遠山キンジの独白   作:緋色

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ツッコミどころしかない


カチコミ

 夕暮れ時、日も完全に沈みかけている時期に兄弟らと歩いていた。

 

「家族水入らずで遊びに行くのも楽しみだねー♡」

「出入りだっての」

「あたしも殴り込みしたーい」

「悪いけど俺らが暴れてる間に裏から逃げないようにする足止めはいるからな。逃亡時のサポートとかできるの他にいないし」

「それもそうだけど」

 

 かなめは微妙に納得できてなさそうだが相手が相手だからそうなるのはしょうがないという感じか。

 かなめは「それじゃ後でね!いつでも始めていいよ!」と元気よく姿を消す。科学戦士は消えたり跳んだり無茶苦茶だなあ。身体スペックと外付けの機械だから参考にならんし。

 かなめが姿を消したので煙管を取り出して、煙を燻らせる。

 同じトリガーでなることは難しいし、先に妹でなるより薬で緩くなっといて、後で合流した時にリアル妹で本格的になる感じである。

 戦闘中は悠長に煙を燻らせてジワジワなるなんて難しいしな。

 

「兄貴が吸ってるのタバコ(cigarette)じゃねえよな?」

「ん?まあ出入りだしまあ着くころにはヒステリアモードになっとくべきかなって」

「なんだよ。即効性の持ってねえのか?」

「バカヤロー雰囲気出てカッコいいだろうが」

「カッコ付けなのかよそれ」

 

 呆れた様子だが性的興奮がトリガーのヒステリアモードの薬って要は媚薬なんだからあんまり強い薬に慣れたら今後困りそうなのでほどほどにしている。

 チラチラと雪が降り始めた中、和風の豪邸の門の前へと到達する。

 

「予定通りならいるはずだけど」

「あぁ、い(・)る(・)ぜ(・)」

 

 パパパッと何らかの端末を操作したジーサードは確信を持ったように言う。

 衛星からの監視でもしてるのだろうか?まあいいや。十分準備できたし問題ないだろう。

 

「それじゃ――行くか」

 

バァン

 

 本拠地の門を蹴破り侵入する。

 

「か、襲撃(カチコミ)じゃぁー!?」

 

 一拍してから、見張りと思しきチンピラが叫び、その声に呼応してぞろぞろと雑魚共が湧き出してくる。

 いいね。こういうの。

 


なぜカチコミをしているかというと。少し話はさかのぼる。


 

「サードとかなめは『師団(ディーン)』に付いたって認識でいいんだよな?」

「そうだよ」

「なんだ?戦争か?」

「まあなんとかかんとかの戦争関係だから戦争の話ではあるが」

 

 朝起きたら来客用の布団用意してやったにもかかわらず、俺の布団に潜り込んでたキツネのせいで一悶着あり、ついでだからと朝食後にサードとかなめを集めて話すことにした。

 

「アリアから殻金とか言うのが抜けたのは知ってるだろ?それが4つ『眷属(グレナダ)』が持ってるわけだがそのうちの一つが東京に来てるそうだ。――今も東京にあんの?」

「鬼祓結界の外じゃからわかりにくいが少なくとも東京の中にあるのは間違いない」

 

 婆ちゃんが朝食とは別に作った稲荷寿司を食っていた玉藻は話を振られるとふんにゃり顔をきりっとさせてから見解を述べる。

 

「『眷属(グレナダ)』か?」

「うむ。上海から東京に渡った反応がある。恐らく藍幇(ランバン)じゃ」

「藍幇(ランバン)か。兄貴と揉めてる相手だな」

「向こうが喧嘩売ってきてるんだよ」

 

 ジーサードに揉めてる相手と認識されてるってことは情報提供してるであろうアメリカ周りはそういう認識なのだろう。まだこと起こしてねえのにハイジャック犯辺りで敵対してると認識されてんだろうな。面倒なことに。

 こういう争いには積極的に介入するイメージのアメリカが沈黙してるのが謎である。欧州の方に介入を伺っているのか?ジーサードが負けたから様子見とか?

 ……わからんから考えるだけ無駄か。

 

「んで、それ見つけ出して奪いたいから手伝って貰う」

「はーい」

「それはいいけど、兄貴は何かあてはあんのかよ」

「あったらお前らに頼らずすでに殴り込んでる。俺もこれ知ったの昨日の夜だぞ。今日一日は情報収集に当てて明日には殴り込むくらいのつもりだ」

 

 明後日には教務科(マスターズ)に行って修学旅行Ⅱの行先を香港にするように工作が必要で学校に戻る事になってるし時間的な余裕はあんまりない。さらに学校戻ったら妙な噂が流れている関係でしばらく行動できなさそうだし。

 理子とジャンヌが手回ししてるはずだがなんか不安になる組み合わせなんだよな。

 

 閑話休題(それはそれとして)

 

 人工天才(ジニオン)の天才っぷりを軽く見積もっていたため、昼には大体の目星がついたそうだ。いや早すぎるだろ。俺はあんまり情報取れてねえのに

 

