遠山キンジの独白   作:緋色

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何書きたかったんだっけ?


報酬

『キーくんは大変なものを盗んでいきました』

 

 そんな件名で送られてきたメールの添付ファイルを開いてみると、どっかのFlashアニメのノリで俺を追い回すものだった。

 背景に時間と場所を示すものが出たり消えたりしてるからこれが報酬の『招待状』なんだろう。

 数日の間によくこんなの作れたな……あ、アリアが首吊ってる。どんだけ嫌いなんだよおい。

 Flashの最期にカリオストロのパロなのかカナっぽいキャラが理子にこう語っていた。

 

『キンジはとんでもないものを盗んでいきました…あなたの心です!』

 

 ……盗んだ覚えはない。

 最後が本命だったような気がするが、判断付かんのでいったん置いとくとしてそろそろ時間か。

 それを確認してたかのようにピンポーンとチャイムが鳴る。時間より早いがまあいいか。

 ドアスコープから訪問者を確認(アリアが勝手に居座ろうとした件から確認するようにしてる)して見ると……前髪を気にしてるジャンヌとなんかもう一人いるな。

 どっかで見た気がするが、大体勝てるだろう。

 

「いらっしゃい」

「来たぞ」

「お邪魔するわ」

「!?いたのか夾竹桃!?」

「あら、お邪魔だった?」

「邪魔ではないが」

 

 なんかもごもごしてるジャンヌは置いとくとして、もう片方もそんなに敵対的ではないっぽいな。鈴木だっけ?

 

「コーヒーでいいか?ミルクはないが砂糖はある」

「構わん」

「私はブラックで」

 

 使い捨てのマドラーとスティックシュガーと共にコーヒーを出してから、奥の部屋に置いてるモノを取ってくる。

 

「やっぱこれ俺にくれない?」

「やらんわ!魔女相手に約束は守らないと呪われるぞ」

「ふむ。じゃあお確かめください」

 

 でかめのアタッシュケースを開いて

 

「なんだこれは!?」

「メイド服――あとデュランダル」

「なぜメイド服が入ってるかと聞いてる」

「報酬だけど?」

「それでなぜメイド服になる!?」

「なぜって――」

 

 ブラドの館で盗んだ物だし、それをジャンヌに渡しとけば先に襲撃されるのはジャンヌになるだろうからよくわからんブラド対策に少しでも情報取れるだろうという策のつもりだった。

 その前にブラド逮捕しちゃったけど。

 でもそれ説明すると拗れるよなあ。

 

「似合うかなと思って」

「にあ!?」

 

 コントしてる傍らでメイド服を裏表じっくり観察しながらメモ――スケッチ?――を取っていた鈴木が徐に語る。

 

「黒いワンピースにフリルでできたチューブトップ。白のペティコートとドロワーズにエプロンと二段構造のレースとフリルを重ねたカチューシャ――いい趣味ね」

「職人は凄いよな」

「そういう事じゃないけど。とりあえずこれ着たスケッチも欲しいわね」

 

 じぃ、とジャンヌを見る鈴木。どうやら着せるつもりらしい。

 

「待て待て!?私は着ないぞ!?」

「大丈夫似合うわよ。この男趣味はいいみたいだし」

「俺のじゃねえからな?あとサイズは大体でパクってきたからな」

「この手のドレスは理子のように小柄な少女が着ることで愛らしくまとまる。だが…私はこの身長だし幼い頃から男のように育てられてきたから合わない!」

 

 なんか可愛い事言ってる。あとパクった事には追及しないのは無法者ゆえか。

 ジャンヌは160cmちょいはあるから小柄ではないがフランスの平均身長よりは低い。まあ小さくて可愛いタイプになりたかったのだろうか。

 

「こうなると意固地になるしスケッチ取れなくなるわね。下手すると服捨てるかも…」

 

 小声でなんか言ってるが、捨てられるのもなんか嫌だな。

 一回ぐらいは着せるか。

 

「そういうのは着てから言え。多分可愛いぞ」

「かわ!?」

「着付け任していい?あっちの部屋姿見もあるし」

「任せなさい。覗いたら殺すわよ」

「俺の事なんだと思ってるんだお前」

「待て待て!?」

 

 そう言いながらも、あまり抵抗せずに連れていかれるあたり着たかったのかもしれない。

 ……よく考えたら別に家でやる必要ないな?

