遠山キンジの独白   作:緋色

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衝動的に描いた


今回までのあらすじ
名古屋武偵女子校から間宮ひかりという従姉妹が来た。
その従姉妹はなんだか悪のニオイがして……?


閑話・妹の方の戦い

「間宮ひかり。あなたは初めから怪しかった。……私欲の為に人を襲う悪のニオイがしていましたが案の定でしたね」

 

 名古屋から来た研修生――間宮ひかり。

 あかり先輩の従姉妹で本家のあかり先輩と間宮家の分家の間宮ひかりとの話だったが――本家分家と分かれていると揉め易いと聞いていたので注意していると案の定、13区の込み入った路地の中へとあかり先輩を誘い込む間宮ひかりの姿が。

 二人を追う様に路地へと足を運ぶと鉤爪のような五指を覆う手甲を装備した間宮ひかりがあかり先輩の頭を掴もうとしていた。

 手錠投げで拘束しようとしたが、叩き落された。

 

「かわいい架橋生(アクロス)ちゃん。取るに足らない子だと思ってたけど…」

 

 あかり先輩はまだ状況判断ができていない。ひかりに対してすぐさま敵対的な態度を取っているわけではない。ハッキリ敵対しているのは危険性を感じ取っている桜だけ。

 軽く畳める相手とみているのかその分桜を軽く見ているようだ。

 事実、遠山先輩や陽菜先輩には及ばないし、真っ向勝負をしない忍者のような相手とはすこぶる相性が悪い。

 間宮は公儀隠密――忍者の系譜で相性は悪そうだが

 

「お鼻が自慢かい。じゃあ、もぎ取ってあげようか?」

 

 割と頭に血が上りやすいのか、間宮ひかりは怒りの声色で桜を威嚇する。

 構えを見れば単純な体術で捻ろうとしているのがわかる。

 ならば勝機はある。

 

「先に聞いておきます。何が目的なんですか?暴力的な搾取をしようというニオイがしますが」

「…へー。そういうスキルなのかな?実際のニオイを嗅いで判断してるなんて」

「質問に答えてください。でないと暴行未遂で逮捕しますよ」

「真面目だねえ。これは間宮家の問題だ。部外者は口を出すな」

 

 そう言われれば口出ししにくいのもまた事実。警察は原則、民事不介入(みんじふかいにゅう)だ。

 

「そうですね……。あかり先輩は手のかかる妹みたいなものです」

「違うよ!?あたし先輩!?真面目な事苦手で任せきりにしてたけどそんな風に思ってたの!?」

 

 遠山先輩の真似をしてみると、なぜかあかり先輩がぎゃ-ぎゃー騒ぎ始めたが間宮ひかりから視線を外すのは危険なので意識から外す。

 

「女人望――こういう形にもなるのか。君は危険人物(元S級)の範囲だと思ってたけど」

 

 なぜか納得したようにあかり先輩と見比べられる。

 何に納得したんだまさか遠山先輩(シスコン)に似てると言いたいのかこやつ。 

 

「刑事罰対象である証拠が確認出来るケース以外に介入しないのが民事不介入(みんじふかいにゅう)です。人気のない路地にその手甲、明らかに戦闘が目的ですね?暴行あるいは決闘罪です」

 

 イラっとしたので正当化のために罪状を述べる。勤務時間なら公務執行妨害もつけれたが仕方がない。

 名古屋武偵女子校のスカートは短く、お腹が丸出しの水着みたいな恰好で跳弾の可能性がある路地裏では銃は使わない方がいい。ならば

 

「あかり先輩、下がってください!」

 

 ―ダッ!と、手錠を左手に持って駆け込み輪になった手錠の片方をしっかり左手の指で挟み、もう1つの輪をヌンチャクのように振り回し、間宮ひかりの手首を狙う。

 手錠のリーチは短いが、素手の間宮ひかりよりは長い。

 小さな円軌道を描いてヒュンヒュンと上下左右から輪が迫るから、ナイフや警棒より読みづらい。

 執拗で正確。

 輪を掛けられてしまえば、反対側の輪をビルの壁面を這う配管にでも繋げば、それでひかりのあらゆる動きを封じれる。

 殴ったり蹴ったりして即座に手錠を抜け出せる先輩でも、抜け出すまでは大幅に行動を制限されるため嫌がる戦闘方法だ。

 

