遠山キンジの独白 作:緋色
『アリアの誤解解けなかったよ。ゴメン!疑い解くにはやっぱりキーくん話し合うしかないと思う。今度の七夕祭り遊びに行ってそこで誤解頑張って解いてね!』
それはデートでは?いや単に遊びに行くだけだしデートではないか?いややっぱデートか?自意識過剰か?
そんなもんガン無視してアリアに話しかけるが『話しかけるな』オーラが全開で悉く逃げられている。
どうしろと……?
とりあえず理子捕まえて白状させたが「アリアは今気分盛り下がってて話聞かないから釣れる話で動かしたんだよ!?りこりんが頑張ってこれだけしか出来なかったんだよ!?キーくんカナちゃんの魅力語りまくっててキモかったの忘れたの!?」と泣き真似されては――若干とはいえ心当たりがある身としてはそれ以上追及することも出来ず、ダラダラと時間が過ぎた結果、武偵高校の夏休みが始まり――7月7日になってしまった。
「あたしを待たせたら風穴! つぎ30分も待たせたら風穴! 風穴
「まだ待ち合わせ時間前だぞ?」
待ち合わせ時間5分前に着いたらこれである。浴衣まで着てどんだけ楽しみだったんだ。
ピンクと赤を基調にしたアリアの浴衣は金魚柄で、そのちびっこい体にこれでもかってほど似合っている。
「俺も甚平でも着とくべきだったかね。持ってないけど」
「ジンベエ?サメ?」
「和服だよ。あんな感じの」
説明が面倒だったので同じく祭りに行くつもりなのか甚平を着ている男を指して説明を省く。
「キンジも着てくればよかったのに」
「はいはいごめんね。今度はちゃんと用意してくるよ。それじゃ祭りへしゅっぱーつ」
「待ちなさいよ!」
今から用意しなさいとか言われる前にさっさと歩きだすと慌ててついてくる。
横に並んでから気が付いたけど帯の結び目に拳銃挿して、いざってときに使いにくくないか?
屋台が連なる通りまで出ると一気に騒がしさが跳ね上がる。
「……わぁ」
日本の祭りを見たことがなかったのかアリアは祭りに目をまんまるにしてる。
そして俺は――
「遠山!?うちは何もしてないぞ!?」「いや祭り来ただけだが」「ショバ代は勘弁してくだせえ」「お納めください」「おめーら俺のことなんだと思ってんだ?いらんよ」
厳つい顔の連中に絡まれてた。
「あんた何したのよ?」
「何もしてねーよ。強いて言うなら去年出来た公営カジノ作る際にヤクザが利権に絡もうとしてたからくっそ揉めただけだ」
2年前の法整備で公営カジノが出来る事が決まった際にヤクザ抑制の為とかで的屋とヤクザの切り離しとかに駆り出されたりとか去年は忙しかった。マキリさんに捕まってからは倍忙しくなったが。
本命は流石に参加してないがいくつかのヤクザが潰れた騒ぎになったらしい。
ちなみにその公営カジノが今度警備に行く依頼が出てたやつである。
「悪さしてねーなら取り締まる理由はね―よ」
「そですか。あ、これサービスです」
「ほい500円」
「まいど!」
焼きそばに対して紅ショウガ多いけどこれサービスなのか?嫌がらせでは?
それはともかく、祭りを見回って行く先々で目をキラキラさせるアリアについつい財布の紐が緩む。妹を甘やかし過ぎな気もするが祭りだしいいだろ。
綿あめ、たこ焼き、りんご飴、チョコバナナ……と目に映る全てを食べまくったアリアは今度は金魚すくいで全敗したりヨーヨー釣りでヨーヨーを手に入れテンションが上がったりとお祭りを楽しんでいるようだ。
アリアは思い込みが激しいタイプだがコロコロと興味が移る子供みたいな所があるので注目内容がころころ変わる祭りは気が紛れやすいのだろう。……理子はここまで計算してたのか?
~♪
謎の敗北感を感じていた所、お祭りの中で場違いな歌が聞こえる。カラオケでもやっているんだろうか?
