遠山キンジの独白 作:緋色
「山形牛の炭火串焼き~柚子胡椒と炒り豆を添えて~」
料理を隠す
洋館の作法とはいえこれ意味あるのだろうか。この銀みたいに見えるけどそれっぽいだけで偽物だし。こだわりがよくわからん。
「なぜ炒り豆を添えたんです?」
「余ってたので。食べやすいようにレンゲに盛っておきました」
「…食べますけど。肉以外いりませんよ?」
「ギリギリを攻めていって許容範囲を増やしていこうと思いまして」
「食わず嫌いじゃないので余計なお世話です」
ん〜?炒り豆駄目じゃないなら鬼関係ないのかな?
顔には出さんが俺のニオイを嫌がっているようだし、やっぱ犬なんじゃ無かろうか。串焼き肉以外注文しないし。
串から肉を抜いてあげつつ、そんなことを考える。
それが終わると食堂の片隅に立って指示を待つだけだ。ギプスしてるからって食べさせなきゃいけないとかじゃなくてよかったよ。
小夜鳴が選んだレコードがノイズ交じりの
「Fii Bucuros」
「Doamne, te-ai vorbi limba română..? "Fii Bucuros."?」
バラ園を見ながら何か言った小夜鳴に対してメイドアリアは赤ワインをグラスに注ぎながら、どこかの外国語で喋った。
「驚きましたね。語学が得意なんですか? 神崎さんは」
アリアはヨーロッパ各地で暴れてた武偵で東京武偵高に来てから
「むかしヨーロッパで武偵やってましたから、必要だったんです。先生こそどうして…ルーマニア語をご存じなんですか?」
「この館の主人が、ルーマニアのご出身なんですよ。私たちは、ルーマニア語でやりとりするんです。神崎さんは何カ国語できるんですか?」
ブラドはルーマニア出身なのか。となるとルーマニア関連の貴族かなんかだろうか。
ルーマニア――ブラド……オニ?なんか引っかかる。
「えっと。17か国語喋れます」
「Fii Bucuros!驚きですね。そしてピッタリ同じ数です」
「数?」
「ええ、あの庭のバラ――品種改良した新種のバラで、ちょうど17種類のバラの長所を集めた優良主なんです。まだ名前だけ無かったのですが――『アリア』にしましょう」
薔薇って確か三万種類ぐらいあるからアリアって名前とっくに使われてそうだな。
それはそれとして、こいつうちの妹口説いてるんか?教師の自覚あんのか?
顔赤くしてFii Bucurosと連呼してるし酔ってるだけかな?
割と思考が物騒になりつつも、一通り小夜鳴の食事は終了し、研究室に戻って行った。
炒り豆食ってるし鬼じゃなさそうかな。
丑三つ時すなわち深夜2時
理子とアリアの三者間通話で毎日報告をしている。
『掃除の時に調べたんだけど·····地下金庫のセキュリティが事前調査の時より強化されてるの。気持ち悪いぐらいに厳重。物理的な鍵に加えて、磁気カードキー、指紋キー、 声紋キー、網膜キー。室内も事前調査では赤外線だけってことになってたけど、今は感圧床まであるのよ』
急にトラップ強化してるってバレてるよなこれ。
室内に盗聴機の類はないし、なんなら壁に埋め込まれてる感じもなかった。庭等に声を拾える装置もなさそうだが…
まさか遠距離から普通に聞こえている…?人外ならあり得るか?そうなるとジャンヌに協力して貰っているのもバレてるか?
考え過ぎか?
『よし、そんじゃあプランC21で行くかぁ。キーくん。アリア。なんにも心配いらないよ。どんなに厳重に隠そうと理子のものは理子のもの!絶対お持ち帰り!いま小夜鳴先生とはどっちの方が仲良しになれてるのかな?かなかな?』
なんかテンション高いなあ。やる気があるのは結構だが夜だし眠いんだがなぁ。
細かい工作とか考えると俺が潜入する方がよさそうだしアリアが仲いい事にしとくか。
「アリアじゃね?なんかルー語?で話してたし。俺はなんか避けられてるからな。臭うのかね?」
リボルバー用の.38Splの
魔のものだと仮定した場合避けるのは当然か?
