遠山キンジの独白   作:緋色

97 / 168
前回のあらすじ
レキがキンちゃんを攻略(物理)しようとしている。


撃ち抜いたのは

 レキとは何度か組んでいる。

 故に知っているがレキはスナイパーとして仕事を完璧にこなす一撃必中タイプ。

 このタイプは己の仕事を誇りに思っているのでプライドが高く――だからこそレキはゲームルールは守るはずだ。故にあと一発は死ぬ事はないだろう。ならやるべき事は――

 ハイマキとの位置関係から反射を推測すると校舎を挟んだ向かい側の建物の何処かにいるはず逃げるのも手ではあるが相手を倒す為に逃げるのは兎も角逃げ続けるのは格好悪いし逃げ切るのもあの手この手で次があると考えた方がいい。絶体絶命すぎて笑いしか出ねえな。

 ならば俺はここで勝つしかない。

 校舎を突っ切りあえて姿を晒す。

 

 パァン!

 

 はじけ飛ぶ最後のカフスボタンを横目にナイフで指に傷をつけて血をビンディのように額のど真ん中に押し付け、レキがいる方向へと中指を立てる。

 俺を殺す気なら狙うのは頭、心臓のどちらかだろう。

 レキの性格なら心臓の方が撃ちやすかったとしても売られた喧嘩は買うはずだ!

 

「この桜吹雪、散らせるものなら散らしてみろ」

 


 

 狙撃眼鏡(スコープ)の中にキンジさんを納める。

 最後のカフスボタンを射抜いた。

 もう後はない最後の7回目。それでも狙撃眼鏡(スコープ)の先のキンジさんは笑っていた。

 

 そうだ。不利な時ほどあなたはよく笑う。

 

『ん?殺さない理由?そりゃー殺しに来る相手を殺すのは簡単だけど――それ胸張って言える事か?』

 

 勝てる相手にズタボロにされたあなたに問うたことがある。

 

『殺しに来る奴を誰も殺さずに勝つ。俺は殺さねえし殺されるつもりもない』

 

 そういうあなたは遠くの誰を見ていたのか私は知らない。

 

『生きて生きて生ききって――全世界に俺は誰も殺さずに勝ったとか格好良く生きたって胸張って言える方が格好いいだろ。――あ、なんかそれっぽいな。次からこんな感じで答えるか』

 

 そう笑うあなたは何よりも――

 

「――銃弾は人の心を持たない」

 

 苦し紛れだろう笑みと共に話す言葉は降伏の言葉ではないだろう。

 

「故に、何も考えない」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

「ただ」

 

 不思議と眼が合い、最期の言葉がわかった。

 

「『目的に向かって飛ぶだけ』」

 

 ――パァン!

 


 

 人が人を殺すつもりの攻撃の時、殺意がない事はあり得ないと思う。

 それなりに特別な事でないぐらい慣れたことだとしてもそれなりに特別な事には変わらない。

 だからだろうか。

 ラストショットで殺す気だからか――死の恐怖で鋭敏になったか、偶然かレキを見つけることができた。

 

「目的に向かって飛ぶだけ」

 

 レキの言葉(ルーティン)は速度も抑揚も覚えている。

 ならばその言葉の前後2秒間だけに山勘で全集中すれば銃弾すらとらえることも可能!

 

 ギィン!

 

 ハイパースローモーションで迫る銃弾を捉え、ヒステリアモードの速度でバタフライナイフに当てて逸らす。

 それと同時に走りだし、レキの元へ向かう。

 レキの殺意が身体に刺さるがその真っ直ぐな殺意は銃弾の軌道であり逆に対応するのは比較的楽な方だ。

 二度、三度銃弾をナイフで逸らす。――レキらしくない狙撃な気がするがさっきので乱れたのか?

