遠山キンジの独白   作:緋色

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難産


セカンドとサード

 G3の装備からしてベレッタM92Fでは威力不足だからデザートイーグル50AEに持ち替えてバタフライナイフを構える。

 G3が抜いたのはヘッケラー&コッホのUSPマッチモデル――複列弾倉(ダブルカラム)で装弾数が多いし精度もいい銃だ――と軍用の大型のファイティング・ナイフ

 同じ一剣一銃(ガン・エッジ)の構え。

 この空間と相手からして二人とも同じ判断をしたという事だ。同じ判断をしたというのが絶妙に面倒くさい。

 

「気が合うじゃねえか」

「不本意だがな。で、睨み合ってもいいが俺は忙しいんだよ。明後日はテストなんで勉強しないといけねえし」

「日頃から勉強しろよ」

「お前らみたいなのが横槍入れなければ勉強するわ。将来とかいろいろ考えてるからな()()

 

 ホント何で米軍に衛星で監視されながら飛行機の上で喧嘩する羽目になっているんだろう……。しかもこれ無償奉仕活動(ボランティア)だし。なにも俺に得はねえ……。

 

「そもそもなんで俺に喧嘩売ってきたんだよ。かなめを預けるにしても俺と喧嘩する必要なくね?」

「大ありさ。――シャーロック討伐、イ・ウー殲滅は元々は俺の仕事だったんだぜ?それを横取りしやがってよォ。知ってるかキンジ。アメリカじゃ人の仕事を取るヤツは罪人なんだ」

「じゃあ逃げ出したシャーロック探し出して仕留めろよ。俺は討伐失敗してんだよあのクソ爺は」

「はん。イ・ウーを半端に潰して何人か子分にしておいてか?」

 

 誰の事だよ?別に子分にしてはいないが。いやジャンヌは子分みたいなもんか?

 

「ジャンヌの事か?欲しいならあげるぞ?」

「いらねえよ。女には興味もねえ」

 

 嘘くせえなと俺は溜息をつき、チャキッと、デザートイーグルの撃鉄を起こす。

 デザート・イーグルは、ダブルアクション/シングルアクション併用銃。

 実戦向きなのは引き金を引くだけで弾が出るダブルアクションだが、こうやって撃鉄を起こしてからトリガープルで発砲するシングルアクションも可能だ。引き代が短く軽いこのシングルアクションの方が初弾の精密射撃には向いてるしな。

 

「いいぜキンジ。男はそうこなくっちゃな。だが、どうする?俺のUSPは装弾数13発。お前のDEは8発だ。銃弾撃ち(ビリヤード)じゃ捌ききれねえよなァ?」

 

 米軍には知られていてもおかしくないか――なら銃弾撃ち(ビリヤード)の曲芸がどこまで許されるかだが――まあそれは考える必要はないか。

 

「倍の差がないなら許容範囲だろ。試してみるか?」

「じゃあ魅せてみな!」

 

 フルオート改造してるらしいUSPのマズルフラッシュから襲い掛かる13発の.45ACP弾をデザートイーグルの50AE弾7発で銃弾撃ち(ビリヤード)の連鎖――キャノンショットと同じで一発の弾が連続して相手の弾二つに当たる様に弾の軌道を計算し、7発の銃弾ですべての弾を逸らす。

 6発以下で済ませたかったが射角が厳しくて普通に銃弾撃ち(ビリヤード)で一発逸らすしかなかったな。連鎖撃ち(キャノン)ももっと修練がいるな。  

 シャーロックの時のほどの弾幕にはならんのはあいつの方が頭おかしいからだろう。

 ホントあのクズは思い出してもイラつくな。

 

「一発で二発弾けばいい。三発以上弾くのは難しくて7発必要になっちまった――な!」

 

 とりあえず眉間に向けて撃ってみたが、当然のようにナイフで切り裂いて弾はYの字に描いて散っていった。

 

「なんだ?『弾丸断ち(チョップ)』がそんなに珍しいか?」

「まあそんぐらいできるか」

 

 そのままリロードしてフルバーストしてみると当然のように相手もリロードしたUSPの連鎖撃ち(キャノン)で対応し逸らした。

 つまり13-(8/2)=9発の銃弾が襲ってくる!

