遠山キンジの独白 作:緋色
「……キンジ君。僕は150年以上、世界中で凶悪かつ強靱な怪人たちを数多仕留めてきた。一方の君はたかだか17年を平和な島国で生きてきた子供だ。その未熟な君が僕と戦おうというのかね」
……今までのは戦いですらないって言いたいのか?
とことんムカつくやつだなおい。
「俺は確かに偉大な名探偵様から見りゃ未熟者だろうな。だが、そういう思い出話はアルバムにでもしまっとけ。過去の伝説は
「若者の無謀に水を差すのは心苦しいが――君では僕に勝てないよ」
「知らんな。俺とお前は今日初めて会ったんだ。今を生きるやつが新たな歴史を紡いでいくんだよ」
どこからともなく杖を構えるシャーロック。……構えからして棒術杖術などの打撃武器じゃねえな――仕込み刀か?
「銃じゃなくていいのか?」
「銃も後で1度だけ使わせてもらうよ」
正直、
「それは僕の『緋色の研究』にピリオドを打つ、極めて重要な1発になると推理している」
……『緋色の研究』?
確かシャーロックとワトソンが共同生活するようになってからの最初の事件――だったか?それの
そういや寿命とか言ってたし――自害用か。
「手合わせする前に問おう。キンジ君。
「何言ってんのか知らねえけど
「
後ろのアリアが困惑しているようだがシャーロックは何かを納得したようだ。……何に納得したんだ?
「ちぐはぐな行動にようやく理解が追い付いたよ。前の体験は知るすべはないが――きっとよい人生を送ったのだろうね」
ぼんやりとしか覚えてないが独身貴族だった記憶しかないが――まあどうでもいいか。
「おいで。決闘に敬老精神なんかは不要なのだ。遠慮はいらないよ」
「……死ぬなよ?おれはお前ごときのために殺人罪になりたくねえからなあ!」
―タァン―
ベレッタから発射された1発目の銃弾がシャーロックに迫り、シャーロックは当たり前のようにステッキを突きだしてそれを防いだ。
が、それは悪手だ!
――ドウウゥゥゥ!!
兄さんから貰った炸裂弾が紅蓮の炎で室内を照らす。
過去に
9mm弾であんな威力出せんのかよ。作ったやつ頭おかしいだろ。これで死んだら俺のせいか!?威力知らなかったけど俺のせいかぁ……。
脳内でイ・ウーを沈めて証拠隠滅と国外逃亡の目途の検討を高速で行っていてて気が付くのが遅れた。
ピリッとした電流のような悪寒。さっきの37倍の存在感に!
「ここまでが『復習』だよ、キンジ君」
格納庫の奥から何かの噴射音と共に白くて重たい煙が流れ込んできていた。
炸裂弾で生じた黒煙が、それに押し流されるようにして払われていく。白黒の渦を巻く煙の中に立つシャーロック・ホームズは間違いない。なっている。ヒステリアモードに。
あの
だが、性的興奮するタイミングあったか?アリアに興奮してるにしては素っ気なさ過ぎるし考えられる可能性としては――
「アゴニザンテか!?」
「正解だよ。ご褒美として――これから君たちが闘うであろう難敵の技を『予習』させてあげよう。なにしろ僕は古い仇敵と同じ名前 『
武偵弾で破けたジャケットとシャツを、シャーロックが脱ぎ捨てると露わになったその上半身は超一流のアスリートがそうなるように恐ろしく筋肉質だった。そしてその肌は古い傷痕だらけだ。
シャーロックの背後にある巨大な柱のようなICBMが、その下部のロケット噴射口から白煙を吹き出し始めている。今すぐ発射されそうな雰囲気ではないが、その準備をしてるらしい。
ボス戦BGMはモーツァルトの『魔笛』か……。まったく。
「ひゅー。カッコいいねえ。モテなさそうだから憧れはしねえけど」
兄さん無しで勝てる見込みは全くないが――やべぇ。ちょっと楽しくなってきた。
雰囲気に乗せられてる自覚はあるがまさにラスボス戦としてふさわしい舞台だ。
これも推理の成果か?頭がイカレたか?
