遠山キンジの独白   作:緋色

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落ちて落ちて

  ピピピピッピピピピッ

 

「んあ……あ?」

 

 目覚ましの時計のアラームが頭に響き目が覚めた。目が覚めた?

 ガバっと起き上がり辺りを見回す。自分の部屋だった。

 昨日のは夢……?いやおかしい。昨日の予定ではカナ姉に会うことになっていた。なのにカナ姉に料理を作った記憶がないし、抱きしめられた記憶もない。

 冷蔵庫を確認するとカナ姉の好物の材料が残っている。

 ……。

 

 カナ姉――いや兄さんはやると決めたらやるタイプの人間だ。

 その兄さんがアリアをこれから殺すと言っていた以上、翻意させることは難しい。

 昨日の記憶が正しければ俺の言葉で翻意させられた可能性は低いだろう。

 

 

 

 つまりアリアは死んでいる。

 

 

 

 いや、兄さんは殺人をしない人だ武偵法9条もあるし法治側の人間のはず。

 周知メールを確認してみると武偵生徒の死亡の知らせはない。まだ発見されてないだけか?

 いやアリアは海外貴族だから帰国したことにして問題があったことを隠す可能性もある。

 アリアの部屋に――いや誘い出されてたらそこにいる可能性は低いな。始末するなら失踪って形が望ましいだろうし。いや確実に死んだことを晒す必要があるなら目立つ場所に――?

 考えがまとまらない。心臓の音が鳴り響いて五月蠅い。

 

「確認――そうだ確認が必要だ」

 

 携帯を取り出し何度も押し間違えながら電話帳のアリアの番号から繋げる。

 無常に響く発信音が最後の音を終わらs『なによ?朝っぱらから?』

 

「え?」

『え?じゃないわよ!朝から電話するなんて珍しい事しといて!』

 

 理子の声真似じゃなさそうだな?

 

「おはよー。昨日知り合いがアリア見に行くって言ってたけど会わんかった?」

『昨日はあかりぐらいしか来なかったけど?――!あんたまさかあかりにまで手を出してんじゃないでしょうね!?』

 

 あかり?……あーあの間宮のか。

 あれは時たまこっちにお前なんかよりアリア先輩がすごいんだという謎のマウント取ってくる以外で絡みはないんだが。

 

「その様子だと会ってないわけね――じゃ。今日は1学期の単位不足者とか張り出されるけどアリアは大丈夫か?」

『あたしは卒業できる単位揃えてるわよ。あとはテスト落とさなければいいだけ。むしろ心配なのはキンジでしょ。バカなんだから』

「テストはあんま自信はねえなあ。まあいいやこれから朝飯作るから切るぞ」

『あたしは朝まだだし。ごちそうになるわね』

 

 ?

 なんで奢ることになったんだ?別にいいけど。

 アリアの寮からここまで15分前後かな。

 あ、米炊いてねえ。

 

 

 

 少々騒がしい朝飯になった後、アブラゼミの音が響く中チャリをこいでいた。

 俺の肩に手をのせて後輪のステップに立つのはアリアである。

 チャリ爆破された後新しく買うのを面倒くさがっていたため、バスで行こうと思っていたのだがアリアがここまで自転車で来たというので見せて貰ったら、後輪の軸には左右に2人乗り用のステップがぴょこんと付けられていた。

 最初っから俺にこがせるつもりで買ったんだろうな。これ。

 道路交通法というか都道府県が決めてる道路交通規則で2人乗りは禁止なのだが2009年は特に取り締まりも厳しくないので軽く説教されるぐらいである(場合による)。

 地味にこういう法律とかのズレがわかりにくいのがネックなので定期的に調べないといけないのだが。何でもかんでも調べてる方が少ないだろうな。

 

「たまには気持ちいいわね、自転車で学校行くのも」

「お前はこいでないけどな。やっぱチャリだと風感じて幾分かマシだなあ。歩きだと地獄だけど」

「武偵高では忘れがちなことだけど武偵は奇襲に備えていつも同じ道は歩かないようにするのがセオリーよ。それにバスより健康にもいいしね」

「それはそれでパターン化されるけどな。アリアみたいに気まぐれ全開なら対策になるんだろうけど」

「風穴」

 

 それにしても軽いなあーこいつ。

 後ろに乗せてるの忘れてしまいそうだ。

 

「あんたさっきから何を警戒してるのよ」

「ん?警察の巡回?一応二人乗りダメだからな」

「ふーん?なんか別のもの警戒してるように思えるけど」

 