「―犯罪を未然に防ぐのも警察の仕事です!」

 

 叫んでから新たに右手に挟んだ手錠を振り下ろす。――この不意打ちは高1の先輩方との模擬戦で初見では対応されたことのない必勝方であり初見でなくてもだいぶ有利に勝てたが、間宮ひかりは一歩二歩と後退しながら躱す。

 手錠を振り回しつつも距離を詰めるがだんだんと間宮ひかりの躱し方に余裕が大きくなる。

 

「目が慣れた」

 

 チャキッ。と間宮ひかりは人差し指と中指で一つ目の輪を、薬指と小指で二つ目の輪を引っかけて余裕そうに笑う。

 そう――笑う。

 自分の方が格上と自慢したいという欲求があるなら手錠を掴むなどの格上アピールは絶対にすると思っていた。

 だからこそ即座に慣れたと思っている以上の速度で打ち込んだこれを避けることができない。

 吸い込まれるように綺麗に間宮ひかりの頭に右手が送り込まれ――

 

 


 

「必殺技?」

 

 強襲科(アサルト)の射撃訓練場でインヴィジピレとか叫んだりなんか違うとか言いながら早撃ちの練習していた先輩に兼ねてからのおねだりをする。

 

「…自分で生み出せよ」

「先輩が高1の強襲科(アサルト)の先輩方と一通り戦えば必殺技を教えるという条件出したんでしょうが!?おかげで裏で狂犬とか言われるようになったんですよ!?」

 

 武偵高では『奴隷の1年。鬼の2年。閻魔の3年』と言われるぐらいに上下関係に厳しい。水投げと呼ばれる先輩にいつ挑んでも失礼じゃないとされるイベントでもなく総当たりで挑む中学生がどう言われるのか

 

狂犬(チワワ)?俺に修行付けろって教室に突撃してきた時からついてたあだ名やん」

「狂犬って書いてなんて読みましたか!?ってそんな前から言われてたんです!?」

「チワワってあんな感じだよねって言ったら定着した」

「ちょっと一発殴らせてください」

「あぶね。いきなり何するんだ」

 

 不意打ちで殴ったらいともたやすく避けられた……。悔しい。

 

「必殺技ねー?そーだなー。手をスコップ状にして喉笛に叩きt「いえ必ず殺す技じゃなくてですね…」じゃあなんなんよ?」

 

 先輩は伊藤さんの悪影響なのか死なない程度ならいいだろうという思考になっているときがある。そういう思想を私を見て常識的思想を修正している節がある。

 だからこそ理想を語らなければならない。

 

「そうですね…。戦闘で最低限しか傷つけずに誰でも制圧できる技ですかね…」

「贅沢過ぎだろ。世界最強でも目指してんのか?」

 

 少々呆れ顔になったが、理想で言えばそうだなと一人納得したようなので良しとする。

 

「流石にないですよね」

「殴り合いの距離なら近い技はあるよ?相手の耐性次第だけど」

「あるんですか!?」

「俺ならよっぽど強靭じゃないと使わんし、格下相手には手加減しないと死にかねないから逆に隙になるから使わんけど――桜ちゃんなら全力でちょうどいいんじゃないか?」

 


 

 

 徹し(スパンク)

 

 脳を揺さぶる掌法に妙技にぐらりと間宮ひかりが後ろに傾く。

 手錠投げを避けられてから普通に攻めても勝てないであろうことは予測できた。

 自分の維持できる最高速より一段遅い速度で戦闘をし、目が慣れてきた所で最高速を当てる。

 目が慣れて100ぐらい出せると思われているのであれば、105ぐらいのブレなら対応されるが115なら対応が遅れるものだ。

 本来は最高速を見せた後にバレないように徐々に速度を落として慣れたと思わせた後に最高速に戻す見えてる不意打ちだ。

 散々、先輩にやられてその手口の悪質さを知っている身としては有用さは身に染みている。

『実力があって相手の事舐めるタイプにはめっちゃ効くよ~。舐めてないならむしろ危険だけど。え?それを見分けるには?経験』

 ケラケラ笑いながらついでとばかりに教えて貰ったが、本当にあの先輩なんなんだろうか?

