遠山キンジの独白   作:緋色

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イメージだと
キンちゃんが間に入ってるとそこそこまともな空気になる


夢現

「おぎゃばぶランドがいいのよね?」

 

 急募、暫定上司が壊れた時の対処法。

 なぜこうなったかというと話は少し遡る。

 

 

 

 

 

 

 犯人?の爺さんを引き渡して一段落した所で気が抜けたのかめっさ眠い。疲れた。帰って寝たい。

 これは脳神経の過剰活動による副作用だ。いつもなら後処理は周りの人間にぶん投げて寝るんだが、一人だとそうもいかない。

 最初の部屋に集合との事で眠気を我慢しながら向かった。

 ちゃんと到着できたことを褒めるべきだと思う。

 

「先輩また無茶な事したんですか?」

「無茶はしてない。死にかけただけ」

「やっぱり無茶したんですね」

 

 顔合わせてすぐでこれである。信用ないなぁ。

 何度か見てたせいか対応が慣れきってる。あとなんでさりげなくひとみさんとの間に挟んで盾に出来る立ち位置維持してんだろ?

 何があったんだ。

 

「あまり無茶はしないように。部下がいなくなると困るから」

「まだ部下じゃねーし、それで困るのひとみさんだろ!?あと高校卒業までは正式に入らねーからな!?中卒とかカッコ悪いし!」

「それは困るわね。やっぱり今から連れて行くべき、かしら」

「どこに!?後なんでキレてるの!?暴力で言う事は聞かない――からな?」

「なんでそこ疑問形なんですか」

 

 流石に拷問されたら生きていられる自信はないし。

 

「ほら然るべき報酬出すべきでしょ。過酷なバイトだし弾んで下せえよ」

「いやバイトで済ませちゃダメですよねこれ。国家機密案件ですよ?」

「そんなクソ下らん理由で無料(ロハ)とか安い金出される方が困るわ。信用も信頼関係もねえのにそんなんされる方が危ないし。お互いの為にならねえよ。それなら口止め金貰って契約した方がマシだ」

「ちゃんと考えてるんですね。いつも無料(ロハ)で犯罪とか賞金首に対応してるのに」

「あれは依頼じゃないけど功績とか色々付くから別よ?好き勝手やった時の相殺用だし。依頼ならちゃんと金取るし」

「感心してた私がバカでした」

 

 フリーの時は別に仕事じゃないので無料(ロハ)でなんかやるのはいいのだが。賞金首狩り(マンハント)は金貰わなければ功績ポイントが付きやすいので見かけたら積極的に狩る事にしている。ちなみに始末書の数は他の類を見ないレベルで書いてると褒められている。

 フリーは兎も角、流石に仕事案件で無料(ロハ)にすると調子に乗られて面倒なことになる。偶に依頼した癖に難癖付けて報酬渋るアホとかいるし、きっちりしとかなければならない。仕事はちゃんとしないと信用なくなるし。

 報酬渋るアホには武偵の横のつながりで誰も依頼受けなくなりますよと忠告したら土下座と共に快く払ってくれるが。

 

「そういえばご褒美何が欲しい?」

「ご褒美あんの?」

「欲しいんでしょご褒美?」

 

 当然である。そういやそんな事言ってたような気がする。これは有難いな。

 眠気に負ける前にちゃんと言質を取ってお――

 

 

「おぎゃばぶランドがいいのよね?」

 

 …………………?

 どうやら俺の脳は本格的にダメなようだ。ひとみさんが壊れた方も考えてみたが真面目な調子なのでそういうわけでもなさそうだ。

 眠気も酷いし言語認識能力もダメになったらしい。はよ寝ないと回復しないだろう。

 

「いきなり何を言いだすんですか!?」

「あれには男の褒美にはおぎゃばぶランドすればいいと聞いたけど。私もよく知らないのよね」

「それは――あの失礼ですがお付き合いされた事などは?」

「ないわね。――もしかしてそういう行為?」

「あの…その…はい」

「後で、あいつ、は、殺します」

 

 なんか言ってるが、全然理解できないし駄目だ。もう限界だし寝よう。

 

「すまん。限界――寝る」

「あ、はい。確かにヤバそうなので少しだけなら――なにしてるんです!?」

 

 手頃な枕に頭を置いてそのまま寝る。

 

「無言でこっち見られましても」

「これどうしたらいいのかしら?」

「こうなったら叩いたぐらいでは起きませんし、1時間ぐらい我慢して下さい」

「そう。我慢してあげましょう」

「それにしてもこいつよく膝枕されてるな」

 

 

 

 

 

 

 

 こっそりと忍び寄る気配を感じて眼が覚めた。

 

「銃を降ろしたまえ。おぎゃばぶランドの邪魔され機嫌が悪いのはわかるが」

「何の話だ。こっそり近寄ってくるのは敵だから反射的に目覚めるんだよ――寝みぃ」

 

 体感だと1時間弱ぐらい寝てたっぽいからだいぶマシだが。

 帰ったら本格的に寝るか。妙に身体が軽いけど。疲れが溜まってる事には変わりないし。おっさん警戒して飛び起きたっぽいから絶妙に動きが悪い気がする。

 

「眠いみたいね。もう少しママに甘える?」

「あんたの事ママ扱いしたこと無いやろがい」

「寝言でママって言ってましたよ」

「……死にたい」

 

