遠山キンジの独白   作:緋色

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前話補足
夾竹桃のCP内容からして確信犯です



夏休み最後の日開始


碧のショートヘア
告白x告白


「私と結婚してください。――もし断るというのなら――風穴を開けます」

 

 レキにドラグノフを突き付けながら求婚された。

 なんでこうなった?――略奪婚とか関係ない単語が浮かんでは消えていく。

 本気で何でこうなった……?

 事の次第は数十分前のこと

 


 

 8月31日の夕方、探偵科(インケスタ)棟の屋上に俺は来ていた。

 爽やかな海風に夏休み最後の夕陽が沈んでいく。

 こうしていると地獄みたいだった伊Uの事も遠い過去のようだ。

 緋色の夕焼けの中でアリアは夕日を眺める様にそこで待っていた。

 

「……いるなら声掛けなさいよ」

「絵になるなーって思ってさ。待たせたか?」

「そんなに待ってないわ」

 

 指定の時間10分前なんだけどな?まあいうだけ野暮か。

 かなえさん(アリアの母親)の裁判の件で夏休みの間連絡が来なかったがわざわざ会って話そうとするのだからそれなりの事なのだろうか?

 

「今日呼び出したのは、1つは話す時間が欲しかった。あたしはあんたにもっと話すべき事があったわ。でも 勇気が出なくて……ずっと」

 

 伊Uの報酬の件だろうか?それともシャーロック?それとも……

 

「緋緋色金――緋弾か?あの光の弾が出せたり理子みたいに髪を動かせたりするようになったとか?」

 

 髪を動かせる程度なら兎も角あの光の弾は本格的にヤバイ。姐御か胡散臭いおっさん経由で上が何か言ってくるかと思ってたが政権交代の余波か放置されているようなので特にどうしようとも思わない。

 シャーロックと違って荒らしまわる事はないだろうし。

 

「実は、試してみたんだけどね。なんかできなかった」

「ふーん。そうか」

 

 超能力(ステルス)の修行でもしないと使えないのか?いや2、3回ぐらい使ってたし充電でも切れたのか?

 西日がまぶしいのでフェンスに背を預ける様に移動するとアリアも隣に並ぶ。

 

「よく知らんけど超能力(ステルス)使いたいなら超能力者(ステルスロジー)の師匠とか先生に弟子入りしたら?また暴発されても困るし」

「パトラのピラミッド吹き飛ばしたと言われても実感ないのよね……」

「……それなら余計に制御というか発動条件探ってくれよ。メンテされてない銃とか爆発するじゃん」

「極端な例ね――言いたいことはわかるし少し本腰入れて探すわ」

「白雪は?あいつG18?だっけ?――なんかすごいらしいからピッタリじゃないか?」

「嫌よ。そういう上下関係にはなりたくないし」

「……?あ、俺が妹扱いした時、追従して義妹扱いしてたのそんなに気にしてるのか」

「そうじゃないわ。ただでさえ恩もあるのに自分の都合で教えて欲しいなんて言えるわけないじゃない。そうじゃなくても同い年を先生とか呼びたくないし」

 

 よくわからんプライドである。

 というか恩ってなんだろうか?俺の知らんところでなんかあったのか?

 

「あのね。曾お爺さまは……ご自分でも言ってた通り消えたわ。あの後どこの国にも何の情報もないの。でも曾お爺さまはご自分を『死んだ』と人々に思わせて、また唐突に現れる癖があるのよ。ライヘンバッハ、香港、カルカッタ、ニューヨーク。過去何度もそれをやってる」

 

 ライヘンバッハはシャーロックがモリアーティと戦ったスイスの滝だったかな?その後の香港以降は知らんが。

 

「まあ生きてるだろうな。遺体もミサイルも見つかってないらしいし」

 

 俺がそう続けてやると、 アリアはこくり。力強く、うなずいた。

 そう信じている――とでも言うように。

 あんな派手なもん大国が捕捉してないわけがないと思うのだが――まあ海外に逃げたなら俺の管轄外だしどうしようもないから考えるだけ無駄だが。

 

「イ・ウーは…組織としては、崩壊したらしいわ。リーダー不在になって、『緋弾』が部外者の手に渡った場合は解散する事を前もって決めていたみたい。まあ、奴らは元々バラバラの目的を持って集まっていた組織みたいだったからね」

