遠山キンジの独白 作:緋色
「出戻りか、別に懐かしくもないや」
この学科の卒業時生存率は、97.1%。約3%は生きて卒業出来ないとされるとんでも学科だ。
人数で言うと150人ぐらいが入学して三年間の間に4、5人は殉職してるわけだ。
もっともついてけねえとなった生徒や、
自由履修で強襲科に来たはいいものの連中には見つからん様に「あれ?キンジじゃん」見つかるのはえーよ。
「キンジぃ!お前は絶対帰ってくると信じてたぞ!さあ1秒でも早く死んでくれ!」
「まだ死んでなかったか夏海。俺が死ぬわけねえだろ」
「やっと死にに帰ってきたか!お前みたいなマヌケはすぐ死ねるぞ!武偵ってのはマヌケから死んでくもんなんだからな」
「じゃあなんでお前が生き残ってるんだよ三上。あ、雑魚だからか」
「よし殺す!」
死ね死ね言うのがここの挨拶なのだが、俺が帰ってきたことを喜んで死ね死ね言う1人1人に煽り返しつつ、2、3人ほど〆てたら結構な時間を消費してしまった。
強襲科を出ると夕焼けの中、門のところに背中をついて俺を待っていたらしいアリアがいた。
中で話しかければいいのに――ボッチなのかな?
「あんた、人気者なんだね。ちょっとビックリした」
「舐められてるだけだと思うが」
いやよく喧嘩吹っ掛けられてたし人気者ではあるのか?
そんな人気は要らねえが。
「強襲科にいるキンジ、カッコよかったよ。ここのみんなはあんたに一目置いてる感じがするんだよね」
「元とはいえSランクだからな」
あれのどこに格好良さを感じたのだろうか?
アルゼンチン・バックブリーカーが綺麗に決まった所だろうか?
「あたしは、強襲科では誰も近寄ってこないからさ。実力差があり過ぎて、誰も合わせられない。『
Aria――英語に従って『エア』とも言われる。オペラ、オラトリオ、カンタータに含まれる単独の演奏者・歌唱者によって演奏・歌唱される独立したパートだったか。
1人なのは周りが合わせられないからじゃなくて沸点が低くて周りに合わせる気がないからだと思うが。強襲科の聞き込みじゃレキとよく組んでるみたいだし、上下関係の上で動くのが得意なタイプなんだろう。
レキはロボットとか言うあだ名をされるぐらい言われたことはやるタイプだから相性は悪くないだろう。
というかあいつと相性悪い奴いるのだろうか?お喋りしたいタイプは会話が続かなくて苦手らしいが。
「俺と組んでデュエットでもしようっての?」
カラオケは苦手なんだが。音程が外れてるタイプの音痴らしいからな俺。
ツボに入ったのか笑いをこらえてるアリアをジト目を送る。
「あんたも面白い事言えるんじゃない」
「お前のツボがわからん」
なんでフォローしたつもりなのに笑われなきゃいけないんだろうか。
……なんかずっといるな。
ゲーセン入ってクレーンゲームでアリアが沼っているのを横目にガラスの反射で丸見えのちびっ子を観察する。
ド下手糞な追跡とちびっ子の見た目から見て1年か中等部だろう。
アリアと合流してから追跡してるからアリアのファンかなんかだろうし、無視してもいいか?
