遠山キンジの独白   作:緋色

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どっかで見た顔

「ほい。500円」

「確かに」

 

 陽菜からトロロ&オクラ油を買って強襲科(アサルト)のジムに向かう。

 風魔家秘伝の活力剤らしくドロドロネバネバしていて口当たりは最悪なのだが、妙に元気が出るのでスポーツ前に偶に頼む。

 

「師匠はこれからジムで修行を?」

「そうだけど。というかこれ頼むとき大体そうだろ?」

「そうでござったな。ではこれにて」

 

 そう言ってぎこちなく去って行く陽菜だがなんか隠してるなあれ。アリアに俺を監視するように言われたか?

 あいつは理子にメイドの練習とかでメイド喫茶に連れ込まれているから特に問題はないはずだが。

 ……アレの特訓に付き合わされてすぐに銃が出る照れ隠し(発作)を避けること数日、抑え込めるようになったとはいえメイド喫茶はハードル高いのではなかろうか。流石に一般人に発砲しないよな?

 あいつが逮捕されても知らんぷりしよう。

 そう決めてサンドバッグに八つ当たりしたり普通に筋トレやマラソンしたりと汗を流した頃合いで

 

「探しましたよ」

 

 なんか桜ちゃんが来た。

 

「探さなくても連絡してくれば良かったじゃん?」

「しましたよ。繋がりませんでしたけど」

「あーゴメン」

 

 泥棒作戦前に絡まれると面倒だったからな。さてどう誤魔化そう?

 

「ノゾキするとは思ってもいませんでした」

「その件については成り行きでノゾキは目的じゃねえ。あとピンクチビに制裁喰らってるから糾弾はやめれ」

 

 サンドバッグを破壊するような拳で数十発ぐらい殴られているため、制裁としては過剰である。たぶん訴えたら勝てる。いや負けるか?あいつ貴族だし。

 

「…嘘じゃなさそうですね。あの人に報告しとくのはやめときます」

「マキリさんはそれたぶん制裁しないと思うぞ?」

「どうですかね?それよりも何を企んでるんですか?」

「金稼いだあと穏やかな引退生活したい事?」

「違います。なんか悪しき企みをしている時は露骨に避けるじゃないですか」

「ナンノコトカナー?」

 

 行動パターン把握されてるな。ここまで見つからんかったのに何で今日に限って……陽菜は桜ちゃんに頼まれたな?

 ランニングマシンでキリがいいとこまで走ったので終わらせる。

 

「さっきからちらちら見えてるぞ陽菜」

「某は別に裏切ったというわけでは…」

 

 適当に言ったらホントにいたわ。桜ちゃん気が付いてなかったのかびっくりしてるし。

 

「そこは別に」

 

 ノゾキ糾弾しに来たわけじゃなさそうだな。

 まあ陽菜は俺の行動を善悪賢愚問わずに従う忠義精神してるけど、桜ちゃんは納得できるまで嚙み付くタイプだし、厄介度合いはこっちの方が上だな。

 

「ん?そういやなんで陽菜は協力したんだ?」

「主が道を誤った時正すのが忠義って言ったら協力してくれましたよ?」

「お前ら時代劇に生きてんの?」

 

 自分が言うのは主義に反するけど、説得内容は刺さった感じかな?

 何気に扱い上手くなって厄介度合い増えてるなあ。

 

「あー、腹減ったしファミレス行くか」

「…追求はそっちでやりましょうか」

「…奢るよ?」

「ありがとうございます。お礼に悪の道から引き戻しましょう」

 

 ……誰か助けてくれ。ファミレスにつくまで一旦追及は止まった感じだがそっちで追及されたらバレると面倒くさい。泥棒作戦後の理子のチェックに使いたかったが難しいかなこれは。すぐにチェックしに行くぞこの様子だと。

 通り掛かった音楽室から聞こえるBGMが火刑台のジャンヌダルクだし、処刑されんのか俺?

 

 ……ジャンヌダルク?