 

Blitznak(うっぜえ)!」

 

 だが来るとわかっていればそこまで怖くはない。振りかぶったナイフによる地抛(ショット)で衝撃波を生み銃弾を一気に全部逸らす。

 こんだけ風の強い場所じゃなければ布旗(マタドール)の方が疲れないのだが。必要な犠牲だろう。……あ、ナイフ折れてる。

 

「HAHAHA!よくやるぜ!」

「やっぱ脆いな――これ」

 

 役に立たないのでナイフをしまい――銃も弾切れなのでしまう。ベレッタとリボルバーを出してもいいが――お互い銃が効かないなら使うだけ無駄だ。

 ならどうするか。答えはそれしかないだろう。

 

「Shall we Dance?」

「No problem」

 

 こっちに合わせるつもりかG3も武器をしまう。

 ……やっぱりか。G3自身がこれに乗る意味は――正直あまりない。シャーロックの恨みだかなんだか仕事を奪ったなら別に適当に撃って消耗させる方が合理的であり――つまりさっきの台詞は嘘っぱちだろう。

 となるとやりたいことは単純で自分が強いという演出であろう。G3が米軍に監視される戦いと言ったのもむしろ米軍に強さを見せつけることが主目的――さっき人工天才(ジニオン)について妙に固執してるようであった。

人工天才(ジニオン)は失敗じゃない』――おのれの存在価値を示すには天然の天才(ナチュラル)より上位であることを示す必要がある――とかそんな所であろうか。

 ……かなめといいG3といい。ずいぶん都合のいいように使われていたのかが垣間見えるな。

 

 読み合いなど面倒くさいので無造作に近づき、取り押さえるために当て身から入る。それに対応するG3は当て身を逸らし、蹴りを入れようとしてくるのでそれをアリア対策で身に着けた蹴り封じで威力を吸収し、バランスを崩させて取り押さえようとするが、その勢いを逆に利用し巻き込むように投げ飛ばそうとしてくるのを関節破壊に切り替えて打骨(パージ)しようとするものの左腕を盾にするように動かれて失敗し、想定以上の硬さの左腕は破壊することも出来ないので瞬時に距離を取る。

 

「米製は硬いんだな」

「頑丈さだけが取り柄だからな」

 

 義手――左肩から先は人工的な筋電義肢(マイオエレクトリック)を付けているようだ。頑丈さから考えておそらく米軍製の戦闘用であろう。

 捥がれたのか斬られたのかは知らないが相当過酷な戦場で失ったのかな?

 

「なるほど。大体スペックはわかった」

「なんだ?降参でもする気か?なら跪いて俺の下につくと言え。こっちにも女もいるから全部くれてやるさ」

「俺は別に好色家でもねえよ。そもそも別にモテる方でもねえし。義務感で相手されるならなお願い下げだ。純愛派なんでね」

「どこがだ?――まあいい。跪いて『緋弾のアリア(Aria The Scarlet Ammo)』を連れて来い」

 

 ……なんでアリアの話が――そういやクソどうでもいい話だが扱いが雑な放置過ぎてあまり意識してないがヒイロガネ?とかいうゴミがなんかすごいお宝なんだっけ?

 面倒くさいし心臓移植で対応するのが最善じゃねとか思ってはいるがアリアとセットで世界最高峰の魔女(パトラ)以上の価値があるとか聞いたような聞いてないような……。

 俺の方が強いから全く理解に苦しむ話だがまあ欲しがる奴は欲しがるか。

 

「で、なんで緋緋色金が欲しいんだ?死者蘇生でもしたいのか?」

「…………………………………………サラ博士のことをフォースから聞いたのか」

「……は?」

「知らねえのかよ。――少しは教えとくか『緋弾のアリア(Aria The Scarlet Ammo)』はシャーロックの緋色の研究で予言されていた『超々能力者(ハイパーステルス)』。いま世界にいる大道芸人(ステルス)どもとは別次元の――古い連中は女神が降臨するとか騒いでるような神がかった力を司る超人。それぐらいは知っているだろう?」

 

 ――全く知らない。

 なんか聞いた気もするけど別に興味は全くなかったし。周りもやる気なさそうなので気にしてもなかったが話としてはキーマンなのアレ?ももマン食べてるだけの小動物(いもうと)じゃなくて?

 

「流石に死者蘇生は無理だろ?」

「ところがだ。――現代の超能力学(ステルスロジー)を越えた力は確認されている。――お前も知っているだろう?『緋天・緋陽門(ひようもん)』――()()()()()技をよォ」

 

 時空を操るのかは知らないが――時空間を捻じ曲げた現象には悲しい事に心当たりがある。

 シャーロック(カスジジイ)が今年の夏に3年前のアリアに緋弾を撃つというタイムパラドックスを目の前で目撃している。

 

「あれはシャーロックがアリアを操ってやった事だ。なんでお前が知ってるのかは知らんが二人の緋弾持ち用意するなんて無理だから諦「アリア一人でもできてるんだぜ」

 …………はあ?

