遠山キンジの独白 作:緋色
帰ってきた女
特にやることもないので武藤と不知火とデュエルしていた放課後の事。
急に電話が掛かってきた。番号を見ると03から始まるので知り合いではないはずだがどっかの営業なら煽るだけ煽るか。
「もーしー?」
『キンジ。今どこ?』
げ、アリアの声だ。
「君の心の中で生き続けるよ」
面倒だったのでそのまま切ろうとしたがそうは問屋が卸さず。
『切ろうとするな!すぐ来なさい!女子寮1011号室にいるわ』
「行きたくねーよ女子寮なんか。というかそこお前の部屋じゃn『うるさい! あたしがすぐと言ったらすぐ来る!来ないと風穴!』
通信終了の通知音が鳴る。あいつ急に理不尽になるよなあ。糖分がきれたタイミングとかで。
「…あー、すまんなんか予定ができた」
「聞こえてたよ。相変わらずだねえ。それじゃあお開きにしようか。こっちも片付けたら帰るよ」
相変わらずのイケメンスマイルの不知火に対し、
「で、何の呼び出しだ?緊急事態じゃなさそうだが」
「しらね。ももまんでもきれたんじゃないの?」
勝ち続けて機嫌がいいのかなんとなく聞いた感じの武藤には何となく答えてから二人と別れる。
途中でコンビニでももまんと自分用の鰻マンを買っておく。どうせ早く行っても理不尽にキレるのでモノで気を逸らすのは有効なのだ。
ちなみにただのあんまんだと効果がなかった。
あいつ甘い物好きなのかと思ったけどももまん以外の甘い物食べてるとこ見たことないんだよな。ももまん販売終了したらどうする気なんやろ?
くだらない事を考えつつも女子寮に到達する。ドアの前にいないって事は中か?
「ノックしてもしもーし」
「開いてるから入ってきて」
…?
軽く違和感を感じるがドアを開けて中に入ると、うわっ甘ったるいアロマかなんかのニオイがヤバい。もうこの時点で帰りたくなってきた。
玄関に上がると、セーラー服姿のアリアが洗面所からとててと出てきた。
「もー遅い。でも今日は許してあげる」
――ゾワッ
あかん。なんかあかんこれ。
違和感がヤバい時は早急に離脱するべきだこれ。
「訪問したから帰るな、はいお土産」
「帰るな!こっち来なさい!」
そう言ってアリアに腕を引っ張られるけど、アリアってこんな力弱かったっけ?
なんか調子が狂いつつもリビングに入ると…
「なんだコレ…?クローゼット?」
どこぞのウェイトレスの服に巫女装束、キャビンアテンダントに園児服まである……。
色んな服が掛けられたウォークインクローゼットみたいな部屋だな。
いや床に積まれてたりするし、ずぼらなだけか?
「男ってこーいうの好きでしょ?どんな服でも着てあげる」
「……は?」
あまりに想定外のセリフに思考が停止する。
「キンジ。ニブすぎよ?どのコス着て欲しいかって聞いてるの」
……あ、もしかして今俺色仕掛けされてるのか。CVRで自由履修でも受けたのか?
「そう?ありのままの姿が好きだぞ」
「……たらしだねぇ」
「そもそも見た所服のサイズ違うようだが?アリアのサイズじゃねーし」
見た感じだが、140台前半のアリアより大き目のサイズで140台後半の服といった感じだ。
アリアは比較的シンプルな服を好むがこういうコスプレ感溢れててフリフリなのは着ないだろうし。
なんなら胸のサイズが全然違う。幼児体型のアリアじゃあの曲線の大きい服は着たら可愛そうなことになってしまう。――サイズからして一人アリアに化けれそうなのがいるなあ……。
「えい」
背後にあったデカいベッドに押し倒してきたが、そのまま抱きしめるようにベッドに倒れる。
「で、何がしたいんだ
「りっこりっこりんでぇーす! くふふっ! たっだいまぁー!」
アリア――の姿をしたソイツがにやりと理子の声になって上半身をがばっと起こす。
ゆさっ、と制服の下の大きな胸を跳ね上げるように揺らしたかと思うと
べりべりっ、ばさっ。
顔につけていた薄いマスクみたいな特殊メイクと、ピンクブロンドのツインテールを取った。
キラキラと星でもまたたいてそうなふたえの目を嬉しそうに細めた理子は、ウィッグで巧みに隠していた、長い蜂蜜色のウェーブヘアをふぁさっと下ろしてくる。
「キーくん、理子を助けて」
――ドキン、と、俺の心臓が跳ねる。
女子ってずるいよなぁ。こういう弱い所を見せてくると助けたくなってしまう。
……あ、ヒステリアモードになってるなこれ。
「ていうかそもそもねぇ。せっかく理子がダブルスクールしてたのにアリアとキーくんのせいでイ・ウーを退学になっちゃったんだよ? ぷんぷんがおー」
ダブルスクール……?退学……?イ・ウーは学校なのか?
