遠山キンジの独白 作:緋色
「――あなたとアリアさんは結ばれてはならない」
「結ばれる以前に妹扱いしかしてないような――あ、甘やかしすぎたことに怒ってる?」
「怒ってません」
それ怒ってる奴の台詞だよね?は流石に飲み込む。行為に怒ってるのか対象に怒ってるのかそこら辺を見極めないとぶち抜かれる雰囲気を感じる。
こういう時、なんで察してくれないのって怒るやつは面倒くさいんだよな……。要求が口から駄々洩れであるアリアの方がまだ対処しやすい。
「そもそも俺こんなだぞ?結婚相手には向かないからやめとけ」
「キンジさんが主人に相応しいので問題ありません」
……。
?なんだ?なんかおかしいぞ?
「主人に相応しい?」
「はい。
「風ね……」
あー。何となく読めてきた。
レキは電波的なところがあると思っていたが敵を察知したりと予知――いや予感かな?
漠然とした経験則による集大成で最善を掴んできた天才型なのだろう。
そして自覚ないうちに恋愛感情が発生し、じりじりと積もっていた所でなんかのきっかけで変な風に発露したとかそんなところか?
――ストーカー心理学が無駄に冷静に分析できるのが悲しいな……。
「好きになってほしいならアプローチから考え直したら?手紙とか――さ?」
一般的には知らんが武偵校――というかCVR相手には主流らしくちょくちょく来るんだよな。
「お断りします。異性とは奪うものですから」
「恋は戦争――てか?なんで俺の周りって強引な女多いんだ……」
言いたい事はわからなくもない。純愛派?の俺からしたら理解不能だが略奪愛に燃えるタイプというのもいるからな。
ただ、それだと主人に相応しいというのと矛盾する。トロフィーとして欲してるわけではない?
「私もすぐにキンジさんに婚約して頂けるとは思ってません」
「まず脅迫止めない?」
「――ですので最大7回、猶予を与えようと思います」
「……7回?」
「はい。これから7回あなたを襲います。あなたが1度でも5分以上逃げることができたなら求婚は撤回します」
「逃がす気0か――当たり前か」
「どこへ逃げても構いませんよ。ただ私の『
狙撃手の狙撃可能範囲の武偵の呼び名である。
そして通常ドラグノフ狙撃銃有効射程は800mであるがこの距離を余裕で倍以上越している以上、相応のカスタムがされているとみるべきか。
「つまり2051m四方どこへ逃げても私の銃はあなたを射ることができる。この銃は決して私を裏切りませんから」
「銃は裏切らないかもしれんが俺は裏切るぞ?予想の斜め下に地面にめり込む勢いで」
「土下座した瞬間に射殺します」
……バレテーラ。
見苦しいと失望されるのは知ってるからそれで失望させて時間稼ごうかと思ったのに。
「7回までに私と婚約してくださいね」
こうなったらレキには悪いがドラグノフ壊させて貰うか。恨まれるかも知れんが脅してきたんだしお互い様だ。
BOW
屋上より高い位置に据えられた空調設備の上に姿を現したハイマキ――レキがペットにしたコーカサスハクギンオオカミ――に一瞬気を取られたのがマズかった。
「うぉっ!?」
鋭い煌めきに大きく飛びのくとドラグノフの先端に装着した銃剣が喉を掠める。
銃剣術!?
レキは接近戦できたのか!?だが、実戦に使うには型通りで綺麗すぎる!
「ハイマキ」
「BOW」
再び接近しようとしたが、それを読んでいたのかレキはハイマキを襲い掛からせる。
飛び掛かってきた銀狼には分厚い鉄甲が関節を保護するためか首と足の付け根を保護している。
これじゃ拳銃弾で首筋をかすめて麻痺させたり
バイクに撥ねられたみたいに非常階段の方へと突き飛ばされ、そのまま揉み合いになって階段を転がり落ちる。
ハイマキにポケットから携帯を盗られて投げ捨てられ
パァン!
