遠山キンジの独白   作:緋色

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一番妹っぽいなこの子?


義妹

「キンちゃん、ご退院おめでとうございます!」

 

 病院のロビーを出ると、制服姿の白雪が90度ぐらいの深ーいお辞儀で俺をお出迎えした。

 顔を上げると、その黒い瞳がうるうる……と、嬉し泣きなのか潤んでる。

 ウェストや脚の長さを測らせた覚えもないのに俺の体型と1ミリの狂いもない制服を新調していたり、なんだか空恐ろしい事象も色々起きたがいつもの事なので放置している。

 私服も勝手に新調されてるから今更だし。流石に下着類は説教したが。

 

「そういえば白雪が作ってくれてた漢方薬の材料、あれ小香港(リトルホンコン)の紙袋に入ってたな。お前、台場まで一人で行ってこれたのか?」

「う、うん。最初はちょっと不安だったけど、ちゃんとお買い物できたよ。だって私はキンちゃん専属の看護婦さんだもん。キンちゃんのためなら何でも平気なの」

 

 ものすごーく幸せそうに思わず笑顔になってしまうのを隠すように両手でほっぺたを押さえた星伽神社の箱入り娘・白雪は学校と神社以外への外出を実家に禁じられている。まあ俺がガン無視して連れまわしてデートしてるからあまり印象はないが実は白雪一人で学校外に出るのは結構珍しかったりする。

 数人のグループで買い物に行ったりはするらしいが、それも誘われてだし基本的に自主的には出ない。

 それがいい事か悪い事かは知らないが。

 

「入院してて鈍ってるし軽い依頼でも受けるかねぇ」

 

 軽く伸びたり跳ねたりしてみるが入院してたから割と固まってるようだ。日常生活には問題ないが全力戦闘とかには不安が残る塩梅といった所か。

 

「そういえばキンちゃん単位大丈夫なの?」

「そこら辺はレポートで補填したから問題ない」

 

 ついでに言えば入院費も勝手に払われてたようなので依頼を受ける意味はあんまりなかったりする。最悪、強襲科(アサルト)にあるジムで身体動かすだけでもいいが、フィールドワークしないと勘が鈍るしそういう依頼を受けとこうと思う。ただでさえ探偵科(インケスタ)で留年しかけたし取れる時に取っとくべきだろう。

 


 

 掲示板に張り出されていた猫探しを終えて依頼人に猫を引き渡しに来ていた。

 

「運河?あたりにいましたんで早めに身体あらってあげて念のため獣医にも見せた方がいいでしょうね」

「ありがとうございます。ショコラのお薬の事もありますし、そうしますね」

「……どこかわるいんで?」

「肺に持病がありまして――」

 

 チラッとショコラ?という猫を抱いて喜んでる娘を複雑そうに見る母親。

 まあ気持ちはわからんでもないけど、ペット飼う場合って親が一番世話することになるからな……。

 

「それでしたら首輪にGPSつけたりとすぐに見つけられるようにするといいですよ。お外で何が起きるかわかりませんから」

「白雪……なんで俺見て言うの?頻繁に姿消してるけど仕事だからね?」

「……」

「あ、信用されてないなこれ」

 

 そんなコントをしつつも報酬を受け取って帰宅する。

 退院祝いで白雪が張りきって作るらしいので買い物してからであるが。

 猫探しは足で探すノリだったからいい運動になった気がする。木登りとか軒先にぶら下がったりとか猫がいそうなところを探すのも武偵でよくある任務だし。

 そんなこんなで夕暮れ時、外灯がジリジリとつき始めたのを横目に久々に部屋に帰――ろうとしたら部屋の前に誰かいる。

 五芒星に笠という星伽の家紋の風呂敷包みを背負い、赤い唐傘を日傘にした――

 

「粉雪!!」

 

 白雪がビックリした声を上げる。

 

「あ、粉ちゃんか。おひさー」

 

 白雪には6人ほど妹がいるのだが、よく似ていて歳かさで見分けるしかなかったのだが粉雪だけは義理の妹なのだが――物凄いお姉ちゃんっ子でいつも白雪にオンブお化けみたいについて歩いてたっけ。