「ああ。それは知ってた。最後はあっけないもんだったな」

 

 変に団結されるより犯罪者がばらけたことで厄介なことになったと思うが……一長一短か。

 少なくとも理子やジャンヌ――あと最近知り合った夾竹桃は犯罪者に戻る気は今のところないようである。こういう時は便利だよな桜ちゃん。

 

「それでね……イ・ウーで証拠が十分揃ったからもうすぐママの裁判が始まるの。下級裁隔意制度が適用されるから、早ければ9月中に高裁判決が出るわ。 そこで無罪になって、さらに検察が上訴しなければママは釈放されるの」

「ん。そうかあと一歩なんだな」

「本当にありがとう、キンジ。ここまで来れたのは、あんたのおかげよ」

 

 普通に考えればそうなのだがこの神崎かなえさんの冤罪は少々違和感がある。まあ流石に冤罪バレてるし伊U崩壊の偉業もあるから問題ないだろうけど。

 

「……ママの無罪判決が出たらね、あたし――ロンドンに、帰るの」

 

 俺に向けた目が涙でほとんど沈んだ夕陽に煌めいている。

 

「そうかい。イギリスにいたいならイギリスに行けばいいし、日本に帰りたかったら日本に帰ってくりゃあいい。アリアなら何処でもやってけるだろ」

 

 ロンドンに帰るのはいいがこいつでいないもの扱いされてるとか言ってたのになんで帰るんだろうか?

 そんなどうでもいい事を考える中、アリアは何かに引っかかてるようだった。

 

「日本に帰る……?」

「え?お前の居場所はこっちだろ?」

 

 神崎かなえさんは離縁済みらしいし、アリアもホームズ家とは折り合い悪そうだし、そうなると日本で過ごすだろうから必然的に日本が本拠地(ホーム)になるだろう。

 そう思っての発言なのだがなにやらアリアは赤面し動悸がするのか胸を押さえている。

 ――なにか選択肢ミスった気がするなこれ?

 

「いつでも頼れ。俺は妹に優しいお兄ちゃんだからな」

「だから妹じゃない!」

 

 アリアは叫んだことで空気がリセットされたからか、呆れたように夕日の方を向いた後に話を続ける。

 

「もう学校にもあまり来ないかもしれない。裁判で忙しくなるからあんたと会えるのも……もしかしたら今日が最後かもしれないの。元々、あんたとの契約は『武偵殺し』 の件が片付くまでだった。だから本当は、理子の証言を取れることが決まった6月に満了していたのよね。でも……あたし……ズルズルとあんたを引っ張っちゃってた。そのせいで単位不足にさせたりもした」

「単位不足は確認してなかった自業自得なんだけどな」

 

 兄さん探しで伊Uを探ってたからなあなあになってたけど。本来はハイジャック終わった後に一旦切れる程度の関係だったんだよな。

 なんかちょくちょく部屋に入り浸ってたりしてたから忘れがちだけど。都度契約のはずだったわけだ。なんか事件が起きまくってたけども。

 

「キンジ。ちょっとした提案があるわ。来年3月まで、あんたもロンドン武偵高に来るの。イギリス武偵局(GBDA)とか特殊空挺部隊 (SAS)で研修もできるし、英語はあたしが付きっきりで教えてあげる」

「俺一応英語話せるんだが……。まあクイーンズイングリッシュ学べるならありか?」

 

 ちなみに一番きれいな英語を話せるのは貴族じゃなくて王族貴族に仕える執事とからしい。

 あと研修先に世界初の特殊部隊(SAS)あるのかよ。どういう風に見られてんの俺?

 

「留学ね…。ロンドンには旅行してみたいとは思うけど」

 

 イギリスに留学するよりアメリカに留学した方が実りありそうな気がする。

 まあ留学なんて毎食、米を食っている日本より飯のストレス高そうだからあんまり行く気はあんまりない。パンも別に嫌いじゃないけどさ。

 

「その時は案内してあげるわ」

「そん時はよろしくな」

 

 他愛無いお喋りをしていると夕日が沈み切った。

 何となく時間切れ感が漂う。

 

「んーもう日が沈んだし。帰りますか」

「そうね。帰りましょ」

「明日から学校か~。あ、黒服出しとかねえとなあ」

 

 アリアがそっと袖を掴んできたので何となく一緒に帰ろうとしていたが――同時に異変に気が付く。

 さっきまで鳴り響いていた蝉が鳴き止んだ?

