遠山キンジの独白   作:緋色

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年齢を推測計算すると大体この時のマキリさんは24~26歳ぐらいになると思います。なので25歳として扱います。


正義に生きる

 人間想像してなかった方向からの不意打ちには思考が完全に止まるらしい。

 それでも少しづつ頭は回り始める。

 

 ――どうか違うと言ってくれ。

 

 震えるような声を絞り出すように問う。

 

「お前が伊藤マキリ?」

 

 それに対して彼女の答えはシンプルだった。

 

「そうよ」

 

 その答えを聞いた瞬間、頭に血が上りそうになるが、まだ早とちりや誤情報を掴まされた可能性がある。

 落ち着け冷静になれ。まだ銃を突きつけるな。

 

金叉(こんざ)という男の事は知っているな?」

「知ってるわ。私が殺したもの」

「――っ!」

 

 銃を構えようとして弾き飛ばされた。

 さっきの見えない攻撃か!?

 

「やっぱりこうなるのね。残念、です」

 

 舌打ちし、持ってた風呂敷を闘牛士(マタドール)のように展開して構える。咄嗟とはいえ銃を出したんだどうなってもおかしくねえ。

 

「二人共落ち着いて下さい!」

「こらこら二人共。殺したらダメだからね」

 

 あっちは完全に傍観モードようだ。さっきの自分でどうにかしろって話を考えると途中で割って入る事もない。桜ちゃんを抑えているし流れ弾以外気にしなくていいだろう。

 そう結論付けて改めてマキリを観察する。

 まずはヒステリアモードを強化するために全身をきちんと見る。敵相手に何やってんだと思わなくもないが、父を殺した相手なら万全のヒステリアモードでも勝てるかどうかわからない。相手が美人なのはよかったがヒステリアモードだと傷付ける方向性はなくなるからむしろデメリットかもしれない。

 だとしてもやらない理由はないが。

 

「落ち着けられねえな。父親殺した奴が目の前にいてよ。俺の事を嘲笑ってたのか?」

「そういうつもり、は、ありません」

 

 嘘はついてなさそうだ。となると割り切ってるのか過去の事としてるのか。

 割り切れないのは俺の方か…。

 兎も角会話でヒステリアモードの強化の時間を稼ぐ。

 

「知ってるか?銃で撃たれると滅茶苦茶痛いんだよ」

「?」

 

 コテンと首を傾げる。不意討ちで可愛いの止めろ。ヒスりにくいだろ。

 

「銃 で 撃 た れ る と 滅 茶 苦 茶 痛 い ん だ よ」

 

 マキリは恐らく自分と同類の増強型の怪人だ。

 ヒステリアモードとは別みたいだが、同類のニオイ的に脳に干渉して強化するタイプだ。雰囲気から考えると気軽に上げ下げできる事から考えて脳構造から違うんだろう。

 超能力者(ステルソロジー)の可能性はあるが対峙した肌感覚だと違う感じがする。感覚なので根拠はない。ただ見えない攻撃の正体がわからないため保留。見えない攻撃はさっき見た光景から考えると手から出す直線軌道の攻撃だ。

 手に注意しとけば受けれない事はないだろう。他からも出せる場合でも身体から発射する場合は対応できるはず。

 

「それで」

「だから撃たれないように解決策を考えたんだ。マントが元々矢避け用の装備なように。天幕が矢を防ぐためにあるように――はためく頑丈な布は銃弾を防げるんだよ」

 

 中学時代頭を撃たれた経験から防衛技をいくつか考えてはいたが、銃などの飛び道具持ち相手に一対一(タイマン)で強いのはこの構えだ。見た目から闘牛士(マタドール)っぽいので布旗(マタドール)と呼んでいる。

 

「つまり、防御の構え、ですか」

「違う。お互い傷つかずに相手を取り押さえるための構えだ」

「――っ!なぜ?」

 

 表情がわかりにくいが何か驚いてるな。既視感でも感じたのか?

