遠山キンジの独白   作:緋色

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何となくCVRは金目のプレゼントとかボロクソに言ってそうな気がする


キミに花束を

 意気消沈気味のかなめにあくまで自分の予測でしかないし強化する方法はあるかもしれないと伝えたが――ありゃ逆効果にしかなってなかったかな?

 実際の所、俺が考え付く問題点を医学的だか学術的に理解してそうな頭でっかちエリートが理解してないとは考えにくい。ジーサードが俺をレガル?レガシー?とやらのヒステリアモードの知らん派生のを疑ってたように俺の知らない秘密があるのかもしれないし。

 もっともジーフォースとして育てられた内容はざっくりとしか知らないがどうも戦闘員というより工作員として育てられた印象がある。ジーフォースで内部に入り込ませてキレたジーサードが大暴れを狙ってたとかそんな感じのコンセプトでジーサードが数倍強くなる想定かもしれないし。

 実際かなめは1年に対して印象操作とかなんだのを駆使して何か方向性を固めようとしている雰囲気を感じるし、それに勘付いてる教務科(マスターズ)体育祭(教育委員会の監視)というイベント前な事もあってピリピリしてる様だしな。死人が出なきゃ動かんだろうが――陽菜は俺の妹なのもあって俺の害にならないならと静観するつもりだし、真面目な桜ちゃんはどうにかすべきと動いてるみたいだが――荷が重すぎたかね?

 

「で、実際1年はどうなんだ夾竹桃」

「あの忍者にでも聞けば」

 

 屋上のタンクの陰で煙を燻らせながら聞いたらにべもなく返された

 

「妹との関係に変に気を回すから逆にわからねえんだよ」

「それこそあなたが射止めれば終わりでしょ」

「まあ最短ではあっても最善ではねえからな。素を出せる友人でもライバルでも作らんと早々に潰れるだろうし。逆に俺じゃどうしようもないんだよ。幼少から育った裏表知ってる兄妹でなく。一方的に知ってる血の繋がった他人でしかねえからな。理想の兄が欲しいってのはわからなくもない気がするがどこまで行っても理想の兄と比較するから俺を見ていない」

 

 そういう意味じゃ早々に思い通りにならないと示して素でキレさせたアリアの方がよっぽど楽だった。

 外ではエリートと猫被ってる(普通に素はバレてるけど)アリアが背伸びしない等身大の姿を出せるようになってからは相当落ち着いたからな。癇癪発砲も初期の4月ぐらいしか教室ではしなくなったし。

 

「お人好しね。――仕方ないから簡単に説明するわ」

 

 呆れたように口を開いた夾竹桃が語ったのは

・桜ちゃんがいざという時のバックアップとして間宮グループを頼る

・俺が間宮を可愛がってるのを見てかなめがキレて間宮グループの殺し合いを画策

・間宮と陽菜と桜ちゃんを消すことを目論んでいる(他はついでのカモフラージュ)

 

 との事である。

 何してんねんあいつ。

 

「間宮を可愛がる……?」

「アリアがすごいって突っかかっていくあかりをとっ捕まえて撫で繰り回してるでしょ」

「あー?あの悲鳴上げるガチで嫌がってるお仕置きが可愛がってると……?」

 

 というか間宮がおちょくってくるからとっ捕まえてるだけで(例:アリア先輩はSランク!華々しく活躍する先輩のおこぼれ狙いで組んでる悪い虫!)放置したら教務科(マスターズ)から処刑されるから構うのであって、真面目に鍛えてる戦妹の方が可愛がってるつもりだったから、あれで可愛がってる認識なのか……。

 

「女同士の友情を踏みにじろうとするなら毒殺してたわ」

「お前の言う友情はなんか友情じゃない気がするんだが……」

「実際捕まえるだけで傷つけやしないじゃない」

「お前――幼女じゃなかった子供を殴るなんて男がすることじゃねえよ。お前みたいな大人なら兎も角」

「その違いが判らない妹をどうにかしなさいよ」

「……まあ最悪俺が殴って解決するしかないか。絶対悪化するけど」

 

