遠山キンジの独白   作:緋色

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武偵憲章って便利ですね


部外者

 一度イギリスに戻るとかでアリアから『武偵殺し』の特徴的な電波を捕らえる機材とかを引き継いでいたところ、アリアの戦妹の妹が倒れたとかで病院に来ていた。

 アリア曰く敵と接触(コンタクト)したという勘で、すぐに向かうとの事で少々気になったので付いてきたわけだ。

 

「ついてこないで!あたしが犠牲になれば……いいの!」

「自己犠牲が『美談』になるのはお伽話の中だけよ」

 

 病室の前で中を伺っていたら聞き捨てならないセリフが聞こえてきたのかアリアが割り込む。

 俺は病室は女しかいなかったので入り口で話だけ聞く事にする。

 何故か知らないが陽菜と桜ちゃんが病室にいるとはいえ、大体は俺の事を知らんだろうし、後輩には警戒されるから仕方がない。

 

「あたし勘は鋭い方なの。あんたが隠してるのは、その敵――夾竹桃の事だけじゃない。自分自身の事も隠してる。あんたは本当の自分をずっと隠して力を抑えてきた。だから武偵ランクも低いまま。違う?何もかも隠したまま、何もかも解決できるの?」

 

 実力あるやつは実力隠す業界だから隠すことは別に悪いことではない。俺もいくつか殺し技隠してるしアリアも俺の知らん技隠してるようだしな。

 問題は力を抑えるあまり力を発揮できない事だろう。

 

「ごめんねみんな。今まで隠してて…。あたしは元々この学校に入っちゃいけなかった生徒なんです」

 

 武偵校にいてはいけない生徒は優秀で真面目な荒事能力のない東大とか京大とか目指すような一般人ぐらいだ。偏差値40ぐらいの馬鹿高校だからな。

 間宮の忍術がどーたらかーたらはどーでもいいので聞き流しながら、今後の方針を考える。

 アリアには悪いが、もしイ・ウーに勧誘された間宮あかりがイ・ウーに行く事を選ぶなら両手足でもへし折って、夾竹桃の事を聞き出し夾竹桃を逮捕しに向う必要があるだろう。

 忍び系統なら単なる拘束だと逃げ出す可能性があるし。邪魔されるよりかは最低でも動けないようにする必要があるからな。

 戦力には毒使いなら遠距離から仕留められる駒がいるし、レキは必須かな?

 というか毒使い相手に近寄りたくねえ…。

 

「暗誦!武偵憲章1条!」

「「「仲間を信じ仲間を助けよ」」」

 

 なんか逮捕する方向で話がまとまったようだ。

 それはいいとして釘を刺すのはこのタイミングが望ましいだろう。

 

「どうも、お兄ちゃんだ」

 

 適当に病室に入って名乗ると知らん後輩達は一斉に強張る。

 そんな脅えなくてもよくない?

 

「師匠。なぜここに?」

「先輩はののかさんと知り合いなんですか?」

 

 目隠しのように包帯を巻いてるベッドの主――ののか?とやらは知らんけど、普段からどう思われてるんだ俺。

 

「知り合いではないな。そこのアリアが急に病院行くとかで着いてきただけだ。捜査の引継ぎも終わってないしな」

 

 それはそれとして話を進める。

 

「今回は脅迫されてる被害者だから逮捕に動く分には構わないが、背後の組織――イ・ウーへの捜査は禁じる。捜査するとしても『夾竹桃』までだ」

「なんでですか」

「俺とアリアが捜査してる案件だし邪魔されたくないからな。それに捜査してたSランクが何人か死んでるから邪魔にならない戦力か能力持ってる自覚あるのか?最低でもSランクが条件だ」

 

 適当な事を言うと部屋の空気がめちゃくちゃ重くなる。下手に突っ込んで全滅されるよりはマシだが何とかなるという空気は霧散している。

 ちなみに俺はEランクであるから最低条件は満たしていない。それに気が付いてるメンツもいるようだが、口に出すほど愚かではないようだ。

 それは置いといて公安0課や武装検事が本腰入れて動いてる案件だ。邪魔だと判断されたら合法的に消される。

 もっとも動いてるにしては好き勝手されすぎてるし、俺の知らん政治力学が働いている感じはするがこいつらには言う必要はないだろう。

 

「まあ、夾竹桃?の逮捕ぐらいなら別にいいが、お前らが失敗したら俺かアリアが出る事になるだろうし……面倒だし、そいつの逮捕も俺がやろうか?」

 