「それアリアに文句言えよ。俺悪くねえ」
「理子、キーくんにお願いがあるの。だからお母さまが教えてくれた男の子に言うことを聞かせる方法初めて使っちゃう」
「そういうのは武藤あたりにやってやれ。喜んで引っかかるぞ」
「くふっ。ここから先は理子ルートパッチをお買い上げ下さったお客様専用の甘い甘ぁーいイベントシーンなのでぇーす」
別に買ってないんだけどなあ。という思考をよそに興奮したケモノのように息に熱いものを交えて、理子が俺のネクタイを外してしまう。
この状況で、次に言われることは明らかだろう。
ぐいっとその愛らしい童顔を俺の顔に近づけてきて、誘惑的な唇で
「キーくん、えっちいことしよ?」
「抱っこまでならしてあげよう」
「
そう言ってえーいと身体をこすりつけ始める。
「はー、キーくんの匂いだ。りこ、これ、すきー」
……殺意も敵意もねえから取り押さえるにしても毒気が抜かれる。――初手完全に見誤ったな。どうしよこれ。なんならどうすればいいんだこれ。
相手に怯えが混じってるから、余計どうしていいのかわからねぇ…。
猫みたいに身体を擦り付けながら語彙力が消失したのか動物的な反応になってる理子。
どうしようかこれ……。演技だよな……?
「はぅー。キーくんなでなでで誤魔化そうとしても、りこりんは満足しないぞー?」
あ、無意識に撫でてた。
「満足そうに見えるけど?」
「りこりんは欲張りなのです。キーくんはどんなのが好き?理子はキーくんが好きな服着てなんでもいう事聞いたげちゃう。
「じゃあ何から助けて欲しいのか言え。話はそれからだ」
「それはダメな仕様なのです!いま理子の脳内はキーくんでいっぱいなんだもん!理子スイッチ入ってるの」
一瞬顔に脅えが出たな。すぐに誤魔化したけど。話せない時点でとんでもない厄介事でそして巻き込む気満々だと。
この様子だとこれが上手くいかないとなんも話さないんじゃないか?
「くふっ。キーくんはありのままがいいんだったね」
「それはそういう意味じゃねえ」
なんか面倒になって力が抜けてきたのを合意とみなしたのか。脱ぎ始めた理子だったが
「…でも理子、ハーレムルートって嫌いなんだよね」
がしゃあああん!
「なにしてんのよ!!」
窓ガラスを蹴り割って襲撃してきたのはアリアだった。
そのままワイヤーを切り離し二丁拳銃を抜いて問答無用に.45ACP弾がぶっ放される。
理子は転がりながら銃弾を躱し、舞い上がる無数の衣装の中からでかい懐中時計と赤いランドセルを掴み起き上がりざまに背負った。
「あぁんもー。アリアが出るまでもうちょっとかかると思ったんだけどなー」
「この……汚らわしい、ドロボーの一族! あたしのモノは盗めないわよ!」
モノ扱いされてることはともかく、俺の頭をまたぐように仁王立ちするトランプ柄が見えてるアリアはなぜか顔が真っ赤であるし覗いてたのかな?
「今は理子ルートなのに他のヒロインが乱入はシナリオに無理があるぞ」
「なにわけのわからない事言ってるのよ!」
「アリアとキーくんはいつの間にそこまで仲良くなったの?」
「ん?協力し始めた次の日に餌付けしたあたりからか?」
「うわー、アリアってばマジチョロイン。そんなんじゃ妹ルートまっしぐらだぞ?」
「妹だから問題ない」
「誰がチョロインで妹だ!あたしはパートナー!」
頭の真横で地団太踏むな怖いだろ。
「キーくんだってその気だったんだよ? アリアだって見たでしょ? キーくんは理子の胸に溺れる3秒前だったんだからぁ」
俺の胸板に顔うずめてたのになんか話が変わってる。
「お……おぼっ!」
「そう。女の子の胸の前にひざまずかない男子はいないのでーす。あっ、でも――アリアには関係ないか」
理子はイヤミったらしくその大きな眼を細め、アリアの平らな胸を見た。
「か、か、風穴! あけてやる! あけてやる! あけてやるからっ!」
そういや偽装ブラしてたりと胸の事気にしてたなアリアは。そりゃキレるか。
「お子様のアリアと違って、理子は男の子の好きなものゲームでいっぱい勉強してるんだもん。男の子を喜ばせる知識、いーぱい持ってるんだから。それを初めて実践しようとしたのにジャマするなんて、ぷんぷんがおー。だぞ!」
ぽいっと手にしていた懐中時計を宙に投げると
カッ――
閃光が室内を真っ白に塗りつぶす。
「きゃ」
生物の本能で委縮してしまうアリアに物理的に座られてから数秒。ようやく膝立ちになったアリアから脱出し、理子が出たと思われる窓へと向かう。
「見えた。屋上に向かってる」
「追うわよキンジ!風穴あけてやる!」
非常階段を上りながら聞いたところによると、俺がアリアに化けた理子に呼び出された後、自習室を出た武藤と不知火が偶然アリアとすれ違い、『キンジを女子寮に呼ぶのはいいけど、先生に見つからないようにしろよ』などと話しかけてきたので不審に思って即座に追跡捜査して居場所を割り出したらしい。
即断即決で能力ある奴は怖いなあ。
「―――理子!」
とアリアが蹴り開けた扉の向こうでは
屋上のフェンスに腰掛けた理子が、子供のように足をぷらぷらさせていた。
「あぁ…今夜はいい夜。オトコもいて硝煙のニオイもする。理子、どっちも大好き」
月影に笑う姿は吸血鬼みたいだな。
言ってる事は物騒だが。
「峰・理子・リュパン4世。今度こそ逮捕よ!ママの冤罪、償わせてやる!」
「やれるもんならやってみな。
「言ったわね。
と、2人はイギリス人とフランス人の蔑称を応酬する。
21世紀のホームズとリュパンによる英仏戦争の幕開けだな。
銃撃戦を始めたアリアと理子がごちゃごちゃやってる間に気になったことがあるので調べてみる。
武偵殺しの懸賞金は取り下げられているから何かあったのは確実だろう。
武偵殺しが行ったハイジャックはちょっとやそっとの司法取引では見逃されないと思うが、さっき言ってた助けてに繋がるのか?
