アクアside
今日から俺とルビーは高校生になる。
ルビーは芸能科、俺は普通科に入学することができた。
名前で引っかかるんじゃないかと危惧していた事もあったが、杞憂で済んで良かったと思う。
(今日から高校生。やっと働ける立場になった。...今日から俺の父親を探し出す計画を始められる。アイを殺したヤツを...同じ目に...ッ!!)
「お兄ちゃん、大丈夫?いつにも増して暗い顔してるよ?」
「ん?ああ、いやなんでもない。少し緊張しているのかもな」
「へぇ〜、お兄ちゃんでも緊張するんだ?」
「なんだ、その意外そうな顔は?」
俺の隣で小馬鹿にしたような笑みを浮かべているのは妹のルビー。俺よりもダメージの少ない名前を授かった。俺と同じ転生者ということだけは分かっている。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
「有馬って人いるじゃない?」
「あの10秒で泣ける天才子役...だったか」
「そう!その人って私たちの一個上だから先輩っていうことになるんだよね」
「そうだな」
「なんか...癪だよね...」
「お前、あいつにだけは厳しいよな。もしかして10年以上前のことをまだ根に持ってるのか?」
「だって、ママの事馬鹿にしたんだよ!今思い出しても腑が煮え返る思いだよっ」
「元気な事で何よりだ」
「お兄ちゃん、私の事馬鹿にしてる?」
「いや、風邪引かなそうで安心したってだけだ。気にするな」
「あーっ!絶対馬鹿にしてるでしょ!」
そんな兄妹漫才を繰り広げながら校舎に入る。
ルビーとは教室の方向や下駄箱の位置も違うのでそこで別れた。
パンフレットの前情報にあった下駄箱の位置に靴を入れて上履きを取り出して履く。そして顔を上げた時、ソレが目に入った。
艶のある黒い髪、完璧なまでに整った顔、両目の瞳には星があり、背格好や姿勢を見てもアイの生き写しのようなその姿を...。
「...アイ....?」
俺の掠れるような一言は周囲の喧騒にかき消された。
流石に考えすぎだろう。
そう思って目を一旦閉じて思考をリセットする。
そして開いたその先には誰もいなかった。
(アイの事を考えすぎて幻覚まで見るなんて...。今日は帰ったら早めに休息を摂ろう)
あの幻覚を見てから心臓がうるさい。
鼓動に自分が揺らされているような錯覚をしてしまうほど今の自分は状態が良くない。
深呼吸をして心を落ち着けてから教室へ向かった。
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入学式を恙無く終えて、教室に戻ってきた。
もう人生で何度経験したかわからないホームルームでの自己紹介。
現在、俺の整っている容姿が影響してか視線の針に刺され続けているので無難に済ましておきたい。
高校生としての無難な自己紹介とは?と自問自答をしながらクラスメイトの自己紹介を観察していく。参考になるものがあるかもしれない。
そう判断したのが間違いだったのかもしれない。
(お...おい...嘘.....だろっ...!な...んで...?)
俺の視界には再び幻覚と思わしきアイが、陽東高校の制服を身に纏って黒板の前で自己紹介をしていた。
「皆さん、初めまして。倉敷 アイと言います、これから一年間よろしくお願いします♪」
ガタッ!!
俺が勢いよく立ち上がると周囲の視線が再び集まる。椅子の音が大きくなった気がするがそんな事はどうでも良い。
「アイ...」
「...え?」
困惑したような声...間違いない。アイの声だ。だが、何故だ。
アイはあの時死んでしまったはず...。
「アイ...だよな...?」
「え、あ、うん。君は...?」
もう2度と会話できないと思っていたアイと意思疎通が出来た事に俺の脳は限界を迎えたのか、視界がブラックアウトして、体から力が抜けていくのがわかった。
多分ルビーサイドが難関。