遠山キンジの独白   作:緋色

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新技

 遠山家ではとんでも技を継承するのだが、その数は百の技まで継承が可能でそれ以上は一代で破棄する決まりがある。

 更に兄弟がいた場合には分散継承するため、俺が継承したのはだいたい半分にあたる52の防技(ぼうぎ)だ。

 それはいいのだが、当然の様に術理不明で再現不可能な技などをなんとなくこんな技と平然と継承させるため実質使える技の継承は30くらいだ。自力で生み出した数の方が多くなるだろうし。俺の代で原理不明の技は継承の数から外す予定である。

 一時間に一回レベル脈で辛うじて生き延びる心臓止めとか普通は死ぬんですが、なぜそんな物を継承させた?できるわけないし。父はできたらしいけど。

 それは兎も角、兄が死んだ?以上、48の攻技(こうぎ)が消滅する可能性もあるため、爺ちゃんに残りの技継承出来ないか交渉中である。

 そんな俺は今。

 

「キンジ。次の客を見てくれ」

「へーい。次の方どうぞー。今回は腰の様子を見て欲しいと」

「お願いねー。キンジちゃん」

「任せてください。そこの施術台にうつ伏せになってくださいねー」

 

 爺ちゃんの仕事である整体を手伝っていた。

 爺ちゃん――遠山(まがね)は元々戦闘機に乗るパイロットだったらしいが、それも昔の話。今じゃ整体師兼ギャンブラーとして老後を過ごしている。

 それでなぜこんな事になっているのかと言うと、技を教えるには人体に詳しくないといけないと言うわけで整体師をやってる爺ちゃんの手伝いをしながら遠山家の整体術を使わない普通を学ぶ必要があるらしい。

 確かに蹴りで骨外して手錠から抜けるとか車に突っ込んで骨を嵌め直すとか普通じゃないからなうちの整体術。手っ取り早く治して戦い続けるための技術だし。

 言いたいことはわかるがたぶん便利に使われてるだけだと思う。

 

「キンジがいると客が増えるのう」

「せめて口先だけでも隠してくれない?やっぱ便利に使ってるだけじゃねえか」

 

 整体の資格取ってまで手伝ってるこの店は、爺ちゃんを雇ってる通り来るのは老人とかご近所さんなので個人的には楽な職場である。というか婆ちゃん経由でご近所さんに俺がバイトしてるのが伝わってるらしく俺目当てのご近所さんが来る。

 来る度に飴とかもらうけど気に入られてるんだろうか……?

 

「技教える気ないんか?」

「あれだけ兄の死に落ち込んでたやつが乗り越えたのではなく、死を信じてないから戻ったのは見ればわかる。生きとるんじゃろキンイチは」

 

 バレテーラ

 

「…それにしては驚いてないな」

「遠山じゃ死んだり生き返ったりは日常みたいなものじゃ。驚く程でもない」

 

 それが日常なの?殺伐してない?

 

「そういえば技を知りたがってたの。ちょうどいいから伝授しよう遠山の秘儀の一つ。『春水車(しゅんすいしゃ)』」

 

 そういってしれっと隠し棚から取り出したのは……なんだ?箱?

 

「これぞワシの爺ちゃんが版画で開発した春水車(しゅんすいしゃ)。それを写真版に進化させたものじゃ。作り上げるのに時間がかかるんでワシも戦前からずっとコレクションしてきておる」

 

 箱の中から大量に取り出してきたのは……グラビア雑誌や水着写真集の切り抜きページ……。

 

「ほれっ、この娘のボディーは星伽の娘っこに似ておろう。ウェヒヒッ。それとこっちは洋物じゃ。こっちは幼顔シリーズ。 これらの分類が春水車の肝でのぉ。男心の中で好みの女の属性は時折変わり、あるいはまた戻る。それを先読みして――色本を分類・貯蔵し、閲覧する女体を回すのじゃ。水車のようになっ」

 

 ヒステリアモードは性的興奮をトリガーとした思考力・判断力・反射神経などが通常の30倍にまで強化される体質だ。

 だが性的興奮と言っても同じ刺激ばかりだとなりにくくなるため、違うジャンルを開拓するのは理には適ってる。

 

「言いたいことはわかるけど。仕事場で広げてるんじゃねえよジジイ!」

「キンジも、もうじき成人向けアイテムを堂々と購入できる年頃。近年は動画、更にお前たちの世代には二次元という大鉱脈も広がっておる。キンジ、お前の力で春水車(しゅんすいしゃ)を進化させよ。そして常にマイブームとその再生機を携帯せよ」

「夢を託すノリで何言ってんだ…。理解あるの助かるけど身内に言われんの普通に嫌だわ。兄貴に言え兄貴に」

「遠山は自由に返對(へんたい)してこそ一人前よ。――キンイチは返對(へんたい)女對(めたい)でなるからのう。教えてもやっとらんようじゃの…」

 

 教えてんのかい。

 まあ多重人格レベルで性格変わるから集めてもカナ状態の時に全部捨てるだろうな。

 

「色本は間を置いてからだとまた新鮮になる。飽きたと思っても捨ててはならんぞ」

「 や ら ね え よ ! 」

 

 やってる事は単なるエロ本収集だし!

 ハイキックで頭を狙ったが普通に当たった上で「じゃ、わし今日は帰るから」と言って去って行った。帝国軍人はタフだな……。

 って、写真置いてくんじゃねえ!

 

「キンジ君いる?お爺ちゃん帰るしそろそろ休憩終わって――ああ、うん」

「店長――違います」

「気持ちはわかるけどね。店内ではやめようね」

「だから違います。片付けたら休憩終わりますんで」

 

 爺の所有物だと説得したがあの分だと信じてないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後店内を捜索していくつかあったジジイのお宝写真を巣鴨の実家に着払いで郵送しておく。婆ちゃんにバレて〆られてしまえ。

 

「技ねえ」

 

 あの分だと爺ちゃんが教えてくれるのはヒステリアモードになる方法くらいで戦闘に使えそうな技は教えるつもりはないな。

 もういっそ爺ちゃんに組手挑んで技パクった方が効率はいいか?でも爺ちゃんだしな基本動作だけで圧倒されそうだから無理かな。

 兄貴が生きてイ・ウーとかに参加してる以上最悪の可能性を想定をしとかないといけない。所謂闇落ちとか正義の暴走とかそういう奴だ。

 潜入捜査か攫われたのか知らないがどっちにしろ組織に長くいる以上感化される可能性は捨ておくべきじゃない。だからこそ兄貴の技対策に爺ちゃんから技を知ろうと思てたのだが無駄骨だったかなこりゃ。

 

「経験も実力も兄貴が上、カナなら更に差が出る。それを穴埋めするには……」

 

 寝込みを襲うぐらいしか思いつかんな。勝ち筋。当然向こうもそれくらい読んでるだろうし

 真っ向勝負、不意打ちいろんなパターンでシミュレーションしとくか。




次から3巻?始めます
あいつの合理的な説明ができる気がしない……

キンちゃん強化は

  • 戦闘技を増やす
  • 便利スキルを増やす
  • 部下を増やす
  • 女を増やす
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