 何かが引っ掛って音楽室の方を見るとどっかで見たような銀髪の美人が

 あ、目が合った。扉の方を目で示すという事は来い(フォローミー)って事か。

 …よし、見なかったことにしよう。今妹の相手で忙しいし。

 

「ごきげんよう」

 

 視線を戻すと黒セーラーの日本人形みたいな女がそこに立っていた。

 

「夾竹桃!?」

「…?知り合い?」

 

 陽菜と桜ちゃんが即座に戦闘態勢に入るあたりなんかあったんだろう。

 

「…あかり先輩達と逮捕に向かって返り討ちにあった相手です。逮捕されたはずなのになぜここに」

「あー、BBQで説教したなそういや。…女だったのか」

 

 又聞きで狙いしか知らんかったし、……てっきりロリコンのおっさんかと。

 

「先輩は女たらしなので目を付けられる前に刑務所に戻ったらどうですか?妹にされますよ」

「趣味じゃないわ。私は友情を見る専だし」

「なんの話してんだお前ら」

 

 なんだこのよくわからん空気。

 

「待て待て!無視するな!」

 

 しまった。

 足止めてたから追いつかれたようだ。

 

「あー、今忙しいんで帰ってくれないかデュランダルちゃん「デュランダル!?」あー、桜ちゃんと陽菜は黒ぱっつんに集中して。こっちは俺があしらうから」

 

 向こうの方が格上っぽいけど妹ら二人掛かりならいい勝負になるだろう。

 向こうはやる気なさそうだけど。 

 

「で、なんのよう?長くなる?」

「デュランダルを返して貰おうか!」

 

 ……?

 

「ねえねえ桜ちゃん。こいつデュランダルだよね?」

「先輩しか顔知らないんだから知りません」

「デュランダルを返せって斬新な告白かな?」

「違うわ!」

「あら、そうだったの?ピアノで気を引くとかやけに自信満々だったけど。それならもっとそれっぽく協力したのに」

「違うぞ!?」

 

 なんか戦闘する雰囲気じゃなくなったな、後ジト目で見るな。俺は何もしてない。

 

「いつフラグ立てたんです?」

「知らない」

「無視するな!」

「そうだな。すまないけどお付き合いh「そんな話はしてない!聖剣デュランダルを返せと言ってる!」

 

 聖剣……?あ、地下で手に入れた剣か。

 

「先輩盗んだんですか?」

「鹵獲しただけだ。こんなに早く出てくるとは思ってなかったし」

「泥棒っぽいニオイはこれか…」

 

 どうやらアウト判定のニオイが出てたらしい。

 

「とりあえずやり合う気はねーしファミレスいかね?腹減ったし」

「…話し合いで済むならそれでもいいだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて自己紹介しとこう。()()パリからの留学生の情報科(インフォルマ)2年のジャンヌ・ダルクだ」

「鈴木桃子。今は――何かしらね?漫画家かしら。そっちの紹介はいらないわ必要ないでしょうし」

 

 とりあえずドリンクバー頼んで適当なテーブル席に座ったらこれである。

 留学生は兎も角漫画家って何だろうか?

 

「司法取引で自由になったわけね。未成年なら更生と監視を同時に出来る学生はある意味理想的か?漫画家はよくわからんが」

「私も学生したいけどいろいろ面倒な事になってるから揉めてるようなのよね」

「だろうな。私は兎も角夾竹桃はな。私も卒業できなければ今度こそ檻の中だろう」

 

 なんかひっかかるが理子が司法取引してる以上驚く事でもないな。

 

「司法取引ってやっぱ悪法では?」

「さあな」

 

 口をへの字にしている桜ちゃんにさりげなく背中にモールスで2人のニオイチェックと伝えておく。

 陽菜には不意打ち警戒とでも言っておけばいいかな。

 急なのは悪かったから変な声出すな。

 

「この状況でよくやるな…」

「ある意味流石ね」

 

 なんか勘違いされてる気がする。

 

「さて――デュランダルを返して欲しい。先祖代々受け継いでいる剣なんだ。金はちょっと時間がかかるが用意する。資産はユーロとドルでな。不動産等の換金には時間がかかる」

「いや、金はいいわ」

 

 名剣のたぐいは金で買えない事も多いからなあ。

 

「ぐぅ。で、出来る事はする。なんならお前の配下になってもいい」

「なってもいい?」

「う。なります。騎士として鍛えているから不便ではないはずだ。戦略、戦術どちらにも対応できる頭脳もある」

 

 戦闘力もあって、オカルト方面の知識もあり、戦略戦術の知識もあるならお得か?

