遠山キンジの独白   作:緋色

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忍者がやるなら流石忍者汚いと笑える
名探偵がやるとドン引きする

……イメージの差かな?


vide

 

...O zitt're nicht, mein lieber Sohn...!

 

 シャーロックに吹き飛ばされて倒れていたがすぐに頭を振って立ち上がった――所で室内に流れるモーツァルトの『魔笛』が独唱曲(アリア)の華麗なソプラノ・パートに入った。

 

「このオペラが独唱曲(アリア)になる頃には君を沈黙させているつもりだったのだがね。 君は僕が推理したよりも長い時間を戦い抜いた。僕の推理、『条理予知(コグニス)」 さえも狂わせて」

「爺になって思考が鈍ったか前線に出ないから勘が鈍ったのか知らんが――水鉄砲に鎌鼬。いくらでも仕留めるチャンスはあっただろ!手を抜いといてなんで立ってるとか舐めてんのか?」

 

 実際問題パトラからずっと動きっぱなしで体力は尽きかけてはいる。

 おそらく後先考えないヒステリア・ベルセが怒りで無理矢理体力を生み出して動けているのだろう。

 シャーロックを倒した後にぷっつりと糸がキレそうだが――知った事か。

 まだ生きてるし、動けて戦える。

 

「手を抜いたつもりはないさ。殺すつもりはなく沈黙させるつもりだったのだから。つまり僕は生まれて初めて、推理をし損じたのだ。君は賞賛されるべき男だ」

「賞賛してくれるなら素直に捕まってくれませんかねえ?殺し合いが嫌ならお互いに武器を捨てて殴り合いに移行してもいいが?」

 

 武器なしならお互いにお互いが殺す気は一応ない(※半殺しにはする)状態なら、武器ありよりも可能性はありそうな気がする。百発ほど殴られながらでも耐えながら手足を折る覚悟で攻めれば勝てる。……普段より自分の怪我を蔑ろにし過ぎだがベルセの悪影響か……?

 

「それは遠慮させて貰おう。ここから君と素手(ベアナックル)でボクシングしたいところだが……この独唱曲(アリア)は最後の講義――『緋色の研究』についての講義を始める時報なのだよ。紳士たるもの時間にルーズであってはいけないからね」

「お前のタイムスケジュールとか知らんわ」

 

 しゃべりながら息を整え直していたが――シャーロックがぼんやりと光始めた。

 その色は――緋色。

 

「マジか!?」

 

 パトラのピラミッドを消し飛ばしたアレをここでやろうってのか!?

 ここお前の本拠地だろ!?

 

「僕がイ・ウーを統率できたのはこの力があったからだ。だが、僕はこの力を不用意には使わなかった。『緋色の研究』――緋弾の研究が未完成だったからだね」

 

 語りながらシャーロックがついに抜いた銃は英国軍用回転式拳銃(アダムズ1872・マークⅡ)

 

「なに――する気だ?」

 

 もしあれがこの場――ICBMを発射できる状況で使える能力の場合――ICBMで能力を飛ばし目標物を爆破するのではなく消し去るというより凶悪なものとして使えるのかもしれない。

 

『イ・ウーは世界征服も狙える場所』

 

 確かにそれができるなら可能性はあり得なくもない。――防御不可能な軍事ミサイルだった場合――生きて帰ることは諦めてすべてを海の藻屑として消し去る必要がある。

 

「決死の覚悟を固めてる所で申し訳ないが――君が想像していることは不可能だよ。少なくとも璃々粒子と瑠々粒子が存在し神が神である限りはね」

「あん?」

「趣味ではないって事さ」

 

 名探偵が犯罪者になってる時点で何を信用しろと?

 こっちの疑念を知ってか知らずかシャーロックは拳銃の弾倉からちゃきっと、一発きりしか入れてなかったと思われる銃弾を取り出した。

 

「これが『緋弾』だ」

 

 その弾頭は血のような、薔薇のような、炎のような緋色をしている。

 

「――魔術の名称じゃなかったのか?」

「君が言っているのは恐らく違う現象のことだろう。アリア君が指先から撃ったはずの光球それは(いにしえ)倭詞(やまとことば)で『緋天(ヒテン)緋陽門(ヒヨウモン)』という、緋弾の力を用いた一つの現象に過ぎない」

 

 ……(いにしえ)倭詞(やまとことば)

 白雪がなんか知ってそうだったのはその関係か?

 

「形は何でも構わない。日本では緋々色金と呼ばれる――要は金属なのだからね。峰・理子・リュパン4世が持っていた十字架を覚えているだろう。あれもこの弾と同族異種の金属を極微量に含むイロカネ合金だ。イロカネとはあらゆる超能力がまるで児戯に思えるような、至大なる超常の力を人間に与える物質。いわば『超常世界の核物質』なのだ」

 

 そう言えば理子は十字架持ってる時だけ髪の毛がうねる超能力が使えるとか言ってたな。『超常世界の核物質』には程遠い印象だが。アリアのヒョウモン?とかができる可能性があるなら確かにヤバイ。

 