 『武偵殺し』とは別口から情報を取れそうだし、一石二鳥ではある。

 俺は尋問とかできないが口説き落とす方向性ならできるかもしれんが、呼蕩は美人か美少女以外に使うと俺のやる気ゲージの問題でうまくいかない。

 おっさんの陶酔する感じの声ってキモいので。

 そもそも『夾竹桃』ってロリっぽい間宮あかりをペットにしようとしてるし、そういう性癖のおっさんだろう。

 最悪、尋問(アゴトリ)できるマキリさんに引き渡せばいい。好みから外れてそうだし。慣れてるだろうたぶん。

 適当な事を考えながら反論なさそうだなと「あたしが逮捕します」

 

 沈んだ空気から声を出したのは間宮あかりだった。

 

「正直、お前らが逮捕に挑むのも無謀だと思っているが?」

「絶対に勝てるとは言えません。でもあたしは――みんなが一緒なら怖くなんかないんです」

 

 それ何の反論にもなってないと思うんだけど。

 しかし、釣られるように次々にやる気を取り戻していく後輩たちをみる限り、変なカリスマはあるようだけど。

 

「あんたが思ってるより、この子たちは大丈夫よ」

 

 ここまで口を挟まなかったアリアが口出したことで流れは決まったようなもんか。

 

「それは結構。なら一つだけお前らに命令しておく。――死ぬなよ」

 

 そう言ってさっさと退散する。

 

「どこ行くのよ」

「ヘイト役は退散するよ。――アリア。先戻ってるからな」

 

 そういって病室から『がんばれ』とハンドサインをしてから立ち去る。

 とりあえずマンションに戻ってアリアから渡された資料でも読み込んでおくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 資料と共に病室の件も含めて考える。

 アリアが戦姉とやらに頼るとかでイギリスに一旦戻るタイミングで、間宮に夾竹桃が接触したとなるとイ・ウーのメンバーで協力或いは情報共有しているのだろう。

 アリアはイ・ウーについてメンバー同士で殺し合いするくらい仲間意識は薄く組織としての目的も不明と言っていたが利害か何かで協力する事はあるとして、『武偵殺し』の方は武偵を攫うのが目的だとしたら『夾竹桃』の目的は技を奪う事であとは身柄も欲している。

 ここから考えて見るとイ・ウー自体は組織の拡大と技術の奪取を合わせた総合目的があるんじゃないか?世界征服とか国を作るとか考え過ぎかな?

 よくわからん組織目的は置いといて、『武偵殺し』と『夾竹桃』が協力しているなら、アリアが間宮の件に首突っ込んでくる事はないと読んでいる?あるいはバラバラに事件を起こして仕留めるとか……?

 考えが堂々巡りしているな。

 こっちが起こすアクションまで完璧に推理できる変態などいないし、予知系の能力でも的中率は何度も繰り返すことで100%に近づいていく。が、絶対ではない。

 そもそも協力してることがあくまでこじ付けでしかないし、アリアが帰国を延期する可能性の方が高いしな。考えるだけ無駄か。

 

 ガチャッと開いているとはいえ、当たり前に入ってきたアリアに対して、最近設置したエスプレッソマシンでコーヒーを入れて出す。

 

「で、『夾竹桃』の件どうすんの?調べてみたらそこそこの賞金首みたいだけど?」

「あかりたちに任せるわ。武偵憲章4条『武偵は自立せよ。要請なき手出しは無用のこと』。よ。それにあたし達の標的『武偵殺し』。寄り道はよくないわ」

「信頼してるなら俺からはなんも言わねえよ。」

 

 ほとんどの引継ぎが終わった後、ふと思い出したようにアリアが口を開く。

 

「あんたあかりがイ・ウーに行く事やめなかったら何する気だったのよ?」

「夾竹桃の事聞き出して、邪魔にならんように拘禁かな?桜ちゃん公安に知り合いいるみたいだしそいつらが出張ってくる前に決着つけないと危ないからね~」

「あんた比較的過保護よね」

「お兄ちゃんだからな。というか前線に慣れすぎて一定以下の戦力だと任せようってならないんだよなあ」

 

 これは明確な悪い点ではある。

 戦闘以外なら丸投げを比較的すぐにできるのだが、戦闘になると一番危険なポジションでどうにかしようという思考になりがちである。

 ヒステリアモードのせいか周りに頼ろうという気があまり起きないのである。というか危険地帯だと頼られることの方が多いし。

 

「あんたは周りをもっと信じなさい」

「じゃ、とりあえずアリアの事は信じとくわ」

 

 そこそこ強いのはわかってるし

 

「うきゅ!?ゲッホゲホゲホ――あんたねえ!?」

「なんでキレてんだ?」

 

 むせたのか顔を赤くして、照れ隠しなのかガバメント抜いたアリアを取り押さえるのには苦労した。

 やっぱ信用できねえかも。




没シーン

「遠山先輩から悪のにおいがします」
「まあ悪いこと考えてるからね。イケメン度が1割ほど上昇中だ」
「間違えました。格好悪いにおいがします」
「かっこわr――」
「師匠が崩れ落ちたでござる」

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