遠山キンジの独白 作:緋色
「ここに第15回アドシアードを記念する、東京大会の開会を宣言します」
――タァーン
アドシアード開幕の空砲が鳴り響く。
白雪の所属する生徒会の役割はここで終わりでアドシアード委員会というオリンピック委員会みたいな存在が大会を仕切るらしい。
護衛の事もあって閉会式までは雑用する事はなく進むそうだ。
「キンちゃん!どうだった?」
「あの白雪が人前で堂々と開幕宣言するとは成長したもんだ…」
「キンちゃんたまにどの視線なのかわからないんだけど…?」
小さい頃から見てるからな。そういう視点にもなるわ。
アドシアードには選手として出ないので護衛以外は暇である。
正直、閉幕まで大人しくして貰うのが一番いいのだが、生徒会会長という事で学校に出てないといけないらしい。生徒会って雑用係としても変なルール多くね?
「桜ちゃんはアドシアードの手伝いでいないし、どうする?」
「大会を見て回りたいかな」
小声で最後のデートとか言ってるけど別に理由つけなくてもいいのに。
人混みの多いデイタイムだけでも時間制で他の護衛雇いたかったが、アリアが抜けたのが急だったため、護衛できる面子は軒並み警備とか選手で手が取れなかった。
警備の多い所を優先すればいいかな。
「それじゃ適当に見て回ろうか」
「はい」
さて、警備の厚い所を優先して通っているが白雪自身を抜け出させる様に相手は仕組んでいる。
『初めまして星伽白雪。
私は君に化けていたものだ。
私の目的を単刀直入に言おう。
明日の午後2時に準備を整え学園島のD-7地点に来い。
でなければ、貴様と親しい遠山や乾を殺す。
他の連中に話してはならない。私はお前を見ているぞ』
俺の声でこんな電話をしやがるとは舐められたものである(盗聴してた俺が言う事ではないかもしれんが)。
D-7は学園島の淵に一定間隔で海面まで伸びる階段があり、そこには簡易な桟橋がありボートなどが接岸できる。それのD区域の7番目の場所である。
そう考えると逃亡と侵入は海からなのは確定か?しかし当日は曲がりなりにも客が多いから船は見つかりそうな気もするが……。細かい事は気にしてもしょうがない。
なんならこれを根拠に教務科に出して任せようかと思っていたのだが、自分で仕留めろと言われたのがオチだ。
白雪には過保護だからギリギリ行けるかと思ったが、想像より自分への信頼が高かった。リカバリーには出てくれるはずだ。たぶん。メイビー。
包囲網は仕込んだら気が付かれそうだしどうしたものか。
屋台を冷やかしたり、競技を観たりと比較的充実した時間が過ぎていく。
昼休憩で昼食を取りに動こうとしたがどこも人混みで座って食べれそうもない。
俺は一食ぐらい抜いても大丈夫だが、白雪を飢えさせるのもな。
後輩パシらせようにもケータイの利用は最小限だから、ダメやし。どーしようかな。
「キンちゃん生徒会室は空いてるからそこで食べない?」
「生徒会室使ってないん?だとして使っていいのか?」
「生徒会会長特権です」
権力の私物化じゃないかな?
まあ部屋借りるだけだし問題ないか。昼休みとかに仕事もない生徒会が屯ってる空間だし。
「ならいいか。たこ焼き買ってこーぜ」
適当に出店で適当に昼飯を買う。
出店の焼きそばって妙に食いたくなる魔力放っている気がする。雰囲気に当てられてるんだろうか
時間を考えると一回白雪と別れるのがベストかな?
追跡することで
「俺は午後から雑用入ってるから護衛どうしよっか?陽菜でも呼ぶか?」
食事しながら雑談していたが、不自然じゃない程度に離れることを仄めかす。
本来はここからアリアの護衛だったため、雑用が入ってた。
まあ、事が事だしサボるけど。
「私はここで待ってようか?一人で歩き回るより籠城してる方が安心できるでしょ?」
「まー、マシだけど。変なのについて行くなよ?」
そう言って一度は受付の方にギリギリまで向かう。
やはり生徒会室から白雪は消えていた。
「やっぱりか」
このまま港に向かったか?
いやだいぶ時間が空いている。どこかに向かったか?