「んじゃまず俺な。拘留中の曹操シスターズがなんか知らないか問い詰めようと思ってたんだが――近々、保釈されるとかで面会拒否られてな。調べてみたら億単位の保釈金で強引に保釈されるんだが――それを払う会社を調べてみると――ヤクザのフロント企業だった。流石に変だと思ってさらに調べたらどーも藍幇(ランバン)がヤクザと手を組んで資金提供してるようだ。わかったのはこれくらいだな」

 

 それがよりによって鏡高(かがたか)組だったわけだ。赤い糸か何かで結ばれてんのか?偶然にしては都合がよすぎる気がする。

 運命が潰せって言っているのだろうか?アホの政権は外圧と金であっさり保釈決めやがったようだし、ホント頭痛い話である。

 

「次はあたしから。おにーちゃんが言うには上海藍幇(ランバン)が極東戦役(Far East Warfare)を担当するとかでトップの諸葛(しょかつ)静幻(せいげん)の動きを探ってみたんだけど。日本に来てるよ。飛行機の乗客名簿も確認済み――帰りのチケットはいくつも取ってるから早くて今日、遅くて2週間後に帰るのかな?あと同行者は二人いてどっちも女の子みたい」

「最後は俺だな。東京中の監視カメラをハックして画像認識を行ったんだが、兄貴を襲った小娘――ツァオツァオが名古屋行きの新幹線に乗ってるのが確認された。ほれ、生放送だぜ」

 

 そう言って見せられたのは上から撮ってると思しき映像――衛星監視かこれ。

 

「ナゴジョと交流してんのか――そういやあいつ中国の武偵校生として留学に来てたな……」

 

 ナゴジョのバカみたいな制服を渡されてる曹操(捕まってるのとは別にまだ一人いたらしい)を見つつなんか暗躍してるんだろうなあとあたりを付けておく。

 

「それを片手間に兄貴の女がいる「かなめ殺気を出すな」――ジャパニーズマフィアの鏡高(かがたか)組ってのを調べてみると今夜会食があるそうだぜ。藍幇(ランバン)のコウ老子ってのと」

「コウ――老子?」

 

 老子は「偉大な人物」を意味する尊称から先生とか言う感じで使われるからコウとやらが重要人物なのはわかる――だが、香港トップの諸葛(しょかつ)静幻(せいげん)を差し置いて老子扱いされるやつがいるのか?

 いやいないだろう。組織図的にアレの上は藍幇(ランバン)全体のボスとNo2,3で、それ以外は各所のトップが蠢いているそうだし、そんなのが出張ってくるとは思えないし、コウとやらは諸葛(しょかつ)が使ってる偽名って所か。

 

「明日はどうなるのかわかんないぜ」

「なら殴りこむか。別件入ったから後回しにしようかと思ってたが――潰しに行くか今夜にでも」

 

 作戦を練る間、終始「コウロウシ?」と首を傾げている玉藻は来ないと思っていたのだが、藍幇(ランバン)には相手次第で参戦するとか我儘を言いだした。

 ので置いて行こうと思ったのだが、お守りに化けて邪魔にはならないようにするとのことで連れていくことになった。

 


 

 経緯はそんな感じである。

 

「おい兄貴。あれ全部殺していいんだよな?」

「日本じゃ武偵の殺人は禁止だっての。それに神武不殺――強い奴ってのは殺さずに勝ち続けられるやつなんだよ。父さんみたいにな」

「オヤジが?」

 

 ジーサードは俺の発言で何か気になったようだが。父さん――遠山金叉は日本でも例外的な殺人許可資格(マーダーライセンス)職である武装検事でありながら生涯不殺を貫き通し、日本どころか世界でも十本の指に入る強者だったらしい。

 俺の知ってる父さんは熊とゴリラ足したみたいな体型してる癖に母さんに頭が上がらないようなおっさんだったんだがな。

 ぞろぞろと出てくる雑魚を蹴り飛ばしながら中へと進んで玄関をぶち破ると――レベル2の雑魚がボチボチ武器を持って出てきたようである。

 拳銃(ハジキ)や刃物(ヤッパ)は出てこない方がおかしいのでいいとして。

 

「AK-47(カラシニコフ)――密輸品だな?良かったよ外れじゃなくて」

 

 旧ソ連が制式採用したアサルトライフル――安心と信頼の(雑に扱っても壊れにくい頑丈さを誇る)裏取引が頻繁な銃である。

 この数は公安が許可出すこともないので、これで雑なガサ入れ(カチコミ)も(全員逮捕できれば)合法と言い張ることができる。

 

「手荒い訪問だねえ。来るとは思ってたけど」

 

 奥からAK-47(カラシニコフ)を持った部下を侍らせながら菊代が出てくる。

 

「そっちのは話に聞くお兄さん?顔はそっくりね。キンジの方が男前だけど」

「これは弟だよ。アメリカから急に生えたんだ」

「ふぅん?――今日は忙しいから帰ってくれるなら問題にしないけど?」

「だから今日来たのさ。客から宝を取り返さないといけないんでね」

 

「あたし…じゃないか……」

 

 か細い声は誰の耳にも届かず消え

 

「あんたたち!相手は二人だ!やっちまいな!」

 

 何かを誤魔化すような大声が開戦の火蓋をきられた。




Qバスカ―ビルメンバー呼ばないの?
Aジーサードと揉めてすぐだし、白雪にしか連絡してなかったのがバレてへそ曲げられてるのでリスクしかないという判断
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