 報酬渡してそれでおさらばで良かった気がする。反応が可愛いから乗せられたか?

 ドタバタ騒いでる部屋を横目にコーヒーを入れ直して寛ぐことにする。

 どうにでもなれだ。

 

「できたわ――ほら恥ずかしがってないで出てきなさい」

「う――お、お呼びでしょうか御主人様!」

 

 ヤケクソなのかもしれないけど叫ぶな。

 それにしても

 

「似合ってるな」

 

 元々、メイド服が黒がベースなのもあり、肌も白く凛とした美人なジャンヌによく似合ってる。

 あと肌が紅潮してるのがとてもいい。

 

「そ、そうか?」

「そこの鈴木が一心不乱にスケッチとってるんだ信用しろ」

「服のスケッチだよな?そうだよな?」

「NLにもハーレムにも理解はあるわ」

「私のナマモノはやめろ!」

 

 よくわからんけど元気になったらしい。

 ……ここまで騒いでると苦情来るかな?

 

  ピン、ポーン

 

 …このチャイム鳴らすにしても奥ゆかしい感じに心当たりがある。

 

「はーい。今行きますよ~。お前らが騒ぐから苦情が来たじゃねえか」

「む。それは悪い」

「後ろの方スケッチしたいからそっち向いてくれない?」

「自由か!」

 

 あまり静かにならなかったな。もう二人はほっといて玄関に向かう。

 

「キンちゃん!」

「……来る前に連絡入れろって言ったろ?」

「うん。でもキンちゃん――誰かいるよね?

 

 殺気を出すな。

 後ろの方で戦闘態勢に入ってるのが聞こえるぞ。

 

「いるよ?ちょっとした仕事関係で。ちょうどいいから顔合わせとく?」

「お邪魔します」

 

 いそいそと入室する白雪は一旦置いといて音的に待ち構えてるなこれ。

 

「おーい。そっち行くけど暴れんなよ?服従させんぞ?」

 

 適当な事言いながら戻るとデュランダルを構えるジャンヌとそれをスケッチしてる鈴木。

 ――どういう光景だ。

 

「ジャンヌダルク。なんでキンちゃんのお部屋に――何してるの?」

 

 構えてるジャンヌに剣呑な問いかけだったが途中で鈴木に気が付いて困惑が勝ったらしい。

 

「いやこれは」

「モデルになって貰ってるのよ」

「それ俺の部屋じゃなくてもよくない?」

「あなたは執事服着て頂戴」

「話聞けよ」

 

 さっき着替えさせた部屋に執事服置いといたの失敗だったか?

 それよりも変な噴火する前に沈下しとくか。

 言い訳が面倒くさいので見たまま言う。

 

「なんか漫画家のインスピレーションを刺激したらしい」

「そうなの……?……キンちゃん様はああいう服装好きなの?」

「嫌いではないな」

「これはお前が持ってきた服だろう」

「そうだけども」

 

 話がややこしくなるんで口挟まないで欲しい。

 

「へえ……キンちゃんが――」

「白雪には1度、――十二単とか着せたい」

「すぐ用意するね!」

「待って?用意できるの?」

 

 剣呑な雰囲気を出す白雪が動く前に適当な事言ったら予想外の返しをされた。

 

「お仕事の関係で着たりするの」

「マジでか――今度都合のいい日に頼む。今日はなんか洋風だし」

 

 まあ部屋が一般防弾設備マンションだから十二単はシチュエーション的には微妙だろうし。

 

「あら?まだ着替えてなかったの?」

「そんなに見たいか俺の執事服」

「メイドとセットが見たいだけで、無理強いはしないわ」

「私は無理に着せたじゃないか」

「あなたノリノリだったじゃない」

 

 まあ楽しそうだし嫌じゃないんだろうなあのフリフリ。

 

「白雪は俺の執事服見たいか?」

「キンちゃんの執事見たい!」

「意味変わってない?じゃあ着替えてくる。許可無き撮影は禁止ですっと」

 

 そう言いながらざっくり着替えに向かう。

 改めて着替えて扉から出ると――やっぱ注目されるよなあ。

 

「お呼びですかお嬢様方?」

 

 

 コスプレごっこは長時間に渡った。




星伽は朝廷と縁深いっぽいんですよねえ
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