遠山キンジの独白 作:緋色
正直な話。
警察と武偵はギスギスした関係だ。
警察は武偵を金で動くハイエナみたいに思っているし、武偵は警察を上から目線の頭固い連中と思っている節がある。
どっちも間違ってないが。
正直、銃規制解禁したせいでなし崩しに治安悪化からの武偵解禁の流れらしいので政府がアホとしか思えない。見えてた地雷だろうに。
警察は国家という後ろ盾があり組織力もある為、動き出しが遅い代わりに人手と予算を使い、裏を調べて法を根拠にどこまでも追い詰めて逮捕する。組織型。
対して武偵は国家資格であるが権限的には警察の方が上で、他人と協力することはあれど基本的には個人プレーの要素が強く、動き出しは早いが裏取りが不十分な事も多く。何なら個人判断で犯罪を見逃したり調べきれなかったりと。遊撃型。
そんな経緯があるので警察が武偵側に呼びかける時なんかは
そんな中、昨今の警察と武偵に亀裂を入れている存在がいる。
「警官殺しですか」
「ああ。一般人の前で警官を殺し、その情報を拡散する事で世論の不安を突き、警察組織の動きを硬直させ治安の悪化を招いている」
岡田信達
元・Aランク武偵として名を馳せたが、天誅と称して裏で気に食わない人物に襲撃を繰り返していたことが判明し全国の武偵事務所の大規模摘発で警察に逮捕された過去を持つ。その件で逆恨みし脱獄して事件を起こしている指名手配犯だ。
思いっきり挑発されてるなこれ。
「武偵への協力要請は?」
「上がイイ顔をせん」
じゃあなんで
まあ狙いはわかる。面子の為に生贄になれという事だろう。減点方式の警察組織では評価が悪いが、武偵中での評価が高い俺は
正式命令だと確認できないなら俺は面倒臭いので知り合った内部監査の人に報告して基本無視するけど。
今回の件は面倒な事に、警察は面子の為にと躍起になり武偵を懐疑的に見て協力を最小限に抑えようとしているし、武偵は武偵で警察なんぞ頼れんと独自に動いて、衝突を引き起こしまくっている。
典型的な負のスパイラルだ。
さっさと逮捕出来ないなら状況は悪化するであろう。自分はどうもできないが。
「上が動かす気が無いなら俺は
所轄の指定巡回地域を自転車で漕ぐだけの簡単なお仕事だ。犯人が出てくる可能性が低い地域とはいえ雑だな。
可能性の高い繁華街近くの裏路地等は増員して密度の濃い見回りを行っているらしいがそのしわ寄せが下っ端に行くのはどうしたものか。これで襲われたらどうすんだっての。明日からは他所からの増援が来るから解消するからじゃねえんだよ。今が危険だって事だろうに。
「お巡りさん!助けて!」
「どうかしましたか?」
「あの子が危ないの!早く来て!」
そう言って走り出す女性を追いかけ近くの廃工場に入り込む。
――違和感。
ぱっと見た限り、危ないと言ってる割に建物内部はほぼ何もなく危なそうな要素はない。
彼女から読み取れる感情は焦りと恐怖と罪悪感――?
「天誅!」
「危ね!?」
殺気を感じ取り、上から振り落とされる刃を避ける。壁にでも張り付いてたのか?気が付かなかった。
が、装備品である警察無線機が真っ二つにされてしまった。これは後で始末書かなぁ。生きて帰れればだけれど。
真っ先に無線を破壊するとか慣れてるなあ。
「今の一撃で死なないとは…しかも若い。何者だ貴様?」
「通りすがりの
「奇襲が失敗した以上もう用はない」
そう言いながら女の方に投げ捨てたのは鍵?――本当に誘拐でもしてたのだろうか。
鍵を拾って自分の後ろの方に逃げた女が戦闘力0の一般人で武器も持ってない事を確認しつつ、対面した相手の姿を脳内検索する。
190前後の身長にボサボサの黒髪に右頬に刀傷。右手に構える日本刀は拳6つ分はある長めの柄に直刃の
「
「中華マフィアのチョビ髭武人の事か?あいつは強かったな」
縦横無尽に中華街を駆け回りながら暴れ回る防御不可能な振動攻撃の使い手で過去一番苦戦させられた男だった。
あいつは盾にした物を腕力だけで貫いたり、徹しとか浸透勁だとかを発展させたと思しき技で物体に衝撃を伝播させてダメージを与えてくる意味わからん技術でわからん殺しをしてくる今迄にいないタイプの武人だった。
あいつ
そしてこいつはそいつに勝るとも劣らない威圧感を感じる。
「その顔立ちは見覚えがあるな。指名手配の岡田だな?