 

「理由?女を傷つける男なんて最低だろ?恐竜時代から決まってるんだよそういうのは」

 

 ヒステリアモードの副作用で傷つけられないだけです。

 つまり、完全になれたな。

 ――こっからどうするか純粋に戦闘で勝てる確率は二割は超えてるが三割切っているだろう。25%ぐらいか思ったより高いな。

 頭が冴えてきた事で浮かんだ疑問を解消するか。

 

「いくつか聞きたい事があるが今何歳?」

「25だけど――女の年齢を、聞く、なんて、感心しませんね」

「今の実力から考えて10年前――当時15歳のあんたが父を殺せたとも思えん。今の実力でも無理だろ?」

 

 そう。どう考えても今のマキリの実力じゃ不意討ちの有利でギリギリ勝てるかどうかというレベルだ。そして父さんが不意討ちごときで不覚を取るとも思えないが、10年前の時点だと実力も今よりも低いだろうから確実に通じない。

 改めて考えると父さん化け物すぎないか?昔訓練の腹いせに兄貴と組んで不意討ちしまくって全敗したから補正掛かってんのかな?いや途中から面白がった爺ちゃんが本気の指揮してたしそうでもないか。

 

 もっともヒステリアモードだった場合、相手が女だから一般人でも殺されかねない事は伏せておく。

 

「確かにあの日――」 

 

 話を要約すると政治家を洗脳しようとするCIAの手先を追跡殺害しようとした所で身体半分が大使館の敷地に入った事で治外法権を盾に父が割り込み交戦。相手が子供で女という事でカウンターメインにしていたが途中から防御一辺倒になり父を殺害、しかしCIAの手先を殺せず撤退したと言う事だ。

 

 色々ツッコミたい所はあるが、タイミング良すぎる割り込みを考えるとどっかで見ていて大使館の治外法権を理由にようやく動けたのだろう。それで女子供に手を出せずに負けたと。まともに彼女を取り押さえれば死ぬこともなかったと思うのだが、話を聞く限り對卒(たいそつ)――ヒステリアモード中に脳卒中に似た症状を起こし死んだのだろう。

 

「……やめた」

 

 話を聞く限りどっちも正義を貫こうとしたことだ。これで後からウダウダ文句言うのは無しだろう。

 正義を貫こうとする以上――そういう事もある。

 心情的には父さんの行為の方が納得いかないのは伊藤マキリが悪者だという偏見がひとみさんとして行った任務を通して無くなってるのも大きいだろう。この人は多少過激なだけで全面的に悪いわけじゃない。

 だから手を引く。正直感情をどう処理していいのかがわからない。

 戦闘する気がそがれた姿を見て、張り詰めた空気が霧散していく。

 

「終わりかね?なら二人共考える時間は必要だろう。特に遠山君は。二人には一か月接触禁止を言い渡す。マキリ君は今すぐ本庁まで戻りなさい」

「しかし」

()()()()()()()()()()()()()()。戻れ」

「了解」

 

 名残惜しいのかこっちを振り返った後、ゆっくりと去っていった。

 

「それでは私も失礼させてもらうよ。ここの退去は明日の10時までだからそれまでは好きにしたまえ。カギはポストに入れておけばいい。それと私か彼女に用事があったらここに電話したまえ」

 

 おっさんもそう言って名刺を渡して去っていく。

 

「先輩」

「桜ちゃんも帰るといい。今は――少し考えさせてくれ…」

「……そっちにベッドがあるのでシャワー浴びた後にそっちで考えて下さい。明日の朝様子を見に来ます」

「はは。優しいね桜ちゃんも」

「先輩ほどじゃありません。それでは今日はお疲れ様でした」

 

 テキパキと去っていく辺りいい子だね。

 確かに頭ぐちゃぐちゃだしシャワー浴びてベッドに倒れ込む。

 今日は何もかもが疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『速報です。

浦賀沖を航海していた豪華客船が沈没しました。脱出した乗務員、乗客は救助中とのことですが、乗り合わせた武偵が船の内部に残っているとの情報もあります。その場合残された人命の救助は難しいとの事です。続報は情報が入り次第――』




おぎゃばぶらんどで好感度を稼がせ初手殺害を防ぎました
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