 前途多難である。

 


 

 かなめの行動が弱まったのか間宮グループが仲直りし始めたとかいう割とどうでもいい報告を聞きつつも――やらなければならない大問題に直面している。

 11月14日――白雪の誕生日である。

 去年は先んじてリサーチする余裕もあったし、遠出する時間もあったのでロマン?っぽい事もできたが……クソみたいなイベント続きで特になんも用意できていない。

 なんなら星伽神社から粉雪名義のプレゼントがなぜか俺の元に届くまで忘れてたくらいである。

 バスカ女子陣と距離ある時期だった分、些細な動向に気が付かなかった俺のミスではあるが――マジでどうしよう?

 幸いにもかなめは課題として出してた賞金首狩りに戦妹(いもうと)らと強襲(アサルト)しに行ったので邪魔にはならない。――動きが悪かったがそこら辺の賞金首なら問題はないだろう。一応陽菜もいるからな。

 で、どうしようか?

 正直プレゼントとか贈るとしてリサーチ無しは貰っても困るという事になりがちである。

 女子にハートのネックレスとか贈ればいいみたいな偏見はいつの時代も根強いみたいな話である。実際よくわかってないおっさんに売るためだけで売ってる女性向け(笑)アクセサリーはあるようだし。

 

 閑話休題

 

 で、日ごろから使う日用品(包丁とか)でいいもの買えばいいと思うが状況が状況、かなめにずっと構っていた反動で雑なことすれば気を使われるだけならいいが最悪は破局の危機である。

 しかしまったくいい方法が思い浮かばない。

 CVRは色仕掛けに偏りそうだしバレたら面倒くさいので、仕方なしにそういう事に詳しそうな夾竹桃に話を聞いたら『花でも贈れば?』と投げやりに良さげな案を出してきた。

 今から凝ったものを用意するとしても時間はないので――それでいいかと当たって砕けろである。失敗したら諦めよう。俺が悪いし。

 それで学園島にある花屋に「付き合ってる彼女にプレゼントするんですが――家族との一歩を踏み出して欲しいんですがそんな花ってあります?」というかなめとの関係改善のきっかけになるような花も含めてを聞いてみたが、花屋のお姉さんは妙に張り切った感じで『女性へのプレゼントならバラに限ります。うまくいきますよ頑張ってください』と謎の励まし(そんなひどい顔してたのだろうか?)と共に深紅のバラ100本の花束を用意して貰った。

 ……100って多くない?

 俺が知らないだけで即座に用意されてるしスタンダードなのだろうか?

 疑問しか残らないが『彼女さんにサプライズで出してあげてください』と言ってたし俺の知らんスタンダードな何かなのかもしれない。どこのフォーマットなんだろう?

 いろいろ考えながら公園に呼び出した白雪を待つ。

 

「キ、キンちゃん。こんにちは」

 

 芝生の方から、なんか少し緊張した感じの白雪がやってきた。

 俺と目が合った白雪は、はにかむように微笑んで――ベンチの横に立ち、風にそよぐセーラー服のスカートを小さく押さえている。

 ……案の定、かなめの件で若干余所余所しい感じかな。まあかなめが襲撃して嫌がらせした上に近づけないようにしてたんだから――そらそうなるか。拗れて修復不可能になったら俺が泣くし――いいきっかけだったのかもしれない。

 

「―――電話でも言ったが、尾行は無かっただろうな」

「う、うん。確認しながら来ました」

 

 うなずく白雪の前で、俺も改めて周囲を伺う。……見られている感じはしないな。

 かなめのストーキングには困ったものなので知られたら邪魔されかねんからな。あいつ俺の周りに女いるのが気に入らないみたいだし。

 探偵科(インケスタ)で習った方法だが、尾行者を警戒しつつ、しかも誰かと密談しなければならない場合は――一旦、こういう見晴らしのいい場所に出て尾行者がいない事を確認し、さらに遠隔から監視されているケースも考えてどこか安全そうな屋内に入るのがセオリーだ。

