遠山キンジの独白   作:緋色

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調べたらそんな種類存在しなかった




ミッション:『紅鳴館(こうめいかん)』から理子のお宝を取り返せ

難易度:マゾゲー

任務概要

横浜郊外にある紅魔館みたいな名前の屋敷『紅鳴館』。

地下金庫にあると思われる十字架を奪取せよ。

 

 理子の母の形見で何としても取り戻したいお宝の十字架が世界中にあるブラドの別荘の一つ『紅鳴館』にあるらしい。

 ジャ?ジャ…――デュランダルに計画立案を習っただけあって十数くらいのパターンを想定している理子曰く息の合った優秀な2人組と外部からの連絡役が1人いれば、なんとかなりそうとのこと。

 依頼(クエスト)報酬はブラドについて知っている事と兄についての情報。

 それがなきゃ協力しなかったし、妥当なところか。

 怖いくらい優秀だが、それ怪盗の実家で習わなかったのだろうか?まあ計画能力が優れてるから自分が計画するよりかはマシだし、成功率もそれなりにあるだろう。

 

 

 

 それで潜入訓練とやらで保健室に呼び出されたわけだが…誰もいないな。

 一分待って来なかったら帰るか。そう決めてから軽く室内探索して気が付く。

 誰かいる。気配はロッカーからか?

 

「何してんだ武藤」

「よう。早く入れ。そろそろ来るぞ」

 

 なにが?と問う間もなく引き摺り込まれてロッカーの扉が閉まる。

 

「男二人でロッカーとか――地獄か」

「言うな。まあ待てすぐに…来たな」

 

 保健室の扉が開く音共に囂しく女子が入ってきたようだ。

 

「来たな。今日は身体測定のやり直しとかで女子だけ再検査するんだと。そこの茂みにバイク隠してるからノゾキがバレたら2ケツで逃げんべ」

「…説得力無いだろうけど俺はノゾキに来たわけじゃねえからな?」

「よく言うぜ。ラインナップはレキに平賀さんに風魔。お、理子とアリアもいるぞ」

 

 呼び出した理子は兎も角アリアもいるのかバレたら殺されるなこれ。

 

「とりあえずうちの妹やらしい目で見てるなら潰すぞ?」

「お前過保護だなぁ…。わかったからチョキを近づけるなそっち方面見ないから」

「…ならいいか」

 

 良くないけども下手な動きして覗き犯扱いされる方が不本意だし。

 話は変わるが武偵は携帯の通知音を切る事はあんまり無い。なぜなら緊急事態の通知などが来る事もあるので気が付かないとマズいからだ。

 仮に切るとしたら任務中などか?

 例えば隠密中だとするとマナーモードにするか、電源を落とすといった所だ。

 つまり何が言いたいかと言うと

 

  PiPiPiPiPi

 

 なので、そんなつもりが無かったが故にメールの通知音が響くことで、ロッカーに注目が集まるのは俺が悪いわけではない。

 

「お前ノゾキ前には電源切っとけよ!?あと風呂敷で顔隠してんじゃねえ!?」

「すまん。使い捨てマスクしかないけど使うか?」

「……使う」

 

 飛び出して窓割って茂みに出ればぎり逃げられるかな?

 

  ガッシャーン

 

「ごめーん!落としちゃった!アリア怪我無い?」

「なんで私に聞くのよ。怪我無いけど」

「は!アリアが怪我で胸が無くなってる!」

「少しはあるわよ!」

「いやいやその胸であるのは言い過ぎでしょ」

「どういう意味よ!?」

「きゃー!アリアが怒った!」

 

 ドタドタと追いかけっこを始める二人のおかげで注意が逸れたらしい。

 理子のフォローだろうけど、何がしたいんだこいつは。

 そんなこんなで扉が開く音がして声がする。

 

「……ぬ、脱がなくていいんですよー? 再検査は採血だけですから。メールにも書いたじゃないですか。 はい服着るっ!」

 

 この声は小夜鳴か。ここんところあいつと妙に縁があるな?気のせいならいいけども。

 

「――Fii Bucuros...Scoală bună. Nu este interesant de sânge...」

 

 …何語だ?

 よく聞き取れんかったが小夜鳴がつい漏らしたっぽい。そういやあいつ海外の大学卒業したらしいので帰国子女みたいな存在なのかもしれん。英語じゃなさそうだが。

 おのおの武偵娘(ブッキー)が服を取りに動く中、一人だけで微動だにしない女子がいる。

 レキだ。

 水着みたいな純白の下着姿で窓の方へ眼を向けている。なんかいるのか?フェンデルシュターデン現象か?

 ――ぴく。

 何かに感づいたのか急にこっちを向いて床を蹴って走ってくる。

 バレたか!?

