遠山キンジの独白 作:緋色
「なぜ地に臥せって絶望しているのか知らないが…遠山。ここに単位取れる任務が張ってあるぞ?」
ジャンヌの言葉に掲示板を確認すると……なるほど。それがあったか。
0.9単位足りないが嘆いても仕方がない。
そんなダメな奴のために
『港区 大規模砂金盗難事件の調査(探偵科、鑑識科)1.7単位』
『港区 工業用砂鉄盗難事件の調査(探偵科、鑑識科)0.9単位』
『港区 砂礫盗難事件の調査(探偵科、鑑識科)0.5単位』
なんか妙に砂系ばかり盗まれてるな?
砂マフィア(インフラ需要で砂の価値が高まった結果生まれた闇商売)でも暗躍してるのか?砂金も盗まれてるから違うか。
『港区 カジノ「ピラミディオン台場」私服警備(強襲科、探偵科、他学科も応相談)1.9単位』
チラッとアリアを見る。
カジノとはこの世界線の日本で近年合法化された公営ギャンブルの一つで、会場には用心棒として武偵が雇われることが多い。とはいえ実際のところはほとんどトラブルが起こらないので武偵業界じゃ『腕が鈍る仕事』としてバカにされているのだ。
正直、単位だけを考えるなら適当に盗難事件解決に挑めばいいが兄貴がアリアを殺すと言っていた以上は護衛しておいた方がいいだろう。
護衛任務なら自然に警戒をするように誘導できるし不自然じゃない。
「アリア。カジノ警備手伝え」
「なんで?あたしは単位不足してない」
でしょうね。さてどう説得するか……。
「だいたい任務ならこの辺の盗難事件でもやればいいじゃない」
「おいおい。アリア……俺に推理ができると思ってんのか!?」
「あんた
推理は多少はできる。ランクで言うとCかDくらいだし時間はかかるが行けなくはないと思う。
「俺が得意なのは追跡と
「あんた
まあ実際出来るとは思う。問題なのは今アリアから目を離すのがヤバそうだと思っているだけで。
「喧嘩になりそうにない事件にあんまり興味がないし、時間拘束も長くなりそうだしな。ならわかりやすく期間があって遊べるカジノ警備の方がいい。潜入とかそっち方面の肥やしになるしな」
「あんた
そういやよく女装してコスプレしてるから脱ぐこと以外は1ミリも躊躇いないけど、ここら辺は向き不向きと趣味が出るからな。絶対やらねえしできないってやつはいる。
「……よく考えたらアリアじゃ警備は難しいか。……カジノだし協力頼むなら理子か?」
「あんたどこ見て言った!?あたしはスレンダーなだけよ!」
誰も胸が足りないなんて言って無いが。
「銃抜くな。冗談はさておき連携も込みでカジノ警備は訓練にもなるだろうし今後どうなるかわからんからな。盗難事件よりかは
そういやアリアの夏の予定知らんな。イギリスに帰るんだったら正直何もできんし。
しかし、アリアには何か通じたようで目をぱちくりさせてからもったいぶるように腕組して検討するような仕草を見せる。
「パートナー同士、困った時はお互い様。――やってあげてもいいわよ?」
なんか一瞬で機嫌が直ったな。嬉しさ隠しきれてないようだが。
なぜかジャンヌは冷めた目でこっちを見てるが。――なぜだ。
一般的な学校だと夏になったのでプールで水泳の授業が始まるのだろうが、武偵校では負荷の少ない鍛錬とか犯人追跡とかで冬でも寒中水泳の授業があるんで年中水泳やっている。流石に男女別だが。
着衣水泳訓練もあるが今回は普通に水着着る水泳の授業だ。――担当の蘭豹が「拳銃使って水球やれ」と言い残して帰ったので自由時間みたいなもんだが。
暇なので水中で型をやる鍛錬でプールを一往復したところで
「やっぱり、ほとんど人がいねえ!おーいキンジ!不知火!プールから上がれよ!ジャマだ!」
という武藤の声が聞こえてきた。
そっちを見ると、何人かの生徒が丸太を抱えるようにして何やら黒い物体をプールに運び入れている。あのメンツは
なんかラジコンでも作ったのだろうか?
