遠山キンジの独白   作:緋色

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天然VS天然


続きもの

 クロメーテルの変装?変身?を解いてから所用を済ませ、女子寮前のビニールハウスに向かう。

 ここでは植物だの蝶やらなんやらを園芸部が育てていて園芸部の活動時間以外はあまり人もいない密会スポットである。

 

「キー君!こっちこっち!」

「理子」

 

 今回依頼した相手は峰理子。探偵科の中でもオタク趣味が高じて、ネットを使った情報収集(ハッキング)や盗聴盗撮、ノゾキなどを得意とするAランクだ。

 見た目は150cmないくらいのちっこさだが、出るとこ出てる美少女の部類でCVRに勧誘されたこともあるらしい。

 確かCVRに戦妹(いもうと)がいたはず。

 

「キー君はデート帰り?」

「白雪はしばらく合宿でいねーよ」

「じゃあ、遠慮なくクロメーテルさんとイチャついてたんだー!香水のニオイ着けて、でも理子に会う前にデートとかぷんぷんがおーだぞ」

 

 くんくん。

 ?

 自分で自分のニオイはわからんな。

 クロメーテルになる前は男のニオイ落せと戦姉(あね)に仕込まれてたが逆はあんまり気にしてなかった。

 というかこれが付き合ってる云々の原因か?

 今度から気を付けよう。

 

「はいはい。これで許してくれ」

 

 そう言って袋を渡すとひったくるように中身を素早く確認する。

 

「『しろくろっ!』に『白詰草(しろつめくさ)物語』に『(マイ)ゴス』だぁー!キー君好きだよ!ゲームの次の次の次ぐらいに!」

「間になにが入るのか知らんけど喜んでるなら何よりだ」

 

 依頼の対価にゲームって何なんだろうか。いやまとめ買いすると結構しっかりとした値段になるけど。

 まあ見た目のせいでR-15のギャルゲーが買えなかったという事で今回買って来たわけだが。

 学園島の店のバイトが変わったのと年齢偽造した武偵生(バカ)がいたらしく門前払いされたらしい。ちっこいとこういう時不便なんだな。

 

「む。これいらない。理子はこういうの嫌いなの」

 

 そう言って突っ返してきたのは『(マイ)ゴス2』『(マイ)ゴス3』だった。

 評判悪かったのかな?

 

「やりもしないでダメってのはゲーマーとしてどうなんよ?」

「ちがう『2』と『3』なんて蔑称。個々の作品に対する侮辱。嫌な呼び方」

 

 原理主義かな?

 言いたい事は何となくわかる気がするが

 

「なんで急に俺の本名駄目だししたの?」

「え?」

「いや俺は金次(キンジ)で兄が金一だからな。つまり二番目って言う意味だし急に否定してくるとは思わなかった。やっぱ長子がいいのか?兄貴の方がかわいがられてた気がするしなあ……」

「あ、いや!そういう事じゃなくてね!?」

 

 兄貴は婆ちゃんに可愛がられてて、ちょくちょく化粧とか歩き方とか――あれ?なんかこれ違う気がする。可愛がられてたのカナの方じゃね?

 

「まあ、俺は俺だから別にいいけど。理子が理子みたいなもんだ。OK?」

「――」

 

 あれ?ボケたつもりだったのになんか目をぱちくりさせてる。

 もうちょっと緩くボケるべきだったか?

 

「キー君もしかして知ってる?」

「理子がかわいい事は見ればわかるけど」

「女の子はいつだってかわいいのだ!」

「まー理子は普段から可愛く見せるために努力してるしな。それはすごいと思う」

 

 CVRで授業受けさせられると化粧だけで延々と知識がいるし、情報の更新も多い。

 理子は自分に合うものとか探し出しつつ、更新していってるすごい子なのだ。

 俺なんか面倒臭いのでナチュラルメイクと称して軽く整えるぐらいなのに。真面目になんであれでバレねえんだろう?