 偶に通話で出てくるから声は覚えてたけど久々に生で会うと成長してるものである。確か最後にリアルで会ったのは4、5年前だったし。

 

「やっぱりお姉様は、私が『託』で予見した通りこの悪しき武偵高で、魔性の武偵・遠山様に誑かされていたのですね!」

「魔性だか詐称だか知らないけどさあ……。信用ないね俺?」

 

 『託』とは予知の一種で『占』と違って内容が自分の知りたい事とは限らない突然予感が訪れるモノらしい。予感がするの高精度なものだと思えば多分間違ってない。

 あと白雪は別に誘惑はしてないんだがな。むしろ誘惑されてる側なんだが説明しても絶対納得しねーだろうな。結論が先にあるから何言っても無駄だろうし。

 

「そもそも粉ちゃんはなんで俺の部屋に?白雪に用事ならこっち来なくね?というかなんで知ってるん?」

「遠山様がお姉様を誑かす事はお見通しです!住所は荷物を送る時にお姉様に聞きました!」

「まあ付き合ってるからええだろ」

「私は認めてません!!」

 

 ちょいちょい。

 

「前に星伽に付き合ってる事報告したとか言ってなかったっけ?許されたとかなんとか聞いた気がするけど」ヒソヒソ

「星伽はお付き合いはダメだけど……キンちゃんならって消極的だけど認めさせました。ただ――粉雪は最後まで反対してて……」ヒソヒソ

 

 こそこそ話しているのが気に食わなかったのか強引に二人の間に粉雪が入ってくる。

 

「こんなに遅くまで男性と遊び歩くなんて、お姉様は不衛生です!あ、あんなに清廉で星伽巫女の鑑とまで言われていたお姉様が……よりにもよって男性と! 夜遅くに!お姉様の門限は5時です!そして8時には就寝です!これは()()()()()()です!」

 

 そう言えば星伽にいた時はそんぐらいの就寝時間だったな。その代わり起床が4時とかなのでバランスは取れてるんじゃないだろうか。

 俺は無視して10時ぐらいに捕獲されるまで好き勝手してたから忘れてたけども。

 粉雪は手持無沙汰にしていたカードキーを取り上げ扉を開けて

 

「ささ、お姉様、こんな堕落した男の妄言に聞く耳持ってはいけません!早く室内へ、そして湯あみです。禊ですっ。何はさておき、お背中をお流しします!」

 

 と何だか私情しか感じない発言をしながらまごつく白雪を連れ込んでがちゃんと中から鍵をかけた。

 

「えぇー」

 

 なんで家主の俺が締め出されているんだろうか?

 いや一応白雪から回収したスペアキーあるから入れるけども。

 なんか風呂入る的な事を言っていたので多少時間潰してから戻った方がいいか……?

 なんかあの流れだと俺の部屋に泊まるつもりっぽいが……まあいいか。ボディーガードの流れで来客用の布団あるし間違いは起きないだろう。

 ……たぶん。俺とは起きなさそうだが、アレだと白雪と粉ちゃん一緒にするのは不安だが……。

 


 

 ざっくり一時間ぐらい時間を潰してから帰ると風呂上りが二人いるからかだいぶ女ぐさい。

 というかだいぶ懐かしいシャンプーのニオイがするが星伽から持ってきたのか?

 どうでもいい事を考えながら「帰ったぞー」と存在をアピールしておく。

 部屋に入るとジャマするなという目で睨みつけられたのでニコッと返しておく。

 

「ん?カワイイけどどうしたの?惚れた?」

「ち が い ま す!――コホン。入室を許可するのは特別ですからね」

(おにいちゃん)だからいいけど。特別って――粉ちゃん甘えん坊よね」

「ふしゃー!?」

 

 なぜか猫みたいな威嚇をし始めた。

 

「粉雪で遊ばないの。もうすぐご飯できるから、もうちょっと待っててねキンちゃん」

「おーけー。じゃ汗流してくるわ。埃っぽいし」

 

 短めに入浴――は湯が抜かれていたのでシャワーで済ませる。

 洗濯物は粉ちゃんが面倒そうだし分けておくか。適当に洗濯物用の籠にわかるように入れておく。

 粉ちゃんというか星伽神社は徹底的な男子禁制の神社の為、特例の遠山家の男しか入れないからか男を苦手としている人が多い。あっちで過ごしてた時も怖々というか腫れ物だったというか……。