 まあ調子崩れてるなら生き残る目が出てきたって事だろう。

 ナイフは折れる寸前だが――間に合ったな。

 

「鬼ごっこの必勝法って鬼退治だと思うんだよね」

「私は鬼ではなく人間ですが」

「そういう事じゃねえんだけどな……」

 

 ベレッタの銃弾を跳弾でレキの後ろを通過させて逃げれないアピールをしておく。

 ハイマキはまだ来ないがそろそろ戻ってきてもおかしくない。ヒステリアモードも疲れたのか切れかけてきたここで決める。

 レキの発砲を銃弾撃ち(ビリヤード)で逸らし、近づいて取り押さえる。

 

「俺の勝ち。体感だと4分経過か?5分経過するまで抑えさせてもらおうか」

「残り35秒ですが私にもう勝ち目はありません。降参です」

「ふーん?」

 

 念のため1分ほど拘束してから解放する。

 

「これで求婚?とやらは白紙な。6発ぐらい負けてるけど最後に勝ったとしても勝った気はしないが――引き分けだな!?」

「いえキンジさんの勝ちです」

「負けるのは嫌だが勝った気もしねえんだよ」

「キンジさんが本気なら私は最初の1分で負けてました」

 

 ……?

 

「何言ってんだ?」

「現に私もハイマキも生きていますから」

「……あーそういう。前にも言ったけど俺"は"殺しはしない。流石に今回は死ぬかと思ったけどなぁ」

 

 ヒステリアモードも完全に切れたな。ナイフ折れそうだし新しいナイフ買うか?でもこれなんか重要物資みたいだし面倒だけど星伽に修繕頼むかな……。

 

「あー無茶したから身体痛えな…暴れたのバレたら面倒だし帰って寝るか…」

「キンジさん」

「なんぞ?」

 

 呼ばれて振り返るとレキが跪いていた。

 ……謝罪か?

 

「負けた以上、私のすべてはあなたのものです。好きにお使いください」

「……何言ってんのか知らんけどいらん。自分は大切にしろよ」

「そうですか」

 

 流れる様にドラグノフの銃口を自分の頭にm――!?

 

「待て待て!?何しようとしてんの!?死ぬなら老衰で死ね!」

 

 慌ててドラグノフの銃身を掴み銃口を逸らす。

 

「いらないのでは?」

「え?まさかそれで死のうとしたの?」

 

 こくん。と頷かれる。

 いやなんで!?俺ここまでだと逆に引くぞ!?メンヘラか?

 

「いや死なれたら悲しいからやめーや」

「ウルスは一にして全、全にして一。私は失敗し銃もこの身もいらないのであればそうします」

「……じゃあ死なないで俺の役に立てって言えばやめるのか?」

「はい」

 

 そう言うとレキは力を緩めたので銃身から手を放すとすっとドラグノフを背負い直す。

 ……これ俺の役に立てしか聞いてないな?

 

「とりあえず聞くけど、これからどうすんだ?」

「あなたに従います。どんな命令をしてもいいですよ」

「……そういうのはHな漫画展開になるから言わん方がいいぞ?」

 

 若干疑問はあるがエロゲ世界特有の意味わからん世界観だと思ってるし。

 

「?しないのですか?」

「なんで受け入れてんの……?」

「キンジさんは私の主人ですので」

「なってないんだが?結婚も白紙撤回なのでは?」

「先ほどキンジさんは『死なないで俺の役に立て』と言いました」

「言ったな」

「キンジさんは私を所有物にしたという事です」

「……そういやレキって海外生まれだっけ?」

「はい」

「もしかして少数民族とか?」

「ウルスは現在47名です」

 

 数は聞いてないが――この考え方自体は古いというか昔から世界各地である思想ではある。

 すなわち女は男の所有物というアレである。ヒャッハーな世界だと男は殺して女を攫うみたいなイメージがあるがそれも一種だろう。そしてこの思想が無くなることはない。理由は単純――男と女では違う。

 男は戦え女は守れ。ある意味動物的な本能の発露である。ライオンがわかりやすいか?

 

「はぁ~。もういいや。役に立つなら勝手にすれば?疲れたし帰るわ。あ、携帯探さねーと」

 

 場所に見当はつくが探しに行くのは流石に面倒だ。

 月が良く見えるから暗くはないんだろうけども。いや夜は暗いか。

 

「……なんでついてくるんだ?」

「私から離れないで下さい」

「なんで?」

「敵に襲われてはいけませんので」

 

 …………………………。

 一難去ってまた一難。神とやらがいるなら俺に平穏を与える気はないらしい。




別視点入れた方が面白いかなと思った
なんか湿度高くない?


よいお年を
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。