遠山キンジの独白 作:緋色
白雪にパトラの相手を任せて動き出したが、俺にまとわりつくように砂金の砂埃?が身体を叩く。
なんだこれ?
「目障りな動きをするでない。トオヤマキンジ。風に巻かれておとなしくしておれ」
「なに――が!?」
パトラは余裕なのかこっちに背を向けたままそう言い俺は砂金の竜巻に閉じ込められた。
砂金が高速であたるからザラザラと削られる。鑢みたいで結構痛い。
風の威力が中途半端で身体が微妙に浮く状態のため動きにくく、地面に足が付くなら竜巻と同方向に回ってダメージを軽減できるのだが、とりあえず風呂敷で身体を保護してみるが…やっぱ邪魔だなこれ。
「キンちゃん走って!」
叫んだ白雪が白小袖の中から、二枚の大きな扇を出した。
「
ちょっとした立て看板みたいに大きく広げた白扇を、白雪は自分が少し背後に吹っ飛ぶ程の猛烈な勢いで振るった。
ぶわああっ! 白雪が作り出した突風が、 砂金の竜巻を見事に消し去る。
少し浮き上がってしまっていた俺の足が地面につき
「パトラ!返礼の
「この下民――がっ!?」
さっきの借りはこれで返せただろうとそのまま俺は再び駆け出した。
「下郎!柩に触れるでないッ!」
パトラが金切り声を上げるとずずずっ!とアリアの黄金櫃を足元に置いていた巨大な黄金のスフィンクスが動き始めた。
パトラの隠し玉の大型ゴレムだったらしい。
エジプトのお経?呪文?のようなものをブツブツと呟きながら立ち上がるスフィンクスの体長は10mは優にある。こんなデカいもんどう倒せばいいんだ?
「うっぜえ!」
困った時のブラドナイフを首辺りに投擲するとピシッと固まり、崩れるように金塊に戻っていく。効くのかこれ無法過ぎない?
そんな内心を他所にスフィンクスは倒れるように崩れる。
――俺を巻き込むように。
「まじか!?」
後先考えずにやるものではないな!?
柩を持って移動は――重くて無理そうだ……。なら柩の上に乗って無理矢理傾ける事で砂金に押し流されるように小細工する。
「あ、やべ」
失敗した。
咄嗟に絶で全身を固めて押し流されないようにしたが、首から下が砂金の中に埋もれる。生き埋めというかさらし首だなこれ。
「キンちゃん!?」
埋まった事に気がついた白雪が声を上げるのに合わせて怒鳴り返す。
「脱出まで10分かかる!それまでにパトラを!」
なんとか左肩は動く程度だから脱出までは10分じゃ足りないと思うがそんな事は知った事ではない。
「すぐに!」
「舐めるな星伽の!」
炎と砂のぶつかり合いが激しさを増す中、何とか脱出しようと蠢き左腕が出た所で唐突にがんがんがんとピラミッドの斜面にぶつかるような音がしガシャァン!と後ろの方からガラスをぶち破って侵入し、俺の横に何かが止まる。あっぶねえ!?スイカ割されるところだったぞ!?
首をひねって確認すると赤いオルクスのようだ。
「あらあら。キンジ。後先考えずに動いちゃダメよ」
そんな事を言いながら降りてきたのは――カナだった。
「想定外だっただけで考えてますけど?」
「なら、ちゃんといろんな可能性を考えなさい」
「今後検討します。……今埋まってるんで助けて?」
「そんな余裕なさそうね…」
いつの間にか白雪が逃げるように柱の陰へ向かい、対するパトラはこっちを見て
「トオヤマキンイチ!……いやカナ!」
「新郎入場です!」
「黙るのぢゃ!」
白い顔を赤く染め、黄金のナイフを生み出してカナ目掛けて射出する。って!一個俺の頭狙ってるんですけど!?
カナは長い三つ編みを翻し、華麗な月面宙返りをして周囲に6つの光がほとんど同時に閃いた。
畜生!と真剣白刃取り――片手で出来るか!?だができなきゃ死ぬ!昔見たアニメだったか映画だったかの動きを思い出し、人差し指&中指の2本で挟みこむようにしてナイフを掴む――
パトラの方を見るとネコみたいな姿勢で金の砂漠に降り立ったその膝に一筋の血を流している。
よくわからんが立ち位置的に結構な距離をジャンプしたっぽい。パトラは身体能力高いみたいだな…。魔術の強化臭いけど。
「出エジプト記34章13――汝ら還りて彼等の祭壇を崩し、偶像を毀ち、倒すべし――」
聖書の暗唱しながら空中に片手で銃弾をばらまいて、
空中リロードか。地味だが戦闘中にやるらしいこのリロードはヒステリアモードでしかできないスゴ技だ。地味だけど。
「キンジ。私があげたナイフはまだ持っているわね?」
「バタフライナイフの事か?」
「それ――緋色のバタフライナイフを持ったままアリアに口づけなさい」
………………………………………………………………………………………………………………はぁ?