 

「――やるね。耐性なかったら沈んでたよ」

 

 ガクンっと起き上がりながら間宮ひかりが言う。

 油断していたこともあってとっさに距離を取ってしまったが――マズイ。そのまま取り押さえれば勝てたのに異様さに驚いて引いてしまったせいで戦闘態勢を整わせてしまった。

 

「ひかちゃん。桜ちゃんもうやめて!」

 

 あかり先輩が仲裁しようと割り込みをかける。

 

「諦めるなら深追いはしませんよ?」

 

 あくまであなた次第だと間宮ひかりに水を向ける。

 

「…あかり。今の間宮をどう思う?」

 

 困惑しているであろうあかり先輩の背中に対して哀しげに見える間宮ひかりが問いかける。

 …急に蚊帳の外にされたが、内容は武力を持った間宮家が影で生きるのではなく技術を公開し、武術ブランドにするという夢。

 それを名古屋武偵女子校で組織的に広めるために教官――指導役の幹部としてあかり先輩を欲しているらしい。

 考えは短絡的だが理解はできる問題は

 

「ダメだよ!間宮の技は危険すぎる。人に教えるなんて!」

 

 あかり先輩の言う通り殺人術であることだろう。

 長い年月をかけて制圧などの技を増やしていった柔道――柔術は確実に殺す技を禁止していき、心構えや精神を鍛えるなどと心身共に良い影響があるというイメージがあるからこそ広まることができたのだ。

 又聞きではあるが内臓を毟る技やガトリングガンを粉々にするような技らしい間宮の技の公開は危険視される可能性が高い。

 何よりそんな短絡的に技を公開して弟子が不始末を起こしたときにどう責任を取るのか。

 

「危険な技を教える――武偵校ってそういう所だろ?」

 

 ……遠山先輩が弟子を取りたがってなかったのも今ならわかる。

 あかり先輩は土壇場で強さを見せるが、独りよがりな夢と希望に溢れる間宮ひかりには分が悪そうだ。

 ここは私が倒すしかない。

 

(つつ)か」

 

 同じ手は通じないと拳銃(S&W M60)を構えると間宮ひかりは即座に反応して構える。

 

「桜ちゃん!やめて!」

「落ち着いてください。あれは倒さないと止まりません」

「その邪魔な架橋生(アクロス)を斃してから『一つ(ちぎり)』だ。キミにはボクの手足となって働いて貰う」

 

 古流の琉球空手に似た構えをした間宮ひかりは飛び込むように射線から逃れて迫る構えなのだろう。

 

「あかり先輩の出番は来ませんよ」

「あまり舐めるなよ駄犬」

 

 射線を取るために近くにあった看板に足をかけて、高く飛ぶこれであかり先輩がどう動こうとも射線を遮られることはない。

 パァン!と間宮ひかりの防刃ネクタイに狙いを付けて発砲するが

 

「――鷹捲ィィ!」

 

 間宮ひかりは身体を光らせながら泳ぐように身体を伸ばし、銃弾のように旋回運動を行い銃弾を避けて迫ってくる。

 飛んでくるひかりは必殺の技だが銃弾と同じなら真っ直ぐにしか進めない!

 即座に壁を蹴って射線から外れ――あ、避けられない

 諦めきれずにどうにか身をよじって避けようとした時、間に割り込む影が――

 

「あかり先輩!?」

「桜ちゃんごめん!」

 

 あかり先輩が両腕を軸にするように回転するように飛び、片手で拳銃(S&W M60)を掴み、もう片手で間宮ひかりを迎え撃つように当たり

 

 バチイイイイイイィィィィィィ

 

 耳を劈く甲高い衝撃音が生じ、悲鳴と共にあかり先輩の制服と私の婦警服もはじけ飛んだ。

 

 ――なんで……?

 

 意味不明な現象に戸惑いつつもなんとか地面に受け身を取って着地したものの、技の反動からか意識がそのまま落ちていった。




実力はある戦兄戦姉の影響で忍者挙動をするようになっている桜ちゃんの巻
実力的には間宮の技使わないひかりには常勝で勝てるぐらい
間宮の技使われたら死ぬぐらいのイメージ


次回本編戻ります
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