 俺たちのいるロッカーを開け放って

 

「ま、待て!謝る!あやま――」

 

 武藤の焦った声に構わず俺と武藤のネクタイを掴み2人いっぺんに巴投げするような動きで引っ張った。

 

 がっしゃあああああん!

 

 という窓ガラス割れる音とドオン!という衝撃が襲い、紙細工のようにひしゃげたロッカーが吹っ飛んだ。――武藤ごと。

 敗因は体格の差で大柄な武藤はレキの力じゃ引っ張り出せなかったようだ。

 俺は受け身を取って銃を構えるが――は?

 

「――嘘だろ?」

 

 ロッカーに足を下敷きにされながらもパイソン(リボルバー)を構えた武藤の声が全員の心を代弁しているようなもんだろう。

 襲い掛かってきたそいつは――狼。

 しかも絶滅危惧種のコーカサスハクギンオオカミ。元の世界じゃ存在しないであろうオオカミだ。

 この世界でも少なくとも日本にはいないはずだが?

 

「…お前ら、早く逃げろ!」

 

 武藤は女子に叫んだかと思うとドオン!と天井への威嚇射撃で追っ払おうとする。通常なら有効な手段だろうが。.357マグナム弾の轟音に全く怯まない。

 よほど訓練されてるのか?

 

「対処は任せろ!あとさっさと避難しろ!」

 

 下着姿の女子だらけだから銃は使えないがヒステリアモードにはなれるからトントンといったところか。

 銃をしまってから衝撃張手(スパンク)を打ちこむがあまり効果が無いようだ。毛皮で威力が分散しているのか?

 生け捕りは無理そうだな。

 飛びついて薬品棚のガラスに突っ込ませるが、すぐに俺に向かってタックルできるあたり薬品が多少かかったくらいで効果はなさそうだ。

 自分から飛ぶことで威力を軽減させたが、まともに当たったら内臓破裂だろう。俺じゃなかったら死んでたなこれ。

 しょうがないが生かしておけないなこれは。

 バタフライナイフを取り出して、強襲科(アサルト)で習った猛獣の急所を元にどう仕留めるか。

 もう一度飛びついて壁かなんかに当てつつも刺すのが無難か。

 そう考えていたが狼は悟ったのか小夜鳴先生を体当たりで跳ね飛ばし、そのまま窓から逃亡する。

 ミスった。普段教師陣の訓練(憂さ晴らし)の脅威があって忘れてたが小夜鳴は非常勤で戦闘能力は一般人だと聞いた覚えがある。戦闘能力のある女生徒よりムカつくが非力な先生の方が守る優先度は高かったのに!

 

「追いなさいキンジ!先生はあたしたちが手当てするわ!」

 

 顔隠してんのにバレテーラ。

 

「キンジ!これ使え!」

 

 そう言って武藤が投げてきたバイクのキーをキャッチし茂みへと向かう。

 茂みに隠されていたバイクは――少々、改造されてるがこれはBMW・1200R。世界最強のエンジンを搭載したバイクだ。あいつは地上の果てまで逃げる気だったのか?

 それはさておきキーを刺して電源をONにした時、ひらり、とドラグノフ狙撃銃を背負ったレキが2人乗り(タンデム)してきた。

 ――下着姿のままで。

 

「おい!?せめて防弾制服を着ろ」

「あなたでは、あの狼を探せない」

 

 見失ってる以上、捜索できる目は多い方がいいが……。

 上着を脱いでレキに被せる。

 

「着とけ。――しっかり掴まってろ!」

 

 狼を追う事を優先した。

 

 

 

 

「人工浮島の南端、工事現場です」

「見えたのか?」

「工事現場の中に足跡が見えました」

 

 よく見えるな。

 レキナビの通りに工場現場に向かうと破られた土嚢から散らばった砂に足跡が付いている。

 しかしこの破れ方食いちぎったのか?なんのために?

 わずかな疑問はレキは、チャっと狙撃銃を背中から胸の前に持ち直すのを確認して流すことにする。

 

「麻酔弾でも持ってるのか」

「いいえ」

「……そうか」

 

 猛獣駆除は、武偵の仕事の中でも辛いものの一つだ。

 今回のように十分な準備ができない場合、最悪、動物を射殺しなければならない。違法ではないがマスコミのイメージが悪い。田舎だと猟師兼業武偵なんかもいるそうなので人にもよるのだろうが。

 

「通常弾で仕留めます。追って下さい」

 

 感情抜きで仕事をする様は仕事人としては正しいんだろう。

 俺がギアをローにして、そろり…と狼の足跡を追跡していくと…

 

「!?」

 

 足跡の続いていた方向とは真逆――バックミラーの中に、銀狼が映っている!

 ――罠か!