 何がどうなってそうなったのかは知らんがめっちゃ恥ずかしい。寝言聞かれてるのは兎も角『ママ』ってまるでマザコンみたいじゃないか。いや下手に知能があった分、母の死のダメージ滅茶苦茶デカかったからあり得なくはないが。

 

「復活したようで何よりです。これおにぎりとお茶用意しときました」

「……ありがと」

 

 糖分が分解されてできるブドウ糖、あるいはグルコースは脳の唯一のエネルギー源だ。

 脳神経を酷使するヒステリアモードの存在を知った時、使用されるエネルギー源はこれだと思っている。

 なのでヒステリアモードを使用する前が望ましいが出来ない場合使用後に積極的に摂取する事にしている。

 動いた後のエネルギー補給は重要なので、倒れた後の補給を桜ちゃんに任せてたらとりあえずおにぎり喰わせればいいと学習したらしい。毎回腹持ちがよくてブドウ糖を摂取できどこでも手に入るからおにぎり頼んでたので悪いわけじゃないが。

 米と味噌とおかずがあれば生きていけるらしいので、今度頼むときは覚えてたらみそ汁も頼んでみよう。

 

「それはそうと死になさい」

「おいおい。評価を聞いてからにしなよ。死んで評価を上司に伝えなきゃ評価は最悪になるぜ?」

「全部避けながら何言ってるのよ」

 

 やけ食いしてたら突然超次元が発生していた。殺気は高くないからじゃれ合いっぽいけど。

 なんか見えないが飛び道具的なので攻撃しているようなのだが、リロードしてる様子も軌道から推測される着弾点にも何も無い。

 なんだあれ?

 超能力か?魔法使いより魔女の方が有名な様に女の超能力者は男に比べてかなり多いらしいのであり得なくはない。今後注意しないとな。

 というか今のが観察出来て気づいたけど甘ヒスなってるな。なんかやったっけ?

 食べ切る頃には戦闘も一区切りついたのか、今回の総評とやらをおっさんが話すことになったようだ。

 

「総評価としては限りなく満点に近い。私の占ではどちらか片方が死ぬ可能性が非常に高かったのだが、次点でどちらも死んでいたが――両方を生かして捕らえるとは素晴らしい成果だ。ハナマルをあげよう。今後の任務に口添えしておく」

「そう」

 

 話を流しで聞いてたらついでに思い出したことがあるからこの場で質問しとこう。

 

「ちょっと聞きたいんだが、あの爺さんは俺の顔見てビビッて逃げたくせにこの時代に俺が活動してないとかなんとか。意味わかんない事言っていたんだが?なんか知ってる?」

 

 俺の質問におっさんは説明が面倒なのか少し嫌な顔をして話す。

 

「一般的な概念だと未来人とか呼ばれる存在さ。頻繁に時間移動していて捕らえるのに苦労している」

 

 この世界の世界観がどんどんわけわからなくなってきた。

 爺さんが時を越えたならエロゲじゃないかもしれん。

 

「異なる時間軸から来た人物などは不連続体と呼ばれ、世界と呼ばれるものが排斥しようとする。いるはずのない人間が行動するだけで存在しない場合の世界との矛盾が発生するからだ」

時間の逆説(タイムパラドックス)ってやつ?」

「そういう事だ。しかし世界はそういう異物を事故や疫病、敵対者etc.様々な反応だが人間で例えるなら細菌に対する免疫機能のように排除しようとする」

「異なる時間軸の存在ねえ…」

 

 滅茶苦茶心当たりがある。

 前世だと令和になるくらいには過ごした、所謂時間軸の違う人間だ。こっちだとスカイツリーもまだ建設中だし。もっとも武偵とか銃解禁とか根本の世界線が違うけど。

 銃撃戦に巻き込まれたり、指名手配犯に襲撃されたり、事故に遭ったり、インフルエンザで死に掛けたり、鉄柱に潰されかけたり。

 時間転移者と違って転生のようだが、世界とやらが排斥対象と認識していてもなんらおかしくはない。

 なるほど。あんな目に遭っていたのは世界の修正力のせいだったのか…。

 つまり世界が悪いんだ。俺は悪くない。

 どこぞの悪役みたいな思考がはいる間に話は進む。

 

「伊藤君が君をスカウトしようとしているようなのでこの件に噛ませたが予想以上の結果だったね。勝手に一人増やしているし君は良くも悪くも予測できない。占で凶しか出ない任務で吉が出た時は目を疑ったよ」

「何の話か知りませんけどありがとうございます?」

 

 本当に何言ってるのかわからない。たぶん白雪がたまにやってる占い的な事の話だと思うが全体の運勢だとかなんとか仕事運みたいなものか?

 

「公安に就職しないかね?何なら伊藤君より私の部下に欲しいくらいだ」

「横取りは許しませんよ」

「高校卒業したら考えますよ。今はバイトとしてならやりますかね」

「まあ整理がつくまではそれでいいだろう。ほいほい死なれても困るしね」

 

 整理?なんかあったっけ?

 

「では、二人には守秘義務を守るための契約書にサインして貰い、報酬を指定口座に振り込んでおこう。全く急に一人増えたせいで書類用意するのに手間取ってしまったよ」

 

 渡された資料を流し読みしたが要はこの仕事内容は永久に他言無用で漏らしたら殺すというシンプルな契約だ。

 ま、妥当なラインだろう。さっさと契約書にサインして終わらせる。

 

「では後は()()()()()君。自分で何とかしたまえ」

 

 

 

 ――瞬間、すべての思考が止まった。

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