 

「数年前に日本に漂流したピラミッド――東京カジノのモデルになったそうだな」

「それがなんだ?」

「それはパトラのピラミッドだ。アリアが先端を過去に飛ばしてな――信じられねえなら破片を放射年代測定してみたらどうだ?俺はもうやったぜ」

 

 あの時のピラミッドは消えたんじゃなくてタイムスリップしていたのか。そして――G3の目的は

 

「過去に行って悲劇を無くしたいってか?やめとけよ――タイムパラドックス系作品なら余計ひどい事になると相場が決まってる」

「知ったこっちゃねえ。()()()()()()()()そんな事にはならねえ」

 

 ……どーだか。

 

「なら俺なんか無視してアリアを攫うだろうに」

「そん時はまだ確信はなかったからなぁ。確信したのはここ数日の事だ」

 

 逆に言えばここ数週間で確信できるほど調べていたという事か。最初の襲撃から日本周辺で調べていたのかもな。

 なるほど。全く気付けなかった。資金・情報収集何もかもがG3が上回っているのだろう。

 

「自然の摂理に逆らう気か?」

「知るか。俺は神にだって逆らう覚悟だ」

 

 俺はサラ博士の事は知らないが――彼の覚悟、情熱から……真摯に愛していたのだろう。

 それを俺は笑わない。立場が違えばそうなっていたのは自分かもしれない――違いなんて何もないのかもしれないほんの少しの差。

 だからこそ俺は――

 

「お前は強い」

 

 それは認める。

 正直思っていたよりも時間がかかっていて評価の上方修正は必須だろう。

 一発殴るだけでケリがつくなんて甘い考えは捨てなければならない。

 

「恐らく俺より過酷な戦場経験と勝利――俺との経験値が違う。まあ日本の方が生ぬるい治安でそういう危機にあまり直面しない環境の差でしかないが」

「……?何が言いたい」

「強さだけならお前の方が上だ。だけど残念な事だが――相性が悪かったな。俺が勝つ」

 

 ――その覚悟を踏みにじらなければならない。

 俺の拳がG3の顔面に突き刺さり――ガリオンの端まで吹き飛ばされた。

 

「傑作だな」

 

 想像より飛んで行ったな。全く対処できていなかった証拠だ。

 

「な、何をしやがった!?」

「近づいて殴っただけだ」

 

 普通ではないかもしれないがな。

 G3は今の行動にきっと混乱しているだろう。なぜなら――

 

「どうした?俺が二重に見えたのか?」

「!!?――何かしたのか?」

「大したことじゃねえ――お前が弱体化しただけだ」

「――ッ」

 

 大仰に嘲るように芝居がかったように言う。

 

「脳卒中――英語ならstrokeか?遠山の男は天下無双。特異体質としてはよく見てよく考えられる生き延び勝利しやすい特性だ――だが物事にはリスクってのがある。遠山の戦士は二人に一人――脳卒中に似た症状を起こして死んでいるんだ。――特に脳髄に無理な負荷をかけていると起きやすいらしいぜ。――例えば毒を投与して限界を超えるとかなあ。なるとは思っていたが――残念だ」

 

 脳卒中の症状には物が二重に見える後遺症がある。

 脳機能の欠損であり、G3は今の一撃でそれを自覚した――それだけだ。

 

「そんなわけ――ば!?」

 

 何か言いながら突っ込んできたG3に拳を叩きこみながらあの時の事を思い出す。

 


 

「分身の術――でござるか?」

 

 ある日の事、訓練に(勝手に)使っていた廃ビルで息抜きがてらの雑談を陽菜としていた。

 

「忍者と言えば定番じゃん?影分身ってやつ?実態を持った分身とか意味不明だってばよ」

「師匠はまた漫画の技の再現を試みてるので?」

「まあそんな所かな」

 

 そういえば忍者漫画だからとウチにあるジャンプ単行本を読みに来てたからバレバレだったか。

 

「拙者の分身の術は案山子などの人型を使ってそこにいると錯覚させるような使い方を分身の術としておりましたが……」

「そういうんじゃないんだよな」

「お役に立てず申し訳がない」

「別にただの雑談でしかないから気にせんでいいよ」

 

 まあ探り入れただけで教えてくれるとは思っていなかったが実際に使えるならシュンとしてる陽菜にはならないからマジで知らないんだろうな。何となく先祖が風魔を子分にしていたとあってなんか知っているのかと思ったが。

 ん?錯覚?

