遠山キンジの独白   作:緋色

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地理は適当です


読合

「爪に毒でも塗ってたのか?」

 

 指で殺すとなれば毒を疑う。素手で抉る攻撃は数あれど指を突き刺して殺す女は少ないだろう。汚れるし何よりそんな極端な訓練する女は普通は少ない。

 少なくとも俺は姐御以外知らない。

 

『いえ。俺が目撃したのは指を抜いたことで胸から血が飛び出た瞬間でしたので。毒を使ったかまでかはわかりません。ただボスは縛られた上で拷問されたみたいです』

「ふーん。それで女は?」

『血の目潰しで視界が塞がれてしまい逃げられまして……』

 

 姐御の性格だと木端犯罪者など即殺して終わりだと思うが――なぜ拷問を?

 別に殺したい人間でもいるのか……?雑魚を生かしてるのも気になるな。

 

『それとクロメーテル様の部屋もかぎが壊されて荒されてます!』

 

 原因判明。

 俺殺しに動いてるなこれ。

 姐御目線だと姿消した瞬間に外患を招くムーブしてるから、自分に罪被せたのが俺に見える――かもしれない。

 別ルートでクロメーテル(俺)に接触する予定だったが行動を知って殺しに動いたとかその辺だろう。たぶんきっと。違うと思いたいが否定する根拠は特にない。

 飽きてきたのかやる気なさそうなおっさんに対して指で抉る動作をして伝える。

 

『俺たちはどうすればいいんですか!?ホテルんの連中を誤魔化すのも限界がありますよ!』

 

 それはどうでもいいが邪魔されるのも困るな。

 姐御と接触できそうだし――こいつらは切るか。アングラ情報網と縁作るにしてもボスという餌もいなくなったしな。

 

「朱幇(取引相手)が潰しに来るとは思わないから、そこと敵対している藍幇の仕業だろう。マカオは特別行政区だからむしろそいつらの動きを抑制したい。ホテルの人間呼びつつ現地警察も呼んだ方がいい。お前らは混乱に乗じてさっさと逃げろ」

『わかりました!』

 

 流星錘を避けながら話しきり、事前に用意していた証拠メールを送信した後、今まで話していた携帯をぶん投げて証拠を隠滅させる。

 

『なにがぁ!?』

 

 おっさんが動いたことで集中が分散したことにつけ込み。携帯を流星錘にぶつけることで生じたわずかな動作遅れを利用して一気に近づき、ヒステリー女の膝裏に軽く蹴りを入れてバランスをさらに崩させる。

 

『なにすんだぁ!?』

「运气不好啊(運が悪かったね)」

 

 立て直そうとするヒステリー女の腕を押さえ込み――流星錘の鎖で一気に縛り上げる。

 

「すごいっちゃすごいが手間取りすぎだな。変身しないのかぁ?」

「妹いないとやる気でないんで。あと怪我する気もなかったしこんなもんでしょう」

 

 何か探ってるおっさんに適当に返しつつ、おっさんに軽く情報共有をする

 そのままオトして失神させたヒステリー女は――その辺に転がしとくか。どうでもいいし、運がよければ逃げるだろう。

 

「マキリが出たか……。目当ての情報じゃないが動かざるをえねえなあ」

「あんたホントに別件で来てたのか?じゃあこの件俺に任せて仕事しといてくれ」

「ジムがジオングに勝てるかよ。ガンダムがいてようやく会話に持ち込めるかって所だ」

「……俺の事信用してねえと。勝手にしろよ」

 

 けたたましいサイレンが通り過ぎながらホテルの方へと集まっている。

 その集まり方の偏りを推測してホテルから抜けるルートへ向かう。

 

「迷いなく進んでる様だが何か根拠があるのか?」

「別に。あのホテルから俺が逃げるならこのルートだろうなってのをなぞれば。俺を狙ってる姐御もそれを探るようになんか監視してるだろう。そこで証人保護プログラム書類(これ)渡せば終わりだ」

 

 アメリカほどじゃないがこの世界線だとこの手の保護が結構盛んにおこなわれているようである。というかそれもなければ元イ・ウー組なんかが平然と過ごせるわけがなく、理子なんかは架空の犯罪者を仕立て上げて誤認逮捕されたが司法の恥部として誤魔化して――みたいな変なストーリーで相当ややこしくしているようである。

