遠山キンジの独白   作:緋色

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新刊は制服義務化でクソワロタ
久々にキンちゃんらしかった

当作品のキンちゃんは東大目指さず武検の試験直接受けると思うけど


空へ

 小型のノズルがプロテクターに仕込まれていたのか炎を噴射し近づくかなめに対して、ジーサードは動かずすれ違った。

 ジーサードからぽた、ぽた……と血がしたたり落ちている。

 金属と防弾繊維の手甲(ガントレット)をしたジーサードの指から――。

 

「あは……あ、あたし、非合理ィ……」

 

 振り返ったかなめの胸部プロテクター、その中央下部が割れている。

 素手で穴をあけやがった。見た所ヒステリアモードになってない素で。

 

「フォース。残り少ない命を無駄に散らすかよ」

 

 振り返りもせずに嘲るジーサードに対して、かなめは口から赤黒い血を流しながら両腕の手甲(ガントレット)から刃を出した。

 

「散らせるものなら――散らして「そこまで」

 

 最初は急な行動に出遅れたが俺は見えない軍用機に飛び乗って駆け上がり二人に割って入る様にかなめを止める。

 

「あんまり兄妹喧嘩すんな。それにG3は俺が殴るつもりで来たんだから邪魔すんな」

「二人掛かりでもいいんだぜ?」

「俺はお前とタイマンでケリ付けるために来たんだよ。無意味に横から殴ってくるから殻金回収のタスクがありえんほど遅延してるしな……」

 

 できればアジア圏の殻金に関しては今年中に回収したかったのだが――解析するとか言ってた藍幇に対しては早めにケリ付けたいというのに――ヒルダやらG3やら予定外の戦いが多かった。

 あと一ヶ月でクリアは難しいだろう。

 

「ジーサードは強すぎる!お兄ちゃんじゃ殺す気になっても勝てないよ!」

「?最初から殺す気もないし。負ける気もない。ま、何とかするさ。それに……お兄ちゃんは最強なんだぜ?」

 

 なぜかG3が後ろから攻撃してこないのでふらついてるかなめをお姫様抱っこで飛行機から降りて流れ弾が当たらない場所へと移動する。

 

「カナ姉。流石に応急処置だけでも頼む」

「しょうがないわね」

「ダメ……おにいちゃ――」

 

 ガクンと気を失ったかなめは出血の見た目は派手だが痕は残らないだろうし死ぬ事も無さそうな傷だ。すぐに治療すればのはなしだが…。血液不足で意識失ったっぽいし。

 まあそこはカナ姉を信じるしかないか。

 

「遊んでやるよ三下」

「はんっ。ようやくいい顔するようになったじゃねえか」

 

 何を言ってるのかはわからないが――ベルセの血流を感じる。

 とりあえず細かいことはぶん殴ってから考えるか。

 

「アンガス。横須賀(ベース)に戻って24時間待機だ。独断専行してるアホ共にも伝えとけ」

『少々手荒になりますがよろしいですか?』

「構わねえよ」

『承りました。ガリオンを自動操縦(オートパイロット)に切り替えます』

 

 収納されていたらしい車らしきものが開いたハッチから飛び出して去って行く。

 よく見えなかったが光学迷彩でカモフラージュしているらしい。

 断続的に響く銃声と砲撃のようなアンチマテリアルライフルの銃声の方角ではなく時折火柱と冷気を発する方角へと。

 ……煙上げたのがミスだったかな?サイレンとパトランプが集まっていくのが見える。発電所でテロでも起きていると通報されたのかもな。今回は急だったので根回しとかしてないし後始末が大変そうだ。……よし。見なかったことにしよう。そうしよう。

 ま、向こうは向こうで何とかするだろうし。

 

「レガルメンテじゃないのは残念だが――来いよキンジ」

 

