遠山キンジの独白 作:緋色
『武偵殺し』の警察の捜査資料を見せてと頼んだが拒否された。
現状、警察に入り込むと悪目立ちするため、捜査資料も勝手に読むのは難しいしどうしようかと悩んでいたら何処から嗅ぎ付けたのかマキリさんに拉致され出向いた先は新宿警察署だった。
「『武偵殺し』を仕留めるなら資料の閲覧許可を出します」
「資料室まで拉致っておいてそれって俺が逮捕しろって事ですよね?マキリさんにそんな権限あんの?」
「4式ですよ?あと部下に拒否権はありません」
「暴君!?」
4式
あまり詳しくは知らんが公安0課の実働員の序列を式で表すらしく、4式は上から4番目という事らしい。
イギリスでやりたい放題している
今みたいに署の連中から嫌な顔されながら案内させてたし。
「まあ狙ってるしいいけど。チャリジャックにバスジャックと俺が狙いっぽいからな。モテる男はつらいぜ」
「……」
「なんでそこで何言ってんだこのゴミみたいな顔されなきゃいけないんです?」
「自意識過剰って言葉を調べておくといいですよ」
「そこまで過剰かなあ?」
『武偵殺し』に関する捜査資料を流し読みする限りだが、武偵を殺してはいないのでは?という疑惑があるようだ。
過剰な爆弾による爆発で誤魔化しているが爆殺されたはずの武偵の血肉が見つかっておらず、死を偽装している可能性が高いとか。
何なら過去の被害者は隠れて何らかの取引をしていたようで、犯人は同じ武偵として活動してるのではないのかとかなり主観混じりに書かれている。
警察は武偵の事をあまり良く思ってないし、武偵側に情報が共有されないわこれ。警察側が妙に動きが遅い理由はこれだろう。
あまり役にたつ情報無かったな。役にたつ情報あったら逮捕してるか公安が始末してるか。
…逮捕するって言ったのミスだったかな。
俺の実績作ってマキリさん自身の評価上げておきたいんだろうけど。
「やっぱさっきの逮捕するって発言取消せません?」
「なら殺しなさい」
「あ、すいません。逮捕します」
そういや基本姿勢が処刑だったなこの人。
逮捕でギリギリ納得するレベルの殲滅思考だから下手に逮捕出来なかったら俺が拷問されるだろう。
警察署出た辺りで急にギアをあげて存在感を薄れさせる離れ技をし始めたマキリさんの視線の先を見ると
「――」
まるでファッション誌から抜け出してきたかのように白地に薄いピンクの柄が入った清楚なワンピースを着たアリアがいた。
可愛らしいから道行く人に見られてさらに目立ってる。
「神崎・H・アリア」
「姐御?アリアの事を知ってるので?」
雑踏の中とはいえ誰かに名前を聞かれたら姐御が殺しに動くので、面倒だけど外では姐御で通している。
対抗してるのか合わせてるのか向こうはなかなか呼ばないけど俺の事を弟君呼びである。
「日本に来たSランク武偵。当然チェックしてます」
?
海外のSランクだからってチェックするか?
あ、イ・ウー探っているし、その関係か?
「引き続き監視はするように――では、また」
そう言ってマキリさんは姿を消した。
……監視って何のことだ?
「お洒落してるけどデート?可愛らしいじゃん」
俺の事を見つけたのか近寄ってきたアリアを適当に褒める。
「ありがと。でもデートしてたのはあんたでしょ」
口をへの字にしてアリアは言う。
デート?
