遠山キンジの独白   作:緋色

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大体このキャラはこう言うだろの積み重ねでノープランと化していく


兄として

「……お兄ちゃん、ごめんね」

「なんのことか知らんが心当たりがないね」

 

 あの後、すすり泣くかなめを白雪の「キンちゃんは空気読まないから」と慰め?やらなんやらしていたが、落ち着いてからやってきたかなめの言葉がそれだった。

 かなめの両サイドに座る白雪とレキだがホットミルクを入れた俺への目は冷たい。

 ――俺悪くないと思うのだが泣かせたってだけでこっちが悪い扱いである。

 

「気持ち悪かったよね、きっと。あたしみたいなのが突然現れて好き、好き、なんて言われたら」

「そういうのはちょくちょく出てくるから慣れてる」

 

 自嘲気味に微笑むかなめだが――妹扱いすれば大体収まるので特に気にしてなかったが。

 むしろ奴隷になれとか死にたくなかったら結婚しろとかの方が面倒くさかったし。

 

「あたしは初めてHSSになって……あの数十分で何年分も思考が進んだようになった。それでお兄ちゃんの事をずっと考えてるうちに、ようやく分かったの。あたしはお兄ちゃんにとって……いらない子だったんだなぁ……って」

「いるいらないとか考えたことは無いな。面倒とか義務とかは考えてたが」

 

 かなめの言い分を信じるなら寿命が短い理由が反逆防止システムなら――その辺を解決するために一度ロスアラモスに潜入及び襲撃して生存のためのレシピを盗み出さなければならない。

 まあ指名手配確定だろうな。成功する見積もりも低いので保留だが。

 

「あたし、恋愛ってどうすればいいのか分からなかったから。他の女を遠ざけて独り占めすれば、愛してもらえるんだって……思いこんでたの。そしてHSSを自由自在に使える兵になって、サードの下で 『役割』が出来ればロスアラモスに戻らなくてもよくなるんだって……必死だった」

「ジーサードがそういう性格なら、そもそもお前連れて脱走しないだろ。慈善活動みたいなこともしねえだろうしな」

 

 ジーサードの経歴とかは一応調べているのだが……ネット情報レベルだが表向きは悪党退治に孤児院の救済とか――無償で人を救うヒーロー的な活動を主にしているようなのだ。活動資金は金融で儲けているみたいだし。

 どこまで本当かは信じがたいが――少なくとも行動を共にしていたはずのかなめの行動から見て悪行で儲けるタイプでないのは事実であろう。敵と見なしたら容赦しないだけであって。

 

「キンちゃん……ロスアラモスって?」

「あー。説明が面倒くさいんだが――『人工天才(ジニオン)』とかいう科学的な方法で育成された天才を作るプロジェクトがあるらしくてな――世界各国の天才とか強者の遺伝子を掛け合わせてる優生学の極みみたいなもんで――で、コンザ――俺の父親の遺伝子盗まれて作られたのが――脱走兵らしいがそこにいるかなめとジーサードになる。遺伝子的にはガチ兄弟妹(きょうだい)だな」

「それは……本当なの?」

「さっき見てただろうけど体質は同じなのは確定だしな。男は戦闘力が秀でて女は逆になる特異体質――ジーサードの顔立ちは俺とほぼ同じだし――事実でいいと思うぞ。正直女版はうろ覚えだし爺ちゃんには姉がいたらしいから詳しく知ってるだろうから近いうちに聞きに行くつもりではあるが」

 

 なんかグダグダしてたが爺ちゃんにアポ取っとかねえとな。俺よりかは色々知っているだろうし。

 

「それは表向きの名称だよ。ロスアラモスが作ろうとしていたのは『人間兵器(ヒューム・アモ)』新しい最終兵器の一つだよ。超人的な戦闘力を持つ人間。1人で1個大隊とも渡り合える人間。それを何人も作って敵国に送り込んで死ぬまで破壊工作・要人殺害の限りを尽くさせてその国を滅ぼす。そういう生きた兵器なんだよ。『人工天才(ジニオン)』の実態は」