 足元を蹴る様に何かを操作したジーサードが中に消えると同時にハッチが締まり始める。

 ――飛び込んで来いって事か。

 しょうがねえ。行くか。

 飛び込んだ中は何もない収納スペースのようだがご丁寧に扉は開いているので警戒しつつもそっちへ進む。

 

「?」

 

 違和感を感じて足を止めるとエレベータが上昇するときのような力のかかりを感じる。――つまり真上に上昇しているようだ。

 水上機。垂直離陸機(VTOL)

 扉の先の長い廊下からして結構デカい。全長20。全幅は50mほどか。ヒステリアモードの脳内で形状の把握に掛かるとB-2爆撃機(スピリット)。ステルス機の代名詞と言われるあれと瓜二つだ。

 外海に出られたら面倒だな。できれば日本領海を飛んで欲しいが――帰り道は後で考えるか。そもそも一緒に死んでくれ展開もあり得るし。

 

「米軍のオモチャか……盗んだのか?」

 

 俺が持参していたある銃弾をベレッタにコンバットロードしつつ、 案内のつもりか律儀に待ってたG3に探りを入れると

 

「バーカ。買ったんだよ割安で――こいつは次世代ステルス機の試作機さ。暗号名は『Galleon』低探知性じゃ世界一だろうよ。つっても製造コストのせいで量産はできねぇらしいぜ」

「量産機なら光学迷彩なんて無駄なものいらんだろ」

「試作機だ。つってんだろ。使って見ないと利点も欠点もわからん事も多いからな」

「確かに人工天才(ジニオン)みたいに机上の空論を無理矢理形にすればな」

人工天才(ジニオン)は失敗じゃねえよ」

 

 一瞬だけとんでもない殺気を放ったため、ここでケリとつける気なのかと応戦に血を高ぶらせるがG3はそれを無視して部屋の中に入る。

 

「?」

 

 構造的にはそこは本来ならクラスター爆弾やBG小型核爆弾、統合直接攻撃弾などを搭載するのであろう広い格納庫には、写実的な宗教画、片や印象派やキュビズムの油彩画、前衛的な現代美術絵画といった様々な様式の絵が飾られている。ピエロやアイドルみたいに派手な衣服も散在してるし、大きな彫刻、それと巨大なスピーカーもあちこちにあるな。

 美術館とオーディオルームを組み合わせたような趣味の空間のようだ。

 

「見た所、教科書に載ってる芸術家の作品の系譜に見えるな。数億は下らねえ価値はありそうだが?」

「そうだな。例えばこいつはパブロ・ピカソだぜ」

 

 版画の1枚を親指で示しつつ、ジーサードが――何だ?

 ヤツから伝わってくる、 元々強かった殺気それがここへ来て、一層強まった気がする。

 いや事実強まった。裸婦像なんかの系統は何処にもないにもかかわらずである

 

「過去いろいろあって女はどうもダメでな」

「……まさかと思うが俺か?悪いがそういうのは興味ない」

「チゲーよ!――ん゛ん゛!HSSのトリガーはβエンドルフィン。そいつを分泌させる方法は1つじゃねえ」

 

 ドンッ、という腹に響く振動が格納庫内に吹き荒れて、大音量で音楽が流れ始めた。電子音とボーカル。これは近ごろ手当たり次第に世界の 音楽を聴いてるレキも聴いてた、イビザ・トランスだ。

 一気にクラブみたいなムードになった、この空間で

 

「俺はな、キンジ。美――芸術に触れた時、βエンドルフィンが湧くのさ。物でも音でも、飽きが来るまでトリガーに出来るって事だ」

 

 なるほど。

 遠山の金さんが露出狂の気があったらしいのは聞いたことがあるし、それは腕から背中に彫った桜吹雪を見せることで発散していたそうなのだが、それは一度見た桜吹雪の美しさに惚れこんで彫ったとも言われている。

 芸術による脳の恍惚状態(トランス)は性的興奮に似た変性意識状態になれるからそれ見て発動させてた可能性もあるのか。

 どうでもいい事を考えていると――ジーサードは心地よさそうに白い歯を剥いて、小さなケースを出した。

 