 最初にそれで何もしなかったらナチュラルメイク舐めんなとスパルタ教育コースだったけど。

 

「うにゃー!キー君ちょっとあっち向いてて!こっち見ちゃダメ!」

 

 またなんか怒らせたらしい。

 理子のノリに合わせてるつもりなのだが急にこうやって怒るんだよな。

 怒らせる褒め方したつもりはないのだが。女子の地雷はわからん。

 そんなわけで絶妙に苦手なんだよなあ。

 モンハンとか普通に遊ぶ時は普通に話せるんだが。こういう二人っきりのシチュエーションだとなーんかギクシャクする。あれかな人間的な相性が悪いのかな。

 

「よし!キー君がキー君なのはいつもの事だし、キー君の依頼さっさと済ませよう!」

「どういう事なのか知らんけどやっと本題か」

 

 話は大体知ってる内容だったが、興味深かったのは使用武術バーリ・トゥード(バリツ)と祖母がDame(デイム)の称号を持ってるらしいという事かな?

 

 バーリ・トゥード

 ポルトガル語で「何でもあり」を意味する20世紀においてブラジルで人気を博すようになった、最小限のルールのみに従って素手で戦う格闘技の名称で、総合格闘技の祖とか源流とか言われる武術だ。

 縮めて言う方のバリツは有名なシャーロック・ホームズが使ってたとされる謎の日本式格闘術だ。

 この世界だとイギリス発祥のボクシングと柔術などを混ぜたバーティツっぽい感じで使われているようだ。

 ここら辺はわけわからんが、この世界では武偵の始祖扱いされているシャーロック・ホームズが体系化させた総合格闘技となっている。まあ座学以外では意味のない知識だが。

 

 彼女の祖母はDame(デイム)の称号を持ってるそうだ。

 イギリスで叙勲された女性の称号で騎士階級の称号だ。男だったらKnight(ナイト)だな。

 王または女王が功績を認めて騎士団に入団を認める栄誉で一代貴族って奴だ。

 父は貴族院議員らしいし、代々王に認められることをしてきた家系って事なのだろう。

 アリア本人が貴族って訳じゃなく、あくまで貴族の娘。将来的には叙勲するべきと育てられてる貴族の娘って事なのだろう。だから貴族扱いなのかな?制度はよく知らんが。

 『H』の家とは仲が悪いそうだが、あの我儘っぷりを見るに貴族教育と相性が悪かったのだろう。いや悪い意味で成功してる気がするが。

 

「というか『H』の家って何?HANCOCK(ハンコック)とか?」

「理子は親の七光りとかそういうの大っ嫌いなんだよぉ。イギリスのサイトでもググれば?」

「雑談じゃなくてこれ依頼ってこと忘れてない?というか調べてすぐわかる事なのか」

 

 これぐらい自分で調べろって事かな。

 あとなんか聞きたい事あったっけ?

 

「ま、がんばれやー!」

 

 そう言って理子は肩を叩こうとして外し、腕時計に当たって地面へと叩きつけた。若干ワザとらしかったからさっきの報復かな?

 ガチャと、音がして腕時計の金属バンドは見事に壊れている。

 

「あ…、うわーごっごめぇーん!」

「台場で買った安物だし問題ない。寿命一ヶ月か。買い替えるか」

「だめ! 理子が依頼人(クライアント)の所有物を壊したなんて理子の信頼に関わっちゃうから!」

 

 そう言って、理子は胸元の襟首を引っ張って壊れた腕時計を胸の中に仕舞う。

 でかいからってそんなとこに隠すな。金色が見えたぞ。

 

「あと聞きたい事ある?」

「んー?いくつかあった気がするけど――おっぱいの衝撃で全部忘れた」

「キー君のえっちぃ~。じゃ、りこりんはここで!ばいばいきーん!」

 

 相変わらず自由だなあ。

 それはさておき、しれっと置きっぱなしの『(マイ)ゴス2』『(マイ)ゴス3』どうしよ?

 …面倒だし見なかったことにしよう。

 

「で、なんか用かい?」

「気がついてたのね」

 

 理子と話している途中で近寄って来たのには気が付いていた。すぐに離れてったから気にしてなかったけど。

 大方、理子が温室から出たのを見てから来たって所か。

 

「話があるの」

「ドレイにはならんぞ」

「それは謝るわ。ごめんなさい。焦り過ぎてた」

 

 そう素直に謝られるとやり辛いな。

 

「一応聞いてやろう」

「ありがとう」

 

 すーはーすーはー。

 緊張してるのか深呼吸してる。

 何か緊張する事あったのかな?

