遠山キンジの独白 作:緋色
商談はうまくいった。
適当に短期的な問題をいくつか挙げてそれなりに出来るように見せて長期的に問題になる方は放置したが、3回目あたりの取引で一網打尽にする予定だからあまり関係ない話である。
上機嫌のボスがキモかったことを除けばおおむね予定通りである。
それからマカオのカジノへと足を進めたわけだが、そのカジノはどうも裏寄りのカジノのようでアウトローの気配のする客ばかりで、まともそうな客は入る場所間違えたとばかりにギクシャクしている。
深く考えなければ現金とカジノチップの換金レートがおかしかったり、手間はかかるがなぜか
そんな場所で俺は――
パチパチパチパチパチパチパチパチ
ルーレットで一点賭けでジャックポットにした結果。くっそ目立ってしまっている。
いや入った時から目立ってた気もするが、明確に目を付けられたのはスロットで銃弾より遅いしやってみたらできたとはいえ全部の絵柄揃える遊びに熱中して全部の絵柄コンプリート時に777で〆たのが不味かったのか。
いや目立つことは別にいい。勝手に情報が流れて裏の情報掴むための足掛かりにしやすいしな。攫えとかの依頼が出てれば適当に実行犯から上へと引きずり出せばいいし。――問題は
チラッと辺りを見回すと同時にジトっとした殺意に似た執着が失せる。
で、視線を戻すとジトっとした殺意を醸し出してくる。
……ひっじょうに鬱陶しい感覚である。
一目惚れに近い逆恨み感情のようだが――視線からしてたぶん女である。
言語化するなら――自分より若くて美しい女は死ね――と言った所か。100%無関係のクズに見つかってしまったようである。心の底から知ったこっちゃねえ話だ。
さっき見回した時にネックレスに扮した流星錘を身につけたチャイナドレスの女が不自然に視線を逸らしていたのでそれだろう。
用心棒かと思って無視していたが、目立っているだけで問題行為はしてない俺に眼を付けたとなるとカジノで獲物でも物色していたのか……。
心の底から面倒臭い。十分目立ったし一旦引いてクロメーテルの姿をやめて情報収集のために夜の街に飛び出すか。それともあえてさらに目立って揉め事呼び込むか。
悩む所ではある。
ボスの負けが込んで素寒貧になっていくのを横目に別のゲームへと移る。
ゲームとして負けも込みで楽しんでるなら兎も角取り返そうと必死になってる様は思ってたより寿命は短そうである。
適当に考えつつも面倒事を避けたいのかナンパの類が少ないので方針を変えるべきかと考えていると
――ッ
騒がしさの中に一定の緊張感が場を駆け抜ける。
緊張の発生元はカジノの警備や用心棒。さりげなく配置を変更して一定の流れを作る準備の意識するところを見ると――つまりVIPかなんかが来る兆候だ。派手に遊ぶ客か経営陣か。どっちにしても顔は知っといて損はないだろう。
さも当然のように護衛を付けて入ってきたVIPは客とは違って何かを探すようにカジノを見回す現代風にアレンジした和服を着崩し、明るい茶髪を花飾りで結い上げた姿は――
「……菊代?」
――確実にこっちを見た。
小声だったから聞こえるはずはなかったが、まるで呼ばれた事に反応したかのように見つけて歩いてくる。
目線ははっきりとこっちを見定めているため、確定的に目的は俺のようである。
――女装中に元カノと会うなんて気まず過ぎる!
できれば逃げたいがしれっと囲むように動いている警備も含めて変に動いたほうが面倒か。
実力的には逃亡ぐらいはできそうだが――話の内容次第か?