 協力者としてはありだけど、配下にしたところで食わせていく事が出来るかというと微妙だな。

 

「ふむ。魅力的だけど。――さっきから何を避けようとしてんの?」

「私の口から言わせる気か!?」

「何がだよ」

「く、鬼畜め……。わかった。捧げよう。ただ私に経験はないからそこは容赦してほしい」

「なんか物凄い不名誉な誤解してないかお前」

 

 隣の鈴木とやらは面白いものを見る目で観察しながらメモ帳になんか書いてるし。

「先輩。流石にそれは…」

「師匠…」

「 俺 は なんも要求してねえ」

 

 なんで俺が悪いみたいな雰囲気になってんだよ。

 

「男は狼って言うけど意外と紳士ね。草食系ではなさそうだけど」

「紳士のハードル滅茶苦茶下がってない?」

 

 このままじゃ話進まなさそうだし返すか?でもなんも対価無しは癪だしな……。あ、そうだ。

 

「欲しいのは情報だな。あんたらの組織についての」

「今は退学になってる。わかった。話せることは話そう」

「陽菜と桜ちゃんは席外してくれ国家機密レベルの厄ネタだから。必要に応じて情報は俺から渡す」

「じゃ、二人っきりにしてあげましょう。お二人さんも私に聞きたい事ぐらいあるんじゃない?」

「わかりました。無茶はしないでくださいね」

「ご武運を」

 

 そう言って離れ際にモールスでシロと伝えてから少し離れた席へ移動する。

 見える範囲にいた方が安心できるって事かね。

 

「それじゃあ。話せる事はってなんだ?話せない事があると?」

「話した内容によっては私が狙われる」

「居場所がバレてるからか?」

 

 逃げたわけではなく捕まってるわけだしな、口封じされるならとっくにされると思うが。

 

「違う。イ・ウーは私闘を禁じていない。邪魔だと判断されたら消されるだろう」

「……?どういう組織なんだそれは」

「まずイ・ウーの説明が必要か」

 

 曰く、イ・ウーは全員が教師であり生徒。技術を教え合ってどこまでも強くなる。

 曰く、イ・ウーは()()()()()()()()()()()。目的は個々人で持つもの

 曰く、イ・ウーの公用語は日本語とドイツ語

 

「裏社会の学校みたいなもんか?」

「似たようなものだな」

 

 退学だの言うわけだ。いくつか気になることはあるが知ってもどうしようもないなこれ。

 上位陣の事は報復が恐ろしいから黙秘だそうだが一人だけ教えてくれた。

 

「『無限罪のブラド』。お前達が盗みに入ろうとしている紅鳴館は奴の別荘だ。知らないわけではないだろう。私に疑いは掛からん」

「理子に疑いがかかるのでは?」

「それは理子も承知だろう。ブラドは理子を監禁していたからな。例え私が庇っても理子への口実にするだろう」

「監禁だと……!?」

 

 おいおい。急に暗い過去をぶち込むな。

 

「とはいえ―――理子が監禁されていた話については私も詳しくは知らない。ブラドから僅かに聞いただけだからな。話は少しそれたがブラド本人について教えておこう。万が一の時のためにだ。あいつは危険すぎるからな」

「危険…か。それなら俺なんかよりアリアに教えておいた方がいいんじゃないのか」

「いや、お前の方がいい。アリアに教えると猪突猛進にブラドを襲って返り討ちに遭い、口を滑らせて反撃の手が私にまで及びかねないからな」

 

 あいつ信用ないなあ。同意見だけど。

 

「ここからの話は非常時にのみアリアと共有しろ。いいな? まず先日ここに現れたというコーカサスハクギンオオカミのことだ。あの狼のことは情報科(インフォルマ)で調査中だが、私の見立てではブラドの下僕と見てまず間違いない」

「……飼ってるって事か?」

 

 となると保健室になぜ現れたんだ?

 俺の始末か?

 

「放し飼いだがな。奴の下僕は世界各地にいてそれぞれ――かなり直感頼りの遊撃をするそうだ」

「……それ単なる野生生物じゃ?」

「普段はな。だがブラドの命令は絶対守る」

「動物相手にカリスマでもあんのか優れた調教師なのか。……いや動物従わせる人間の現場見たことあるしありえんはなしでもないか」

「それは狙撃科(スナイプ)の少女だろう?それとは違う。奴は()()()()()()からな」

 

 ……。

 なんかすごく嫌な予感がする。

 

「妖怪かなんかか?」

「うむ…私も、日本語で何といえばいいのかは知らないのだが……オニ、だ。強いていえば」

 

 ジャンヌは口元に指を寄せるような仕草をして、考えてからそう言った。

 『鬼』かよ。『狼』に続いて白雪の占いにあった2つ目の単語が出てきたな。

 

「ブラドは理子を拘束する事に異常に執着していてな。檻から自力で逃亡した理子を追って イ・ウーに現れたのだ。 理子はブラドと決闘したが、敗北した。ブラドは理子を檻に戻すつもりだったのだが、そこで成長著しかった理子に免じて――ある約束をした」

「約束?」

「『理子が初代リュパンを超える存在にまで成長し、その成長を証明できればもう手出しはしない』と」

 

 ハイジャックの時の執着はそれか。

 手出ししないというかできないじゃないのか?