 ……あれか。お兄ちゃん呼びで好きに動かそうってやつか。

 

「キンジ。ママを助けたいから協力して」

 

 ……?

 

「なんか拾い食いでもしたのか?」

「しないわよ!」

 

 違ったらしい。素直に弱みを晒すようなタイプだとは思ってなかった。

 なんかプライドへし折られる様な事でもあったのだろうか?

 

「いや、プライド高くて見栄っ張りなタイプだと思っていたから想定外でな」

「プライドより守りたいものがあるのよ」

 

 小声だけどお兄ちゃんと呼びたくないしって、聞こえてるぞ。

 指摘しても面倒そうだから言わないが。

 さて、俺が知っててもおかしくない情報ってどれくらいなのかねえ?

 クロメーテルとして得た情報を全部知ってるのはおかしいから、ある程度ぼかした感じで話さなければな。

 

「母が捕まってるんだって?何したのか知らんけど裁判で勝てるように頑張れば?」

「最高裁まで時間がないのよ。それまでに冤罪を掛けた連中を捕まえないと絶対に間に合わない」

「冤罪ねえ。『武偵殺し』の真犯人でも探そうと?」

 

 『武偵殺し』の手口に対して距離を詰めてきた以上、目的はそいつかな?

 『武偵殺し』自体は今年の1月だったかに逮捕されてたはずだが、その件で最高裁まで時間がないとすると、下級裁隔意制度――証拠が十分に揃っている事件について、高裁までを迅速に執り行い、裁判が遅滞しないようにする新制度――でも適用されたのだろうか?

 あの制度は速度重視だから冤罪を生みかねないと批判されてるが何故か強引に設立された悪法の一つだ。一番の悪法は銃規制緩和と武偵制度だと思う。

 話を戻して、裁判までに真犯人を捕まえて冤罪を晴らそうって事か?

 

「他にもいるけど、まずは『武偵殺し』の逮捕が目的よ。懲役864年から742年まで――122年分の冤罪を証明できれば裁判自体の差戻し審からの無罪も勝ち取れるかもしれない」

 

 改めて見ると日本とは思えない懲役年数だなあ。制度的に罪に年数加算するアメリカみたいだ。素直に無期懲役でいいと思うのだがここら辺は司法取引との兼ね合いなのだろうか?

 いやそれよりも

 

「"まずは"?他にも何人もいるのか?『武偵殺し』だけなら兎も角、流石に付き合い切れねえぞ?こっちも忙しいんだ」

 

 始業式の件が『武偵殺し』本人ならあの手の爆弾魔は近いうちに必ず事件を起こすだろうし、付き合うとしてもそこら辺が限度だろう。

 自分も兄探しをやりたいし。

 

「『武偵殺し』だけならいいのね?」

 

 アカン墓穴掘った気がする。

 

「俺も国家機密関係探ってるから、長期間は協力出来ねぇからな」

「何探ってるのよ」

 

 話して大丈夫だっけ?

 まあこいつも国家機密関係探ってるっぽいし別にいいや。

 

「イ・ウーとかいう荒くれ者共だ。母親を救いたいなら余計な問題に首突っ込まない方がいいだろ」

「奇遇ね」

「なにが?」

「『武偵殺し』はイ・ウーのメンバーよ。ママに冤罪を掛けたのもイ・ウーの連中ね」

「…まじか」

 

 これは上司の監視の下少しずつ情報取っていくより、可能性が高そうだぞ?

 ――真実ならばだけど。

 

「まずは『武偵殺し』までだ。それまでは協力してやる。他の件はその都度考える」

「いいわ。ありがとキンジ」

 

 変に素直だとやりにくいなあ。




調べてみるとよくわからんこといっぱいあるな

あと前話のCVRの子の設定今更作ったんで置いときます


藤原麻衣子
2年C組
特殊捜査研究科
自称:露払い
趣味:CP

現在、黒髪ロング美人姉とピンクツインテール妹を執筆中

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