 この狼、一度わざと砂の上に自分の足跡をつけて、その足跡を丁寧に踏んで後退し自分の行き先を偽装して潜んでいたらしい。

 賢いなおい!

 

「なっめんな!」

 

 バイクをスピンさせて体当たりしてきた狼にぶつけるが、不利と見たのかすぐに退き――人工浮島のクレバスーー10Mはあろうかという工事中の亀裂を飛び越えて逃げる。

 身軽だな。だが、甘い!

 ベレッタを2発撃ち工場現場の足場で坂を作る。即席のジャンプ台だ!下は海のようだから落ちても死ぬことはないだろう。たぶん。

 若干ドリフト気味に着地することになったが飛び越えることには成功した。

 そして

 

「――私は一発の銃弾――」

 

 レキはいつの間にか事も無げに後ろのシートに立ち上がっていた。

 狼は逃げてるのか誘っているのか、銀色の毛並みを煌めかせながら工事用の足場を上へ上へとジャンプしていた。

 

「銃弾は人の心を持たない。故に、何も考えない」

 

 しかし無防備に姿を晒し過ぎである。拳銃は兎も角狙撃銃相手には

 

「ただ、目的に向かって飛ぶだけ」

 

 タンッ

 

 銃声と真鍮の空薬莢が、きらっと宙を舞い、非情な銃弾は――狼の背中を掠めただけで、命中しなかった。

 レキが外したなんて初めて見た。今日は厄日かなんかか?

 

「…上に逃げられたが後の始末は俺がするぞ。逃げ場はないが逃げられないようにここで張っててくれ」

「?必要ありません」

「必要ない?」

「はい。外してませんので」

「?」

 

 屋上まで行くとその意味が分かった。

 

 狼は俺たちを毅然とした態度で睨んでから、ぷる、ぷるる、と震え…重い音を立てて、その場に倒れた。

 まるで身体が動かなくなったかのように無抵抗な倒れ方したぞ?

 見ればその背、首のつけ根あたりに小さな汚れみたいな擦り傷がある。さっきレキの銃弾がかすめた場所じゃないか?

 

「脊椎と胸椎の中間、その上部を銃弾で掠めて瞬間的に圧迫しました。今、あなたは脊髄神経が麻痺し首から下が動かない。ですが 5分ほどすればまた動けるようになるでしょう。 元のように」

 

 オオカミに話しかけるレキは命中させるどころか、もっととんでもない神業をやってのけていたらしい。みたいではなく身体が動かなくなったのだ。

 理屈はわかるがそんな繊細な射撃は俺に出来るかな?人相手には使いにくそうだが。

 

「逃げたければ逃げなさい。ただし次は2キロ四方どこへ逃げても私の矢があなたを射抜く」

 

 噛んで含めるように、しかし余計な感情を交えず語るレキを狼は、まるでその言葉が分かっているかのように見つめている。

 1分2分と時間が過ぎる。

 いざという時のためにレキを見てヒステリアモードの補充をしておく。

 ……下着に男の上着ってヒスいな。

 

「――主を変えなさい。今から、私に」

 

 その言葉に、応えるように。

 舌を出して荒い息をしていた銀狼は、藻掻くように何度か宙を引っかいてから、よろよろと起き上がった。

 最悪、俺が仕留めるかといつでも動けるように構え――狼はレキのふくらはぎ、その柔肌に、すり。すりすり。

 まるで犬みたいに、頬ずりし恭順の意思を表しているな。

 さっきまで俺たちを殺そうとしていた猛獣を、たったの数分で手懐けるとは。

 

「で、どうするんだ? その狼」

「手当てします。 服従していますから」

「それからどうする」

「飼います」

「…武偵犬にでもすんの?」

「はい」

 

 武偵犬とは警察犬や軍用犬の武偵版で、武偵高では鑑識科(レピア)探偵科(インケスタ)が犯人の追跡に使う犬だ。狙撃科で飼ってるのは聞いたことがないが。

 

「ペットを飼うにしてもちゃんと責任持てよ?しつけとか、登録とか狂犬病予防注射義務とか飼い主の義務はレキがやらないといけないんだからな?あとで文句言うなよ?」

「それは飼い主として当然のことです。天寿を全うするまで飼います」

 

 それならいいんだが。

 

「お手」

 

 と言われると、狼は早くもちゃんとレキに片手を出した。

 変わり身早えなー、お前。

 

「まあいいよ。 レキの意思を尊重してその狼のことは任せる」

 

 俺は頭の片隅で、先日の白雪の占いを思い出していた。

 俺は 『()と鬼と幽霊に会う』―――か。




「――Fii Bucuros...Scoală bună. Nu este interesant de sânge...」
機械翻訳
「――うれしい...良い学校。血って面白いよね...」

鬼戦盛る?

  • 盛らない
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