 

 閑話休題(それはそれとして)

 

 姐御の性格なら俺が気付いたことに気が付いてなんかの印を残しているだろう――。誘い込んで捕らえるか殺すために。

 そうなるとおっさんと共にいると逃げられそうなんだよな。

 

「甘いな」

「おっさん近くにいると姐御が逃げそうだから離れてろ」

「固いこと言うなよ」

 

 失敗したら全部おっさんのせいにするか。と思った所でザッと踏みしめてどこかへ消える。

 遠巻きに監視する方針にしてくれたらしい。

 ある程度進んだ暗がりの一つに印があった。血で描いた六芒星が。

 そう言うと目立つと思うだろうが僅かに垂らした血の雫を拭ってわずかに香る様にした鼻の利く人にぐらいにしかわからないであろう印――の対面の壁に石で削った三つの跡――南を示す4式班の符牒だ。

 方向的にあるのは――山?

 


 

 真っ直ぐ南へ向かった先の山に入口とは別にわざとらしく踏み荒らされた痕がある。

 観光客の悪戯にも思えるが微かなサフラワーの香りから姐御の残した印であろう。

 それをたどって奥へ奥へと進む。

 

「都会っ子に自然の闇の深さはきついんですけど?」

「でしょうね。だから誘ったの」

 

 姿が見えないのに声がどこからするのかわからない。

 前に姐御が少しだけ語っていたが自給自足するような山奥のどこかの閉鎖的な村で過ごしていたらしい。つまりここが俺を一方的に狩るための狩場というわけか。

 

「姐御お話g「いくつか質問をします」――なんすか」

 

 ここである程度、姐御を納得させなければ話すら聞かずに殺しに来そうである。

 首筋に蛇が巻き付いたような殺気は何かを信じたくないか揺れ動いている。

 

「何を――したいの?」

「……ん?どの件に何に対しての行動の事だ?」

「あのような――クズと組むなど」

 

 一瞬、怒りが抑えられずに居場所のわからなくする技術がブレたな。右斜め前方にいる。

 まだ気づいてないふりをするか……。

 

「大事の前の小事。ボスを囮にして色々探るつもりだったのに姐御のせいで計画狂っちゃいましたがね。もう使えないんであれらは日本に逃げ帰ったらすぐに捕まるでしょうけど」

「何を――探ろうと?」

「香港藍幇――あと姐御も並行して探す予定でしたけど」

「なんのために?」

「藍幇は妹の為――姐御探しは俺の我儘ですね」

 

 よかった。思ったよりは話が通じそうである。

 

「我儘?」

「姐御には死んで欲しいとぉ!?」

 

 懐から書類を出そうとしたところでいやな予感がして全力で飛びのく――うっすらとマキリの影を捉えたが矢指――空気の弾を飛ばす技で頭を弾くつもりで撃ったらしい。

 なぜかは知らないが説得は失敗したようである。

 おっさんの気配は逸れたのか見失ったのかいつの間にか完全に消えてるし、俺がここでどうにかするしかねえ!

 転がる様に木を盾にできる場所へと移動し、そのまま木を登って木から木へと飛び移る事で居場所を示しつつ近付く。

 姐御の矢指の射程は大型拳銃程度、威力もだいたいそれぐらいである。だが拳銃と違うのは空気の塊を飛ばすため銃弾が存在せず、マズルフラッシュや銃声が存在しない事である。

 風呂敷があれば布旗(マタドール)で強引に突っ込むのアリはあったのだが――ないものは仕方がない。

 メタ読みで何とか生き延びているが、不利なフィールドでどこまでやれるか――真っ直ぐ来ないで色街にでも寄ってヒステリアモードになればよかったな。

 焦りで後手後手になって不利になってる気がする。

 とりあえず最善は姐御を一瞬でいいから止めて書類を渡すこと。次善は俺を殺した姐御が書類を発見することかな?

 最悪は俺が死んで姐御がテロリストと化すことか。

 今でもテロリストみたいなものではあるが、誤魔化せる範囲であろう多分。

 

「私を始末できるとでも?」

「実は俺って超すごいんだぜ?」




多分次でマカオ終わりかな
作るの苦戦してる分思ったより長くなったな……
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