 まるで何かの怒りを買わないように息をひそめたかの如く。

 

「……覗きか?レキ」

 

 気配を感じて振り向くとフェンスの上に平均台に立つように狙撃銃を背にしたレキが立っていた。

 ……いつのまにあんなところに?全然気が付かなかった。

 

「……覗……あ、レキちがうのよ?これはそういうんじゃなくて!」

 

 ちょっと慌てたようにアリアが俺から離れて赤面する。

 

「こ、これは別に何でもないの」

「……お邪魔でしたか」

「邪魔って――あ、キンジ今日はありがと!また明日!」

 

 なにやら顔を真っ赤にしたアリアはそう口走ると耐えられなかったのか去って行った。え?明日会うの?

 何で逃げるのかはわからないがレキって無表情だから偶に怒ってるんじゃないかと思われることがあるらしいしそれかな?

 アリアの背中を見定めているのか見送ったレキはフェンスの上を猫のように歩いて近づいてくる。

 

「なにしてたんだ?覗きか?バレない程度にしろよ?」

「読んでました」

「何を?」

「――風を」

 

 ……相変わらず意味が分からない。

 狙撃の訓練の一環で風速でも測ってたのかな?体感で。

 ところで武偵校の制服はなぜか基本短いスカートが基本なのでフェンスの上だと――ヒラ、ヒラっと見えてはいけないところが見えそうになるので目を逸らす。

 

「レキ、もうチョイ気を使え。俺も男なんだからガードしてくれよ。これで見えたとか難癖付けられて怒られんの俺なんだぞ?」

「なんのことですか」

「!――スカートの事だよ」

「 」

 

 音もなくフェンスを降りたレキが背後のすぐそばに立っていた。

 なにもわかってないのか虚空を観るようにこっち見ていたが。

 

「風が狂い始めている」

「――前から思っていたけどレキって説明する気無いよね?」

 

 なんか面倒くさくなってきたので切り上げてもう帰ろうかなと考えていた所で

 

「キンジさん」

「ん?――っ!」

 

 俺に詰め寄って距離をゼロにしたレキは背伸びして――

 

 ――キス――

 

 してきた。

 ほのかなミントの香りとなめらかなレキの唇が現実だと脳を刺激する。

 ガタンッと扉の方から音がしたのでレキと離れて振り向くとピンク色の髪が階段を駆け下りる音共に消えていった。

 覗いていたのか?

 いやどうするべきだこれ?

 

 ちゃき、という音がしたのでレキの方を振り返る

 

「キンジさん」

「――俺なんか怒らせることした?」

 

 レキが銃を下ろしていた。

 全長120cmの狙撃銃を背から降ろす理由なんて考えたくもない。

 

「あなたはアリアさんと結ばれてはならない」

「……何の話?」

「これからは私がパートナーになります」

 

 キスのせいで血流が集まってくると同時にレキはそれを待っていることにも気づく。

 そしてヒステリアモードは女を傷つけることが極端に難しくなるモードでもある。つまりレキは俺の体質を知っていて尚且つ弱点も理解している。

 

「気持ちは嬉しいけど彼女いるんだわ」

「アリアさんですか?」

「いや白雪だけど?」

「それより先にキンジさんと私はウルスになってます。私が先約です」

「…いやレキに告白したことないんだが…?」

 

 ヒステリアモードの記憶力でレキと出会ってから――出会う以前の記憶もひっくり返してもウルスとやらになった記憶はない。――ウルスってシャーロックが言ってた組織だな?

 なんでここでレキと繋がる……?

 

「キンジさんは私を妹と言いました」

「言ったな」

 

 ヒステリアモードの派生形を発動させるために組んだ時はよく言っていた。

 

「つまりキンジさんはすでにウルスです」

「ウルスってなんだよ」

「家族です」

「家族なら結婚できないぞ。妹だしな」

「母が違うので問題ありません」

「問題はそこなのか…」

 

 うーん。知らぬ間にトラップに嵌っていたわけか。自業自得とも言うが。

 

「私と結婚してください。――もし断るというのなら――風穴を開けます」

 

 いや妹扱いしたら家族で結婚とか想像できるか!?




こういうのBSSっていうんでしたっけ?
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