遠山キンジの独白 作:緋色
「相手は二人ださっさと潰せぇ!」
怒号を上げるチンピラ共は負けたら面子に関わると必死のようだが――とんだド素人だな。
周りの雑魚の構えから慣れを感じない。多少訓練してはいるんだろうが武器手に入れただけといったところか。
……いや武器の使い方学んで練習できる武偵校基準で考える方がおかしいか。
抗争したら一発で潰されるような弱小はできるだけ抗争を避けていただろうし。金回りに余裕ができたから装備を整えたって所か?
短刀持って突っ込んでくる雑魚を腕を掴んで反らし、膝蹴りでくの字に折り曲げる。
短刀を奪って雑魚の襟首を掴んで、前方からの拳銃の盾にする。防弾スーツだから死にはしないだろう。
2,3発で
視界の端で拳銃を構えるのを捕らえたのでポイっと投げた短刀が空中で拳銃の弾を受けて空中で回転する、普通じゃ見れない光景に意識を逸らした拳銃持ちに肉薄し、拳を叩きこんでダウンさせる。
姐御にやられた後遺症もなくリハビリには丁度いい程度のサンドバックだ。
「AHAHAHAHA!そんなんじゃ準備運動にもなんねえぞ!」
と、なんかハイになって雑魚をまとめて殴り飛ばすジーサードがいるから何とかなるだろ。
純日本人の俺と違ってジーサードは戦闘寄りに遺伝子を合わせてるらしく、基礎スペック自体は俺よりは上である。対ヒステリアモードの経験差で勝ったが……次やるときは負けるかもしれない。
まあ単純に俺並みのがもう一人いるんだからうまく合わせられれば1+1で600だ!10倍だぞ10倍理論で多分勝てるだろう。たぶん。
今は雑魚掃除優先だな。
「雑魚でも数が多いと面倒くさいなあ」
「なんだ?兄貴はもう疲れたのか?」
「流れ弾で雑魚が死なねえように気を使うの面倒くせーんだよ」
「丁寧に怪我が残らないように気を使う必要ねえだろ相手はジャパニーズマフィアの男だろ?」
「……言われてみればそうである」
武偵三倍刑とかの関係もあるが、一応できる限り速やかに怪我をさせずに制圧するべしという基本を意識しすぎてた。マカオでの極端な例を見てああはなるまいと反発が大きいとはいえ、潔癖症は桜ちゃんの領分であるし振れ幅のバランスが取れてなかったな。反省。
「なら楽にやれるな」
残ってた男に近づいて
やっぱ痛みが伴う様に
……確かあのハゲは幹部のレスラーだったか。
「おいおい勝てねえのわかってるなら引っ込んでろよ」
「ここで逃げるかよ……。後がなくて逃げて落ちぶれた後がないのがわかっててまた逃げるわけにはいかねえんだよ!」
何の話だよ?
レスラーは自分の頸筋に無針式注射器を打ち込んだ。
『ネビュラ』のような中央神経刺激薬の類だろう。痛みや恐怖心に強くなるための薬を使うとなると――逃げずに戦う構えか――これはしぶとそうだ。
「おおおおおおぉぉぉぉ!」
「だから何だよ」
雄叫びを上げてジーサードへ襲い掛かったレスラーに対し、慣れてるのかまったく動じてないジーサードは容赦なく拳を叩きこむ
「お?」
「耐えるつもりであれば一発ぐらい耐えれるわ!」
さっきまでの雑魚相手とは違って本腰入れたジーサードの拳を受けて耐えられるのは結構すごいな。明らかに殴られた所の骨が折れてるが。闘志を失わずジーサードの腕を掴みそのまま破壊しようをする。
「やらせねえよ!」
残った右腕を破壊されてはたまらないとばかりに腕ごと振り回して地面にたたきつけてから、拘束が一瞬緩んだすきを見逃さず引き抜き、蹴り飛ばして距離を取る。
「アドレナリンの過剰分泌。痛みすら感じてないなアレ。……おーいサード。手を貸そうか?」
「いらねえよ!兄貴はそれより周りの雑魚掃除終わらせたらどうだ!」
「あと3分で終わるからちょっと待ってな~」
「それより早く終わるっての!」
弱いは弱いが――思ってたより粘る。
虚仮の一念というか打たれ強さを鍛えて死ににくくしてるような印象だ。幹部共はチンピラ上がりで全体のこと考えて無さそうだし――菊代かな?レスラーにでも全体の向上をさせるために鍛えさせたのかもしれない。雑魚の戦闘スタイルの系譜が似てたしな。
「お前名前は?」
「……聞いてどうする。お前らみたいなスターが雑草を気にするなんて」
「お前がどう思うかなんて知ったこっちゃねえ!俺の拳で沈まずに組んで腕壊そうとした奴なんてお前が初めてだよ。次で沈める前に俺が名前を覚えててもいいぐらいにはな。俺はジーサードだ。」
「つよし――滝本剛史だ」
「いい名前じゃねえか。次のお前の一撃を俺は受けてやる。そしてその後の一撃でお前を沈める。かかって来いよ」
「…………もっと早く、お前に会いたかったよ」
なんか向こうでいい感じのやり取りやっててずるいな。
こっちが相手してんのクソ雑魚なのに。美味しいとこ取られてる気分だ。
まあ邪魔しねえけど。粗方、かたずけたので部屋の隅の方に雑魚を捨てる。
護衛なのかAK-47持ちは出張ってくる気はなさそうだな。東大卒らしい眼鏡とホストは顔を引きつらせてビビってるが菊代は予想してたのか――あれは時間稼ぎが狙いか?何か手があるのか?