もしかしたらデュランダルを嫌がってる可能性もあるな今背中に仕込んでるし。
『ルー語じゃなくてルーマニア語ね。そんな悪いニオイはしなかったと思うけど……?』
『じゃあ、とりあえず先生を地下金庫から遠ざける役目はアリアで決まりね!どう?できそう?』
『…彼は研究熱心だわ。おびき出してもすぐ研究室のある地下に戻りたがると思う』
「夜もいつも起きてるし、いつ寝てるのか全くわからんな。何の研究してるんだか」
『こないだちょっとお喋りしたとき聞いたけど……品種改良とか遺伝子工学とかって言ってたわ』
バラの品種改良したとか言ってたなそっちが専門か?それにしては植物系の匂いは小夜鳴から全くしてない気もするが。むしろ血の匂いが……毎食ほぼ生肉食ってるからそっちかな。
地下の研究室に閉じこもってる植物研究って存在するのか?知らんだけか?
『キーくん、アリア。じゃあ時間でいえば何分ぐらい先生を地下から遠ざけられそう?』
「アイツの普段の休憩時間の間隔から見て10分ってとこだろうな」
理子の台詞に思考を戻してからざっくり答える。
『なんとか15分がんばれないかなぁ。例えばアリアが胸――はないからお尻触らせるとか』
『風穴!あんたじゃないんだからやるわけないでしょ!?』
『おおこわいこわい。その辺はアリアは思いつかないだろうし理子が方法考えておくよ!じゃ、また明日!りこりんおちまーす!』
逃げ足早いのか言いたい事だけ言って通話を落としたようだ。
俺も寝るか。
そして迎えた最終日
「こちらキンジ。モグラはコウモリになった」
潜入期間にコツコツ掘っていた遊戯室から地下金庫のある部屋までトンネルで抜けて、現状逆さ吊りになっている。
作戦名は『
つまり、まずは地上階から金庫の天井までモグラのように穴を伝って到達し、そしてその天井から、コウモリのように逆さ吊りになった俺がお宝を頂戴するのだ。
そしてアリアが小夜鳴をバラの事が聞きたいと庭におびき出している間に盗めという事だ。最低でも15分ぐらい時間稼ぎするのがアリアの役目だが、短気のアリアの事だし失敗しそうだから10分無いかもと見とくべきだろう。
「スパイ映画並みに緊迫したBGMが欲しいな……」
『キーくん余裕だね』
薄暗い金庫の中で、目標の十字架は陳列棚の上に無防備に置かれているように見える。だが赤外線ゴーグルを使って見れば、十字架の周囲にはタテ・ヨコ・ナナメに複雑に入り組んだ赤外線の警戒網が張られている。
気分はスパイ映画である。やってる事はただの泥棒だが。
『よしキーくん。「レール作戦」始めるよ。まずはZ1それにA10を繋げて』
インカムに付けられた小型のデジタルビデオカメラは、遊戯室のケータイを通じて理子にパケット通信でこの赤外線の網の形状を視覚的に伝えている。
それを見た理子の指示に応じて…ベストのポーチから取り出した針金を繋げていくのだ。
『E12、C7、A16、A13――』
いつになく理子の真剣な理子の声。
お茶らけてるいつもの声も可愛いけど真剣な声もクールでいいなあ。これがギャップ萌えか。
甘くヒスった頭で器用に針金を弄り回し、とうとう青い十字架に届いた。
「よし
カーテンレールに使うようなS字鈎を取り出し、レールに掛け鈎は仕込まれたナイロン製の極細ワイヤーを針金の周囲に螺旋状に巻き付けながら、ミニチュアのジェットコースターみたいにレールを滑り降りていき――レールの先端で、元々ペンダントトップだった十字架を吊すような形に引っかかった。
「釣ります」
『キーくん急ごう。予定よりちょっと遅れてる。残り3分ないよ』
「……がんばれって応援してくれ。頑張れるから」
『キーくんがんば!』
血流が集まる感覚と共に手元のリールを、ちきちきと回し揺れる十字架の動きを予測して、赤外線に触れないように緩急付けて振り回し手短に回収する。
そして瓜二つなダミーをレールを滑らして寸分違わない位置に置く。
あとは針金を回収し、撤退して証拠隠滅したらミッションコンプリートだ。
小夜鳴が地下室に戻ったのは、俺が金庫から出たほとんど直後だったそうだ。間一髪である。
アリアも頑張ってたようなのだが、話上手いわけでもなく話させることも上手くないから――アリアにしては頑張った方だろう。
そんなわけで俺とアリアは、私服というか武偵高の制服に着替えて、紅鳴館を後にする。
「とりあえずバイト終わったから言いますけど、あの食事続けるなら倒れますよ?」
「遠山君はお節介ですねえ……。まあ
「そうですか、では、また」
そう言って小夜鳴はさっさと地下室に戻ってしまった。
なんで今アリアを見たんだろうこいつ……。
目を付けられたのかな?
キンちゃんが気付いてないいだけで絶対匂わせまくって遊んでたと思う
鬼戦盛る?
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盛らない
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盛れ(戦力)
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盛れ(鬼)