言葉の意味を問いかける暇も与えてくれず、カナは無形の姿勢になって――ゆらり。流水のような歩法でパトラへと歩み始めた。
砂金の鷹、砂金の豹、アナコンダが空中から砂上から砂下からパトラの焦りを表すように無茶苦茶に仕掛けるが…
カナの振り回す大鎌が音速を超え
「この桜吹雪――散らせるものなら散らしてみなさい?」
穏やかにパトラへ微笑むカナだが…近づく黄金の生物達は触れるまもなく衝撃波により砕かれていく。あれが本家本元の桜吹雪!何人たりとも近づく事すら出来ない!あれどうやるんだ…?
「あれ?」
気がつくと砂金の山が拡散しているのか可動範囲が増え胸まで出ていた。よく見ると砂が下に飲み込まれているっぽい。
穴でも空いてるのか?
ならすぐに脱出できる。
「白雪!カナのアシスト!」
「は、はい!」
こっちに来ようとしていた白雪だが俺の一喝でパトラの方に戦力を集中させる。
パトラの魔術がこっちに向かないようにした方が生存率は上がるだろう――たぶん。
とりあえず両腕を使えるようにして押し退けるようにして一旦身体を引き抜き、柩が見える所まで掘り返す。
砂が沈んでいるのもあってか割と早めに柩まで辿り着き、砂が入らないように注意して
ずずず。押し開いていく柩の蓋がずるっ。傾いて一気にかなり開いた。
傾いた……?
慌てて見回すとざっくりとした概算だが元の床の位置から沈んでいる。
しまった――これはカナとの喧嘩で砂を再利用のために流れてたんじゃなくて沈んでたのか!
アリアを引っ張り出そうにも、まだ蓋はそこまで開いていない。
流れ落ちる砂金の中では斜めになり、大きくズレた蓋の上で足を踏み外した俺は柩の中に、転げ落ちてしまう。
今度は俺の重みのせいか柩が反対側に傾き……ずり、ずりり。蓋が閉まっていく。
やっべ。ミイラ取りがミイラになる、ってやつじゃねえか。
などと思った俺の体が、浮くように不安定になった。
柩が転落しているのだ、どこか、下の方へ
俺は真っ暗な柩の中で、とにかくアリアを守ろうと、その身を抱き寄せた。
落ちるような浮遊感は収まりアリアの頭を抱きかかえて衝撃を受けないようにしたが、ボスっと落ちた感覚からすると砂の上か何かに柩は落ちたらしい。
多少頭を打ったがそれはそれでどうでもいい。
棺から出ようと蓋を押すが砂に埋もれてるのか開かないし、ライトを頼りに砂時計を取り出し時間を確認すると……
アリアを救う時間は――もう一分もなかった。
このままだとどうあがいてもアリアを白雪に見せる前に死ぬ。
脈を確認すると弱いがまだ脈を打っている。――今はまだ。
時間はなさそうだ。
「この衣装はパトラの趣味か…?」
狭くて見難いがアリアはパトラに似たセパレートの水着みたいな胸周りと腰をわずかに覆っているだけで――布の周囲は金細工と生花で飾り付けられている。
パトラが着てたし王族貴族の正式な衣装なのだろう。いや今はそれはどうでもいい。
「……恨むなよアリア」
強いて言うならカナが悪い。
手探りでバタフライナイフを取り出してアリアに――キスをする。
1秒
2秒
3秒
4秒
5秒
気恥ずかしさから目を瞑っていたが違和感を感じてキスをやめて目を開ける。
これは緋色の光…?
バタフライナイフが目が痛むほどに赤く――紅く光っている。
なんだこれ!?流石にこれはおかしいぞ!?熱くもないし誰かリーテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリールでも唱えたのか!?
動揺して軽くパニック状態になっていたが
「……キ…ンジ……」
小さなアニメ声で我に返る。
とりあえずナイフの光が重要なのかわからないのでしまうことも出来ないが、脈が戻ってきているのを確認する。
「あれ……?なんで……あたしの部屋にキンジが……?」
「寝ぼけてるところ悪いがここはパトラの柩の中で現在生き埋め中だ。なんか酸素不足にはなってないから安心しろ」
「それ安心できないでしょ!?……え、ああれ!?ナニコレ!」
意識がはっきりしたらしいアリアが自分の恰好に気が付いて動揺している間に、緋色の光が弱くなっていたバタフライナイフをしまいライトを付け直す。
「落ち着いて聞いてくれ。今、柩の中に閉じ込められて砂金の重さか扉は開かない。むしろ半端に開いて砂金に埋もれる方が怖い」
「どうしてそうなったのよ!?どうにかしなさいキンジ!」
「黙れ。キスするぞ」
「はぅ」
アニメ声がキンキンするので脅した後、アリアの口を人差し指で止めて置き話を続ける。
「上でカナと白雪がパトラ逮捕の戦闘をしている。それが終わればどっちが勝つにしろ俺らを探しに来る。そうなるまでは待機だ」
パトラを逮捕できればいいが――やけになって自沈されるのが一番怖いな。
原作からして疑問なんですけど柩なんてクソ狭い所に閉じ込められて腰まで見えるのかな…?
なんならアリアはキンちゃんの固いキンちゃん押し当てられてる状況なんじゃないかこれ…?