 まあ気を使っておくに越したことはない。

 

「お待たせー」

「待ってません。お姉様に感謝していただきなさい」

「ん?まあ一理あるか?いつもありがとうな白雪」

「そんな!私こそありがとうございます!」

「いやなんで白雪が感謝する?」

 

 偶によくわからない思考回路になる白雪となぜかダメージを受けてる粉雪。いつもよりカオスだなおい。

 腹も空いてるし、適当なところで収めて食事を始める。

 なんかいつもより味がというかインパクト?が薄いような?粉雪が来てるからか?

 

「それで粉ちゃんは何しに東京へ?」

「お姉様に星伽からの伝言を伝えに来たまでです」

「ふーん。人を使うあたり機密性が高いのかね。あとで外した方がいい?」

「もう伝言自体は終わってるから」

「ならいいけど。そういえば粉ちゃんここ泊まるの?」

「遠山様がお姉様を誑かさないためにもお姉様と一緒に寝ます!」

 

 答えになってねえ。あとまだ白雪は一緒に住んでないんだが、まあ甘えたい盛りなのだろう。うん。

 

「……まあ白雪大変だな」

「ごめんねキンちゃん」

 

 それはそれとして――

 

「まあちょうどいいか?緋弾って何なんよ」

「――なぜ遠山様がそれを」

()()を持ってる奴に襲われて入院してた」

 

 粉雪が殺気を混じった雰囲気を出したので簡潔に答える。

 

「ピラミッドが消し飛ぶような力を持ってる犯人は死んだ事になってるが――生きてる可能性があるから見つけ出して仕留める必要がある」

 

 シャーロックは自分が死ぬとか言っていたが、アリアに研究なんぞ引き継いでないため生きているんじゃないかと邪推する。実際イ・ウーに研究資料等はなかったそうだ。

 

「粉ちゃんの反応からして星伽が絡んでるのは確定か――想定はしてたけど。星伽が遠山家を特別扱いするのもそれが関係してるのかな?まあ星伽が自由に動いたなんて聞いたことないし、義の一族が悪党を討ちに行くのは至極当然だしな」

 

 緋弾とやらを悪用したらヤバいのはシャーロックの実演を考えるとタイムパラドックス問題で碌でもないことが起きそうだ。

 何度か関わった時間移動者は死にやすいらしいので大惨事になるんじゃないか……?

 考えが顔に出ていたのか白雪が神妙な面持ちで話し始める。

 

「緋弾は緋緋色金という金属で意思を持ってるの――」

 

・曰く、色金と人は繋がる。超能力を使えるようになる繋がりと感情の繋がりがある

・曰く、色金と心が繋がりすぎると憑り憑かれる

・曰く、緋緋色金は戦と恋を好む神で戦争を引き起こす

・曰く、そうならないためにメッキで超能力だけ使えるようにしている。

 

「ふーん。全部話したわけじゃなさそうだが…話せるのがそんくらいってわけか」

「ゴメンねキンちゃん…」

「俺はオカルト詳しくねーし専門家が決める事に文句は言わんよ」

 

 粉ちゃんがいるからかアリアが緋弾を持ってる事は伏せたが――この言い分だと緋弾を探すために東京武偵校に来たのかな?白雪は。なんかオカルト的に探知出来てたっぽいし。

 だとしても――監視が緩すぎないか?

 アリアが災害みたいな神?超人?になる可能性があるとして…自由に動き回っている上に制御役がいるようにも見えない。

 白雪はアリアと偶に会うくらいだから監視してるにしても緩いし脅威度が低いか…

 大元があってそっちにリソースが割かれてるかさっき言ってたメッキが優秀だから問題ないと見てるか。

 うん?そういや姐御がアリアの監視云々言ってたな?対外的に俺がその役割扱いされてるのか?

 なんも聞いてないのに?

 

「ふむ。ごちそうさまでした」

 

 すこぶる腑に落ちないがまあ自分なりに調べなきゃならなさそうだ。




夜のデートまで行けんかった……
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