先に行って待ち伏せするべきか。
「フォローミーだ星伽白雪」
「あなただったんだね。クロメーテル・ベルモンドさん」
……来ねえし、いねえ。
D-7地点で調べてみたがトラップも痕跡もねえ。
騙されたのか?
……あれ?やばくない?
PIPIPIPI!
「なんだ武藤今忙しいんだが」
『てめえどこほっつき歩いてる!ケースD7が起きた!』
ケースD――とは、アドシアード期間中の、武偵高内での事件発生を意味する符丁だ。
だがD7となると『ただし事件であるかは不明確で、連絡は一部の者のみに行く。なお保護対象者の身の安全のため、みだりに騒ぎ立ててはならない。武偵高もアドシアードを予定通り継続する。極秘裏に解決せよ』――という状況を表す。
『星伽さんが失踪したらしい。昼過ぎから連絡が取れないみたいだ』
「だろうな。今俺はD-7地点にいる」
『なんでそんな場所に』
「ここに
『五分でそっちに行くそこで待ってろ!馬鹿野郎!』
ここ車でも十分はかかるはずだが道交法無視する気か?まああいつの免停までの点数は知ったこっちゃないが走って戻るよりかは早いか。
時間潰しもかねて武偵校からの周知メールを確認しつつ、アリアに白雪行方不明とだけショートメッセージを送り、
ここで届いたメールに血が凍り付く。
『キンちゃんごめんね。さようなら』
おかしい。
白雪の本心は知らんが、俺に執着してる節がある白雪が謝って別れの言葉を贈ることなど異常事態だ。表面上謝って盗撮を繰り返してるんだからな。
となると
「乗れキンジ!」
「マッハで戻れよ!」
五分も経たずに爆音を鳴らしながら現れた武藤のバイクに二ケツして学校へ戻る。
しかし戻ってどこを探す?
こんなことなら発信機でもつけてればよかったか。
後悔ばかりが浮かぶがそんな事はどうでもいい。今は白雪を見つけないと。
考えろ相手はどこへ連れて行こうとしてる。どこならリスクが低く白雪を連れ去られると考える!
PIPIPIPI!
誰だこんな時に!?
『キンジさん。レキです。D7だそうですね。
「レキ?なんでお前が?」
『アリアさんの依頼でお二人の監視をしてましたのでそれが理由でしょう』
あいつレキに何依頼してんの?
「まあいい。手伝ってくれるなら感謝する。そこどこだ?」
『
レキがいるのはそこの7階か。見渡しは良かったはずだし上からの捜索を任せるか。
『
人工浮島である学園島の外周には、28の排水溝がある。
雨などで島内に不規則に入り込んだ水を、ポンプで排出するための穴だ。
「武藤。第9排水溝ってわかるか?そこに向かってくれ」
「どこだよ!水路なら兎も角流石に排水溝まで覚えてねーよ!」
『私は……一発の銃弾』
前方の離れたアスファルトに、狙撃銃の弾が傷をつけ――ビシ、ビシッ、ビショビシッ。
ドラグノフの速射能力を活かし、レキはアスファルト上に何かを点描している。
できあがったそれは
『その方角です。調べて下さい。私は引き続き、ここから白雪さんを捜します』
――運転中でも見えるように大きめにえぐられた矢印だった。
こっから2kmぐらい離れてたと思うんだが、あいつとんでもないな。
「緊急事態だからなんも言わねえ!けど言葉で言え!」
「落ち着け武藤。もうキレてるし緊急事態だから後にしろ」
たどり着いた排水溝から出る水の流れには何も不審なところは見て取れなかったが、第9排水溝のフタは、一度外されてムリに繋ぎ直されたような跡があった。一時的にごまかせればいいという類の直し方だな。
少なくとも業者や専門家のやり口ではない。
こんなわずかな事で生じる海面の異変を、あの距離から見抜いたのかなどと、レキの超人的な視力に感心している場合ではない。
この排水溝がどこに繋がっているのか、武偵手帳で調べる。
「
隅から隅まで物騒な東京武偵高校で
なぜこんな変な名前がついてるのか知らないがここは要するに砲弾や銃弾を保管する火の気厳禁の
くそったれ!とことん不利な場所選びやがるな!
新刊までに間に合いませんでした
……年内に纏めたかったんだが
原作何巻まで読んだ?
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読んでない
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1~10
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11~20
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21~30
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31~39