というか事件解決の為に動いた俺等に司法取引あった事を伝えて事故らん様にするはずなんだが…雑な
「チビチビチビチビ!」
「ブスブスブスブス!」
発砲音が収まったと思ったら、いつの間にかガキの喧嘩にランクダウンしてる。
割り込むなら今か。
「はいそこまで。双方武器しまえー」
手をたたいて注目を集めつつ声をかける。
「なんでよ!」
犬歯をむいて怒るアリアをいったん無視して理子に問う。
「理子。武偵殺しの懸賞金が取り下げられてたし司法取引済ませたのか?」
「せーかい!ハイジャックの件はとっくに司法取引済みなのです!つまり理子を逮捕したら不当逮捕になっちゃうのでーす!」
「やっぱりか」
このやり取りで己の不利を悟ったのか歯ぎしりするアリアが、びしっ!と持ってた刀を理子に向け
「でもママに『武偵殺し』の濡れ衣を着せた罪は別件よ! 理子! その罪は最高裁で証言しなさい!」「いーよ」「イヤというなら、力ずくでも……って……え?」
「証言してあげる」
「ほ……ほんと?」
言った理子に、アリアは疑うフリをしながらも嬉しさを隠しきれていない。
「ママ…アリアも、ママが大好きなんだもんね。理子もお母さまが大好きだから……だから分かるよ。 ごめんねアリア。理子は…理子は……お母さま…ふぇ…えぅ……」
足元にきらきら光る涙を落とし始めた。
「…ふえぇえええええええ……!」
ぐじぐじ、 と、 手の甲で目元からあふれる涙を拭っている。
「え…えっ……えっえっ?」
そんな理子に、アリアは自分の目の前で何が起きているのか分からず、オロオロ。これ、あたしが泣かしたの? って顔で困り果ててる。
「ちょ、ちょっと。なに泣いてんのよっ。ちゃんと話しなさい」
武器を収めてなだめるように言うアリアに対し理子の口の端がニヤッて笑った。
やっぱウソ泣きか。
「理子アリアとキーくんのせいで、イ・ウーを退学になっちゃったの。しかも負けたからって、
アリアが今の一瞬で、紅い目に殺気をみなぎらせていた。
「…ブラド。『無限罪のブラド』……!?イ・ウーのナンバー2じゃない!」
なんだその中二病みたいな二つ名。
無限罪って罪が無限にあるって事か?もはや生物かそれ?
「そーだよ。理子はブラドから宝物を取り返したいの。だからキーくん、アリア、理子をたすけて」
理子はごしごしと手の甲で目元を拭い、「泣いちゃだめ理子。理子は本当は強い子。いつでも明るい子。 だから、さあ、笑顔になろっ」などとわざとらしく独り言し、
「キーくん、アリア、一緒に――ドロボーやろうよ!」
笑顔でそんなことを言い出した。
「…………まー、そこはいったん置いとくとして」
「よくない!」
噛みついてくるアリアを無視して続ける。
「言い忘れてたし今言うわ。おかえり理子」
虚を突かれたのかぱちくりと瞬きした理子は
「ただいま」
ぱっと花咲くような笑顔で答えた。
「じゃアリアも仲直りしよーよ」
「しないわよ!」
「さっきの部屋にももまん置いてきたから、それ分け合って仲良くせーや」
「ももまんかー。理子はももまんも好きだよ。アリアがいらないなら貰っちゃう」
「あーもう!食べるわよ!でもなれ合わないからね!」
ももまんが冷めていたので追いかけまわされる羽目になった
キンちゃん強化は
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