「今のクロメーテルでしょ」
「……全然違うけど」
「じゃあ誰よ」
あー、マキリさんと俺の背丈は近いし。クロメーテルは俺と背丈一緒だから誤認したのかな。
説明面倒だし教えたら殺されそうだな。
「関わろうとすんなよ。小さい女の子大好きだからキスされるぞ」
「二度と近寄らないわ」
ゾクッ
今とてつもない殺気が俺にだけ照射された。
やべえ適当なこと言ったせいで後で殺されるかもしれん。
遺書書く暇あるといいなあ。
「あんたも無関係じゃないし。来たければ来なさい」
「
署内に入っていくアリアに、俺は頭の中にいくつもの疑問符を浮かべながらついていく、また来たのかみたいな顔を受付にされた後に、アリアの用事がある留置人面会室へと通された。
――今日は日曜なのに被疑者と面会できるんだ…?特別扱いじゃないか?しかも面会時間3分って通常の1/5しかねえし。どういうこっちゃねん。
いろいろ不審に思いながらも留置人面会室で2人の管理官に見張られながらアクリルの板越しに出てきた美人に、俺は見覚えがあった。
アリアの拳銃のグリップに埋め込まれていたカメオ。そこに彫刻されていたアリアによく似た女性である。
「まぁ…アリア。この方、彼氏さん?」
「いいえ。お兄ちゃんです「違う!仕事上の協力者!」――アリアのお姉さんですか?」
「あらあらお上手ですね。アリアの母で神崎かなえと申します。娘がお世話になってるみたいですね」
「いえいえ。娘さんにはお世話になりっぱなしで。ああ、申し遅れました私は遠山キンジと申します」
俺を見てちょっと驚いたような、しかしおっとりした声を上げたその女性はアリアの母らしい。
なんていうかこういうおっとりした包容力ある女性ってのは――滅茶苦茶タイプである。
タイプ過ぎてテンパり気味になってしまう。
「子供の成長はあっという間ねぇ。アリアもボーイフレンドを作るお年頃になったのね。お友達を作るのさえヘタだったアリアが」
それは今も下手です。
なんなら世間話できてるの俺以外に見たことないレベルで。
「違うの。コイツは武偵高の生徒でそういうのじゃないわ。絶対に」
長い睫毛の目を優しげに細めた母親に、アリアはスパッと言い切る。
そういう関係は別に望んでないから別にいいけど、言い切られると若干傷つくなぁ。
これ以上は 面会に水差すのは野暮だと思うので黙っていることにする。
「ママ。 面会時間が3分しかないから手短に話すけどこのバカ面は『武偵殺し』の3人目の被害者なのよ。 先週、武偵高で自転車に爆弾を仕掛けられたの。さらに一昨日はバスジャック事件が起きてる。ヤツの活動は、急激に活発になってきてるのよ」
前例考えるとバイクジャックからのカージャックが12月とかで、4月の俺で3件目ってことはしばらく潜伏期間があるんじゃないか?ざっと3ヶ月ぐらい。
「もうすぐシッポも出すハズだわ。まずは『武偵殺し』を捕まえる。ヤツの件だけでも無実を証明すれば、ママの懲役864年が一気に742年まで減刑されるわ。 最高裁までの間に全部なんとかするから」
希望的観測が強すぎる。
が、『武偵殺し』の件だけでも冤罪が決まれば差戻くらいはできるだろうしいうほど無茶ではないのかな?
ただ後追いで事件解決してる状況だから振り回されてるだけで、尻尾すら掴めてないからなあ。
しかし、かなえさん――アリアの母に冤罪かけてるとなると、チャリジャックとバスジャックでアリアが解決に動いたのは偶然じゃない?
思考を明後日の方向に飛ばしながらも親子の話を聞き流す。
「アリア。気持ちは嬉しいけど、イ・ウーに挑むのはまだ早いわ――『パートナー』は、見つかったの?」
「それは――」
なんでそこで俺を見る?
協力してる仲間じゃねえの俺?
「あなたの才能は遺伝性のもの。でも、あなたには一族の良くない一面――プライドが高くて子供っぽい、その性格も遺伝してしまっているのよ」
戦闘力は高くてプライドが高くて子供っぽいのが遺伝か――先祖は姫騎士か何かなのだろうか?
