遠山キンジの独白 作:緋色
「もーしー。オレオレ」
『……遠山様ですか。お姉様に不敬ですよ』
「あれ?粉ちゃん?これ白雪の番号だよね?」
気軽に白雪に電話したら粉ちゃん――白雪の妹の粉雪ちゃんが出た。
なして?
『お姉様は現在面会謝絶中です。それでh「待て待て結構重要な用事だから」なんですか?』
あぶねえ。粉ちゃん男嫌いなのか会話拒否気味なんだよな。
真面目に話せば事務的には対応してくれるだろうから真面目に話さないと……。
「白雪が前に俺が狼と鬼と幽霊に会うって予言したんだけど…あれ?予言って人に言っていいんだっけ?」
『言いふらすのはあまり良くないですが…。その件の詳細は伝えた事以上の情報は無いと思いますよ。あるいは伝えたら悪い事になるか』
「ふーん。そこはいいとして。リアル狼に襲われたからリアル鬼の対処法と鬼退治になんか欲しいなと。白雪がダメなら粉ちゃんが代わりに教えて」
『遠山侍は鬼を単独討伐した事があると小耳に挟んでおりますので、対策などいらないのでは?』
「俺一人の時は逃げやすいからそれでもいいけど、今度の任務は一人じゃない上にそこで鬼がでそうなんだよね。下を守るのはお兄ちゃんの義務みたいなもんだし」
『遠山様に弟か妹いましたっけ?』
「――イルヨー?」
『……では、遠山様宛に対鬼装備を送っておきますね』
「なるはやでよろし『ツーツーツー』切るの早!?」
そんなことがあった少し前。
届いたのは注連縄と酒とよくわからん呪文が書かれた紙。あと前に頼んでた退魔の文様?が描かれた風呂敷。あとお守り。
同封されてた手紙には使用方法と『無いよりはまし程度なので過剰に信用しない事。無理だと判断したらすぐ逃げる事』を迂遠で俺を扱き下ろす内容交じりに書かれていた。
粉ちゃんは相変わらずツンデレである。金雪にはならないのでツンデレされても反応に困るが。
執事の練習したり、対超装備用意したりいろいろやったが、
6月13日
『民間の委託業務を通じたチームワーク訓練』開始
……『民間の委託業務を通じたチームワーク訓練』は教務科に提出した表向きのアレである。2週間ぐらい潜入するのでこうやって手続きしとかないとサボってた扱いになる。
実際には理子の言う『大泥棒大作戦』なのだが潜入のフォーメーションは当初の予定通り、俺とアリアが潜入チーム。
理子は遠隔で連絡を取り、作戦立案や必要な機材の調達・輸送を行う役割だ。
ミッションは、理子の十字架の奪取。
適当にがんばろー。
朝早くに待ち合わせしたモノレールの駅に淡いピンクのシフォンワンピースで現れたアリアは、私物が詰まったトランクを当然のように俺に持たせる。別にいいけどメイドとして潜入する自覚あるのだろうか?
「キーくん、アリア、ちょりーっす!」
理子の声がして振り返ってみれば
ビキィ
血管がちぎれるかと思った。
「――理子。なんでその顔なんだよ……」
最後に会ったカナそっくりの姿で現れた。
声と身長からして理子の変装なのだろう。
「くふっ。理子、ブラドに顔が割れちゃってるからさぁ。防犯カメラに映ってブラドが帰って来ちゃったりしたらヤバいでしょ? だから変装したの。カナちゃんが理子の知ってる世界一の美人だから。それにカナちゃんはキーくんの大切な人だもんね。理子キーくんの好きな人のお顔で応援しようと思ったの。怒った?」
「怒ってるわ――まつ毛の数が違う」
「へ?」
「カナはなあ――周囲の時が止まるほどの美しい人で。その柔和そうな、長いまつげの目は――視線そのものに引力をもち、男も女も無関係に人の心を虜にした。優しげな笑みを形作るその唇は、どんな荒れた心も穏やかに変える―魔法のかかった薔薇の花びら。――そういう崇高な存在なんだよ」
「……お、おう。キーくんマジでごめん想像してたよりキモい」
聞こえてるぞ。
このおちょくりに何の意味があるんだおい。
「わかったなら顔変えてこい」
「時間ないから無理。――ごめん睨まないで」
「顔が視界に入らん立ち位置ならマシか……?身長だいぶ違うし」
別人だし顔が目に入らないなら小柄の女性という感じで問題なさそうな気がする。
「キーくんはカナちゃんの事好き過ぎない?」
「カナの美しさを語るなら3時間は掛かるぞ?」
「カナって誰よ?」
ここまでの流れをポカーンと見ていたアリアが少し焦るような声で聞いてきた。
誰って……あー、そういやアリアはカナのこと知らないのか。
「キーくん。アリア知らないみたいだし着くまで語ってあげて」
「いいだろう。カナの美しさは天使のようだが戦う姿は――
――桜が舞い散る中のカナは儚げな雰囲気を」
「キーくん到着するからその辺で」
「まだ語り足りないんですが!?タクシーの運ちゃん。もう一周」
「はいはい。我儘言わずに降りましょうね〜。カナちゃんも大概だったけどキーくんもよっぽどだよねえ」
「何かおかしいか?」
「うん」
何かおかしなところあったか?
