遠山キンジの独白 作:緋色
2学期が始まるその日の始業式では、世界初の武偵高・ローマ武偵高の制服を模した『
……去年より身長とか伸びてるはずなのだがなんでジャストサイズなんだろうか?去年もジャストサイズだったような……?
2学期の始業式では、出欠を取られない。なので理子みたいに不真面目な生徒やアリアみたいに忙しい生徒はサボっている。出てるのは真面目なヤツか、ヒマなヤツか、俺のように少しでも内申点を下げられたくないデキの悪い生徒ぐらいだ。
前方の舞台では弾痕を縫ってごまかした跡のある緞帳が左右に広げられており、中央の演台で校長の緑松が武偵の国際協力について語っている。
治安が悪化したとはいえ日本はまだ安全な国の部類に入るので、東京武偵高ではもっと緊張感のある環境で育った海外の武偵高の留学生を積極的に受け入れるとかなんとか。
言いたいことはわかるが校内の治安が悪化しないといいけどな……。
ぼやーっと聞き流しながら昨日からの事を考える。
結局、あの後家まで付いてきたわけだが、レキは家事能力がないというか育った環境からか食事は最低限(聞いたら3食カロリーメイトだけで過ごすことも多いとか)なので食事を作ったりと世話をすることになった。
住み着く気なのかと問うと敵が近いの一点張りで四六時中ついて回るつもりのようだ。あと最終目的は子供らしいが平然と部屋の隅で座って寝ていたためそっちに関する爆弾は俺が行動を起こさない限り爆発しなさそうなので一旦棚上げする。
「敵ねぇ」
レキも漠然とした脅威があるみたいな認識なのか詳しく教えてくれなかった。
狙ってくるとしたらイ・ウーの残党どもだと思うが理子やジャンヌ曰くそれはないと言ってたが――どこまで信用できるかだな。
レキ自身は俺と一緒に登校した後、始業式後のセレモニー――小銃や狙撃銃をバトンがわりにするマーチングバンド――に出る当番とのことで講堂の控え室に入っていった。護衛のつもりじゃなかったのか?
俺の足元にはハイマキが寝そべっていて「なんでこんなやつを」という顔で時々こっちを見上げてくる。
そんなハイマキを撫でながら時間が過ぎるのを待っていると
「遠山君、隣いいかな」
「ようキンジ。ダブらねーで済んだみてーだな」
「好きにせーや。あと今学期は単位は早めに取っておくことにするわ」
隣の席に男子が2人移動してきた。真面目な不知火とヒマな武藤だ。
武藤はたまにモテて―とぼやいているが、夏休みボケ丸出しで無精ヒゲが生えまくってるがこいつホントにモテる気あるんだろうか?不知火を見習え初日から清潔感あふれてんぞこいつ。
「遠山君。君また女性関係でスキャンダル起こした?強襲科で剣道の
「アリアが問題起こしたら俺のせいになんの?お兄ちゃん責任?――心当たりのあるスキャンダルは起こしてねーな。昨日レキが頭ぶち抜こうと襲撃してきたぐらいで」
レキに襲撃されたこととは関係ないだろうしアリアが荒れてても俺の責任にされる筋合いはないが。
「何があったんだい?一部ではポピュラーな話題だけど今朝遠山君、狙撃科のレキさんと遠山君の部屋から登校してたって」
「んー。まあ簡潔に言うとスカートの中見えそうだって注意したら頭撃ち抜かれかけて取り押さえたらなんか着いてくるようになった」
「……本当に何したんだい?」
俺とレキの関係の物証を示すように、不知火はハイマキの背を撫でている。
まああの辺武偵校の人間多いから見られててもおかしくないか、一応いつもより結構早めに出たんだが無駄だったらしい。
「――今度はレキか!「今度はってなんだ今度はって」あー、でもなんとなく分かる気がするぞ。よく組んでたし妹扱いしてたからな。しかしお前また危険な物件に手を出したな。レキは隠れファンが多いからよォ。お前これから四方八方から狙われるぜ?不幸だなー、キンジは」
「別に手を出したわけじゃねえし襲撃自体は去年からちょくちょくあったから今更じゃねえかな」
「クロメーテルの時は大騒ぎだったもんなぁ。今は落ち着いてるけど」
「あいつらなんなん?八つ当たりとか負け犬?」
「似たようなもんじゃないか?」
「神崎さんレキさんと仲良かったからね。神崎さん友達失ったせいかちょっと鬱入ってたよ。暴れたあと」
「……あれ仲良かったのか?」
軽く思い出してもアリアが一方的に命令してただけのような……。いや、いつもの事か。レキの方がなんか言わないと動かねえし。
「このシーズン、そういうトラブル多いんだよねぇ。『
武偵高では2年次に2回の修学旅行が行われる。その1回目が『
これは名目上では普通の修学旅行という事になっているが、実際には生徒間でのチーム編成の最終調整をするための行事である。
武偵高の生徒は2年になると、9月末までに2~8人のチームを組んで学校に登録しなければならないのだ。
このチーム制度は意外に重要で、登録したチームは国際武偵連盟にも登録される。
通常、武偵はそのチームで将来も活動するし……仮に進路が分かれても、チームの協力関係は組織の枠組を超えて最優先して良い――と、国際武偵法でも定められている。
……この制度何のためにあるんだろうな?その時々で組めばいいだけだと思うんだが?