ドラグノフの発砲音に驚くが――身体に負傷はない。とりあえずハイマキを蹴り飛ばして階段の手摺を乗り越え、数階下の非常階段の壁を掴んで非常階段へと戻る。
気休めだがレキと距離を取ってしまった以上、通りを歩くことは危険すぎる。――それに
「さっきの狙撃はそういう事かよっ!」
袖のカフスボタンが1つ無くなっている。これはボタンを撃たれたのだろう。あの揉み合いの中で。
つまりこれはレキなりの警告。カフスボタンは元々6個
『7回までに私と婚約してくださいね』
見逃すのは6回までだって事か。
カツカツカツと四足歩行生物の連続した足音が迫ってくる。
ハイマキが階段を下りてきてるのだろう。
――ハイマキの防弾鎧にゃ9mm弾は通用しない。射殺する気なら別だが――それは兎も角
あれは犬用――狼用?のものだが形状が気になる。首筋を守るだけなら兎も角関節を外すような打撃をしにくくなるような作りだ。
思考をしながら扉を開けて室内に入り込んで扉と距離を取る。これで見えなくなるし屋上から数階離れたここなら壁抜きもできない。ハイマキさえ制圧してしまえば距離のない狙撃手など畏れる所はない。
ハイマキはあと5秒で俺のいる階に到達する――まずはこっちだ。
非常階段の扉の方を向き、大きく息を吸い右足を高く上げる。
ハイマキが扉を突き破って表れると同時に足を踏み下ろし吼える。
流石に
「ヒャゥ――ッ!」
「一瞬怯んだだけか――よ!」
そもそも
改良の余地ありだな。――再び飛びかかってきたが何度も同じ技をくらうほど馬鹿じゃない。
壁と天井を蹴り
パァン!
はじけ飛ぶカフスボタンと共にハイマキは倒れる。
いや待て!?今どこから
近くを見渡すと窓ガラスに銃弾の穴が開いている。しかしレキは屋上にいたはずなのに方向から考えると外から撃たれ――
「飛び降りっ!?」
慌てて身を乗り出すとパァン!とカフスボタンがはじけ飛ぶがドラグノフを構えるレキの姿が確認できた。
すぐに隠れてしまったが。
なるほど。建物内に籠って時間稼ぎすると読んでワイヤーかなんかで下に降りたと。
よろよろと立ち上がるハイマキの頑丈さに呆れつつも校舎を挟むように教室の窓から飛び降りる。
建物内にいるより動き続けて逃げる方が狙いにくいからな。それにさっきレキが隠れた方角から見て直線的に狙えない場所にいた方が銃弾は届かない。
あとはハイマキもアレなら5分は動けないだろうし誘導されることもないだろう。
「逃げ切ったとしてどうするかな……」
レキは狙撃手として完璧な仕事をするタイプだ。そういうタイプは総じてプライドが高いものだ。言われたらやるくらいの受動的だが、逆にやると決めたら結果を出すまでやるタイプでもある。
求婚は諦めるらしいが勝手にウルスにされてる以上、これで終わりじゃなく次の手をうってくるか――なかったことにしようとするか。その場合、こんなゲームじゃなくマジで殺す可能性が高い。
――見られてる?
アオォ~ン
遠吠えが聞こえたので振り返るとハイマキがこちらを見つけたのか非常階段から睨みつけている。
悪いがそこから飛び降りたとしても次の狙撃までは間に合わな――パァン!――カフスボタンがはじけ飛んだ。
「はあ!?」
地面に残った着弾点から弾道を逆算すると銃弾はハイマキの方から――ハイマキ!?
パァン!とカフスボタンがはじけ飛ぶ。
慌てて物陰に隠れたが、信じがたい事にヒステリアモードの視界で何とか捉えたがハイマキの背中の鉄甲を弾いて銃弾が届いたのだ。
さっきの遠吠えで位置を?いやそれだと精密射撃には情報が足りな過ぎる。それこそ見えてないと――まさかハイマキか!?
さっき感じた視線はハイマキではなくレキのもの。
恐らくハイマキの装備の反射で俺の位置を正確に見て狙撃したのだろう。
視力6.0パねえな!?
納得できる描写をずっと考えてたけど説得力がガガガ
原作より理不尽だけど来週のキンちゃんが何とかする――といいなぁ……