語彙力が足りなかったか?
「よ、ようやく解放されたわ……」
なぜかげっそりしてるアリアが下りた所で逃げるように去るタクシーを軽く見送る。しかし到着した館は――
「の、呪いの館……って感じね……」
到着した館を見てからアリアは青ざめている。怖いのだろうか。
周囲をかこむ鉄柵はドンヨリした黒雲めがけて真っ黒な鉄串を突き上げており、さらにその内側には茨の茂みが続いていて館本体は薄気味悪い霧でモヤーっと包まれてるホラー・ゲームにでも出てきそうな、妖しい洋館だ。
やべえ。超帰りたい。
こういう雰囲気がニガテらしいアリアは、それだけで思いっきり後ずさってる。
普通に館に入っていく理子を追うように戦々恐々のアリアを腕に掴まらせて追従する。
館を管理人が自ら出迎えてくれたのだが――
「初めまして。正午からで面会のご予定をいただいております者です。本日よりこちらで家事のお手伝いをさせていただくハウスキーパー2名を連れて参りました」
と言う理子がちょっと引きつった顔で挨拶している。
「い、いやー。意外なことになりましたねぇ。あははー…」
と苦笑いする、武偵高のイケメン非常勤講師の小夜鳴。
管 理 人 お 前 か よ ! ?
「いやー、武偵高の生徒さんがバイトですかぁ。まぁ正直な話難しい仕事でも無いので誰でもいいといえばいいんですが。……ははっ。ちょっと、気恥ずかしいですね」
狼と槍?の紋章が壁に張られた屋敷の応接間に通されてから困ったように小夜鳴はいう。
「執事とかやったことないんで芸の幅を増やしたかったんですよね。ちょうどいいんで指導してもらえると嬉しいんですが」
「いやー。私研究者なのであまり詳しくないんですよ」
ごめんなさいね。と苦笑いする小夜鳴はこの間の狼にやられた腕にまだギプスをつけていた。
「研究?」
「いやー、私の家じゃないんですけどね。私はここの研究施設を借りることが時々ありまして、いつの間にか管理人のような立場になってしまっていたんです。ただ……私はすぐ研究に没頭してしまう癖がありますからね。その間に不審者に入られたりしたら、あとでトラブルになっちゃいますから……むしろ、ハウスキーパーさんが武偵なのは良いことかもしれませんね」
小夜鳴は俺とアリアを、どうやら予定通り雇ってくれるようだ。しかし、これ気付いてるという匂わせか?
潜入にしてもタイミングが良すぎる気がするが。
「私も驚いております。まさか偶然学校の先生と生徒だったなんて。ご主人様がお戻りになられたらちょっとした話の種になりますね。まあこの2人の契約期間中にお戻りになられればの話ですが」
「
派遣会社の人間を装う理子も少し困惑気味だったが、さりげなくブラドが潜入中に戻ってくるかどうか確認している。予定なくても帰ってきそうな悪寒はするけどな。
「ご主人はお忙しい方なのですか?」
「それが実はお恥ずかしながら詳しくは知らないんです。私と彼はとても親密なのですが……直接話したことが無いものでして」
見た感じ嘘ではなさそうだが、オンラインゲーム仲間か?ゲーマーには見えんから研究者繋がり?どっちにしろ小夜鳴経由で情報取るのは難しいかな?
さてさて『大泥棒大作戦』どうなることやら。
感想と評価でやる気が変わります
なんか前回の閲覧数とお気に入りの増加が跳ね上がってるんですよね
夾竹桃効果か?
鬼戦盛る?
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盛らない
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盛れ(戦力)
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盛れ(鬼)