「……?――!!」
「なに固まってるのよ」
その方向にいたのは――
「ピーポ♪ピーポ♪ピーポニャン♪けーさつかんだっよ――にゃっ!」
……なんか桜ちゃんがかわいいネコミミ+セクシーなビキニという格好で、ハンディーカラオケを手にテーブルの上で歌っていた。――なんで?
周りにはアリアの
「んもう! お祭り気分もほどほどにしなさい!」
なぜ絡みに行くんだアリア!?
「武偵は常在戦場よ! 気をつけェ!」
すっかり遊びほうけていた5人の少女武偵は反射的に背筋を伸ばし、そして『見つかった!』的な顔をし直立不動でこっちに向き直る。
が、厳しく注意するアリアはヨーヨー、ももまん味のわたあめ、イカ焼き、りんご飴、チョコバナナ持ち頭には仮面ライダーのお面まで載っけている。
ポカンとする後輩を見て……一応フォローするか。
「武偵は常在戦場だが同時にバレない様にする技術も重要だ。アリアを見てみろどう見ても祭りを楽しむ小学せっ!?」
「誰が小学生だ!」
ボディブローって吹き飛ばされるようなものだっけか?
「こんな感じで即座に動けるわけだ。楽しむのは自由だが警戒ユルユルはダメなわけで――声掛けるまで気が付いてないのはあかんな。……やべえボディが効いてる。ちょっと動けねえ」
いい感じで入ったから深呼吸して回復を図る。
「大丈夫ですか先輩?」
「大丈夫大丈夫。戻しはしない。ちょっと近寄らんでくれ。出るかも」
猫耳ビキニ姿で近寄るなヒステリアモードが出そうだ。
普段真面目よりな子が猫耳ビキニは破壊力高いんだよ。裸族の姐御のせいでガード下がってるのか?
「誰か袋持ってきてくださ―い!」
「心配はありがたいけどそういう事じゃない……」
「どういう事です?」
何言っても碌な事にならんので立ち上がって、風呂敷を被せておく。
よし、肌面積減ったな。
「あ、これは!?あかり先輩に押し切られて!?」
「えーっと――別に抵抗ないのはいいけど、蚊も多いから虫除けはしっかりしなよ?」
「趣味じゃないですよ!?」
「あと撮影されてたけど?盗撮?」
「はい!?」
やっぱ気が付いてなかったらしい。
「あんだけ目立ってたら当然だろ」
「先輩気付いてたなら「だから注意したんだろ。アリアが」――そうかもしれませんけど!?」
噛みついてくる桜ちゃんの注意を盗撮犯に向けた所、見つけ出して捕らえると着替えた後に間宮たちと捕まえに行くらしいので別れる。
あんだけ騒いでたらもう逃げてるだろうから捕まんないだろうけどな。
その後、神輿の熱気でちょっと人に酔ったアリアと俺は、カップルだらけの拝殿を避けて人けのない神社の本殿の裏に回り縁側みたいになってる板に並んで座った。
どん。どどん。
もう真っ暗な夜空には 色とりどりの花火が上がっている。日本の花火を見るのも初めてらしいアリアは、それをずっと見上げていた。
「なによ?花火じゃなくあたしの顔見て」
「ん?嫌だった?」
「嫌じゃないけど……」
そう言いながら仮面ライダーのお面で顔を隠した。
それ気に入ったのか?