「――世界は今、新たな戦いの中にある。イロカネの存在、その力が次第に明らかになり……極秘裡にその研究が進められているのだ。僕の『緋色の研究』のようにね。イロカネを保有する結社はイ・ウーだけではない。アジア大陸の北方には『ウルス』、南方には香港の『藍幇(ランパン)』、僕の祖国イギリスでは世界一有名なあの結社も動いている。イタリアの非公式機関を陰からサポート・監視するバチカンのように国家がイロカネの研究を支援・監視するケースも枚挙に暇がないほどだ。アメリカではホワイトハウスが、日本でも宮内庁が君の高校に星伽のいや、これは少々口が滑ったかな。そして、僕のように高純度で質量の大きいイロカネを持つ者たちは、互いのイロカネを狙いつつも――その余りに大きな超常の力に、お互い手出しができない状態にある」

「核兵器の抑止力みたいな話か?」

その通り(that's right)

 

 藍幇(ランパン)――中国を本拠地とする政治結社

 バチカン――カトリック教会の総本山

 ホワイトハウス――アメリカ合衆国大統領が居住し、執務を行う官邸・公邸

 宮内庁――皇室関係の国家事務と国宝なんかの管理

 星伽――卑弥呼時代から続いてる神社

 

 なんつーかきな臭い話になってきたな。世界一有名な結社はわからんが(王室ではなさそう)、場所から推測するにウルスはモンゴルかロシアだな。

 

「だが、この弾を使用するのは少し後にしてもう一つ、お見せしよう」

 

 と、今度は右手の人差し指をこっちに突き出してきた。

 

「これだろう? 君が見た現象は」

 

 シャーロックの身体を覆っていた緋色の光が、今度は指先へと集まっていく。

 艦砲射撃みたいな技を使う気か!?アレの攻撃範囲からして原子力潜水艦(イ・ウー)は半分ぐらい消し飛ぶぞ!?

 アリアだけでも逃がす?いや核積んでる場所でどう消し飛ばさせるのが正解だ!?

 避けて潜水艦がどう壊れるのかわからんが上に向けさせて潜水艦をただの船にするしか生き延びる道はないか?

 下手に触って暴発するかもわからんものに対してどう対処すればいいのかがわからねえ!

 発射させないのが最善だが説得できるか!?

 

「アリアを撃つ気か?巻き込むぞ?」

()()()()()()()

 

 ――こんのクソカス!散々利用しておいて用済みになったから消すと!?

 どうせもう助からねえなら――斬るか。死ぬ気で受ければ一太刀ぐらい届くかもしれねえ。アリアからそれれば万々歳だ!

 踏み込もうとした瞬間に新たな発光が()()()()発せられる。

 

「アリア!?」

 

 光はアリアの右手の人差し指に集まっていき、シャーロックのそれよりは小さいが、もう一つの太陽のように輝き始める。

 なんだこれ?遠隔でシャーロックが操ってる?

 超常現象、シャーロックの寿命、アリアが後継者、同じような現象

 何もわからないがゆえに最悪の想像が否定できない。

 

「な、なに……これ……」

 

 光の明暗はなんとか分かるらしく、アリアは自分の右手に顔を向けていた。

 

「アリア君。それは 『共鳴現象(コンソナ)』だ。質量の多いイロカネ同士は片方が覚醒すると共鳴する音叉のように、もう片方も目を覚ます性質がある。その際は、イロカネを用いた現象も共鳴するのだ。今、僕と君の人差し指が光っているようにね」

「なにする気だ?老人まで堪能したから美少女になりたいとかか?」

「ふむ?――それも興味深い発想ではあるが違う」

 

 言いながら、シャーロックは緋色の光を蓄えた指で、俺たちに狙いをつけた。

 

「アリア君。僕はこの光弾、『緋天』を君たちに撃つ。僕が知る限り、それを止める方法は同じ『緋天』を衝突させることのみだ。 実験したことは無いが、日本の古文書にはそれによって緋天同士は静止し、その後に『暦鏡(こよみかがみ)』なるものが発生するとある」

「曾……お爺さま……?」

 

 視覚が戻らぬままのアリアは、何をすればいいのか分からないという顔をしている。

 

「さっき君は『あなたに命じられない限り』僕を撃たないと言ったね。 ならばここで命じよう。 僕を撃ちなさい。その光で」

「……曾お爺さま、を……」

 

 ……意味不明すぎて何をどうしたらいいんだこれ。

 

「そうだ。 緋弾に心を奪われないよう静かに、落ち着いて指先に力を集め、保つようなイメージをするのだよ。キンジ君……君は、アリア君の目になってあげなさい」

「あえて聞くが――()()お互いが外したらどうなるんだ?」

「一度目にしただろう?」

 

 やっぱりか。

 

「アリア。最悪な状況だがお互いに必殺技を出し合うしかない状況のようだ。『暦鏡(こよみかがみ)』とやらが目的のようだが――死ぬことはねえだろう。外さない限り」

 

 そう言いながらアリアの手を取ってシャーロックに向けさせる。

 

「なんの助けにもならないが……お兄ちゃんがついてる」

「あんたはいつも通りね……」

 

 アリアの震えは少し収まったようだ。

 その光景を見たシャーロックは、緋色の光の向こうで微笑んでいた。

 

「良いパートナーを見つけたね。アリア君。かつて僕にワトソン君がいたように、ホームズ家の人間には相棒が必要だ。 人生の最期に2人が支え合う象徴的な姿を前にできて、僕は――幸せだよ」

 

 シャーロックは、人差し指をさらに突き出すようにし、光を放った。




キンちゃんはテンパってます

転生物が人気出たのがこの辺の時代だったっけ?
輪廻転生含めたらもっと前だけど美少女転生は2000年代後半だった気がする……?
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