彼我の戦力比較だとか、そういう理屈はどうでもいい気がする。
ただ、ただ戦いたいんだ、アイツと。 一対一で。
そしてブチのめしたいと思っている。
「いくぜ!」
デュランダルを構えシャーロックに突撃する。
まずは力比べだ!
――バキィィインッ!
デュランダルとステッキの激突でステッキは粉々になり――中から仕込まれていた一振りの刀が現れる。
僅かに反ったその刃が、 ぎらり、と一目で名剣と分かる眩い輝きを放つ。
「スクラマサクス――いい刀だな」
スクラマサクス
スクラマは「深い切り傷を負わせる」。サクスはナイフか刃を示す古高ドイツ語から来ている。
ヨーロッパの片刃の直刀で、肉切り包丁や鉈に似た外見を持つ。
アングロサクソンとかのサクスはこの武器を使っていたからそう名前が付いたと言われるほどの武器だ。
「銘は聞かないほうがいい。これは女王陛下から借り受けた大英帝国の至宝。それに刃向かったとあっては後々、君の一族が誹りを受けるおそれがあるからね」
「犯罪者が持ってる方が醜聞だろうが。銘はどうせエクスカリバーとかラグナロクとか、そういうのだろ」
それ以外に英国っぽい武器の名前なんて知らないが――あれ?ラグナロクって北欧神話だから関係ないな?
「ははっ。凄い推理力だ。君には名探偵の素質がある。僕が保証しよう」
「……あんたも実は適当な男だな?っと!」
鍔迫り合いで無理矢理押し通したがはじき返される。
力ではあっちが上か?
パワー
ゾワッとした気配を感じて後ろに跳ぶと目の前に雷球が出現していた。ブラドの技か?
訝しんだところで話は変わらん。
シャーロックは俺のトップスピードを知らないはずだ。
「雷の呼吸は習得してねえけどまあ行けるか?」
――ダァン!
部屋に響く足音を共に力任せの先ほどの一撃と違い速度に特化してデュランダルを振るう。
「良い踏み込みだ。――こうかな?」
先読みしていたのかスクラマサクスで難なく防ぎ――ダン!
「うおっ!?」
距離を取ったかと思えば一瞬で真似され、スクラマサクスとデュランダルのぶつかる甲高い音が響く。
「ふむ。これはまだ未完成だね?精進したまえ」
「うるせえ!師匠かお前は!?」
「『
指を向けられ――やべっ
――シュ――と鼻先を何かがかすめる。
咄嗟にスウェーで躱したが、ヒステリアモードの視界で捉えた正体は――水か。
鬼灯一族の水鉄砲の術か?
そのまま転がるように距離を取った所で風の刃が追撃してくる。
こいつに距離取ったらマズイ!
速さも向こうの対応圏内――ならば
パワー
スピード
「桜吹雪」
デュランダルに肘打ち、足蹴りと思いつく限りのありとあらゆる攻撃を倒れるまで叩きこみ続ける!
十手、三十手、五十手
何十もの攻撃で押していたが六十四手目で違和感に気が付く。
(少しずつ攻撃が通る隙間ができている!?)
受ける角度とはじき返し方で拳一つ分のどうやっても間に合わない隙間が生じているのだ。
「手数で攻めるなら詰めるように動かないと意味ないよ」
「カフッ――」
シャーロックの左ストレートが防ぐことも出来ずに顔面に入り、2、3回ほどバウンドしてアリアの近くまで吹っ飛ばされる。
パワー
スピード
手数
……どうやったら倒せるんだこいつ?
書き終わってから気が付いたけど魔女っ子の水鉄砲って毎回含んでるんだよなあ
ああ、だから霧で姿隠したのか
オッエー
シャーロックめ
どれだけ不快にさせれば気が済むんだ