の女性でなることはなかったそう。

 それは裏を返せばただ一人の女性が最大の弱点となるという事。その弱点を無くすのは簡単な事。同じ体質の女性を用意すればいい。

 

「???――!おいそれってまさかジーサードと」

「心配しないで。サードとセット運用でお互いにお互いでHSSになる事で一騎当千の2人で運用されるはずだったんだけど…。サードはあたしでなる事は1回もなかったし、あたしはサードどころか一度だってなった事はなかった」

 

 そこまで聞いたお兄ちゃんは深いため息を吐いた。

 

「違和感の正体はそれか……。落ち着いて聞いて欲しいんだが――それは無理だ」

「なんで!?お兄ちゃんは今、『極東戦役(FEW)』を戦ってる。あたしと一緒にHSSになってくれるなら、その戦いにも手を貸してあげるよ。自由自在にHSSになれる2人が揃えば、どんな相手でも血祭りに上げられる。お兄ちゃんが戦役で欲しい物、必要な物だって手に入る」

「魅力的な提案だが――無理なんだよ」

「どうして?お兄ちゃんがあたしでHSSになれないから?大丈夫だよ。人体構造上、精神状態からして最初のハードルさえ越えれば「かなめは強くならないからだ」――え?」

 

 いま なんて いったの おにいちゃん ?

 

「ヒステリア・サヴァン・シンドローム――古い言い方だと返對(へんたい)っていうこの特異体質は子孫繫栄能力が過剰になったものだ。子孫繁栄能力として男は強くなる。まあ生物学上の魅力とかを増すわけだけど――女の場合は強くなるとは思えない。というか強くなって戦場に向かうというのが子を宿す機能上、子孫繁栄能力とは真逆だからだ。一番いいのは安全な地で守ってもらう事だしな」

「……」

「それにヒステリアモードはあんまり多用するものじゃない。正直一生ならない方がいいんだよ。俺もあまりなりたくはないしな」

 

「…………ど う し て ?」

 

「對卒――ヒステリアモード発生時に脳卒中に似た症状が出るんだ」

「かなめの方が詳しいのかもしれんが体質上、ヒステリアモードは脳髄を虐使している。その酷使具合は人によってまちまちだけど代々ヒステリアモードを常用する遠山一族は二人に一人は……對卒で死んでいる」

「いつ出るかは誰にもわからん。頭の奥に痛みを感じたら死に至る兆候だから覚悟するように」

「弱みを見せられない立場じゃないんだ。できれば隠さないでくれよ?戦い続けたとして死のリスクが増えるだけだしな」

 

 そう言ってお兄ちゃんは優しくあたしの頭を撫でる。

 

「何でもはできないが、まあ俺が何とかするさ。お兄ちゃんだしな」

 

 そしてあたしはいつしか――眠ってしまった。




キンちゃんズメモ
ヒステリアモードはあまりすきではないので
性欲が見えると萎え気味に(できなくはない)
利害が見えると一気に萎える(ゲームオーバー)

あまり性欲見せずにスキンシップの延長に持ち込むとうまくいく
実は一番警戒されずにヌルッとなりそうなのはレキ
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