遠山キンジの独白   作:緋色

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女は女優


ヒステリアモード

「お姉ちゃんは何となくわかったけど。そっちのだんまりは家族じゃなくない?」

 

 何となくの流れでババ抜きをしているとかなめが問う。

 白雪に関しては理解はしたのか(納得はしてなさそうだが)お姉ちゃん呼びになって――レキに矛先を定めたようだ。

 

「キンジさんが家族だと宣言したので家族です」

「……お兄ちゃん?」

 

 ハイライトの消えた目でこっち見るな怖い。

 

「まあ手っ取り早くよく妹認定結構してたので……知らん奴が認定してきても自業自得かなと――」

 

 主にCVRでよくやられてたし、拒絶するより向かい入れて好き勝手にいじる方が効果的だったし。

 甘やかす形でそれ以上求めない姿勢見せた方がどうしようもなくなるのと一緒である。

 野良猫を可愛がるのと飼うのは別な問題な感じだ。

 

「え、じゃああたしを妹扱いしてるの……」

「それは何となく血縁な感じがしたから微妙に違う」

 

 実際に効果があってかなめを妹として可愛がれば望んでたヒスるの方向に誘導しようとしても妹扱いで封じれるのである。

 血縁な保証は今のところ証言以外何もないので、落ち着いてからDNA検査でもしようかなとは思ってはいるが。――話聞く限り米国絡みで死ぬほど面倒なことになりそうな気がするけども。それは後から考える。

 

「まあ反省して今後は自分から人を妹扱いするのやめようとは思ってはいるんで許してくれ」

 

 そう何度もレキみたいな事にはならんと思うが――念のためである。

 

「それお兄ちゃんのやさしさにつけ込んでるだけじゃない。だんまりだけでも「20時30分です」――は?」

 

 レキは自分の手札を山の中に押し込んでクローゼットを一通り探った後に俺のパジャマを取り出し風呂場に向かう。

 ……そういや勝手に置いていたレキの制服はかなめが送り帰したんだったか。

 いやなんで俺のパジャマを持って行くんだあいつ?

 

「あー……気にすんな。レキは非常時じゃない限り21時きっかりに寝るんだ。そうなったら会話すら途中で切り上げるからな」

「なにそれ」

「身内認定してんだろ――たぶん」

「……すごく複雑なんだけど」

 

 まあかなめがいることが非常時じゃない扱いになっているのはいいことなのだろうか?

 グダグダになったトランプも続ける気分でもないので片付けた後に全員が泊まることになってるようなので寝床をどうするのか準備しつつ相談していると。

 シャワーが終わったようでパジャマ姿のレキが俺の前に座った。――ので髪の毛の水気をタオルで吸い取るように当てる。

 

「当たり前のように何してるの?」

「なにって……グルーミング?」

 

 普段のレキは身体を洗った後、水気を取るので終わるのだが、一緒に暮らしていた時期に気になったので髪が痛まないように手入れ(と言っても匂いが付くのを嫌がったので軽く櫛を入れてからドライヤーで乾かしてるだけだが)を気に入ったのか味を占めたのか俺の部屋に来た時は早めに風呂に入ってからのルーティンになっている。

 変な学習したのか一番風呂として俺が入った後は同じように乾かしに来るようになったけど。

 レキが睡眠に入るとなし崩しに泊まることになる感じが多いため、これを見た白雪やアリアや理子も偶にするように強請ってくるんだよな……。

 泊まる前に帰れって帰すことの方が多いけど。

 

「俺がお前のこと知らん事が多いようにお前も俺の事を知らないことが多いって事だ。徐々に知って行けばいいだろ。だから殺気飛ばすな」

 

 レキからも剣呑な雰囲気出始めたしどうすっかなこれ?あっそうだ。

 

「あ、して欲しかった?自分で整えてるからいらないかなって思ってな。しようか?」

「今日からお願い」

「ん。じゃ順番に風呂入ってきな」

 

 殺気が収まったのと髪が整ったのを察したレキが立ちあがってドラグノフを抱えて俺の部屋に向かい――そのまま部屋の隅で体育座りで寝始めた。

 しばらく見てなかったからあれだがシュールな光景である。

 


 

 俺はリビングのソファで寝ることとなった。

 単純に和室に布団はあるのだが――現在かなめの部屋となっている上に俺とかなめが一緒の部屋で寝るのはダメと白雪が反対し、白雪とかなめが一緒に寝るのはまだ信用の問題でNG。そんなわけで俺の部屋で白雪とレキが寝て、和室にかなめ。その間のリビングで俺が寝るという形になった。

 ソファで寝るのもたまにはいいか。

 と、うつらうつらしているとト……ト……と静かに近づく気配が。

 和室の方からなのでかなめだろうが――また寝顔でも覗きに来たのだろうか?

 殺気も武器を持ってる感じの足音でもないので目を閉じたままでいる。

 ……すぐそばで見ている気配が長く続く。いや長いな?

