遠山キンジの独白 作:緋色
はよ直らねえかな……
この時点でクーデターして菊代を人質にする辺り東大卒と言ってもろくでもないようだ。ヤクザ如きに落ちぶれてるんだからろくでもないのは当たり前か。
「どっちが上かわかってないのかガキ共!」
「姐さんを逃がさぬよう注意してください。こっちの生命線です拘束するまで気を抜かないように」
ホストは偉そうに銃を向けてイキっているが、東大卒は細い希望に縋ってるのか割とやけっぱちのようだ。
まあその評価は正しい。
実質詰んでるが口八丁手八丁で建て直せばいいというのが希望かな?
「てめえら。あいつら縛れ」
ぞろぞろと側近してた生き残りが動くが――どうしたものか。
菊代に銃口が向けられてる以上、変な動きはできないため、相手がトチらない限り俺がここから逆転するのは不可能である。
俺は見捨てられないし「おいおい兄貴。元彼女だかなんだか知らないがマフィアがマフィア殺すだけだからこっちの責任にはならねえよ。なんなら俺がやろうか?」「俺がどうにかするから黙ってろ」
前言撤回、何とかしないとジーサードが動いて菊代が死ぬかもしれん。
かと言って下手な動きは菊代が人質にされてるし、こっちの動きには神経質になってるようだしな。
「菊代ー。これでもこのバカ共庇うのか?」
まずは時間稼ぎと共に不確定要素を排除する。
「状況わかってないのか!?お前r「黙れ。今、俺は菊代と話してる」
睨みつけたらビビッて言葉に詰まったのを見て、菊代に視線を戻す。
近づいてくる側近はあと5m余裕はない。
「なんで……あたしは組の為に頑張ったのに……こうなっちゃったの……?」
振り絞るような声が静かに響く。
女の涙は毒である。
「後ろめたい悪いことしてたからだろ。だから前にも言ったろヤクザ向いてねえってよ」
いつだったか将来的に俺が組を継ぐべきだとか言われたときの事だ。いや菊代と付き合うなら将来的にヤクザをまとめ上げるだったか?
そんな夢想を鼻で笑ったものだ
『エロゲの闇落ち系か?別に俺は善人とはいえんけど悪因悪果で酷い目に合う以外で可哀想なのはNGだ。あとNTRとヤクは滅べと思ってるんで。そんな奴ら従えるとか死んでも御免だ。というか俺が潰す』
『偶にキンジがよくわからなくなるよ』
『菊代だって別にヤクザ向いてないんだから考えるだけ無駄だろ。地元から離れた場所で治安維持側になるための学校に通ってるじゃん』
『あたしは新しい時代の手口を学ぶために』
『嘘つけ。なら俺の事ヒーローみたいとか言わねえよ』
『ちょ……!?あの時の聞いてたの!?』
『俺は菊代にカッコいいヒーローと言われたしな。格好良く幻滅されないために頑張ってるんだぜ。ま、いつでも助けて欲しいなら助けに向かうぞ?ヒーローだからな』
『カッコいいヒーローまでは言ってない!カッコいいまでだ!』
あの後照れ隠しかグーで殴られたりしたが、まあ些細なことなので置いておく。
重要なのは下手に助けようとして周りを庇うような事をされるのが一番面倒くさい。全責任周りが悪いとおっかぶせるつもりなのだから。
どっかから出したケーブルで俺らを縛り上げようとする側近を無視して真っ直ぐ菊代を見つめる。
声にならない声が菊代の葛藤を示しているようだが、むぅ……ガチで縛られる前に動かないとどうにもならないし。作戦失敗か?