「
八相に構える岡田に対し、こっちは右手にリボルバー、左手に警棒を構える。警棒を前にして銃を構える防御寄りの構えだがどんな状況にも対応できるベストな構えだろう。なお上司には変な構え扱いされてるが。
正直、後ろに一般人がいなければ逃げ一択なのだが下手に逃げた場合八つ当たりの対象が一般人に移る方が怖い。ここで仕留めるしかないか。
「天誅!」
迫りくる刀に対して警棒で受けつつ、相手の胸に銃撃を撃ち込む。
が、避けられたついでに蹴りを入れてきたのでそれを避け、警棒を叩き込む。
打撃、斬撃、銃撃、蹴り、肘、刺突。
局所局所で刀の勢いが乗り切る前に警棒や腕に当てて威力を殺しても、防弾防刃繊維の服と銃のけん制が効いてなければ二回は死んでる感触だ。
技巧型で正当に強い奴が一番相手にしたくない。
リボルバーの弾を使い切ったところで蹴りに蹴りを合わせる形で大きく距離を取る。
「足癖が悪いなお前」
「やるな。型にはまらない動きでここまで生き延びるとは破天荒な男だ」
逆に型に嵌った動きだと嵌め殺されていたんだろう。殺された警官も逮捕術(警察の格闘術みたいなもの)の上位成績者だと聞くし、特効になるように戦闘方法を練っていたのか?我流を混ぜた事で動きが変わってる所へのまごつきがなきゃここまで生き延びてないだろうし。
「当然のように身体破壊しようとするとは貴様は本当に警察か?」
「関節外れたぐらいじゃ死なねえよ。お前が弱ければそんなことしなくて済むんだがな…」
確保する動きに合わせたカウンターで殺していたのかな?
妙な隙やそのまま破壊する動きへの対応が微妙に遅かったのはそういう理由か。
「なるほど。厄介だ。あいつの縁者なだけある」
「褒めてんのか貶してんのか知らんが、警棒がボロボロなんだけど?もう折れそ――あ!折れたじゃねえか!?」
「実力差だな。覚悟せよ」
そう言って構える姿は――居合?刀を俺の視線に合わせて鍔より先が見えないが、散々戦ってて刃渡りの長さも間合いも把握している。意味のない小細工だな。走り寄って切り捨てるつもりなのだろうがそうはいかない。
銃は弾切れ、警棒は折れて使えない。
持ってても無駄だからその場に捨てて構える。
近寄った所に踏み込んでカウンターで沈める。
刀の柄に違和感が、あれは穴?
瞬間、世界がスローモーションになるような錯覚が総動員される記憶の底から類似例を弾き出す。そうあれは銃の
――パァン
軽い音と共に頭から血肉が弾け、一人分の肉の塊が地面に倒れる。
イヤアアアァァァ!
「五月蠅いな。正しき世の為の天誅だ。喜ぶべき事だろう」
――ムクリ
「おい。何、女の子怖がらせてんだ手前」
血流が加速するように中心に集まっている。いつものヒスりとは違う初めての感覚だ。
生きるために死ぬ気で生きるような矛盾した興奮。
――死ぬ気モードとでも名付けるか。
「――なぜ生きている」
信じられぬものを見た顔をされてるがちゃんと理屈はある。
「簡単な事だ。避けられないならギリギリで頭を振って銃弾を頭蓋骨を滑らせる角度にしたんだよ」
事実。とある事件では銃弾が頭蓋骨を添うように滑り生き延びた例がある。
無理矢理立ち上がったものの頭が痛ぇ。血がダラダラ流れている。頭蓋骨を滑らせたとはいえ肉が抉れたことには変わりはない。あまり時間は掛けられない。
今までの攻防で分かった事がある。心技体すべてが格上で自分の技はこいつには通じない。
「貴様ホントに人間か…?」
ならばどうするか。
今ここで限界を超えればいい。動揺している今しかチャンスはない。
「人間頑張ればどうにかなるんだよ。この桜吹雪に散れ!」
中国武術では人の身体を水の入った皮袋と教わるらしい。ならあの時受けた衝撃を色んな奴と戦った俺なら再現できるはずだ。記憶の映像を浮かび上がらせて自分の身体にその動きを細分化し各部を己の体格に合わせてトレースしていく。
水面を叩いて波紋が広がるように皮袋を叩けば中身の水を揺らす事が出来る。
いろんな武術と戦い取り込み進化してきた古武術の継承者なんだ。いくつもの基礎も少しは教わっている。その中には古武術の通しとか中国武術の浸透勁も含まれている。
あいつのように武器や盾越しに衝撃を伝える事は出来ないが、服の上からなら死なない程度にぶちのめす事も多分可能だ!
相手の武器の防御をすり抜ける様に張り手が岡田の身体に突き刺さる。
――ダアァッン!
「が、あががががが」
「全身に衝撃が走って動けなくなる。……これ人に使ったらこうなるのか?頑丈な奴なら兎も角、華奢な奴に使ったら死ぬかもしれんな……」
自分が食らった時は身体がマヒって死に掛けたものだが、客観的に見るとえぐいな。
最悪腕一本失って倒す予定だったから、俺もこいつも五体満足で済んだし何はともあれ動けないならこれで終わりだ。
「
倒れている岡田の後ろ手に手錠を掛けてから気が付く。そういや無線壊れてる。
「怪我無いか。携帯ある?無線機壊れたからパトカー呼んで欲しいんだけど」
被害者女性に頼むとはなんとまあカッコ悪い話だ。
キンちゃんがまだ人間やってる頃
いや人間やってるかな?
忍者やってるかな?
次は高校入試の予定
原作何巻まで読んだ?
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