最後の花火が撃ちあがり、虫の声だけが静かに響く。
そろそろ帰るかね。
「あのさ――カナの事……なんかごめんね」
「お前が謝ることはないと思うが?」
なぜか知らんがアリアを暗殺するとか言ってたからむしろ謝るのはこっちだが。
「あたしはカナに負けた。ちょっと時間が必要だったけど、それを自分で認められたの。あたしより強い武偵はいるし、今は――その1人と戦えていい勉強になったって思ってる。それと、本当は、何となく分かってるんだけど…」
「あれは、あなたの恋b「それはない」――そ、そうよね!?姉弟で恋愛はあり得ないわよね!?」
それに関しては人によるとしか――そういやキリスト教圏だとガチでアウトか?他所の法律までは知らないから何とも言えないが。
「あのさ、あたし回りくどいのとか苦手だからストレートに聞くけど……あんた、これから――カナと組むの?」
「そのつもりはない」
はっきりと否定しておくとアリアは明らかに安堵の表情を見せた。
カナの一件で一番の心配事だったらしい。
「俺にとってはカナ姉は越えるべき目標だし。組んだら100%越えれねえし」
昔、組んだことはあるがカナ姉の時も兄さんの時も俺が近くにいるという理由で強化されてるのか無双して出番が無かったことがある。
兄弟間だと不文律で兄が上になるし、自分も経験あるからわかるが兄が下を守ろうという意識が強くなり、逆に下は上に対する甘えが出るので兄を越えるのは難しい。
上が暴走気味だったり自分が何とかしなきゃって環境だとそれなりに強くなるから意識の問題なんだろうけども。
「カナ姉の考えは知らんが――お前はカナ姉のターゲットになってるようだからな気を付けな」
「う、うん」
「イ・ウーの理子・ジャンヌ・ブラドを倒してるからなぁ。イ・ウー潰すまでは協力するからな」
特にブラドを逮捕したから相当警戒されているはず――イ・ウー潰さんと安心できないしな。
「キンジ……!」
あからさまにうれしそうな声を出すアリア。そんなにうれしかったのか?
「みぎゃああああ!」
アリアが急に縁側の上で飛び上がり、浴衣の裾を踏みすてーん!とその場にひっくり返った。
なんだ?狐憑きか?
「キ、キキキキンジなんとかして!ふ、服の中!な、なんかいるっ!」
「おい、大丈夫か!」
とにかく浴衣が苦しそうだったので、ぐいっ! 帯を背中の方から引っ張って、服を弛めてやった。
すると浴衣の中から、コガネムシみたいな虫が出てきて・・・・・・ぴと。近くの木に、とまった。
虫が服に入り込んで、くすぐったかったらしい。
アリアは、ぐってりーっと、すっかり着崩れてしまった浴衣ともども縁側にノビてしまった。へそまで見えてるアリアから目を逸らしてコガネムシを見るが――コガネムシっぽいが見たことない種類に見える。どっかの馬鹿が海外から輸入して逃がしたのか?雑木林の奥に消えていく虫が見えなくなったところで
「…な、なんなのよ!やらしい虫ヘンな所をこちょこちょと!」
いつの間にか素早く浴衣を直したアリアが、拳銃を手に立ち上がっている。
「虫にそういう感情はないと思うが」
「風穴!」
そう言いながら二丁拳銃を手に雑木林を睨むアリアだが見つかるはずもなく地団太を踏む。
周りに人いなくてよかったぜ。そう思いながらアリアがばらまいた小物を拾い集めていると
「これは――?」
「あ」
アリアは小さく声を上げて武偵手帳――そこからはみ出すように見えてた写真を隠すように抱きしめる。
「これで全部かな?なくなってるものが無いか確認しろ」
小物をアリアのきんちゃく袋にしまって渡す。
「……見たんでしょ写真」
「見たな。ずいぶん古い写真っぽかったけど」
遠目でよく見えなかったがモノクロ写真でセピア色にくすんでいた。
「――もうこの世にはいない人。シャーロック・ホームズ1世。あたしの曾おじいさまよ」
そう言いながら見せてくれた写真は単純に見ても100年以上は前の写真だろう。
古めかしいスーツを着た世界最高の名探偵――教科書に載ってるより若いその男が写っていた。
「……実在したんだな」
「当たり前でしょ?あたしが心から尊敬する人よ。いつも肌身離さず持ってるしあたしの大切な心の支えだから……こうやって誰かに見せたりしない」
……あれ?俺このあと殺される?
アリアはそっと大事そうに手帳を閉じて
「――キンジにじゃなきゃ見せないよ」
花火のように輝く笑顔で答えた。
――信用されてるようで良かったな。
桜ちゃんはコスプレに抵抗はないらしいです