でもさっきから俺に対して怒気とか嫉妬とかそういう感情向けてるっぽいし、アリアに対しては変な感情を向けてるようなので放置するのもまずいかなあ。
念の為、陽菜呼ぶかな。今頃はバイト無いから暇だろうし。
片手間にメールしてから五千円ほど溶かし「今度こそホンキのホンキィー!」とクレーンゲームに攻撃しそうなアリアから操作権を奪ってレオパン?とかいうぬいぐるみを取ってやる。
「ほいこれ」
「……ありがと」
聞こえてるけど感謝なら聞こえるように言えよ。
呆れてるのを知ってか知らずか
「きゃわいー」
と、ぬいぐるみを抱きしめてる。
パシャパシャ
「なんで撮ってんのよ」
「可愛かったから?」
「はぁっ!?きゃわ!?」
俺の小動物フォルダ(猫)の画像がまた増えたな。
……いや人間を猫フォルダに分類しとくのは良くないか。適当にアリアフォルダ作って入れておこう。
あ、白雪に勝手にフォルダ作られて際どい写真ばかり入ってる。――詳細は帰ってから確認しよう人前でヒスったら困るし。
アリアと別れた所でちびっ子がこっちを追跡してくる。
とりあえずこっちが遠回りしている事に気付かずに追跡してる事からマジでド素人っぽい。
あと殺気か怒気らしきものを送ってくるから場所がまるわかり過ぎる。
流石に素人の1年を〆たとなると外聞が悪いし面倒だ。
到着した陽菜に任せるとサインを送ってそのまま去る。
陽菜に任せてしばらく時間潰しに公園で過ごすつもりだったが、辺りを見回しながら公園に入って来た。
撒くの失敗したのかあいつ。
「隙だらけ」
「きょわ!?」
後ろから近づいて耳元で囁いてみたら、鳥肌立てて距離を取られた。
なるほど。これちょっと楽しいな。マキリがちょくちょくやってくるのもわかる気がする。
「いきなり何するんですか!?」
「俺の追っ掛けに対してのサービスだけど?見ない顔だけど誰だ?」
「遠山キンジ!……先輩」
取ってつけたように先輩をつける辺り内心は呼び捨てなんだろうな。
あと答えろよ。なんでどいつもこいつもこっちの質問無視するのやら。
「…なんか用か?告白なら断るけど」
「告白なんてしません!……先輩はアリア先輩の何なんですか!」
あー、これ少女漫画的テンプレな嫉妬かな?
今、クロメーテルじゃないのに言われるとは思ってもいなかった。
「話が見えんがアリアのファンかなんかか?知っての通りお兄ちゃんだ」
「嘘吐け!アリア先輩に兄がいるなんて聞いてません!」
調べたじゃなくて聞いてませんねえ?
となるとアリアと話せる程度には親しい関係か?
俺の事もよく知らんみたいだし、慕ってる後輩程度の距離感かな?
「!」
ちびっ子の怒気がさらに大きくなった所で陽菜が殺気を出したのに反応し、ちびっ子がマイクロUZIを構える。
銃を出されたら何もしないわけにはいかないのでこっちも反撃の為に銃を抜く。強襲科で叩き込まれる反射みたいなものだ。
「風魔。こいつ誰だ?」
「間宮あかり。某と同学年で先程、師匠がデェトをしていたアリア殿の
なんか棘を感じるがそれは置いといて
「アリアの
なんか手癖を抑えようとして失敗している感じに見える。
金髪に染めてピアスしてるヤンキーが模範的優等生演じようとしてるような感じの違和感だ。
「エンブレムでアリア先輩と
エンブレム
強襲科で偶に行われる身に着けた変なシールを奪う変則的な鬼ごっこだったか。
「ふーん?風魔」
「事実との事。アリア殿からエンブレムをスりとったと聞いており、その技の特徴を推察するに『
旧国名で言われてもパッと出てこないが、確か茨城県辺りの事だな。
間宮の一派とかは知らんが技名は聞いたことがあるな。
「『
「!?」
間宮林蔵
公儀隠密、所謂御庭番とか言われる江戸幕府の忍びの一人だ。
歴史的に言えば間宮海峡の名前の元になった人間で、北海道なんかの測量を行っていたり、祖先である遠山
あとどうでもいいけど男装した女だったらしい。なんで知ってるか?先祖も同じ体質なので察しろ。
俺が出会った日のアリアに投げられながら予備弾倉を盗んだ――敵の携行武器をスリ取る技『
武門なので他所から技をパクったりパクられたりはよくある事なので別に悪い事ではない。
俺も使えそうな技はパクるし。
「遠山キンジ――先輩は何者ですか」
あとなんだ今の間は。どんだけ敬いたくないんだ。
「俺は江戸町奉行の遠山金四郎景元の子孫――いやこの場合、遠山
「……突然何言ってるんですか?」
いまいちピンとこなかったらしい。
いや確かに先祖の上司とか言われてもわかんないか。俺も有名所ぐらいしかわからんし。
しかし銃抜かれた以上何もしないのは先輩としての威厳も関わるし、下手に舐められると教務科にしばき倒されるんだよなぁ。
ただ忍びの系譜と直接やり合うとか御免だね。
「風魔。追っ払え」
「御意」
忍びには忍びをぶつけて削って置くべきだろう。
俺より対忍びへの対処は心得ているだろうし、ちびっ子がどれくらいのレベルかは把握出来るだろう。
「間宮殿、帰るつもりは?」
「ないよ!」
「不肖の下忍、お相手仕る」
間宮の目の前に着地したかと思えば、足元から土煙が舞い上がった。
あれは確か
土煙をあげて目潰しを起こし、反射的に目を瞑った間宮をあっさりと取り押さえた。
「動けば斬る」
「おい殺すなよ」
あれ?一瞬で終わっちまった。
参考になるかと思ったけどそうでもなかったな。
「師匠如何様に?」
「そりゃー」
ピピーッ!
