「なんで防衛隊のスーツなしで車を軽々持てるのよ・・・」
四ノ宮は目を見開いて驚く。あっ、とさっきまでしていたことに気づいた彼は、すぐさま重そうなフリをする。市川と古金も、ため息をついていた。
「まあ、こんな歳でも身体は鍛えてるんだ。そりゃ・・・もうキツいぐらい」
日比野は、フリをしつつも適当に話をはぐらかした。実際、特訓をやっているから鍛えてはいる。
「賠償は払ってもらいますからね〜‼︎」
日比野と古金は、そう捨て台詞をはきながら帰っていった。なお、弁償してもらうと言ったが、車体にはほとんど傷はついていなかった。
呆気に取られながら四ノ宮らは見送ったいた。
「あの男、なかなか面白いやつね」
彼女は、さっきより落ち着いたらしく面白そうな笑みを浮かべていた。
「まあ、車投げたのは許せませんけどね・・・確かに凄い人ですよ。先輩は」
「そういえば、あなたもここの受験生なの?」
市川は、首を縦に振って言った。
「ええ、あなたの方こそ、四ノ宮さんでしたっけ。もしかして四ノ宮長官の娘さん」
彼女は、少し不機嫌そうな顔をする。
「親と比べたり特別扱いされるのは嫌いだけど、まあそうね。私は四ノ宮イサオの娘よ」
彼は興味深そうにする。あのヒーローと呼ばれた男の1人娘か。どんな人物か気になるな。
「親子共々防衛隊ですか。なかなか凄いですね」
「タメでいいわよ。さっき言ってたみたいに特別扱いされるのは嫌いだし」
「わかった」
2人は、雑談を交わしながら会場の入り口に入っていった。守備隊も含めてもたくさんの人数がいた。こんなところで先輩が変身したら本当にひとたまりも無いだろう。
そして、更衣室に入る為、2人は一旦別れる。その際に市川はこう言った。
「そういえば、言い忘れてましたけど、僕の先輩は面白いだけで判断しない方がいいですよ」
彼女は、意味をいまいち理解できなかった。
その3日後、立川複合基地では保科と亜白が合格者の整理をしていた。
「今回はええ人ばっかりのようですね」
保科の問いかけに、亜白はコクリと頷く。今回の試験では脱落者がまだ10人程度しかおらず、また期待の新星というのも多かった。
「そう、今見てる市川ってやつ、モンスタースイーパーで怪獣のこと学んどったんだから、怪獣のことよく知っとるんですよ」
亜白の手が止まった。
「モンスタースイーパー・・・」
心なしか、彼女はまるで夢でも見てるかのように目を光らせている。保科は不思議そうに聞く。
「なんか、モンスタースイーパーに気になることでも?」
亜白は、ハッと正気に戻るとコクリと頷く。
「この、モンスタースイーパーには私の昔からの幼馴染がいてな、それで少し気になったんだ」
「ふ〜ん、幼馴染ですか」
彼は少し考える。
「それは男ですか、それとも女ですか?」
「男、だったな。3歳年上の」
彼は何かを察したような顔になった。上官なのであえて口に出さないでおくが、おそらく隊長はその幼馴染のことが少し気になってるんだろう。保科は、別の話題にする事にした。
「さっきも言っとりましたが、今回は期待できる人材が多いんですね。例えば、この四ノ宮キコルってやつはまあ、名字からわかる様にあの長官の娘でして、飛び級制度がない日本で特別な事例として、筑波討伐大学を18歳で卒業しています」
彼はまた別の書類を指さす。
「あと、この古橋イハルも今後に期待されとります。彼は、八王子討伐高専を主席で卒業したエリートで、なんと中学生から学習して入学したってんのだから驚きですね」
「なんか、彼とは前に会ったことがあるな」
亜白は思い出した表情になる。
「ええ、隊長は一回彼のこと助けたことがあるみたいですね。本人も、それが理由で防衛隊目指したって言っとりましたから」
「誇りに思うな」
突然ドアが叩かれた。保科はすぐにドアを開ける。
「は〜い」
ドアの前には、会議の時にいた小此木が立っていた。
「一応、次の会合が再来週にあるらしくて、それの準備を手伝ってほしいんですが・・・」
「ええよ」
保科は、亜白にありがとうございました。と言って執務室を出た。
「いや〜、まさかSSSCがこんな組織とは思えんかったわ」
「まあ、最初からこのような感じではなかったんですけどね。こうなったのは怪獣8号が出始めてからのことで」
保科は、ふむと興味深げな顔をした。
SSSC、もとい特殊怪獣特別抑制委員会は、7号対策委員会の名前を変更した組織で、さっき言った7号のような、特殊な識別怪獣に対応するために存在している。
7号対策委員会の際はある程度真っ当だったみたいだが、議長である鳴海が8号を知ると、急に上層部にバレない様に怪獣8号を味方にして協力すると言い出したのである。その理由は、人間と同じような体の構造を持っているということである。と、いうか間接の位置とか曲がり方とかも人間と同じであり、普通に見た目以外の点で考えれば結構会話できそうである。あくまで、考察段階だからなんともいえないが、とうの鳴海は、人語を話せると信じて疑わなかったようで、8号との対話の準備すら進めている。もっとも、防衛隊の最強装備は、No.s、識別怪獣兵器だが、今の科学力を持ってしても、既存の識別怪獣の半分までしか能力を引き出せない。それに、現在で稼働が可能とされているのは関東地方、関西地方を合わせても4つしかなく、8号が戦力に加わったならかなりの戦力になるはずであった。あとは問題点だが、1番課題となるのは上層部の反応である。特に現在防衛隊長官を務める四ノ宮イサオは、妻であるヒカリを怪獣6号討伐作戦時に失っている。そんな彼が怪獣をそのまま戦力化と言うのに納得できるか。少なくとも難しい気はする。
「ていうか、どうやって上層部にバレないようにするんでしょうかね?」
小此木が頭に疑問符を浮かべる。
「今のところは、上よりも先に動くしかないって言っとったな。そういや、君はこの部隊の人なんか」
保科は不快感を感じさせない態度で聞く。
「はい、ここでオペレーターとして勤務しております」
「オペレーターか、相当戦術とか知ってるんやな」
防衛隊でのオペレーターとは、戦力の増援だけでなく戦術上の指示も出したりするから、ある程度戦闘方法を学ぶ必要がある。
「ええ、まあ少しかじっただけではありますけどね」
「むしろ学んだだけ上出来だと思うがな。新人なんやから、ちょっとやそっとの失敗で気に病むな」
「ええ、そうですね」
彼女も、明るい顔になった。
それからしばらく、2人は雑談しながら廊下を歩いていた。一定の場所で小此木は立ち止まる。
「あっ、ここが私の部屋です。ここで整理しましょう」
彼女はドアを指さす。
「ん、ここやな」
保科は、扉をゆっくりと開けた。
1日早く書けました‼︎