ちょうど間にレスラーとジーサードがやり合ってるため何となく観戦の雰囲気だな。
「おおおおおおぉぉぉぉ!」
レスラーが最後に選んだ攻撃は渾身のタックルだった。
体格と体重が上回っていて相手が素直に受けるなら速度x質量のパワーで現状のレスラーが最大限ダメージが与えられるだろう。
その一撃を
「ふんっ!」
ジーサードは突っ張った右腕一本で受け止めた――ん?あの構えは?
「痛ってえな……。兄貴は何でこれでノーダメージなんだ?」
何かと思えば見様見真似で
「俺にダメージ与えるとは大したもんだ。次は俺の番だ――歯を食いしばりな」
レスラーにジーサードの拳が突き刺さり、レスラー錐揉みしながら壁際まで吹っ飛ばされた。
「なかなか強かったぞ
ジーサードが認めてる分、根性ある男ではあった。
見た目よりは粘ってたし強かった。
感傷に浸る間もなく次のお代わりが入ってきたようだ。
「てめえらそこまでだぁ!なりふり構わず殺してやらあぁ!」
今度はショットガンやら短機関銃を構えた組員がわらわら出てきた。本当になりふり構ってられないようだな。
組員の錬度が極めて低いが流石にあんな銃弾をバラバラにばらまかれたら対処するのは結構厳しい。
つまりばらける前に仕留めるしかない。
「サード。これ使え。一回ぐらいは持つだろ。たぶん」
刀を2本拾い片方をサードにパスして構えると意図を悟ったサードは「本気かよ?」と同じように構える。
「あわせてやろうか?」
「俺があわせてやるんだよ」
「そうかい!じゃあ撃つぜ」
「
「
俺の
「思ってたより威力出なかったな?」
粉々に罅割れた刀を捨てつつ、想定よりも威力が出なかったので不満を言う。
「兄貴と俺で打点がずれてたから威力が削られたんじゃねえか?」
「ふむ。
「待てなんだそのダサい名前」
「改善点含めてあとで受け付けるぞ――で、残るはお前らだな」
見上げると顔を引きつかせる菊代と脅える大人たち――ホント情けないねえやつらである。守ろうという気概は全くないらしい。
こんな連中の為に菊代が骨折ってるのがバカバカしい限りである。
「菊代。悪いようにはしねえから降参しろ」
「キンジが言うならあたしは悪いようにはならないんだろうね…………」
そこのエリートモドキ眼鏡を生贄にする気だしな。
「でもあたしはっ――」
がしッ!
と何かを言おうとした菊代の頭を、いきなり後ろからホスト風が掴んだ。
そして取り押さえて銃口を突き付ける。
はぁ?
「お前ら動くな!」
思わずかっとなって動こうとした俺だが意識がちゃんとこっちを向いてる事がわかったので動きを止める。
「やっぱりな。……姐さんが俺らを売る算段だったようですがそうはさせませんぜ」
ホストに賛同してるのか他の側近も動きはない。……これは裏で見切ることが決まってたな?
「姐さんが彼と付き合っていたのは知ってますよ。そしてゾッコンだったのも。姐さんは最近遠山のことばかり気にしてたんで調べたら、昔ヤクザ潰しで協力してたそうじゃないですか」
「…………え?…………いや違っ」
「おっと喋らんでくだせえ」
そう言って菊代を地面にたたきつけて黙らせるホストあいつ殺す
……中学時代、俺はマル暴の仕事に関わってたから変な噂として菊代が情報流して敵対ヤクザを潰してたとか噂が流れてたが事実無根である。菊代はそういう活動に関わらせてないし別に仕事内容を語ったことは無い。というか雑用ぐらいで面白い事でもないので話すこともない。
「切り捨てられるのは目に見えてましたが、時期が良かった。ちょうど太っとい中国とのルートができましたんでねえ」
「それをせっせと作ったのも姐さんですけどね」
思っていたより状況は最悪だったようである。もう内部で見限られていたんだ。少なくとも幹部の中では。
「二人ともおとなしく捕まってくださいね。下手に動くなら姐さん――彼女の頭が吹っ飛びますよ?」
「遠山キンジくーん?知ってるゥー?キミはこれから香港の
へらへらしてる元側近はこっちが動かないのを見て勝ちを確信しているようだ。
「おい。お前ら俺は動かねえが、菊代をこれ以上傷付けるなら殺すぞ?」
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