この世界妖怪とかいるしオークもいそうだな……。
変な想像しそうなのでこの思想は投げ捨てるか。
「そのままでは、自分の能力を半分も発揮できないわ。アリアには、アリアを理解しアリアと世間を繋ぐ橋渡しになれるようなパートナーが必要なの」
社会不適合者かな?
聞いた限りだとギフテッドの一族なのかな?
能力は突出してるけど集団や社会と合わないため孤立しやすいとも聞く。――まんまアリアの事だな。
「適切なパートナーは、あなたの能力を何倍にも引き延ばしてくれる 曾お爺さまにもお祖母さまにも、優秀なパートナーがいらっしゃった。そうでしょう?」
「…それは、ロンドンで耳にタコができるぐらい聞かされたわよ。いつまでもパートナーを作れないから欠陥品とまで言われて――でも」
「人生は、ゆっくりと歩みなさい。早く走る子は、転ぶものよ」
諭すようにかなえさんはそう言うと、長い睫毛の目をゆっくりまばたかせた。
急がば回れ、急いてはことを仕損じる。
今のアリアには必要な言葉だな。
「神崎。時間だ」
壁際に立っていた管理官が、壁の時計を見ながら告げる。――15分経過してるな最初の3分という発言は何だったんだよ。
「ママ、待ってて。 必ず公判までに真犯人を全部捕まえるから」
「焦ってはダメよアリア。 わたしはあなたが心配なの。 1人で先走ってはいけない」
「やだ!あたしはすぐにでもママを助けたいの!」
「アリア。 私の最高裁は、弁護士先生が一生懸命引き延ばしてくれてるわ。 だからあなたは落ち着いて、まずはパートナーをきちんと見つけ出しなさい」
そう言い残し透明な壁に縋りつくように叫ぶアリアを背にかなえさんは厳重な扉の向こうへと去っていった。
雲行きが怪しくなって来た。こりゃ一雨来そうだな。
警察署を出た後に見上げた空は暗く淀んでいた。
横目でアリアを確認すると。
「泣いてなんかない」
涙いっぱいで強がられても誰も信用しないと思うが、指摘するのも野暮か。
というか何言っても泣きそうな気がするし、気を逸らせるような気の利いた言葉は――だめだ全然思い浮かばねえ。
とりあえずそれっぽいこと言うか。
「さっさと捕まえようぜ『武偵殺し』」
バスジャックの件でわかった事だが、アリアのスペックは高い。『武偵殺し』の事も自分より長く捜査していたし、上手くやれば独占してる情報も引き出せるだろう。
「キンジ……」
何だその顔。って雨降ってきたな。
泣いてるのか笑ってるのかわからない顔でアリアは言う。
「当たり前でしょ。ちゃんと協力しなさい!」
「へーへー」
「返事は一回!」
「はいよ」
本格的な土砂降りになりそうなのでアリアが気が付く前に上着を脱いで被せる。
「風邪ひくといけないし着とけ。あと前閉めとけ」
「これくらいで風邪なんかひかないわよ。それになんで前――を?」
自分の姿を見てあることに気が付いたらしい。
関係ないが白色の厚くない布なんかは濡れると裏側が透けることがある。
特に赤とか黒なんかは見えやすいようだ。――なんでトランプ柄なんだろ?
「ヘンタイーー!」
「騒ぐな!?公衆の面前に見せる気か?!」
「うきゅう!?」
自分の状態に気が付いたのか、しっかりと隠すように着込む。
……これどうしよう?
「着替えあるか?」
「寮に帰らないとない」
ですよねー。どうしようこれ。
「じゃあこのまま帰るか?」
「無理。こんなの電車乗れない」
「だろうけど」
見渡したらちょうどタクシーがいたので拾って学園島まで相乗りすることにした。
車内の空気は最悪だったと追記しておく。
このキンちゃんは休日は私服だと思う
原作キンちゃんはいつまで学生服なんだろう?
原作何巻まで読んだ?
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読んでない
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1~10
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11~20
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21~30
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31~39