 

「まるで初代を知ってるかのようだな。鬼なら数百年ぐらい生きててもおかしくはないが」

「知っているだろうな。3代前の双子のジャンヌ・ダルクが初代アルセーヌ・リュパンと組んで3人組でブラドと戦い――引き分けている」

「いつの話だ」

「1888年。まだ下半分しかできていなかったパリのエッフェル塔でだ」

 

 過去の引き分けに持ち込むほどの敵の子孫がいたら危険視して拘束するのもおかしくないか……?

 それにしてはジャンヌが無視されてるのが気になるが。気にしても仕方がないな。

 

「どんな奴なんだ?」

 

 尋ねるとジャンヌは困ったのか考える顔をした後、胸ポケットから眼鏡を取り出し、カバンからノートとペンを取り出して何かを描きだす。

 

「目が悪いのか?」

「少し乱視でな普段は使わない。あの化け物の事は口で話してもわかるまい絵を描いてやる」

 

「いいか。ブラドが留守にしている館に潜入するのはいいが――もし万が一ブラドが帰ってきたら即刻、作戦を中断して逃げろ。()()()()()()()。もし戦いになっても、逃げるための戦いをしろ」

「エビデンスはあんのか?」

「双子のジャンヌ・ダルク達はブラドを純銀の銃弾で撃ち聖剣デュランダルで突いたが ヤツは死ななかったと記録にある」

 

 死なないだけならいくらでも方法論はありそうな気がするが。

 

「私も直接見たわけではないがヤツが敗れたのは理子との決闘のあとにイ・ ウーのリーダーと戦った時だけだ。その後、イ・ウーで聞いた情報だが……ブラドを倒すには、全身4か所にある弱点を同時に破壊しなければならなかったらしい」

 

 ギミック型のボスか。ゲームと違って同時に4か所はきついなあ。爆撃するわけにもいかないだろうし。

 

「4か所の弱点のうち、3か所までは判明している。ここと、ここと、ここだ ヤツは昔、ヴァチカンから送り込まれた聖騎士(パラディン)に秘術をかけられて、自分の弱点に一生落ちない紋様をつけられてしまったのだ。よし。 だいぶ描けたぞ」

 

 ジャンヌが『だいぶ描けた』と主張しているその絵は、

 

「……UFO被ったピーマンに触手が生えてるように見えるんだが」

「失礼な!ブラドはこういうヤツなのだ! お前は私を疑うのか?」

「まあ嘘ついてる様子はないから()()()信じよう」

 

 しかし情報を総合すると俺はブラドと遭遇するのは確定だな。そして多分戦闘になりかねん。

 

「これくらいでいいか?」

「参考にはなったな」

「ではデュランダルを返して貰おうか」

 

 鑑定結果だとこの剣は退魔力が高いらしい。普通の人が使っても少しは効果があるとか。

 

「……紅鳴館で仕事終わってからな」

「なぜだ!?」

「俺はもうすぐ鬼と会うって予言受けてるからな。戦闘手段は多い方がいい」

「なに?」

「仮にブラドと戦闘になった場合アリアも理子も救えるのは多分俺だけだ。逃げ一手だとしてもな」

「そうかもしれんが」

「頼むジャンヌ。理子を救うためだ協力してくれ」

 

 ジャンヌの手を取り、真っ直ぐに見つめる。

 5秒10秒と時間が過ぎていき、少しずつジャンヌの顔が紅潮してきたような?

 

「~~~~わかった。紅鳴館までだからな!ただし!ブラドが戻ってきたらすぐに連絡を寄越せ!撤退ぐらいは手伝ってやる!」

 

 なんか知らんがうまくいったらしい。別にデュランダル貸してくれるだけでよかったんだが。

 なんか私の馬鹿とかうつ伏せになってうめいてるが気にしなくていいだろう。

 さて、あっちも呼び戻そうかな?

 

「深夜アニメはハーレム男の思考も勉強できるわ」

「なるほど…?」

「某は別に一番で無くとも…」

 

 あいつらは何の話してるんだ?

 

 この後全員に奢った。




「仲良くなってたみたいだけど何話してたんだ?」
「アニメの布教と時代劇の布教ですかね」
「アニメには興味はなかったものの歴史を題材とした興味深いものもあるとの事」
「ノリノリで時代劇布教してましたよね?」
「同士が少ないもので……」









ジャンヌがデュランダル奪還協力の際にいろいろ吹き込んでそうな桃子のイメージ

鬼戦盛る?

  • 盛らない
  • 盛れ(戦力)
  • 盛れ(鬼)
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