「キンジ……助けて」
「言うのが遅い!」
殺気をばらまきながら近づいてきた側近を一撃で伸していく。
会話しながら意図的に威圧感を薄くしていった結果、これなら拘束できると無意識に警戒を下げていた雑魚には効果覿面で抵抗する間もなく倒れ、その光景に注目して警戒心を跳ね上げた菊代の周りは動き出した俺の動きを追えていない。
大きく放った殺気に否応がなく注目できても、殺気を消して前に飛び出した俺の動きには反射的にはついていけない。置いてきた殺気の幻影が解けるのは数秒もないが1秒もあればおつりがくる。
戦いに慣れてる武闘派ならすぐに暴の反射神経でAK-47でまとめて撃ち殺すという手段も取れただろう。しかし側近共は強そうな武器を持っていることで強くなった気になっているだけで武器を使おうという意識が数テンポ遅れている。
ガガガガガガッ
俺の放ったベレッタのフルバーストが吸い込まれるようにアサルトライフルのトリガー周りや弾倉の付け根などの急所を破壊し射撃機能を奪う。
「何がっ!?」
壊れた
呆れたものだ。こんな格落ちが相手とは……だが許さん
適当に側近を殴り飛ばした後、東大卒とホストの顔面を中心に数発ぶち込む。顎と頭蓋骨を砕いたので二度と顔の良さを生かすことはできないだろう。あとすぐに救急車を呼べば死ぬことは無いだろう。
割と顔立ちが整ってる事が普通の世界で歪んだ顔がどう扱われるのかは謎だが――まあ少なくとも碌なことにはならんだろう。
すぐに気絶してしまい、まだまだ腹の虫がおさまらないので
「やりすぎじゃねえの?」
「俺を怒らせたのが悪い――立てるか?」
軽く引いてるのかゆっくり階段を上ってくるジーサードに適当に言葉を返しつつ、菊代にハンカチ――は持ってなかったので風呂敷を渡す。
「あ、ありがと……」
いそいそと鼻血を拭う姿を見る限り、鼻血以外大きなケガはなさそうだ。
そうでなかったら後でゴミどもを追加で殴る必要があるが。
「おう。菊代の分まで殴っておいたぞ。……気が済まないなら俺があと数発殴っておこうか?」
「気を使わなくていいよ。あたしが恨まれないようにしてくれたんでしょ?私のこと好きなの?」
「好きだけど?」
「……ほっんとアンタってのは!」
顔を真っ赤にしてビシバシ叩くな。何が気に障ったんだこいつ?
「はい!そこまで!イチャイチャ禁止!これ以上はお義姉ちゃんに報告します!」
「別にイチャイチャしてないが。というか入ってきたのかかなめ」
「逃げようとしてたの全員捕まえて、どさくさに紛れていろんな資料持ち逃げしようとしてたのがいたから持ってきました」
ぷんぷんと擬音を出してるかのようなかなめが見せてきたのは違法取引とかに関する契約書などの証拠書類のようである。
「あ、それは……。遠山、それをどうするつもりだい?」
「組潰して責任はそこの
「あたしは……?」
「未成年略取の被害者」
親が組長だからといって未成年女子を組長にして矢面に立たせていたのだから立派な被害者である。緊急時に売り飛ばそうとしたことも含めてもう覆せない事実だ。
それにこの世界未成年犯罪に異常に甘いので(例:ハイジャック犯の理子や曹操姉妹)仮に菊代を主犯にした場合、ゴミ共の罪が軽くなる可能性すら出てくるし。
「まあ、今後俺が頼るかもしれねえんだから気にすんな。……今後俺が頼る存在になれるのか?」
「な、なれるわよ!」
「ならいいじゃん。……と敵さんお待ちかねのようだな。かなめ。悪いけど」
「はいはい。わかってますよー。お兄ちゃんほっっっっんとっっっうに美人に甘いんだから」
と手際よくテラナという
「俺そんな甘いか?」
「甘いだろ。んなことより屋上だな」
「屋根の上って屋上か?」
どうでもいい事を言いながら上へと向かう。
外から見た構造から相手の位置を考えて、彼らが借りていたと思われる中華風の部屋に入れば……桃とバナナを食べた跡、それと、生レバーの刺身が少し残っている。
食器の数から見て、3人、か。
「行くぞ、 ジーサード」
「ああ、二度と俺ら兄弟に関わりたくなくなるようにしてやろうぜ」
好きなの?
恋人
「好きだけど?」
家族
「質問の意味が分からない」
妹()
「たとえ嫌われててもお兄ちゃんを遂行する!」
友人・仕事仲間
「嫌いではない」
嫌いな相手
「嫌い」
シャーロック
「死ね」