 

「あの……重要なお話って、なんですか?」

 

「公園で適当に話せるような内容じゃないんだ。場所を移そう。そこの教会だ。行くぞ」

 

と、俺は紙で包まれた花束を持ったまま芝生の先に――ホテル日航が新設した、別館になっている真っ白なチャペルへ向かう。

 

「は、はい。キンちゃん、あの、それは……?」

「……後でな」

 

 と、白雪は花束の包み紙を見て、早くも何やらワクワクした感じで聞いてくる。

 ……まあ気になるよな。でも察されている感じだと悪い感じはしてなさそうなので外れではなかったんだろう。たぶん。

 チャペルは一般的な教会のように開放されており、中には誰もいなかった。天窓から差し込む自然光が白い壁に反射して、明るく暖かい。心地よい空間だな。人もいないし変な気配もしないし。

 

「わぁ……キレイだね。すっごくロマンチック……」

 

 などと、白雪もウットリした目で周囲を見回している。

 神社育ちだと憧れがあるのかな?粉雪も東京に憧れがあったが――白雪は教会的なものに憧れがあったらしい。全然気が付かなかったけど伝統的なとこ以外は結構西欧文化受け入れてるから表に出てないだけで隠してはないか?今後ちょっと探っておこう。今後があればだけど。

 

「なんだかやっぱり、キンちゃんと一緒にいると……ド、ドキドキしちゃう」

 

 念のため身廊の奥まで進み、金銀の燭台や花で飾られた後陣の手前まで行く。

 その後ろを白雪も慎ましくついてきてあはは、と笑いつつの白雪は両手をほっぺに当ててくねくねと身をよじらせた。

 

「体調悪そうには見えないが?」

「キンちゃん様とならいつでも元気いっぱいだよ!あ、でもキンちゃん様に看病されるのもそれはそれで……」

 

 よくわからんけんど元気ならいいか。いつものよくわからないタイミングで興奮する発作みたいだし。

 あまり長々と居座ってもアレなのでがさがさ、と紙とビニールを剥がし中から、真紅のバラの花束を出した。

 

「――キ、キンちゃん?」

 

 キョトンとする白雪……と、俺を、天窓から差す太陽光が照らしている。白雪のツヤツヤした黒髪に、 天使の輪みたいな光が見える。

 なんか二人を照らしてるから眩しいな。とっとと済まそうか

 

「白雪、お誕生日おめでとうな。これが俺の気持ちだ」

 

 大きなバラの花束を手渡すと――

 

 リン、ゴーン……リン、ゴーン……

 

 時報なのか教会の鐘が鳴り始めた。

 円らなお目々を、まん丸に開いた白雪は

 

「はい……!」

 

 と返事した。

 というか自分の身に、長年待ち望んでた瞬間が来たような

 巨大な花束を抱える胸が、さらに感激でいっぱいになったような、そんな顔をしてるぞ。

 よくわからないがご機嫌取りは成功である。

 これなら今後の為の説得もうまくいくかもしれない。

 

「家族にも紹介しないとな……改めて、俺の家に来てくれ。準備するのに少し時間がかかるかもしれないが、それは待つから」

 

 かなめとの仲を取り持つことでバスカ―ビルメンバーとの対立をなし崩しに破綻させたい。

 推定でしかないが遠山と星伽は親戚なので、少々無茶ではあるが家族としてかなめを丸め込む。

 

「はい……ああ……キンちゃん、ありがとう……私……小さな頃から、ずっと、ずっと、待ってたんだよ……!」

 

 何を?

 バラを抱えながら手を合わせた白雪は、何かを召喚するかのように天を仰いでいる。

 ……なんかミスったかこれ?

 




華麗なるクロメーテル様の活動
・見ての通り男だ
・極秘資料でも見せてくれ
・弱ければそのまま仕留めます
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