 鋭いな。

 確かに今は警察より兄の襲撃の方が心配である。

 というか兄がなに考えてるかわからんからどうしようもないというか。無駄な警戒ではあるだろうがやっていないと落ち着かないというか。

 

「ちょっと夢見が悪くてな」

「Hum」

 

 なんか疑ってるっぽいが追及することでもないかと諦めた模様。

 こっちとしてもありがたいけどね。

 

 アリアのチャリを自転車置き場に停めてからクラスに向かおうとしたが教務科からの連絡掲示板の前に人が集まっていた。

 そこはどうでもよかったがその中に――幅広の松葉杖をついている見覚えのある後ろ姿があった。

 

「ジャンヌ」

 

 俺の視線を追ったらしいアリアがその名を呼ぶ。

 ジャンヌはクルッと髪をなびかせて振り返り、俺を見て『こいこい(フォローミー)』と手まねきした。……?呼んだアリアじゃなくて?

 アリアが先にジャンヌの方にずかずか歩いていってしまったため、俺もついていく。揉め事は勘弁してほしいんだがなあ。

 

「――あんたが武偵高の預かりになったのは知ってたけど。似合うじゃない制服」

 

 アリアはいきなり身長差を感じさせないでかい態度で、ジャンヌにイヤミを垂れる。

 ジャンヌは「フン」と鼻を鳴らし、そっぽを向いた。

 

「私は遠山を呼んだのだ。神崎・H・アリア、お前に用はない」

「こっちにはあるの。ママの裁判での証言。あんたちゃんと出るのよ?」

「……分かっている。それも司法取引の条件の一つだからな」

 

 司法取引の内容は知らんけどそういう事になってるならいいか。

 司法取引後の犯罪者との交渉は司法取引を盾にされたら拗れることが間違いないからな。

 母親の無実をジャンヌに証言させる約束を取れたアリアはニンマリと笑う。嫌な予感。

 

「ま、ケガしてるみたいだから、イジメるのはまた今度にしといてあげる」

「怪我して無くてもイジメんな」

「……私は今すぐでも一向にかまわないぞ?」

「ジャンヌも乗るな」

「あんた杖ついてるじゃない」

「足一本ぐらいちょうどいいハンデだ。それにこの杖には聖剣デュランダルが仕込んである」

 

 プライドが高い二人が火花を散らし始めた。

 周り巻き込みかねないからやめてくれません?

 

「はいはい二人ともストップ喧嘩しない」

「はう!?」「ひゃん!?」

 

 とりあえず割り込んで俺の両手に花となるように抱える。

 

「お前今首筋に何をした!?」

「別に何も?」

「いや何かが触れたような?」

 

 矢指(レラ・ノチゥ)しただけだけど。

 

「ところで足どうしたんだ?挫いたのか?」

「それは……虫が、な」

「虫?」

「道を歩いていたらコガネムシのような虫が膝に張り付いたのだ。私は驚き、道の側溝に足が嵌った。そこをちょうど通りかかったバスにひかれた」

「おい」

「全治二週間だ」

 

 バスに轢かれてなんで足だけで済んでるんだろうか。しかも全治二週間って。

 

「それはそうと遠山。お前の名前がここにあるぞ」

「は?今日張り出されるのって単位不足者だろ?」

 

 ジャンヌが指した掲示板には

 

『1学期・単位不足者一覧表

 


2年A組 遠山金次 専門科目(探偵科(インケスタ))0.9単位不足


 

 

 

 ……はあ!?

 

「いやいや今学期ちゃんと単位余分に稼いだはずだぞ!?」

「取れてないじゃない」

「だから驚いてるんだろ」

 

 そういう事なのか獲得単位を武偵高の校内(イントラ)ネットで確認してみると。

 

2年A組 遠山金次 

専門科目(探偵科(インケスタ))1.1単位(0.9単位不足)

 

クロメーテル・ベルモンド 

専門科目(特殊捜査研究科(CVR))3.4単位

 

 

 

 

 

 

 CVRに単位吸われてるんですけど!?

 クロメーテルの時でも多少は融通すると聞いてたけど、そういやキンジとしてあんま探偵科(インケスタ)の依頼受けてなかったわ!?度が越えてたら誤魔化してくれないんだった!?

 ……白雪護衛した時の単位しか入ってねえ!?

 




カナ姉はキンちゃんのお兄ちゃんです
何を言ってるのかわからないが本当なんです信じてください

P.S.
アンケート結果は自己責任で検索してください。特定キャラ出してるの自分だけだろうからすぐわかると思います
わかってるとは思いますが感想はその作品の感想にかいてください
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