 

「ちょっと陽菜。確かめたいことがあるからちょっとそこに立っててくれないか?」

「? 御意」 

 

 そこでやった実験はうまくいかなかったがきっかけにはなった。

 


 

 まず殺気を放ちつつ構えながらゆっくりと前に出る。

 G3の眼がしっかりと俺を捉えた所で、殺気を消して一気に踏み込みぶん殴る。

 

「!?――なんでだ!?なんで当たる!?」

「お前の動きが悪いからだろ」

 

 嘘である。

 さっきは脳卒中と言ったが実際には違う。

 やった事は忍術的には分身の術とか漫画的には残像拳と呼ばれる類の技だ。

 術理的にはシンプル。緩急で相手の眼球を見て瞳の焦点距離を見抜き、一旦、その距離に正確且つ緩く入って自分の姿を網膜に結像させ、そこから急に人間の大脳視覚野の時間分解能を超える速度で出る。残像の発現場所は目なのか脳なのか科学的には知らんが。

 遠山家に伝わる『(カゲ)二技』というシリーズ技である。

 もっとも解説の巻物が120年ほど前に虫に食われて穴だらけで『なんとなくこんな技らしいが勘所は分からない』という状態で無責任に継承し続けてた使えん技筆頭の残像を出す『(カゲ)』を無理矢理形にしたわけだ。

 実態のある残像こと『(しん)(カゲ)』に至っては意味不明なので今後の課題である。

 

 閑話休題(話は逸れたが)

 

 上から見ている監視衛星から見れば急にG3の動きが悪くなったように見えるだろう。実際に最初には対応できていた速度に対応できていなくなっているように見えるはずだ。

 『1cm四方に書かれた文字だって解析できる』という触れ込みだったが姿が見えていようと対応できない動きなんていくらでもある。

 ここは経験の差だな。

 兄さんやブラド――シャーロック(クズジジイ)など対ヒステリアモードの経験は俺の方がはるかに多い。故にヒステリアモード相手にどう戦うかの研究も俺は一手先を進んでいる。

 値千金のヒステリアモードの経験は遠山家の伝統――遠山を討つのは遠山という悪い伝統があるからな。想定内ってやつだ。

 G3はヒステリアモードの鋭敏さを逆に利用されて『(カゲ)』が面白いほど決まっている。

 一般人より早く認識できる神経系の向上を逆手にとって緩急付けた動きで残像を捉えてしまっているんだからな。

 

「ならこれならどうだ!」

 

 四度目の吹っ飛ばしに痺れを切らしたのか

 飛行機の翼を蹴り

 ――ジャコッ!とせり出したのは近距離空対空ミサイル(ATAS)

 激しい光と煙を放って飛んできたミサイルは――人間に躱せる代物じゃねえ!銃で迎撃しても破片で死ぬ!?

 ならどうするか――逸らすしかねえ!

 あえて前に出て翼と平行に飛ぶように跳んで――両拳をミサイルに叩きつけて進路を斜め下方に変えられたミサイルをダメ押しとばかりに蹴りを叩きつけた。

 ミサイルは飛行機にぶつかって爆発するという不安をバカにするように翼に穴をあけて

 

――ドンッ!

 

 翼の内部で爆発した。

 

「おい!サード!このままだとガリオンも木端微塵だ。いい加減負けを認めろ!」

 

 その言葉に呼応したのか偶然かさらに炎上した。

 燃料に引火したのか!?

 ここ高度800m越えてるんですけど!?流石に生きて帰れる自信ねえよ!?

 

「――サラ。見ててくれ。俺は強い。完璧な兵器なんだ」

 

 譫言のように血反吐を吐いて呟き構えるG3を見て説得は諦める。

 殴り倒して気絶でもさせない限りずっと襲ってくるだろう――そういう妄執だ。

 

流星(メテオ)

 

 辛うじて聞こえた技名は――奇しくも俺の桜花と似た技だった。

 いや収斂進化のように同じ体質の最適解はそこに収束するのだろう。――そして俺はその収斂の先を知っている。

 

 ――ぽん

 

 と音がかすかに聞こえるかどうかの音が燃え盛る炎の音に掻き消される。

 

「……万旗」

 

 布のように柔らかく相手の攻撃を受け止める。

 その表情は――いや語る必要はないか。

 

「歯ぁ喰いしばれ!」

 

 大空の中で燃える戦場の決着は鈍い音とともに終結した。




誰だよ変な条件付けて見ても解析できないような戦いにしろなんて決めたやつは
無い知恵絞ってもうまく書けた自身はねえよ!?
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