 さらに近付く気配にどうするか考えていると

 ――ちゅ

 っとキャラメルのような香りと共に唇に柔らかな感触が

 

「え?」

「やっぱり起きてたねお兄ちゃん」

 

 目を開けると視界一杯のかなめの顔があり、起きたことを確認したら俺の上に覆いかぶさってきた。

 

「なんだ?怖い夢でも見たのか?」

「お兄ちゃんはずっと妹としてあたしを見てたんだよね――でもあたしはそうじゃない」

「……?」

 

 それは薄々察していたが。というかロリや妹枠とそういう感じになる気がないから妹扱いなのだが。

 

「妹だから受け入れて貰えたけど――お兄ちゃんからすればたくさんいる妹の一人でしかないんだよね。――血縁があって特別扱でもお兄ちゃんからすると妹として一線ひいている――」

「誰でもどこか一線ひいてるもんだ」

 

 妹じゃなくても一線ひいとくべき事はあるのになぜ踏み越えてこようとするのか。

 エロゲー世界だからか?

 

「あたしはお兄ちゃんの特別になりたかった……ううん。ただずっとこうなりたかった。お兄ちゃんは――あたしの初恋の……そしてこの短い人生の最後の人だから――」

「……短い人生?」

 

 それはまるでもうすぐ死ぬかのような……。

 かなめの深海色の瞳が揺れ――覚悟を決めたようにそれを言う。

 

「『活命制限(Life Limit)』」

「Life……Limit……?」

 

 命の制限?

 

「あたしたち人工天才(ジニオン)はDNAにロスアラモスが仕込んだ 反逆防止システムがあるの。ヤツらしか知らない何らかの化合物を定期的に摂取しないと、長期には生命維持が出来ない仕組みになってるんだよ……」

 

 んな!?

 

「なんでそれを黙ってた!?」

「そしたらお兄ちゃん飛び出して行っちゃうでしょ。でもあたしはもう廃棄されてるかもしれない情報に賭けるよりお兄ちゃんと暮らすことを選んだの」

「……かなめ」

「お兄ちゃん」

 

 そんなに幼くて、かわいいお前が――泣いてるんだよ、今。そんなに必死に笑顔を作りながら。

 そして自分の中で何かの線を踏み越えるように、一呼吸した。

 

「ああ、もう引き返せない。もう引き返さない。今だけは、女として扱って……!」

 

 意志の強そうなその瞳が再び開かれ、その瞳から子供の殻が取れている感じがした。今の、この一瞬で。

 ……どうすればいい。どうしたらいい。

 拒絶も受け入れることもBAD ENDな選択肢としか思えない。

 かといって()()()()()()をつかって空気を破壊するのも手だが……いやそれはそれでよくない結果になりそうだ。

 なら俺は――

 

「―――それなら、リラックスするんだ。 身も心もガチガチじゃ、何も始まらないぞ」

 

 すっと身体を入れ替えて押し倒すような形にし、かなめの頬と髪を左右から撫で――両耳を塞ぐように回した手で、俺の方をまっすぐ向かせた。

 

「ああ……お兄ちゃん、お兄ちゃんが、あたしだけを見てる……お兄ちゃんの何もかもが、こんなに近くに……」

 

 恥じらいとも悦びともとれない声を上げたかなめの細い腕が、 俺の背に回される。

 

「な……何、何なの。この、感じ……っ。体の中心、中央、真芯が……お腹の奥が、きゅんってする。 こわい…こわいよ……」

 

 兄さんのを何度か見たからわかる、血液が集中するような変化――かなめがヒステリアモードになるのを。

 だが……兄さんや俺とは違う。

 つー、とかなめの頭を固定していた片手を首筋からなぞる様に下ろしていく。

 かなめが期待と不安の入り交じったように眉尻を下がり――ゆっくりとした指先が臍を越え――

 

「――あっ……!だめ……だ、だめ……」

 

 と俺の胸に手を当てて()()動作を――した。

 俺が少し体を下げると

 

「や、やめてっ兄妹でそんな事しちゃダメっ……!」

 

 かなめは、今までと矛盾する事を言いながら今までよりずっと愛らしい、 愛おしさを感じさせる仕草で、潤んだ瞳から涙をこぼした。

 俺を押し返そうとする力が――()()()

 机上の空論だったが――実証しちまったな。割と最悪の形で

 小動物のように儚く、俺がもう一押ししてしまえば簡単に崩れてしまいそうな、そんなわずかな抵抗しかできていない。俺の足に密着した小さな膝は哀れなほど震え、本能的に内股に閉ざされてしまっている。 怯えて……いる。

 これは演技じゃない。 演技で、ここまではできない。

 

 一か八かの賭けだったが……うまくいったな。

 

 俺が上体を起こすと、かなめは真っ赤になって両手の甲で目を拭いながら……ひっく、ひっく……と泣き続けていた。

 震え、怯え、男の征服欲を掻き立てるような異常なほどの可愛さだが――かなめとは相性が悪かったな……。雰囲気にのまれかけてた血流が一気に引いた。

 

「怖がらせちまったな……」

 

 俺は起き上がり、自分の服を正した。

 小さく震えながら上体を起こし、潤んだ瞳でこっちを弱々しく見つめるかなめを優しく撫でてから怖がらせないように立ち上がる。チラッチラッと怯えるような期待するような複雑な視線を感じつつも、謝る仕草で部屋から出て来た白雪とレキの2人にかなめを任せ――とりあえずホットミルクでも入れようかな。




衝撃的な内容でいざとなったら妨害する気だった二人もタイミングを逸した感じです
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