「そこ!何してるんですか!」
「げっ。お巡りさん来やがった」
警笛が鳴り響いたと思ったら警邏してたらしい女子警官――桜ちゃんがやってきた。
……通報でもされたのだろうか?
「何がげっですか。――何してるんです?」
陽菜がちびっ子を取り押さえてるのを見て、睨むようにこっちを見る。
なぜ俺を睨む。
「1年の決闘に立ち会ってたんだ。風魔離してやれ」
「御意」
武偵校では決闘はあまり推奨されてない。が、堂々とやらなければ黙認されてるのが現状だ。
まあ、上品な学校じゃないしよっぽどの事態じゃない限り流されるのが常だ。
「大丈夫ですか?怪我は?」
「ないよ。大丈夫」
まず被害者?っぽいちびっ子の介抱をする桜を見ると、とてもちびっ子より年下には見えない。
というかちびっ子が高1に見えないだけか。何も知らない人がいたら絶対、歳の差逆だと思うだろう。
「決闘罪って知ってます?」
「立ち会っただけですが」
「けしかけたり立会も罪ですよ」
「あれ?俺もしかして犯人扱い!?」
絡まれてる間にちびっ子はいつの間にか逃げていた。
逃げ足は速いなあいつ。
「今回は俺が絡まれていたんだから俺被害者よ?」
「ホントですか?また年下にウザ絡みしてたんじゃ?」
「師匠の言う事は事実でござる。間宮殿が師匠に嫉妬してつけ回していたので仕置を代行したのでござる」
「いや、追い払えって言ったよな?お仕置き優先してたのお前」
いや、目を逸らすなや。
「はぁー。嘘じゃなさそうですね。武偵校だと麻痺しがちですが喧嘩は問題行為なんですからね」
「なんか今日は嫌に当たり強くない?」
怒らせるような事したっけ?
桜ちゃんが成長してきて、妹扱いしなくなった事か?
「師匠が警察やめてから絡んで貰えないと愚痴ってたでござる」
「なんで言うんですか風魔先輩!?」
そういや二人での訓練は最近してなかったな。それが原因か。
あとこの二人は何がきっかけか知らんが仲良くなったらしく、偶に訓練してたりする。
少し前に
合理的と言えば合理的だが競った意味は?
「ところで遠山先輩、強襲科に戻ったって本当ですか?」
「自由履修だけどな。――まあ時間見つけて組手ぐらいはしてもいいけど――陽菜もな」
「言質は取りましたからね!」
「ありがたく」
満足したのか普通に去っていく。
やっぱ無線とかで上に報告してなかったのか。融通利く様になったなーあいつ。
「では、某はこれにて」
そう言って印を結び、花弁をまき散らして消えていった。
背中丸見えだったけど、言わぬが花という奴である。
それにしても今年度はまた別ベクトルで濃い連中が増えた気がする。
キンジ→後輩
気が向いた時に偶に訓練するぐらいで基本放置
風魔陽菜
修行(バイト)優先しつつ、主君に役立つ為に自己研鑽
最近は弟子ができたため指導もするが苦戦中
乾桜
忍びとの戦闘を模索中
とある警察官が得意としてた手錠を使った逮捕術が使えるのではないかと修行中
原作何巻まで読んだ?
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読んでない
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1~10
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11~20
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21~30
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31~39