面倒なのでポーカーの席について飲み物を係員に要求する。
「ノンアルコールなら何でもいいで」
「タダだから遠慮せずに高い酒を頼んでもいいよ?」
「酔って判断力落すのはまずそうなので」
勝手に隣に座った菊代は合図をしてディーラーにカードを配らせる。
……二人きりでゲームって事らしい。
「賢明ね。さて、初めて――と言ってもあんたは私の事を知ってるみたいね?クロメーテルさん」
「日本のヤクザがマカオで大きな顔してるとは思いませんでしたけどね。鏡高組の組長さん」
厄介事の臭いには関知しないのか観客はすーっと遠巻きになるか関わりたくないのか去っていく。
やっぱ裏の関わりが強いのか彼我の戦力差と厄介事の臭いを嗅ぎつけたらしい。
その分周りを気にしなくてもよくなったのはいい事か。
「合法だから何を調べても無駄よ」
「……何のことです?」
「武偵でしょアンタ。あの小物を踏み台に何を探ってるのかしら?。2枚チェンジ」
「……とあるアレキサンドライトの装飾品を探してるんですよ。3枚チェンジで」
「なら木端武器商人じゃなくて抗争で潰した盗品密輸業者の方が探しやすいでしょうに。全員逮捕とか露骨じゃない」
流石に口からの出まかせが過ぎたか。そしてここ最近の行動もバレてるとは。ヤクザ絡むと面倒度が跳ね上がるからできるだけ関わりが薄い所を狙ったはずなのだが。
お互いにチップ一枚でカードを出しあえばワンペアとツーペアで菊代の勝ちとなり、チップとカードが回収される。
NEXT GAMEといったところで
「キンジ」
「――ッ」
「やっぱりね。――キンジが誑かしたってわけだ。あっんの女タラシめ」
―――っぶねえ!
バレたかと思って心臓止まるかと思ったぞ。なんか斜め上の勘違いされて助かった気がしなくも――いやさらに面倒臭い勘違いされてねえか?
配られるカードを確認しつつ
「一応言いますけど私男なので下衆い勘ぐりしないでいただきたいのですが」
「へぇ?色仕掛け専門と言われるCVR所属してて一時期組んでいたのに?キンジの不動産に住んで部屋にキンジ招いてるそうじゃない」
「……客観的に見ると言い逃れ不可能ですね」
これ商売的な釘刺しじゃなくて恋敵への牽制だこれ!?
どうしよう死ぬほど不毛な事になってる。
「えーっと菊代さんはどういう関係なんですか」
「1号よ」
「……………………は?」
「……あぁ、オランダ人だっけ?つ、妻よ」
……………………………………………………………………。
「はあ?」
「最近は少々、忙しくてお互い連絡取れてないけど。中学から付き合っていてね」
4年ほど連絡ないので自然消滅したと思ってましたが?
「キンジに波があるのは知っているでしょうけど、昔から自然体でカッコいい時とヒーロー的な格好いい時があるけど。自然体で男らしくカッコいい時よりヒーロー的にさらに格好いい時があってね。その時はカッコ良さマシマシで全部をモノにされるって強引な強いオスでありながら誰も彼もを守る正義のヒーローでもあった。そんなんだから色んな女に好意を持たれて迫られてて大変だったわ。偶然撮影できた血塗れになりながらも戦う姿を見せて、フラグをへし折る様に怖い姿だと認識させてた。中学の間はアレな子の風魔以外とは完全にフラグへし折れててうまくいってたのに。高校に入ってから克服したのかドンドン手を出していって……!別に嫁を作っているようだけど私は認めないからすぐにでもよりを戻して――でも今更戻って元の木阿弥だなんて都合がよすぎるし、積極的にアタックしたら押し込めそうだけど逆鱗に触れて妾に収まるなんて嫌だしブツブツ」
……ちょっと何言ってるか分からない
キンちゃんがキンちゃんなので不安に思った結果である。血塗れキンちゃんはスプラッタなホラーのでドン引きされる事を自覚した
なので好意を真っ直ぐ伝えてこない限り伝わらないようになった
つまり人為的朴念仁