「夏休みで男女関係がこじれてチーム編成に影響するケースは、割とポピュラーだからね。遠山君、身辺整理ができなかったワケだ」
「身辺整理どころか次から次に問題起きまくっててな…。なんか知らんが敵に狙われてるらしいし」
「女癖悪いからだろ。その点オレは、もうだいたい組むヤツが決まってるぜ。
厳密な決まりはないが、チームには強襲系・兵站系・通信系・混成系など様々な種類があり、それぞれのチームが軍隊でいえば、小隊が集まって中隊になるようなイメージだ。
だから、一般校でいう班分けみたいに仲良しこよしで組めばいいというものではなく、戦略的に優れた編成を考えなければいけない。
割と強襲系よりの人間としてはそういうチームが好ましいが、個人的には適材適所でぶん投げられる混成系が理想ではある。
最善は隠し事が多すぎるのでチーム組まない事だがそこは仕方ない事だろう。
「というか不知火と組む予定だし女がどうだとか関係なくね?つか、お互い個人プレイしたいから組むって言う話だったよな?」
「――やっぱり変だと思ったら遠山君は知らないわけね」
明らかにやれやれみたいなノリで不知火がため息をつく。
「あん?何の話だ?」
「馬に蹴られたくないからその話は終りね」
ホントになんなんだおい。
始業式が終わると講堂前の道路では、リトル・エヴァの名曲『ロコモーション』 に乗せて、
羽根付き帽子とマーチ衣装で飾り立てられた、バトントワラーの女子たちは短いプリーツスカートをひらめかせ、バトン代わりの突撃銃や狙撃銃を回しつつ、通行止めにした車道で二列縦隊のパレードをやっている。
武偵高ではああやって警察署や自衛隊のように音楽やダンスの催しを公開し、世間様のイメージアップを図ることが間々ある。校長の作戦らしくそれにはたいてい女子があたり、5月のアドシアードではアリアや白雪がチアをやっていた。
それは結構効果が出てるのか歩道には、近隣の住民やマスコミが少しだけ見に来ていた。バズーカ砲みたいな望遠レンズのついたカメラを持ってきて、せっせと女子を撮ってる男もいるな。
度を越えた写真じゃなさそうだから制裁されることはないだろうけど善し悪しだよなあ。ちょくちょくクロメーテルを出させようと依頼が来るくらいで。
いやな事思い出しそうなのでその場を後にして
「
「初対面にお兄ちゃん呼びされるとはな~。で、誰だ?」
頭上から妙な訛りのある女の子の声がしたので見上げると、建物の排水パイプに足を掛けて逆さづりになった清朝中国の民族衣装、その正装をアレンジした妙ちくりんな服を着ているチビっ子がいる。
「
サーカスみたいな身軽さでスタっと路地に着地したその子は――身長140ぐらいの目尻に赤い化粧をした黒髪ツインテールの女の子だった。
……アリアみたいなのを引き寄せるフェロモンでも出てんのかなあ……。
ロリは上から来る法則でもあるのか……?
哥が兄とかそんな感じの意味らしい
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ココ
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