遠山キンジの独白   作:緋色

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ちょっと短め


執事とメイド

 さて、任務とはいえ一応仕事は家事代行(ハウスキーパー)。執事と聞いていたんだがな?

 制服着ることがルールらしいので古めかしい燕尾服を身に着けてるが……これ礼服だから普段使いするもんじゃないはずなのだが、軽く価値を鑑定しただけでも100万ぐらいするんだけどブラドの趣味なのだろうか?ちなみにアリアに感想を聞いたら「悪くないわね」との事だった。

 アリアのメイド服は黒のワンピースに胸元フリル。腰から下を覆う白いカクテルエプロンはオシリの上で大きく蝶々結びをしていてとても可愛らしく仕上がっている。こっちも100万以上はする職人手作りの品である。というかこっちの方が気合入ってるけどそういう趣味か?

 なお褒めたら平民の服だからと顔を真っ赤にしてなんか言ってた。気に入ってるようなのでツンデレだと思う。

 

「調度品とかいたるところに金かかってるあたり貴族かなんかかね?」

「別荘とかならこんなもんでしょ」

 

 そういうもんらしい。

 

 執事と言えばバトラー(butler)――秘書と使用人が合わさったような漫画とかでよく見るようなアレ――だが、仕事は地下研究室に閉じこもる小夜鳴に新聞を届けたり、電話番をしたり、門番の真似事をしたり執事というか単なる家事手伝いが近い。

 少なくとも前に戦姉(あね)にやらされた執事とは全然違う感じだ。あれは秘書兼護衛が近かったから勝手が違うのかもしれないが。

 それなりにちゃんと仕事をこなしつつ、そして事前に理子が調査してくれていた防犯カメラの視界を避けつつ、館内にある防犯設備や小夜鳴の行動パターンをつぶさに観察し、防犯の隙間を見出して範囲を広げて調べていく事を繰り返す。

 家事(というか料理?)が壊滅的なアリアは表向きの仕事は貴族視点で改善点や気になったことをあげるので意外と役に立っている。防犯とかそういうのを調べているがそっちの方も効率的に調べてる。

 俺一応探偵科なのに強襲科一本のアリアの方が調べるのがうまいのはどうなんだろうか。自信無くしそう。

 

 それはそれとして小夜鳴は怪しい存在ではある。

 常に研究室に籠もっているのはいいとして、食事は三食焼いた肉というか表面炙っただけの生肉である。

 肉食主義にしても付け合わせもいらないし香辛料にニンニクを嫌がるあたり極端が過ぎる。

 穀物も取らないのでまず間違いなく普通の人間ではない。というか研究者のくせに栄養だけ取るサプリメントやらで補ってる様子もないのに栄養素の偏りによる不健康な感じが0である。

 ブラドの関係者だし、魔の存在なのかもしれない。

 狼とかそこら辺の存在か?犬ってニンニク駄目だったはずだし。鬼がニンニク苦手なのは聞いたことないし。

 理子に頼んで過去を調べさせようかと思ったが理子はなんか隠してるしな…。大方十字架取り戻したら再戦して自由をとかそこら辺の考えだろうけど。ブラド仕留める方が早いと思うが。

 

「というわけで小夜鳴の過去調べといてくれ」

「それはいいが理子に頼めばよくないか?」

「あいつキャパ限界気味に思えるし」

 

 買い物ついでにジャンヌを人気のない公園に呼び出して話をしている。

 まあ買い物と言っても使用人用の食材――俺とアリアのための買い物だ。ニンニク類など口臭とかの関係で禁止なモノを除けば制限はあんまりない。

 あの館は定期的に高級肉と調味料が届くけどそれ以外の食材はないからな。米と味噌はOKなので買い出しというわけだ。あとももまん買ってこいとも言われている。

 肉は多めに頼んでるんで小夜鳴が食べる分さえ確保してれば好きにしていいらしい。太っ腹である。なんで使用人の方が手の込んだ料理作ってるんだろうか?