「短期的にはうまくいきそうな、まさにアメリカらしい考えだな」

 

 発想的には米軍の敗北であるベトナム戦争あたりから来ていそうである。あれも永遠のゲリラ戦で米軍撤退した負け戦だしその痛手を受けて欲するのは理解できなくはない。

 ゲームならそういうユニットは便利だろうが――現実ではうまくいかないだろうジーサードは脱走してるし。自国防衛と敵国への攻撃じゃあモチベ維持も難しいだろうし。

 

「核軍縮とか軍備費の切迫そういった政治的な煽りもあって、アメリカではいろんな新兵器の開発が盛んなんだよ。研究機関だけでも92機関あってロスアラモス・エリートはその1つに過ぎないの」

「ふーん。人間育てる方がコスパ悪いと思うがね」

 

 エリート集めて教育しようが前線では鉛玉一発で人は死ぬのですべてうまくいく希望的観測が過ぎる。

 

「あたしはその機関で遺伝子から造られた『G』ってシリーズのIV(フォース)――兵器、製品なの。物心ついた頃には、もうナイフを握らされてた。戦争映画がお遊戯に見えるような訓練があたしにとっては日常だった。『人』には許されないような事がそれこそ『物』にするみたいに行われたよ。毎日、毎日――」

 

 ……。

 うちでも武家の端くれとして戦闘訓練や非人道的な訓練もあったが――それでも普通に小学校に通って友人と遊んだりとかはしていた。

 かなめは――施設育ちでそういう事も無いのであろう。

 

「普通に学校に溶け込んでるし、趣味はMLB(メジャーリーグ)観戦。愛して貰いたいとか十分人間的だろ。そういう感情わかないから兵器だろうし育てた組織が無能なだけだな。人だの物だの気にするだけ無駄だから人生楽しんどけよ」

 

 そもそも性欲――感情やら理性やら綯い交ぜになった非合理的生物が合理だけで動くはずがない。

 結果より過程を重視する人間もいるし、感情的な好き嫌いでしか判断しない人間もいる。

 つまり俺が平均的男児と言っても否定されるように人間らしさとか()()()()()()()。自分なりに答えを見つけるしかないのだろう。多分。

 

「だいたい合理性や効率考えたら俺の事好きになるわけないだろ。自分勝手の極致だぞ俺は」

「他者優先では?」

「お兄ちゃんが自分勝手……?」

「キンちゃんは優しいから」

 

 ミリも同意されなかった。

 なんでだ?

 

「 と も か く 。何がしたいか何を為すかなんて学校卒業までに考えとけばいいんだよ。社会不適合者としか思えんような奴らがゴロゴロ教師やってたり学生してたりするんだ。自分がすっきりするまで悩めばいい。その結果、武偵になろうが幼稚園の先生になろうが軍人になろうがバックパッカーだろうがなりたいものになればいいんだよ。諦めと妥協でロスアラモスに戻るという寝言を除いてな。というか戻るなら乗っ取っちまえよロスアラモスごとき」

 

 そうなればロスアラモスに喧嘩売る理由も無くなるし。

 

「ごとき……ってお兄ちゃんは――すごいね」

「まあ俺の方が強いし。殴りこみに行って証明しようか?」

「手伝います」

「キンちゃんが行くならどこまでもお供します。世界が敵に回っても……!」

「いやなんの話?」

 

 なんでこの二人は協力する気なんだ?

 

「あはははっ。その時はみんな揃って全部灰にしちゃおう!」

 

 何がツボに入ったのかようやく笑ったかなめにつられて全員の雰囲気が明るくなった気がする。

 ふむ。なんとなく許されたな。

 

「それはそうとキンちゃんあとでお話があります」

「すまん俺死んだかもしれん」

 

 許されてなかった。




次から次巻
……決闘周りどうするかな?
それにアリアと理子ほったらかしだしどう収束させるか……?
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