推しの兄   作:全智一皆

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IF 復讐者

 

 オレは星野シン。今や亡き人気アイドル「星野アイ」を妹に持つ、双子の子守をしている最中の大学生である。

 もしくは、妹を守る事が出来なかった愚かな兄とでも言うべきか。それとも、妹の願いに答えられそうにない愚か者とでも言うべきか。

 どちらにせよ、オレが愚かである事に変わりはない。もうどうにもならない程、愚かで馬鹿馬鹿しい男だ。

「………」

 床に寝転ぶのは、妹が産んだ二人の子供。星野アクアと星野ルビー。母親似の双子…いや、アクアの方はあの父親似か。なんて、言ったらきっと怒るのだろう。

 カミキヒカル―――あの男は今頃、笑っているのだろう。悦に浸っているのだろう。快楽を味わっているのだろう。

 アレはそういう男だった。最初から、そういう思考の持ち主だった。

 今にして思えば…アレを一目見た時に始末しておけば、こうはならなかったのではないかとも思う。だが、そうすればアクアとルビーは産まれて来なかったのではないかとも、思う。

 嗚呼―――憎たらしい。実に憎たらしい。心の底から、憎たらしい。

 カミキヒカルが憎たらしい。彼女を守れなかった自分が憎々しい。

 兄である私がこうなら、きっとアクアとルビーも彼女を殺した犯人を憎むのだろう。憎んでしまうのだろう。

 だが――――――

「それは、ダメだ。決して許さない。許されない。」

 二人の頭を撫でながら、呟く。断言する。

 この二人を、決して復讐者になどさせない。この二人に、そんな誤った道に進ませる訳にはいかない。

 この二人は、アイの子供だ。オレの大切な妹の、オレの大好きな妹の子供だ。幸せに生きるべき若人達だ。

 殺人を犯させる訳にはいかない。犯罪に染める訳にはいない。

 手を汚すのであるならば。人を殺すのであるならば。

「そんな汚れ仕事は―――叔父さんが全部やってやる。二人には悪いが、オレが勝手に二人の分も背負うよ。」

 憎むのは良い。犯人を憎悪するのも、嫌悪するのも、それは自由だ。勿論、忘れてたった良い。

 だか、殺すのはオレだ。復讐するのはオレだ。決して、お前達二人にそんな惨い人生を歩ませない。これは絶対だ。

 カミキヒカル――――――星野アイが死ぬ事となった原因。オレがこの手で葬るべき不倶戴天の男。

 残念だったな。復讐者はオレだ。認めたくはないが、この二人はお前の子供でもある。けれど、お前を殺すのはお前と血の繋がりもない男だ。お前も碌に知らない、ただの凡人が―――この手で殺してやる。

 

 そう決意した瞬間。そう殺意を孕んだ瞬間。

 これまで、一度足りとも妹と似通った部分が無かった星野シンに、たった一つだけ―――似通った点が生まれた。

 その両目に、星のハイライトが刻まれたのだ。

 だが、星野アイや星野アクア、星野ルビーの様な普通の星などではなく、複雑な形をした漆黒の星―――七芒星。

 それこそ、星野シンが復讐者と成った証である。

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