「普段はここを一歩きするだけでもいいんだがな。お前にはもう一手使わせてもらうぜ」

 

 そのケースから1cm四方ぐらいの赤い紙キレを取り出し、口の内側に張り付けている。

 形状からして薬に漬けた紙切れ――ドラッグクーポンに近い何かだな。間違いなくアッパー系であろうが。

 

「先端科学が産んだ、脳内神経伝達物質(ニューロトランスミッター)亢進剤(アクセラレーター)のカクテルさ。成分を聞いたら触るのも怖くなるぜ。 ロスアラモスじゃ命に関わるってんで投薬中止になったシロモノだ」

地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)みたいなもんか」

「なんだそりゃ」

「毒」

 

 金一兄さん、シャーロック 今まで戦ったヒステリアモード使いの誰よりも手強そうだ。無限再生するブラドに比べりゃマシそうだが――魔獣と同じ部屋にいるような感覚がある。

 ヒステリアモードの倍率はざっくり60倍くらいだろうか。

 ベルセの血流はヒステリアモードの1.7倍――つまり通常の51倍ほど。倍率で言ったら負けてるな。

 

「そろそろいいだろう。上がってこい兄弟」

「ま、美術品壊すのは忍びねえからいいけど。いい加減場所決めろ」

「次が決戦場(ステージ)だ」

 


 

 格納庫奥の階段を上り、機外へと上ると――日差しが眩しいな。

 体感だと高度400mほどで時速は100kmといった所か。

 見た所、太平洋でどこかに向かってる様だが――方角的にはアメリカか?

 最悪、奪って運転する必要がありそうだな――つまり大怪我はご法度。どんどん面倒臭い条件が増えていく。なんで気持ちよくタイマンさせてくれねえんだよ。どいつもこいつも。

 呆れたため息が流れるのを知ってか知らずか俺から20mぐらい離れた機首側に立ったジーサードは――

 

「ここなら広いだろ」

 

 と空全体を示すように両腕を広げつつ振り返った。

 

「広いけど足場が不安だな。モニターはクソ脆いし。見つかるんじゃねえの。横槍入れられんのが一番嫌なんだが」

「飛行には支障はねえよ。それにずっと見られてるが決着の邪魔はしてこねえよ」

「あん?」

 

 とりあえず前後左右を確認してみるも何かがいる気配はない。

 G3の装備も録画できるような装備は見受けられない――自分で言ってて悲しいがそういうのには敏感だしな。

 

「キンジはCIAの準敵対回避武偵に載ってるのは知ってるだろうが「知らねーよ」米軍からも標的(マーク)される有名人だ」

「米軍――おいまさか」

「その通り!この戦いは監視されてる。米軍の偵察衛星(KH-14)でな!先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)先端科学兵装(ノイエ・エンジェ)を探る。ヤツら人間兵器のデータを取ろうとしてるのさ。俺と対峙する、お前の事も含めてな!おっと。今さらそのマヌケ面を隠してもムダだぜ。最新の画像処理技術は、1cm四方に書かれた文字だって解析できるからよ」

 

 米軍に目を付けられるとロスアラモス襲撃難易度が上がるから目を付けられたくなかったな……。

 

「一応聞くけど音は拾えんのか?会話は?」

「流石にそれは無理だから何話してもバレないぜ。おっと読唇術があったか」

 

 逆に言えばそれ以外ならバレることもないというわけか。

 カナ姉に話した内容はバレてるかな?バレてそうだなあ……。

 微妙にテンション高いG3は面倒くさいがあまり時間をかけすぎてもよくない。

 見られて困る技は使えないという事だ。つまりバレてるであろう技しか使えないと……縛りプレイとかふざけんな!




あれー?自縄自縛でどんどん難易度あがってる?
まあキンちゃんなら何とかするだろう(どうしよ?
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