 

「それならこちらでも調べておこう。他にはなにかあるか?」

「今の所はないな」

「そうか。報酬はきっちり貰うからな?」

「考えとくわ」

 

 報酬どうしようかな。ブラドの館からメイド服でもパクって渡すか?あれ高そうだし。ブラド相手なら違法にならんらしいからな。

 

「それはそうとデュランダルを貸せ」

「任務終わるまで借りる約束じゃん」

「違う。貴様は魔法使い(マツギ)ではないから単なる剣だ。魔力を定期的に供給しておかないと意味がない」

「そういうもんか?」

 

 とりあえずデュランダルを渡してみるとジャンヌは柄を外して髪を数本抜いて中に収める。そこが外れるんだ。デュランダルの伝説通りの仕組みらしい。

 そして剣を淡く発光させる。充電中という事だろうか。

 

「これで一週間は持つはずだ」

 

 軽く試し振りして納得したのか素直に渡してくれる。よくわからんけど問題ないらしい。

 

「サンキュー」

「次は五日後だったな?それまでに調べておく」

 

 そう言って立ち去るジャンヌ。

 推定狼だと仮定するとジャンヌの若草みたいな香りは特徴的だし、ジャンヌと会ってたこともニオイでバレるのかね?流石に燕尾服で出歩く気はなかったし、私服だが一回銭湯とランドリーに寄るべきかな?

 念には念を入れておくか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 潜入7日目の夜10時。大粒の雨と遠雷の音がする時間帯の事。

 俺とアリアは遊戯室のビリヤード台にいた。

 落ち着かない様子でビリヤードの突き棒(キュー)を突いてミスショットを連発するアリアは

 

 ピカ――ガガーン!

 

「ひゃう!」

 

 雷光と雷鳴が見えるたびに毎度毎度面白いようにビビっている。

 ハイジャックの時もそうだったが雷が怖いらしく、1人が嫌なので遊戯室に俺を呼んだらしい。

 ビリヤードキューを手放さずにずっとビリヤードしてるのも何かしてないと怖いのだろう。

 かわいいものである。

 

「ききキンジ!」

 

 新たに雷光がピカッと光ったと思えばアリアのキャパが越えたのか、飛びついてきてきゅ~っと身をすくめている。

 

「よく頑張ったね~。お兄ちゃんはここにいるから安心しなよ」

「頑張ってない!別に怖くない!(がガーン!)ひゃお!?」

 

 怖がってるとは言ってないんだけど、自分に言い聞かせてる感じである。

 スカートの裾をぎゅぅーっと掴んで恐怖に震えるアリアはプライドなのか涙目を下に逸らして目を合わせない。うちのイモウトが可愛すぎる。

 飛びついてきてるあたりプライドもないと思うが、基準がわからない。

 雷光と雷鳴の間隔が伸びてるし、もう少ししたら嵐も去るだろう。

 

「アリアに雷を遠ざけるおまじないを教えてあげよう」

「遠ざける……?」

「そう雷様は『くわばらくわばら』と唱えると逃げるのさ」

「雷様?」

「そういう神様が日本にはいるんだ。桑原には雷を落とさない契約らしくてね。くわばらと聞くと間違えたと思って去って行くんだと『くわばらくわばら』」

 

 そういえば雷様は鬼の姿で描かれることも多いが……まさかね?

 胡散臭そうな目で見ていたアリアだったが、ピカッというさっきより弱弱しい稲光としばらく経ってごろごろと響く雷鳴はさっきよりだいぶ遠い。

 

「な?逃げてっただろ?」

 

 元から遠ざかってたけどここは安心させるためにそれっぽく言っておく。

 

「…た、確かに遠ざかってるわ!すごい!」

 

 すっかり信じたらしく「ありがとう!ありがとう!」とはしゃいでいたが、ふと身体が密着してる事に気が付いて

 

「ヘンタイ!」

 

 顔を真っ赤にしたアリアにぶっ飛ばされた。

 流石に理不尽だろこれ。




日本だとニンニクを鬼が嫌がるって聞いたことがない(イワシと豆は聞いたことがあるが)
というか鬼の好物って話もあるし
ここら辺は文化圏の違いだと思う

鬼戦盛る?

  • 盛らない
  • 盛れ(戦力)
  • 盛れ(鬼)
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