下手に因縁つけられても面倒なのでプールから上がり何となくそっちへ行ってみる。
「
「すぐって、平賀、暖気運転しなくて平気なのかよッ?」
「そこは改造しといたよ!
あの様子だと主犯は
平賀源内の子孫らしく機械工作の天才なのだが、子供が遊ぶノリで様々なモノを作ったり
子供体型だからか男しかいない空間でもあんな感じで平然と水着姿で混じれるらしい。中身も無邪気な子供みたいなもんだし、周りもバカやるメンツだから気にならないんだろうな。
「さっそく発射なのだ!」
そう言うや否や半径1はありそうな筒から小さいハッチみたいなものが開き、ロケット花火が撃ちあがった。
「なんだこれ?船……いや潜水艦か?」
「おうよキンジ!超アクラ級原子力潜水艦 『ボストーク』だ!」
「よく知らんがソ連の潜水艦か」
確かアクラ型原子力潜水艦は、
超がついてるからそれのより大型版なのだろう――たぶん。
「『ボストーク』は悲劇の原潜なんだぜ。空前絶後の巨大原潜だったんだが、1979年進水直後に事故で行方不明になっちまったんだ。それをオレと平賀が現代に甦らせた!どうよキンジ!感動するだろ?ええ?」
「別に感動はしないが……よー作れたなこんなん」
「おう。資料を調べまくって外観はほぼ同じにできたと思うぜ!中身は最新式だが」
「蘭豹が戻ってくる前には片付けろよ。沈められるぞ」
「キンジは感動が足りねえ!」
プールサイドにあぐらをかき、原潜ボストーク号とやらの鑑賞に戻った。
何となくボストークとやらを眺めていると同じくプールから追い出された不知火も寄ってきた。
「遠山君も鑑賞?」
「なーんかプールで動く雰囲気でもないしな」
「そうだね。――ところで神崎さんと何かあったの?」
「あん?妹扱い過ぎてキレた事か?」
「そうじゃなくて機嫌よさそうだったからね。さっきの2時間目休講だったしちょっと
「機嫌よかったならいいだろ。機嫌悪かったらストレス発散とかで喧嘩――組手仕掛けてくるし」
「そんなわけで遠山君がある程度コントロールしてほしいんだよね。機嫌の波が極端だから」
「俺の事なんだと思ってんだお前。機嫌悪くなったらももまんでも供えとけよ」
「――参考にするよ」
ちょっと顔が暗くなったな。
不知火って基本的に笑顔のイケメンなのだが笑顔で銃をぶっ放せる類の人間で、そういう時は笑顔なだけで少々物騒な事を考えている人間だとみている。暴力的な感じというよりニュアンスで言うと政治家とか財閥とか笑顔で企む人間の雰囲気が近いかな?
「……なんか今アリア絡みで厄介な事件巻き込まれてるからな。組めなかったのは悪いと思ってる」
「そこは何となく察してるから気にしてないよ。どれくらいかかりそう?2学期始めには
「2学期始めるまでには終わらせたいけど正直何が起きるかわからんし、どうすればいいのかもわからん」
9月頭の修学旅行ではあるが生徒間でチーム編成をし、そのチームは9月末には
将来が絡む以上、なあなあで組むのはよくない。特に俺の場合女と組んだら確実に問題になりそうな気がするためあまり組む気もない。
表向きは将来フリーでやるつもりとしてるので、同じようにフリーでいろいろやろうと考えてるらしい不知火とはそういう意味では組んどくのはいい案だと思っている。
協力要請されたら手伝うくらいの距離感が仕事する上では重要だしな。
「うーん。長引きそうなら早めに教えてね。こっちもこっちで調整するし」
「悪いな」
「いいよ。遠山君がお人好しなのは知ってるし」
……お人好しではないが。
あややはなんかそういう枠じゃない気がする
本人も嫌がりそうだし